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第29話 称賛を浴びる私
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教室へ入った途端―。
パチパチパチパチ…ッ!
クラスメイト達が一斉に拍手をした。皆何故拍手をしているのだろう?そして傍らに立つジョンを見て納得した。
「ジョン。貴方すっかり人気物ね?男女問わず皆から拍手を受けるなんて」
するとジョンは溜息交じりに言った。
「本当にユリアは鈍い人間だな…」
「え?何が?」
するとクラスメイト達が一斉に駆け寄ってくると、あっという間に私は取り囲まれていた。
え?一体どういう事?
「有難うございます!ユリア様っ!」
「あの教師に炎の球を投げつけるなんてっ!」
「あんな凄い魔法が使えたなんて尊敬します」
「才能を隠していたのですね?」
「何はともあれ、スカッとしましたよ」
等々…賛美の嵐だった。
「あ、あの…私(正確に言えば私に姿を変えたジョン)が、キャロライン先生にあんな真似をして…軽蔑したりしないのかしら…?」
クラスメイト達を見渡しながら言うと、全員が首を振る。
「軽蔑?!まさかっ!」
「ええ、そうですよ!大した魔力も無いくせに『魔法学』の教師なんて!」
「見の程知らずも甚だしいですわ」
「善い気味でしたよ!」
そして再び盛り上がるクラスメイト達。どうやら彼等は満場一致でキャロライン教師が以前から気にくわなかったらしく、私(ジョンだけど)が炎の球をぶつけて、髪を焼いてくれた事で鬱憤を晴らしてくれたと感謝してきたのだ。
皆に取り囲まれ、お礼の言葉を受けながら私は1人生徒たちの輪から外れ場所に立つジョンを見た。まさか、ジョンは始めからこれを狙っていたのだろうか…?私に対するクラスメイト達の態度をを改めさせる為…?
まさかね…。そう思いつつ、戸惑いながらジョンを見ると、私の視線に気付いたのかこちらを振り向くジョン。彼は私を見ると口を動かした。
「か・ん・しゃ・し・ろ・よ」
ジョンの口は、そう語っていた。
え?まさかジョンは本当に全て計算づくであのような真似をしたのだろうか?
私は少しだけ考え…あのジョンに限って絶対そんなはずは無いだろう!という結論に至った―。
****
午後の授業は女子生徒は調理実習でマフィン作り、男子生徒たちは剣術の訓練だった。
フフフ…
調理をしながら、私は笑いが止まらなかった。その理由は簡単。何故なら私を振り回すジョンからようやく解放されたからだ。嬉しさのあまり、ウキウキしながら卵を割り、砂糖を混ぜて手早くかき混ぜ小麦粉やバニラビーンを加えてさらに泡だて器で混ぜて、マフィンケースに生地を流し込んでいる最中に、ようやく自分が皆から注目を集めていたことに気付いた。
「あ、あの…一体何でしょう…?」
恐る恐る周囲を見渡し、口を開くと―。
「す、素晴らしいですわっ!アルフォンスさん!一部の隙も無い完璧な腕前です!」
家庭科の先生が感動して手を叩く。他の女子学生達も称賛の声を浴びせて来た。
「一体どうなさったのですか?この間までは卵すら割れなかったのにっ?!」
え?!そうなのっ?!
「流れるような自然な動き!」
「手際が素晴らしかったですわ!」
「いつの間にお菓子作りの腕をあげていたのですかっ?」
「え…?」
そう言えば、何故なのだろう?考え事をしながらお菓子作りをしていたけれども、何も意識することなく、自然に身体が動いていた。まるで、ずっと前からお菓子を作っていたかのように…。
ひょっとすると、自分の失われた記憶に…何か重要な秘密が隠されているのではないだろうか?
しかし、当面まず私がやることは…。
「はい、それでは皆さん。今からかまどでケーキを焼きますからね。準備はいいですか?!」
家庭科の先生が私達に声を掛ける。
『はいっ!!』
全員が声を揃えて返事をする。
そう、私がいまするべき事は…ケーキを焼き上げて、私を見下しているジョンに食べさせて彼を見返してやることなのだから。
私はウキウキしながらクラスメイト達とかまどへ向かった―。
パチパチパチパチ…ッ!
