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第21話 私の選択肢
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「何だ?まだ機嫌が悪いのか?」
ジョンが確保してくれた席に座り、食後のカフェオレを飲んでいると向かい側に座るジョンが声を掛けて来た。彼の前にはブラックコーヒーが置かれている。
何故、そんな事を私に尋ねてきているかというと…それは食事中私が一言もジョンに話しかけなかったからなのかもしれない。しかし、話しかける気になれない程私は彼に腹を立てていたのだ。
「フン…何よ。いつもなら食事をしている時位は静かにしていてろと言ってるくせに」
カフェオレを飲みながら言うと、すぐさまジョンが反論してきた。
「そんな言い方はしていない。『食事中の時位は話しかけないで下さい』と言っているだろう?」
「細かい人ね。多少言い方が違ってるくらいで…それより私、今ジョンに怒っているのよ?何故か分っているわよね?」
「さぁ?何故だ?」
ジョンは考える事も無く即答してきた。
「ちょっと、せめて考えるフリくらいしたらどうなの?いきなり即答するなんてあり得ないわ」
「いいから、早く教えろ。俺は無駄に時間を使うのは嫌いなんだ」
「は…?」
何という言い草なのだろう?仮にもジョンはお父様に私の身を守るように雇われているはず。なのに彼が今までしてきたことは、どう考えても私をわざと陥れようとしているとしか思えない。
そう、例えば『魔法学』の授業で私の姿で教師に火の玉を投げつけたり…。
うん?
火の玉…?
「そうよ!」
私はテーブルをバシンと叩いた。その際、近くに座っていた学生たちが驚いてこちらを見たのは言うまでもない。
「うわっ?!何だ?ついに記憶喪失になっただけでなく、頭もイカレてしまったのか?」
ジョンは目を見開いて私を見た。
「別にイカレてなんか無いわ。だけどジョンのせいで私はイカレ女にされてしまったかもしれないじゃない。どうするのよ?先生に炎の球を投げつけたりして…しかも先生の髪を少し焦がしちゃったじゃないのっ!」
さらにテーブルをバンバン叩きながら興奮気味に言う。周囲にいた学生たちは白い目でこちらを見て、何やらヒソヒソと話している。…恐らく私の悪口を言っているのだろう。
「ああ、あれか…ククッ…なかなか傑作だったな?まさかバケツの水を頭から被るとは思わなかった…」
ジョンは肩を震わせながら笑っている。
そう、ジョンが先生に炎の球を投げつけた時に運悪く?先生の髪に火がついてしまったのだ。先生はキャーキャー悲鳴を上げながら、火災防止の為に用意して置いたバケツの水を頭からかぶり、事なきを得たのだが…。
「まさか、大の大人が泣きながら教室を飛び出して行くとは思わなかった。あれじゃ教師の威厳も何もあったものじゃないな?」
ジョンは余程面白いのか、ますます肩を震わせてお腹を抱えている。
「冗談じゃないわよ!どうせやるなら自分の姿でやって頂戴よ。あんな事をしたら、絶対今に呼び出されて…下手したら退学…」
うん?退学…。
「そうよ、退学よ。退学してしまえばいいのよ」
腕組みしながら頷く私に、ようやく笑いが止まったジョンが声を掛けて来た。
「え?退学って…まさか退学したいのか?」
「ええ、その方がいいでしょう?」
「何でそんな風に思うんだ?」
「だって肝心の魔法は一切使えないし、この学園で私は嫌われ者で友達なんか1人もいないみたいだし…それにね、ここだけの話だけど授業内容がさっぱり分らないのよ。もはやこの学園にいる意味なんか無いと思わない?」
あまり周りに聞こえない様に小声でジョンに自分の本音を言う。
「信じられないな…そもそもユリアがこの学園に入学したのだって、ベルナルド王子に徹底的に嫌われているくせに、王子と同じ学園に入りたいからと言って能力も全く足りないくせに公爵から高額な寄付金を支払わせて無理やり入ってきたくせに?」
ジャンは私が傷つくことを早口でまくしたてる。
しかし、そんな裏事情があったとは…。記憶喪失になる前の私はどれだけ嫌な人間だったのだろう?
けれど、やはり私はベルナルド王子に嫌われている事がはっきりした。一体何故そこまで嫌われているのか、本人の口から聞くことが出来なかったけれども、それなら尚更私の選択肢は一つしかない。
「よし、決めたわ。私…この学園を退学する。帰宅したら早速この事をお父様に告げるわ」
そしてすっかり生ぬるくなったカフェオレを口にしていると、神妙な顔つきでジャンが言った。
「…駄目だ。ユリア。それだけは承諾出来ない。何としても、絶対にだ」
「ジャン…」
その目はいつになく真剣だった。ひょっとすると、私が退学出来ない何か重大な理由でもあるのだろうか…?
