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第5話 違和感
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背が高く、青い髪に、恐ろしいほど整った顔立ちの青年はマント姿で意味深に私を見て笑っている。そして肝心のベスの姿が見えない。
「だ、誰よ…貴方は…」
言いかけた時、先程のベスの言葉が蘇った。
『何度も実の娘が命の危険にさらされたのに』
ま、まさかこの男はこ、殺し屋…っ?!
「何ですか?その目は…まさか私の事を人殺しとでも思っているわけじゃないですよね?」
男は私の考えを見透かしたかのように言うが、意外と紳士的な言葉遣いをする青年に少しだけ緊張感が緩む。
「そ、そうでしょう?!私を殺しに来たついでにベスを先に殺ったんでしょうっ?!こ、この…人殺しの殺人鬼っ!」
「ユリアお嬢様…まさか本気で言ってるのですか?でもその様子だとやはり記憶喪失になったという話は事実のようですね。初めは気が狂った演技をしているかと思いましたが、とても演技しているように見えませんから」
「だから初めからそう言ってるでしょう?!私は嘘なんかついていなってばっ!記憶喪失になったのよっ!信じなさいよっ!」
恐怖を押し殺す為、わざと声を張り上げる。すると青年は眉をしかめた。
「記憶喪失と言うよりは…もはや別人格になったみたいですね。私の知るお嬢様は我儘で悪女でしたが、気品がありました。今のお嬢様は単にガサツで単に乱暴な女にしかみえません」
この男…物腰や話し方は穏やかだが、非常に失礼な事を言ってくる。
「いいですか?何もかも忘れているようなので私が教えて差し上げますが、貴女は自分が命を狙われているからと言って、フィブリゾ・アルフォンス公爵…貴女のお父様に泣きつき、私が一月ほど前から護衛として雇われているのですよ?」
「え…?そ、そうだったの…?知らなかった…と言うか、まるきり覚えていないけど…それじゃ待って!池で溺れた私を助けてくれたのは貴方だったのっ?!」
「ああ…それは覚えておいでだったのですね?驚きましたよ。勝手に1人で池に落ちたのですから。初めは死ぬ気だったのかと思いましたが…考えてみればユリアお嬢様は命を狙われていたのですよね?ひょっとすると何者かに暗示を掛けられたのかもしれませんね。貴方の命を助けるのは今回が初めてですが過去にも命を狙われていたのですよね…と言っても今の貴女は何も覚えていないでしょうから聞くだけ無駄でしたね。申し訳ございませんでした」
丁寧な言い方なのに、どこか人を小馬鹿にしたような言い方は気に入らないが、彼は命の恩人だ。お礼を言わなくては。
「危ないところを助けて頂いてどうもありがとうございました」
そして頭を下げる。
「…」
青年は何故か奇妙な顔で私を見ている。
「な、何よ…。その顔は…」
「いえ、護衛について…御礼の言葉を言われるのは初めてだったので少々驚いているだけです。何だか背筋がゾワゾワしますね」
「…」
駄目だ、私…。耐えるのよ。彼は私の唯一の味方?かもしれないのだから…。
「そ、それで…一つ聞きたいことがあるのだけど…」
コホンと咳払いすると私は青年を見た。
「…答えられる範囲内でしたら」
「それじゃ、聞くけど貴方はひょっとしてさっきのメイドだったの?」
まさか、そんなはずはないだろうと思いつつ私は尋ねた。
「ええ、そうですよ」
「そうよね~…さっきのメイドはどう見ても貴方よりずっと背は低いし、体型だって…って…ええええっ?!う、嘘っ!!貴方…あのメイドだったのっ?!」
「…感心するか、驚くかどちらか一つにして頂けませんか?あのメイドは私ですよ。自分の見た目を違う姿として相手に認識させる魔法ですから。私の得意魔法です」
「魔法?」
「はい、魔法です」
「またまた~この世に魔法なんて存在するはずないでしょう?」
「本当に大丈夫ですか?この世に魔法が存在するのは常識ではありませんか。まさかそれすら忘れてしまったのですか?」
「え…?魔法が常識…」
そんな…この世に魔法が存在するはずが無いのに…。
それなのにこの違和感は何だろう?