クラスメイト達が一斉に拍手をした。皆何故拍手をしているのだろう?そして傍らに立つジョンを見て納得した。
「ジョン。貴方すっかり人気物ね?男女問わず皆から拍手を受けるなんて」
するとジョンは溜息交じりに言った。
「本当にユリアは鈍い人間だな…」
「え?何が?」
するとクラスメイト達が一斉に駆け寄ってくると、あっという間に私は取り囲まれていた。
え?一体どういう事?
「有難うございます!ユリア様っ!」
「あの教師に炎の球を投げつけるなんてっ!」
「あんな凄い魔法が使えたなんて尊敬します」
「才能を隠していたのですね?」
「何はともあれ、スカッとしましたよ」
等々…賛美の嵐だった。
「あ、あの…私(正確に言えば私に姿を変えたジョン)が、キャロライン先生にあんな真似をして…軽蔑したりしないのかしら…?」
クラスメイト達を見渡しながら言うと、全員が首を振る。
「軽蔑?!まさかっ!」
「ええ、そうですよ!大した魔力も無いくせに『魔法学』の教師なんて!」
「見の程知らずも甚だしいですわ」
「善い気味でしたよ!」
そして再び盛り上がるクラスメイト達。どうやら彼等は満場一致でキャロライン教師が以前から気にくわなかったらしく、私(ジョンだけど)が炎の球をぶつけて、髪を焼いてくれた事で鬱憤を晴らしてくれたと感謝してきたのだ。
皆に取り囲まれ、お礼の言葉を受けながら私は1人生徒たちの輪から外れ場所に立つジョンを見た。まさか、ジョンは始めからこれを狙っていたのだろうか…?私に対するクラスメイト達の態度をを改めさせる為…?
まさかね…。そう思いつつ、戸惑いながらジョンを見ると、私の視線に気付いたのかこちらを振り向くジョン。彼は私を見ると口を動かした。
「か・ん・しゃ・し・ろ・よ」
ジョンの口は、そう語っていた。
え?まさかジョンは本当に全て計算づくであのような真似をしたのだろうか?
私は少しだけ考え…あのジョンに限って絶対そんなはずは無いだろう!という結論に至った―。
****
午後の授業は女子生徒は調理実習でマフィン作り、男子生徒たちは剣術の訓練だった。
フフフ…
調理をしながら、私は笑いが止まらなかった。その理由は簡単。何故なら私を振り回すジョンからようやく解放されたからだ。嬉しさのあまり、ウキウキしながら卵を割り、砂糖を混ぜて手早くかき混ぜ小麦粉やバニラビーンを加えてさらに泡だて器で混ぜて、マフィンケースに生地を流し込んでいる最中に、ようやく自分が皆から注目を集めていたことに気付いた。
「あ、あの…一体何でしょう…?」
恐る恐る周囲を見渡し、口を開くと―。
「す、素晴らしいですわっ!アルフォンスさん!一部の隙も無い完璧な腕前です!」
家庭科の先生が感動して手を叩く。他の女子学生達も称賛の声を浴びせて来た。
「一体どうなさったのですか?この間までは卵すら割れなかったのにっ?!」
え?!そうなのっ?!
「流れるような自然な動き!」
「手際が素晴らしかったですわ!」
「いつの間にお菓子作りの腕をあげていたのですかっ?」
「え…?」
そう言えば、何故なのだろう?考え事をしながらお菓子作りをしていたけれども、何も意識することなく、自然に身体が動いていた。まるで、ずっと前からお菓子を作っていたかのように…。
ひょっとすると、自分の失われた記憶に…何か重要な秘密が隠されているのではないだろうか?
しかし、当面まず私がやることは…。
「はい、それでは皆さん。今からかまどでケーキを焼きますからね。準備はいいですか?!」
家庭科の先生が私達に声を掛ける。
『はいっ!!』
全員が声を揃えて返事をする。
そう、私がいまするべき事は…ケーキを焼き上げて、私を見下しているジョンに食べさせて彼を見返してやることなのだから。
私はウキウキしながらクラスメイト達とかまどへ向かった―。
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