記憶喪失になった嫌われ悪女は心を入れ替える事にした 

結城芙由奈@コミカライズ発売中

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第20話 恨むわよ?

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「ああ、何だ。そういう事だったのか…確かにあの場所は通行の邪魔になったかもしれないね。どうもユリアがご迷惑を掛けてしまったようですみませんでした」

ジョンが素早く私に目配せしたので、私も彼にならって頭を下げた。

「申し訳ございませんでした」

そして顔を上げたジョンは私の肩をグイッと抱き寄せると言った。

「ユリア、良い席が取れているんだよ。一緒に行こう」

「ええ、そうね」

呆気にとられている彼等に背を向け、歩きかけた時…。

「ちょっと待てっ!」

背後から鋭い声を投げかけられた。すると再びジョンが私の耳元で囁く。

「ユリアお嬢様は何も話さないで下さい」

「え?ええ…」

一体ジョンは何をするつもりなのだろう?けれど私はあの人達の事をまるきり知らないので、ここは全てジョンに委ねることにした。

「はい、何でしょうか?」

ジョンは私の肩から手を離すと、振り向いて返事をした。

「お前…一体何者だ?」

金の髪の青年は何故か敵意をむき出しにした目でジョンを睨みつけている。

「俺ですか?今日からこの学園に転校して来たジョン・スミスと言います」

明らかに偽名と思われる名前を堂々と名乗るジョン・スミス。
しかし…そんな名前を疑いもせずに金色の髪の青年は、私を指さしながら厳しい声でジョンに尋ねた。

「何故、その女に構う?」

「構うも何も俺とユリアは同じクラスメイトになったので、2人で一緒にお昼ごはんを食べにこの学食へ来ただけですけど?」

すると彼は腕を組むとニヤリと笑った。

「そうか…君は転校生だからその女の事を何もしらないのだろう?いいだろう、教えてやろう。その女はなぁ…」

この人は私の事を知っている…一体何を話すのだろうか…。緊張しつつ、次の言葉を待つ。すると―。

「いいえ、結構です。別に知りたくありませんから」

ジョンが即答した。

「何?!」

「え?」

私と金の髪の青年が同時に声を上げる。

「な、何故だ?お前はその女がどんな人間か知りたくないのか」

青年はジョンに訴えかけるように語る。はい!私も勿論そうです。自分の事が知りたいのに…何故、何故止めるの?ジョンッ!

私はじっとジョンを見つめ、目で訴えた。私の護衛なら気持ちが伝わるでしょう?私は自分が何者なのか知りたいのよ!

それなのに…。

「おい、ユリア。お前…何故そんなすがるような目でその男を見るのだ?!」

何故かイライラした様子で金の髪の青年が私にいきなり声を掛けてきた。

「ベルナルド様?!」

その言葉に銀の髪の少女が驚いたように顔を上げる。先程から無言で立っていた3人の青年もギョッとした顔で金の髪の青年…もとい、ベルナルドに注目する。
私はジョンに何も話さないように言われているので返事をせずに、無言で俯いた。こうしておけばベルナルドと視線を合わせなくて済むだろう。

すると再びジョンのわざとらしい演技が始まる。

「やめて頂けますか?ユリアにそんな厳しい言い方をするのは。可哀想に…こんなに怯えているじゃないですか…」

そしてジョンは再び私の肩を抱き寄せながら、甘ったるい声で語りかけてきた。

「さぁ、行こう。ユリア」

ゾワゾワッ!そのわざとらしい演技に思わず全身に鳥肌を立てながら私は無理に笑みを作ると返事をした。

「ええ、そうね。行きましょう」

そして再び2人で背を向けて歩き出すと再び背後からベルナルドが引き止めてきた。

「おい、待てっ!ユリアッ!」

しかし、ジョンは歩みを止めない。当然肩を掴まれている私も歩みを止めることが出来ない。

すると―。

「いいじゃないですかっ!あの人の事は放っておけば!」

少女の声が聞こえる。

「ええ、そうですよ!」
「王子!テレシアの言うとおりですっ!」
「我々も行きましょう!」

あ、あの声は…無言で立っていた3人組だ。それにしても王子って…?

人混みの中をかき分けて歩くジョンに私は尋ねた。

「ね、ねぇ。今の金の髪の人…王子って言われていたみたいだけど…?」

するとジョンはようやく私の肩から手を外すと言った。

「ああ、そうだ。あの人物こそ、ベルナルド・バイロン王太子だ」

「ふ~ん…そうなの…って…え…?ええ~っ?!」

今の人が…この国の王子であり…私の婚約者だなんて…っ!私はそんな偉い人が呼び止めているのに、無視してまったことになる。

「ジョン~ッ!」

私は目の前にいるジョンを恨めしい目で睨みつけるのだった―。



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