私は…本当にこの世界に住んでいたのだろうか―?
「だ、誰よ…貴方は…」
言いかけた時、先程のベスの言葉が蘇った。
『何度も実の娘が命の危険にさらされたのに』
ま、まさかこの男はこ、殺し屋…っ?!
「何ですか?その目は…まさか私の事を人殺しとでも思っているわけじゃないですよね?」
男は私の考えを見透かしたかのように言うが、意外と紳士的な言葉遣いをする青年に少しだけ緊張感が緩む。
「そ、そうでしょう?!私を殺しに来たついでにベスを先に殺ったんでしょうっ?!こ、この…人殺しの殺人鬼っ!」
「ユリアお嬢様…まさか本気で言ってるのですか?でもその様子だとやはり記憶喪失になったという話は事実のようですね。初めは気が狂った演技をしているかと思いましたが、とても演技しているように見えませんから」
「だから初めからそう言ってるでしょう?!私は嘘なんかついていなってばっ!記憶喪失になったのよっ!信じなさいよっ!」
恐怖を押し殺す為、わざと声を張り上げる。すると青年は眉をしかめた。
「記憶喪失と言うよりは…もはや別人格になったみたいですね。私の知るお嬢様は我儘で悪女でしたが、気品がありました。今のお嬢様は単にガサツで単に乱暴な女にしかみえません」
この男…物腰や話し方は穏やかだが、非常に失礼な事を言ってくる。
「いいですか?何もかも忘れているようなので私が教えて差し上げますが、貴女は自分が命を狙われているからと言って、フィブリゾ・アルフォンス公爵…貴女のお父様に泣きつき、私が一月ほど前から護衛として雇われているのですよ?」
「え…?そ、そうだったの…?知らなかった…と言うか、まるきり覚えていないけど…それじゃ待って!池で溺れた私を助けてくれたのは貴方だったのっ?!」
「ああ…それは覚えておいでだったのですね?驚きましたよ。勝手に1人で池に落ちたのですから。初めは死ぬ気だったのかと思いましたが…考えてみればユリアお嬢様は命を狙われていたのですよね?ひょっとすると何者かに暗示を掛けられたのかもしれませんね。貴方の命を助けるのは今回が初めてですが過去にも命を狙われていたのですよね…と言っても今の貴女は何も覚えていないでしょうから聞くだけ無駄でしたね。申し訳ございませんでした」
丁寧な言い方なのに、どこか人を小馬鹿にしたような言い方は気に入らないが、彼は命の恩人だ。お礼を言わなくては。
「危ないところを助けて頂いてどうもありがとうございました」
そして頭を下げる。
「…」
青年は何故か奇妙な顔で私を見ている。
「な、何よ…。その顔は…」
「いえ、護衛について…御礼の言葉を言われるのは初めてだったので少々驚いているだけです。何だか背筋がゾワゾワしますね」
「…」
駄目だ、私…。耐えるのよ。彼は私の唯一の味方?かもしれないのだから…。
「そ、それで…一つ聞きたいことがあるのだけど…」
コホンと咳払いすると私は青年を見た。
「…答えられる範囲内でしたら」
「それじゃ、聞くけど貴方はひょっとしてさっきのメイドだったの?」
まさか、そんなはずはないだろうと思いつつ私は尋ねた。
「ええ、そうですよ」
「そうよね~…さっきのメイドはどう見ても貴方よりずっと背は低いし、体型だって…って…ええええっ?!う、嘘っ!!貴方…あのメイドだったのっ?!」
「…感心するか、驚くかどちらか一つにして頂けませんか?あのメイドは私ですよ。自分の見た目を違う姿として相手に認識させる魔法ですから。私の得意魔法です」
「魔法?」
「はい、魔法です」
「またまた~この世に魔法なんて存在するはずないでしょう?」
「本当に大丈夫ですか?この世に魔法が存在するのは常識ではありませんか。まさかそれすら忘れてしまったのですか?」
「え…?魔法が常識…」
そんな…この世に魔法が存在するはずが無いのに…。
それなのにこの違和感は何だろう?
私は…本当にこの世界に住んでいたのだろうか―?
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