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3章14 ビリーの質問
しおりを挟む ビルが帰り、夕暮れが近づいてきた頃――
「ビリー、遅いわね……この村には危険な野生動物は生息していないけど、心配だわ……迎えに行こうかしら?」
時計の針を気にしながら台所で食事の用意をしていると、ビリーが家に帰って来た声が聞こえてきた。
「ただいま~お姉ちゃん」
「帰って来たんだわ!」
炊事の手を止めて急いで出迎えにいくと、扉の前には大きな紙袋を抱えたビリーが立っていた。
「お帰りなさい、ビリー。遅いから心配したわ。迎えに行こうかと思っていたのよ? 大丈夫? 外は寒かったでしょう?」
「大丈夫、これを持っていたから寒く無かったよ」
ビリーは紙袋を抱えていた。
「その紙袋はどうしたの?」
扉の前に立っていたビリーは大きな紙袋を抱えている。
するとビリーは嬉しそうに答えた。
「あのね、これは焼き芋だよ。今日沢山サツマイモを焼いたから、お姉ちゃんにも食べさせてあげたくてお土産にもらってきたんだよ。ほら、見て」
ビリーは紙袋を開いて見せてくれた。すると袋の中には、色よく焼けたサツマイモが沢山入っていた。
「まぁ。こんなに沢山貰ってきたの? ありがとうビリー。 重かったでしょう?」
「大丈夫だよ。これくらい、僕男だし」
「ええ、そうね。それじゃ、今夜の夕食に2本だけ食べて、後は干し芋にしましょう」
「え? サツマイモって干せるの!?」
ビリーが驚く。
「ええ、そうよ。包丁で薄く切って、ザルに広げて干すの。とっても甘みが出て、保存食にもなるのよ。これから寒い冬が来て、何カ月も雪が降り続いて外に出られなくなるわ。だから保存食を沢山用意しないと。ビリーのおかげで良い保存食が作れるわ。ありがとう」
「えへへ」
頭を撫でてあげると、嬉しそうに顔を赤くするビリー。
「そうだったわ。私もビリーに見せたいものがあるの。すごいわよ~きっと驚くわ」
「え? 何々?」
「それじゃ、家の裏手に一緒に行ってみましょう。その前に焼き芋を置いてくるわね?」
「うん!」
****
家の裏手にある風車小屋へ連れて行くと、ビリーは目を見開いた。
「え? ええっ!? お姉ちゃん! これってまさか……?」
「フフ。温泉よ。今日からもう入ることが出来るわ。それどころかポンプと繋げてあるから、もう冷たいお水で手や顔を洗わなくても済ものよ?」
それどころか、温泉が湧いてある場所はとても温かだった。ここなら雪が降り積もる心配も無さそうだ。
「ねぇ。これって、お姉ちゃんが1人でやったの?」
「え? まさか。私にはこんなこと出来ないわ。知り合いの人がやってくれたの」
今迄、村の人達にビルのことを訪ねたことがあるけれど……彼を知る人は1人もいなかった。
ひょっとすると、彼は村人たちに住んでいることを内緒にしているのか、もしくはこの村の近くに住んでいるのかもしれないし」
「知り合いの人って……? ひょっとして男の人?」
「え? ええ、そうよ」
「……何て名前の人なの?」
「ビルという名前の人だけど……?」
「何歳ぐらいの人?」
「そうね……私とあまり年が変わらないかもしれないわ」
「ふ~ん……そうなんだ」
一体ビリーはどうしたのだろう? 何だか思いつめたような顔に見える。
「ビリー? どうかしたの?」
「……ううん。何でも無い」
「そう? なら家に入りましょう? いくら温泉の傍にいても外は寒いわ。食事にしましょう」
「うん!」
次に返事をした時には……いつもと変わらないビリーの姿がそこにあった――
「ビリー、遅いわね……この村には危険な野生動物は生息していないけど、心配だわ……迎えに行こうかしら?」
時計の針を気にしながら台所で食事の用意をしていると、ビリーが家に帰って来た声が聞こえてきた。
「ただいま~お姉ちゃん」
「帰って来たんだわ!」
炊事の手を止めて急いで出迎えにいくと、扉の前には大きな紙袋を抱えたビリーが立っていた。
「お帰りなさい、ビリー。遅いから心配したわ。迎えに行こうかと思っていたのよ? 大丈夫? 外は寒かったでしょう?」
「大丈夫、これを持っていたから寒く無かったよ」
ビリーは紙袋を抱えていた。
「その紙袋はどうしたの?」
扉の前に立っていたビリーは大きな紙袋を抱えている。
するとビリーは嬉しそうに答えた。
「あのね、これは焼き芋だよ。今日沢山サツマイモを焼いたから、お姉ちゃんにも食べさせてあげたくてお土産にもらってきたんだよ。ほら、見て」
ビリーは紙袋を開いて見せてくれた。すると袋の中には、色よく焼けたサツマイモが沢山入っていた。
「まぁ。こんなに沢山貰ってきたの? ありがとうビリー。 重かったでしょう?」
「大丈夫だよ。これくらい、僕男だし」
「ええ、そうね。それじゃ、今夜の夕食に2本だけ食べて、後は干し芋にしましょう」
「え? サツマイモって干せるの!?」
ビリーが驚く。
「ええ、そうよ。包丁で薄く切って、ザルに広げて干すの。とっても甘みが出て、保存食にもなるのよ。これから寒い冬が来て、何カ月も雪が降り続いて外に出られなくなるわ。だから保存食を沢山用意しないと。ビリーのおかげで良い保存食が作れるわ。ありがとう」
「えへへ」
頭を撫でてあげると、嬉しそうに顔を赤くするビリー。
「そうだったわ。私もビリーに見せたいものがあるの。すごいわよ~きっと驚くわ」
「え? 何々?」
「それじゃ、家の裏手に一緒に行ってみましょう。その前に焼き芋を置いてくるわね?」
「うん!」
****
家の裏手にある風車小屋へ連れて行くと、ビリーは目を見開いた。
「え? ええっ!? お姉ちゃん! これってまさか……?」
「フフ。温泉よ。今日からもう入ることが出来るわ。それどころかポンプと繋げてあるから、もう冷たいお水で手や顔を洗わなくても済ものよ?」
それどころか、温泉が湧いてある場所はとても温かだった。ここなら雪が降り積もる心配も無さそうだ。
「ねぇ。これって、お姉ちゃんが1人でやったの?」
「え? まさか。私にはこんなこと出来ないわ。知り合いの人がやってくれたの」
今迄、村の人達にビルのことを訪ねたことがあるけれど……彼を知る人は1人もいなかった。
ひょっとすると、彼は村人たちに住んでいることを内緒にしているのか、もしくはこの村の近くに住んでいるのかもしれないし」
「知り合いの人って……? ひょっとして男の人?」
「え? ええ、そうよ」
「……何て名前の人なの?」
「ビルという名前の人だけど……?」
「何歳ぐらいの人?」
「そうね……私とあまり年が変わらないかもしれないわ」
「ふ~ん……そうなんだ」
一体ビリーはどうしたのだろう? 何だか思いつめたような顔に見える。
「ビリー? どうかしたの?」
「……ううん。何でも無い」
「そう? なら家に入りましょう? いくら温泉の傍にいても外は寒いわ。食事にしましょう」
「うん!」
次に返事をした時には……いつもと変わらないビリーの姿がそこにあった――
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