ごくりと息を飲んで私はジャンを見つめた―。
ジョンが確保してくれた席に座り、食後のカフェオレを飲んでいると向かい側に座るジョンが声を掛けて来た。彼の前にはブラックコーヒーが置かれている。
何故、そんな事を私に尋ねてきているかというと…それは食事中私が一言もジョンに話しかけなかったからなのかもしれない。しかし、話しかける気になれない程私は彼に腹を立てていたのだ。
「フン…何よ。いつもなら食事をしている時位は静かにしていてろと言ってるくせに」
カフェオレを飲みながら言うと、すぐさまジョンが反論してきた。
「そんな言い方はしていない。『食事中の時位は話しかけないで下さい』と言っているだろう?」
「細かい人ね。多少言い方が違ってるくらいで…それより私、今ジョンに怒っているのよ?何故か分っているわよね?」
「さぁ?何故だ?」
ジョンは考える事も無く即答してきた。
「ちょっと、せめて考えるフリくらいしたらどうなの?いきなり即答するなんてあり得ないわ」
「いいから、早く教えろ。俺は無駄に時間を使うのは嫌いなんだ」
「は…?」
何という言い草なのだろう?仮にもジョンはお父様に私の身を守るように雇われているはず。なのに彼が今までしてきたことは、どう考えても私をわざと陥れようとしているとしか思えない。
そう、例えば『魔法学』の授業で私の姿で教師に火の玉を投げつけたり…。
うん?
火の玉…?
「そうよ!」
私はテーブルをバシンと叩いた。その際、近くに座っていた学生たちが驚いてこちらを見たのは言うまでもない。
「うわっ?!何だ?ついに記憶喪失になっただけでなく、頭もイカレてしまったのか?」
ジョンは目を見開いて私を見た。
「別にイカレてなんか無いわ。だけどジョンのせいで私はイカレ女にされてしまったかもしれないじゃない。どうするのよ?先生に炎の球を投げつけたりして…しかも先生の髪を少し焦がしちゃったじゃないのっ!」
さらにテーブルをバンバン叩きながら興奮気味に言う。周囲にいた学生たちは白い目でこちらを見て、何やらヒソヒソと話している。…恐らく私の悪口を言っているのだろう。
「ああ、あれか…ククッ…なかなか傑作だったな?まさかバケツの水を頭から被るとは思わなかった…」
ジョンは肩を震わせながら笑っている。
そう、ジョンが先生に炎の球を投げつけた時に運悪く?先生の髪に火がついてしまったのだ。先生はキャーキャー悲鳴を上げながら、火災防止の為に用意して置いたバケツの水を頭からかぶり、事なきを得たのだが…。
「まさか、大の大人が泣きながら教室を飛び出して行くとは思わなかった。あれじゃ教師の威厳も何もあったものじゃないな?」
ジョンは余程面白いのか、ますます肩を震わせてお腹を抱えている。
「冗談じゃないわよ!どうせやるなら自分の姿でやって頂戴よ。あんな事をしたら、絶対今に呼び出されて…下手したら退学…」
うん?退学…。
「そうよ、退学よ。退学してしまえばいいのよ」
腕組みしながら頷く私に、ようやく笑いが止まったジョンが声を掛けて来た。
「え?退学って…まさか退学したいのか?」
「ええ、その方がいいでしょう?」
「何でそんな風に思うんだ?」
「だって肝心の魔法は一切使えないし、この学園で私は嫌われ者で友達なんか1人もいないみたいだし…それにね、ここだけの話だけど授業内容がさっぱり分らないのよ。もはやこの学園にいる意味なんか無いと思わない?」
あまり周りに聞こえない様に小声でジョンに自分の本音を言う。
「信じられないな…そもそもユリアがこの学園に入学したのだって、ベルナルド王子に徹底的に嫌われているくせに、王子と同じ学園に入りたいからと言って能力も全く足りないくせに公爵から高額な寄付金を支払わせて無理やり入ってきたくせに?」
ジャンは私が傷つくことを早口でまくしたてる。
しかし、そんな裏事情があったとは…。記憶喪失になる前の私はどれだけ嫌な人間だったのだろう?
けれど、やはり私はベルナルド王子に嫌われている事がはっきりした。一体何故そこまで嫌われているのか、本人の口から聞くことが出来なかったけれども、それなら尚更私の選択肢は一つしかない。
「よし、決めたわ。私…この学園を退学する。帰宅したら早速この事をお父様に告げるわ」
そしてすっかり生ぬるくなったカフェオレを口にしていると、神妙な顔つきでジャンが言った。
「…駄目だ。ユリア。それだけは承諾出来ない。何としても、絶対にだ」
「ジャン…」
その目はいつになく真剣だった。ひょっとすると、私が退学出来ない何か重大な理由でもあるのだろうか…?
ごくりと息を飲んで私はジャンを見つめた―。
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