時が巻き戻った悪役令嬢は、追放先で今度こそ幸せに暮らしたい

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3章15 どこか似ている2人

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「ビリー。今日はね、山羊乳で作ったカボチャスープを作ったの。とても美味しいわよ」

カボチャスープはカボチャを丸ごと1個使って作ったので、まだ十分余っていた。
そこでカボチャスープと山羊で作ったチーズ、ハムとキノコのソテー。サラダにビリーが貰ってきた焼き芋をテーブルに並べた。

「わぁ~これがカボチャスープ? 僕初めて見るよ」

ビリーが嬉しそうに目を細める。

「そうだったわね。ジャガイモやニンジンのスープは作ったことがあったかもしれないけど」

「美味しそう……まるでお日様のような色のスープだね」

「え?」

その言葉にドキリとして、思わずビリーを見つめてしまう。

「お姉ちゃん? どうかしたの?」

不思議そうに首を傾げるビリー。

「う、ううん。何でもないわ。そうね、お日様の様なスープね。飲むと身体も温まるし。それじゃ食べましょう?」

「うん!」

ビリーは頷くと、早速カボチャスープをスプーンですくって飲み始めた。

「……美味しい! 温まるね。優しい味でホッとするよ」

「そう? 良かったわ」

またしても同じ台詞を口にするビリー。
……これは偶然だろうか?

「お姉ちゃん。このサツマイモ、僕が掘って来たお芋なんだよ? 食べてみてよ」

「本当? それじゃ、尚更食べなくちゃね」

ビリーが掘って来たサツマイモは金色に輝き、ほっくりしていた。一口食べてみると甘さが口に広がる。

「甘くて美味しいわね。こんなに美味しいサツマイモを掘って来てくれてありがとう」

「良かった~お姉ちゃんに喜んで貰って……」

その後もビリーと楽しく会話をしながら食事をした――


****

――夕食後

2人で一緒に食後の片付けをしていた。

「わぁ~お湯が出るって、温かくていいね~」

食器を洗っているビリーが嬉しそうに笑う。

「そうね。それに今夜から毎日温かい温泉にすぐ入れるわよ。もう馬車に乗って出掛ける必要も無くなるのだから、あの人には感謝しなくちゃ」

すると、ビリーが尋ねてきた。

「……あの人って、温泉を掘ってくれた人のことだよね?」

「そうよ」

「それに畑も作ってくれたんだよね?」

「ええ、そうね」

「どんな人なの?」

食器を洗い終えたビリーが私を見上げてきた。

「どんな人……」

私を見つめるビリーを見ていると、妙な気持ちになってくる。
何故、ビルの姿が重なって見えるのだろう? 髪の色が……瞳の色が同じだからだろうか?

「そうね……彼はね、ビリーに似ているわ」

「え? 僕に似てるの?」

驚きの表情を見せるビリー。

「ええ、そうよ。誰かを思いやれる優しいところも、明るい笑顔も。それに瞳の色や、この髪の色もね。私の大好きな弟によく似ているわよ?」

ビリーの頭を撫でた。

「あ、ありがとう。お姉ちゃん」

ビリーの顔が真っ赤になる。

「それじゃ片付けも終わった事だし、お風呂の準備をしましょうか?」

「うん!」


****


 ――22時過ぎ

私とビリーは同じ部屋でベッドを並べて横になっていた。薄暗い部屋でビリーが話しかけてくる。

「お姉ちゃん、温泉気持ち良かったね」

「そうね。身体も温まるし、1日の疲れも吹き飛ぶわね」

「え? もしかして疲れてるの?」

「大丈夫よ、今のは言葉のあやだから。でも元気になるのは本当のことよ。ビルには感謝しか無いわ」

彼が何処に住んでいるのか、分かればお礼を言いに行けるのに。

「そうだね……お姉ちゃん……僕、早く大きくなって……もっと役に……」

そこでビリーの会話が途切れた。

「ビリー?」

隣りを見ると、ビリーは眠りに就いていた。

「フフフ……きっとサツマイモ堀で疲れたのね。おやすみなさい、ビリー」

そして私も目を閉じた――


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