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第31話 食べてみて?
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ようやくジョンを称える称賛の嵐?が収まると、女子学生達はそれぞれ意中の男子学生たちに自分たちの焼いたマフィンを持って駆け寄って行く。
よし、私もジョンにこのマフィンを食べさせ、見返して見せよう。
人混みをかき分け、ジョンを探しまわっているとタイミングの悪いことにベルナルド王子と視線が合ってしまった。ベルナルド王子は露骨に意地悪そうな顔で私に近寄って来る。
え?な、何故近付いて来るのだろう?
そして当然背後からは3人の腰ぎんちゃくさん達が迷惑そうな顔でついて来る。気の毒に…。私は心の中で密かに王子に付き合わされている3人に同情した。
ベルナルド王子は私の傍まで近寄り、足を止めると言った。
「…今の剣術の練習試合、見ていたのか?」
「はい」
「俺が奴に負ける姿を見ていたのだな?」
敵意むき出しの目で私を睨み付けて来る。
「え、ええ…まぁ見ましたけれど…」
「そうか。それで俺を馬鹿にしに来たのか?」
「はぁ?」
あまりにも突拍子もない台詞に妙な声を出してしまった。
「まさか、それ程暇ではありませんよ」
「何っ?!」
ベルナルド王子の眉間が吊り上がる。しまった!つい、口が滑って余計な事を言ってしまった。
「お前…今、何と言った?」
殺気を漲らせるベルナルド王子に3人の腰ぎんちゃくたちが次々と声を掛ける。
「王子、やめて下さい。むきになる相手ではありませんよ」
「ええ、相手にするだけ時間の無駄ですよ」
「どうせ取るに足らない相手なのですから放っておきましょう
何とも失礼な事を言ってくる腰ぎんちゃくたち。しかし、彼等に諭されてベルナルド王子は気が収まったのか、私に言った。
「フン。今回は特別に俺が手を抜いて負けてやったのだ。だが次回は無いぞ。と…奴に伝えて置け」
明らかにジョンの方が一枚も二枚も上手なのに、強気な態度のベルナルド王子。しかし、その事を何故私に言うのだろう?
「あの、ベルナルド王子…」
未だに私の前から立ち去らないベルナルド王子に声を掛けた。
「何だ?」
「言うべき相手を間違えていますよ?私では無く本人に伝えれば良いのではないでしょうか?」
「な、何だとっ?!」
途端に王子の顔が怒りの為か?顔を赤らめた。
「王子っ!」
「やめて下さいッ!」
「落ち着いて!深呼吸してっ!」
3人の腰ぎんちゃくたちが王子を宥める。もしかするとジョンに負けたことが相当悔しいのかもしれない。
「す~…は~…」
深呼吸するベルナルド王子は少し落ち着くと私が持っているバスケットに目を止めた。
「ははぁ~ん…そうか、分ったぞ?ユリア。お前は性懲りも無くまた下手くそな菓子を作ってきて、この俺に食べて貰う為にここまで来たのか?」
「え?」
記憶喪失になるまでの私はそんな事をしていたのだろうか?
「いいか、何度も言うが…俺は絶対にお前の焼いた菓子は食べないからな?」
王子が腕組みしながら言った時―。
「ユリア!」
ジョンが近付いて来た。
「あ、ジョンッ!」
「まさか女子学生たちがここへ来るとは思わなかったな」
ジョンはチラリと王子を見ながら言う。
「ええ。実は調理実習でマフィンを焼いたのだけど先生の考えで男子生徒達に食べてもらう事になったの。それでジョンに食べてもらいたくて持ってきたのよ」
「何っ?!俺の為に持ってきたのでは無かったのかっ?!」
すると何故か王子が驚きの声をあげる。あ…まだいたのか。
「はい、そうです。ジョンの為に持ってきました。…第一、ベルナルド王子は私の焼いた菓子は絶対に食べないのですよね?」
「…」
何故かそこで黙ってしまう王子。そして3人の腰ぎんちゃくは唖然とした顔を見せている。
「どうぞ、ジョン。食べてみて?」
バスケットの蓋を開けると、中からは焼き立てのマフィンのおいしそうな香りが辺りに漂う。
「へ~…美味そうじゃないか?」
ジョンは嬉しそうに笑みを浮かべると、早速バスケットに手を入れてマフィンを取り出すと、迷うことなく口に入れた―。
よし、私もジョンにこのマフィンを食べさせ、見返して見せよう。
人混みをかき分け、ジョンを探しまわっているとタイミングの悪いことにベルナルド王子と視線が合ってしまった。ベルナルド王子は露骨に意地悪そうな顔で私に近寄って来る。
え?な、何故近付いて来るのだろう?
