時が巻き戻った悪役令嬢は、追放先で今度こそ幸せに暮らしたい

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4章 2 再びの彼

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 ビリーが家を出た後、家の裏手にある物置小屋を片付けていた。

もうすぐ雪が降って来るので、食糧保存庫にしようと思っていたからだ。『ルーズ』の冬は長くて寒い。雪が積もれば、市場も閉鎖されてしまう。私に限らず、この季節は村人たちの誰もが冬ごもりの準備で忙しく働いている。

「ふぅ……大分片付いたわ。一度家に戻って休憩しましょう」

使い物にならないような余分なガラクタは全て一個所にまとめ、薪の代わりになりそうな壊れた家具は戸口の傍に置いてある。

もう一度周囲を見渡すと休憩する為、物置小屋を後にした――


 家に戻り、湯を沸かすためにケトルを暖炉の上に乗せて時計を確認した。

「11時半……ビリーは今頃どうしているのかしら?」

何か獲物を仕留められたのだろうか? でも何も獲ることが出来なくても、「ご苦労様」と言って褒めてあげよう。

シュンシュンシュンシュン……

暖炉の上のケトルが音を出して、湯が沸いたことを知らせている。

「……静かね。このところ、ずっと1日中ビリーと一緒だったからそう感じるのかしら……」

湧いた湯をティーポットに移し、茶葉を淹れて蒸らしている合間にカップを用意
することにした。

「あ」

テーブルにカップを運んだところで気付いた。無意識に2人分のカップと焼き菓子を用意してしまっていたのだ。

「やだ、私ったら。今日はビリーが出掛けて、いないのに……」

その時。

―――コンコン

扉をノックする音が聞こえた。

「あら? 誰かしら?」

もしかしてご近所のベラさんだろうか?
リビングの窓からは、家の戸口が見えるようになっている。窓の外を覗き込み、思わず声を上げてしまった。

「え!? ビル!?」

慌てて戸口へ向かい、扉を開けるとビルが笑顔で挨拶してきた。

「こんにちは、リアさん。お久しぶりですね」

「ええ、こんにちはビルさん。温泉を掘って貰って以来ですね」

「ハハハ。いや、ちょっと色々忙しくしていて暫くここを離れていたんですよ。久しぶりにこの近くまで戻って来れたので、リアさんの様子を伺いに来たんです」

照れくさそうに笑うビル。

「そうだったのですか? 気にかけていただいて、ありがとうございます。あ! そうだわ。丁度お茶を飲もうと思っていたんです。中へ入って下さい。一緒にお茶を飲みましょう」

「え? いいんですか?」

「はい。中へお入り下さい」

「そうですか……? ではお言葉に甘えさせていただきます」

「ええ。どうぞ」

私は笑顔でビルを招き入れた。


****

「わぁ……これは良い香りですね」

リビングへ来ると、室内には茶葉の良い香りが漂っていた。

「これはカモミールティーです。私も弟も大好きなハーブティーなんです。どうぞ、かけて下さい」

「カモミール……」

するとポツリとビルが呟き、小さく口元に笑みが浮かぶ。

「どうかしましたか?」

「いえ、リサさんと弟さんの好きなカモミールティーを飲めるなんて、光栄だと思って」

「フフ。そう言って貰えると私も嬉しいです。どうぞ、掛けて下さい」

ビルに椅子を勧めると、彼は遠慮がちに腰かけて室内を見渡した。

「……インテリアを変えたのですね?」

「あ? 前のインテリアを覚えていたのですか?」

カップにハーブティーを注ぎながら返事をする。

「はい、何となく。あの時と比べて今はすっかり生活感が漂っていて……その、温かみを感じます」

「そうですか? 弟と一緒にインテリアを変えたんですよ?」

カーテンも、テーブルクロスもビルと話し合って決めた。
だって、ここは2人の家なのだから。

「アハハハ。本当にリサさんは弟が大切なんですね」

ビルはハーブティーを口にし、笑みを浮かべる。

「はい、あの子がいない生活はもう考えられないくらいです。ケーキもどうぞ」

皿の上のケーキをビルに勧めた。

「ありがとうございます。……ところで、弟さんは今日はどちらに?」

「はい、狩をしに大人たちと森へ行きました」

その途端……。

「え!? 森へ……!?」

ビルの顔が青ざめた――
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