記憶喪失になった嫌われ悪女は心を入れ替える事にした 

結城芙由奈@コミカライズ発売中

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第37話 笑う護衛騎士

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 門の外にはジョンの言う通り、馬車が待機していた。そして御者台に乗っていた男性が頭を下げてきた。

「お帰りなさいませ、ユリアお嬢様」

「ええ。ただいま」

「さ、ではお乗り下さい。お手をお貸ししましょう。ユリア様」

「あ、ありがとう」

突如口調が変わったジョンの変化に戸惑いつつも返事をした。ジョンの差し出した右手に自分の手を乗せて馬車に乗るとジョンも続いて乗り込み、私の向かい側に座った。

「では出発致します」

御者は私達に声を掛けると手綱を振るい、馬車はガラガラと音を立てて走り始めるとジョンが口を開いた。

「ユリアお嬢様、先程の教師の件ですが全て片付けてきましたのでご安心下さい。なので予定通り反省文とレポートを仕上げてくださいね?3日後の提出に間に合うように」

ニッコリと笑みを浮かべながら私を見つめるジョンに背筋を寒くしながら返事をする。片付けてきた…一体どういう意味なのだろう?怖くてとても聞けなかった。

「え、ええ…そ、そうね」

愛想笑いをしながら返事をする。
…今日1日学園でジョンの横柄な口の聞き方にすっかり慣れてしまっていた私。そんな言葉使いをされると違和感極まりない。

「どうかしましたか?」

「い、いえ…ジョンの言葉遣いがちょっと…ね…」

「何ですか?この言葉使いが気に入りませんでしたか?」

ジョンが首を傾げながら尋ねてくる。

「そうじゃないけど…気に入らないと言うか…何ていうか…違和感が半端なくて…」

するとジョンは言う。

「ユリアお嬢様、昨夜も話してありますが屋敷内と学校内では口調を変える事をご了承願いますと事前に伝えてありましたよね?お忘れですか?」

「ええ、勿論覚えているわ。忘れるはずないじゃない。ただ、今日1日学園でジョンの横柄な口の聞き方に慣れてしまったから奇妙な感じなのよ。ねぇ…話し方を統一してもらえないかしら?」

「無理を言わないで下さい。私は公爵様から何者かに命を狙われている貴女を守るように命じられているのですよ?依頼主のお嬢様に対して、本来であればぞんざいな口の聞き方が出来る立場には無いのです。学園での口調は他の人達から怪しまれないようにする為のやむを得ない措置です。その辺りの事はご理解して下さい」

「ええ…分かったわ。でもやっぱり慣れないわね。そのへり下った物言いをされると鳥肌が立つというか…背筋がゾワゾワするって言うか…」

「ふ~ん…」

すると何故かジョンはニヤリと笑って、腕を組み、さらに足を組むと口を開いた。

「やはりユリアお嬢様は…思った通りのお方でしたね」

「な、何よ…そんな勿体つけた話し方しないで、はっきり言ってよ」

「はっきり申し上げて宜しいのですか?」

じっと私の目を見てジョンは尋ねる。

「ええ、お願い」

「やはりユリアお嬢様は…変態だったのですね?」

「は…?」

ジョンの言葉に耳を疑う。

「ちょ、ちょっと!言うに事欠いて…よりにもよって人の事『変態』って言うなんて失礼にもほどがあるじゃないのっ!」

私は真っ赤になって抗議した。やはりいくら物腰が丁寧になってもジョンはジョンだ。上辺だけ繕っても、その本性は何も変わらない。しかしジョンは私の話を聞いているのか、いないのか…おかしそうにクックッと肩を震わせている。

「ねぇ、何笑ってるの?私、今真剣に怒っているんですけど?」

するとジョンがおかしさを堪えるかのように言った。

「い、いえ…ユリアお嬢様の事で…ククッ。笑っているのではありませんよ」

肩を震わせるジョン。

「それじゃ、何に対して笑っているの?」

「決まっているじゃないですか。ベルナルド王子達の事についてですよ」

「ベルナルド王子がどうしたの?」

「ベルナルド王子が…あ、あまりにも滑稽過ぎて…」

滑稽…?ベルナルド王子の何処が滑稽なのだろう?凡人の私にはさっぱりジョンの頭の中が分からなかった―。







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