そして当然背後からは3人の腰ぎんちゃくさん達が迷惑そうな顔でついて来る。気の毒に…。私は心の中で密かに王子に付き合わされている3人に同情した。
ベルナルド王子は私の傍まで近寄り、足を止めると言った。
「…今の剣術の練習試合、見ていたのか?」
「はい」
「俺が奴に負ける姿を見ていたのだな?」
敵意むき出しの目で私を睨み付けて来る。
「え、ええ…まぁ見ましたけれど…」
「そうか。それで俺を馬鹿にしに来たのか?」
「はぁ?」
あまりにも突拍子もない台詞に妙な声を出してしまった。
「まさか、それ程暇ではありませんよ」
「何っ?!」
ベルナルド王子の眉間が吊り上がる。しまった!つい、口が滑って余計な事を言ってしまった。
「お前…今、何と言った?」
殺気を漲らせるベルナルド王子に3人の腰ぎんちゃくたちが次々と声を掛ける。
「王子、やめて下さい。むきになる相手ではありませんよ」
「ええ、相手にするだけ時間の無駄ですよ」
「どうせ取るに足らない相手なのですから放っておきましょう
何とも失礼な事を言ってくる腰ぎんちゃくたち。しかし、彼等に諭されてベルナルド王子は気が収まったのか、私に言った。
「フン。今回は特別に俺が手を抜いて負けてやったのだ。だが次回は無いぞ。と…奴に伝えて置け」
明らかにジョンの方が一枚も二枚も上手なのに、強気な態度のベルナルド王子。しかし、その事を何故私に言うのだろう?
「あの、ベルナルド王子…」
未だに私の前から立ち去らないベルナルド王子に声を掛けた。
「何だ?」
「言うべき相手を間違えていますよ?私では無く本人に伝えれば良いのではないでしょうか?」
「な、何だとっ?!」
途端に王子の顔が怒りの為か?顔を赤らめた。
「王子っ!」
「やめて下さいッ!」
「落ち着いて!深呼吸してっ!」
3人の腰ぎんちゃくたちが王子を宥める。もしかするとジョンに負けたことが相当悔しいのかもしれない。
「す~…は~…」
深呼吸するベルナルド王子は少し落ち着くと私が持っているバスケットに目を止めた。
「ははぁ~ん…そうか、分ったぞ?ユリア。お前は性懲りも無くまた下手くそな菓子を作ってきて、この俺に食べて貰う為にここまで来たのか?」
「え?」
記憶喪失になるまでの私はそんな事をしていたのだろうか?
「いいか、何度も言うが…俺は絶対にお前の焼いた菓子は食べないからな?」
王子が腕組みしながら言った時―。
「ユリア!」
ジョンが近付いて来た。
「あ、ジョンッ!」
「まさか女子学生たちがここへ来るとは思わなかったな」
ジョンはチラリと王子を見ながら言う。
「ええ。実は調理実習でマフィンを焼いたのだけど先生の考えで男子生徒達に食べてもらう事になったの。それでジョンに食べてもらいたくて持ってきたのよ」
「何っ?!俺の為に持ってきたのでは無かったのかっ?!」
すると何故か王子が驚きの声をあげる。あ…まだいたのか。
「はい、そうです。ジョンの為に持ってきました。…第一、ベルナルド王子は私の焼いた菓子は絶対に食べないのですよね?」
「…」
何故かそこで黙ってしまう王子。そして3人の腰ぎんちゃくは唖然とした顔を見せている。
「どうぞ、ジョン。食べてみて?」
バスケットの蓋を開けると、中からは焼き立てのマフィンのおいしそうな香りが辺りに漂う。
「へ~…美味そうじゃないか?」
ジョンは嬉しそうに笑みを浮かべると、早速バスケットに手を入れてマフィンを取り出すと、迷うことなく口に入れた―。
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