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2章13 捜索
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「あの、これは提案なのですが皆で一緒に廃墟の教会に行ってみませんか?」
私の言葉に彼らは顔を見合わせる。
「だが、あそこは立ち入り禁止区域だし……」
「本当にいるかしら?」
「大人だって行かない場所だしな……」
何故か渋る人たちがいる。
そんなに行きたくない場所なのだろうか? だけど、ぐずぐずしてはいられない。
「ですが、町中を捜し回って見つからなかったのですよね? 全ての場所を探すべきです。教会は立ち入り禁止区域ということは、危険な場所かもしれません。万一、子供たちが入り込んでいたら危ないではありませんか?」
すると、宿屋の主人が頷いた。
「確かにお客様の言う通りかもしれない。俺は捜しに行くぞ。娘が大事だからな」
「あなた、私も行くわ」
すると、他の人々も賛同し始めた。
「そうだな……行ってみるか」
「日が暮れる前に捜し出さないと」
その場にいた全員が頷いてくれた。
でもそれだけでは駄目だ。あの教会には犯人たちがいるに違いない。
「では、教会に行ってみましょう。でも念の為に、何か武器になるような物を持って行った方が良いと思います」
「何だって? 武器だと? どうしてなんだ?」
案の定、質問が飛んできた。
「この町に住む皆さんは教会へ行こうとは思いもしないのですよね? 当然子供達にも教会へは行かないように教えていますよね? でも万一、教会にいるとすれば何者かが子供達を攫って潜んでいるとは考えられませんか? ……実は最近他の町で子供たちが連れ去られそうになった事件があったんです」
私は思い切って、嘘をつくことにした。
すると住人たちの顔色が変わる。
「何だって!? そんなことがあったのか!?」
「言われて見れば、今朝見かけたことの無い男たちがうろついていたぞ」
「私も見たわ。何だか目つきが怖かったわ」
「だったら武装して行こう!」
良かった。
全員が納得してくれた。住民達は一旦解散するとすぐに各々鍬や、斧を持参して戻ってきた。
中には猟銃を持ちだしてきた人物迄いる。
「よし、それでは皆で教会へ行こう」
宿屋の主人が集まった人々を見渡し、全員が頷く。
そこで私は手を挙げた。
「あの、私も一緒に行っていいですか?」
「え!? お姉ちゃん!?」
ビリーが驚いて私を見上げ、人々はざわつく。
「お客様、我々だけで行くのでお部屋で休んでいてください」
宿屋の主人の言葉に私は首を振った。
「いいえ、行きます。言い出したのは私ですから。お願いです、どうか一緒に行かせて下さい」
「ですが……危険なのかもしれないのですよね? それなのにお客様を巻き込むわけにはいきません」
「それは皆さんだって同じことです。人数は大いに越したことがありませんから」
本当は怖い。
だけど教会の地下に気付かない可能性がある。この先の未来を知っている私がついて行かなければ、同じ歴史が繰り返されてしまうかもしれない。
「お願いです。私も子供たちが心配なのです。だって……私にも大切な存在がいますから」
ビリーの手を握りしめた。
すると私の気持ちが伝わったのだろう。
「分かった、俺達と一緒に行こう」
「そうだな、人数が多い方が心強い」
「一緒に行きましょう」
「ではお客様、我々と一緒に行きましょう」
「はい!」
宿屋の主人の誘いに、私は大きな声で返事をした――
私の言葉に彼らは顔を見合わせる。
「だが、あそこは立ち入り禁止区域だし……」
「本当にいるかしら?」
「大人だって行かない場所だしな……」
何故か渋る人たちがいる。
そんなに行きたくない場所なのだろうか? だけど、ぐずぐずしてはいられない。
「ですが、町中を捜し回って見つからなかったのですよね? 全ての場所を探すべきです。教会は立ち入り禁止区域ということは、危険な場所かもしれません。万一、子供たちが入り込んでいたら危ないではありませんか?」
すると、宿屋の主人が頷いた。
「確かにお客様の言う通りかもしれない。俺は捜しに行くぞ。娘が大事だからな」
「あなた、私も行くわ」
すると、他の人々も賛同し始めた。
「そうだな……行ってみるか」
「日が暮れる前に捜し出さないと」
その場にいた全員が頷いてくれた。
でもそれだけでは駄目だ。あの教会には犯人たちがいるに違いない。
「では、教会に行ってみましょう。でも念の為に、何か武器になるような物を持って行った方が良いと思います」
「何だって? 武器だと? どうしてなんだ?」
案の定、質問が飛んできた。
「この町に住む皆さんは教会へ行こうとは思いもしないのですよね? 当然子供達にも教会へは行かないように教えていますよね? でも万一、教会にいるとすれば何者かが子供達を攫って潜んでいるとは考えられませんか? ……実は最近他の町で子供たちが連れ去られそうになった事件があったんです」
私は思い切って、嘘をつくことにした。
すると住人たちの顔色が変わる。
「何だって!? そんなことがあったのか!?」
「言われて見れば、今朝見かけたことの無い男たちがうろついていたぞ」
「私も見たわ。何だか目つきが怖かったわ」
「だったら武装して行こう!」
良かった。
全員が納得してくれた。住民達は一旦解散するとすぐに各々鍬や、斧を持参して戻ってきた。
中には猟銃を持ちだしてきた人物迄いる。
「よし、それでは皆で教会へ行こう」
宿屋の主人が集まった人々を見渡し、全員が頷く。
そこで私は手を挙げた。
「あの、私も一緒に行っていいですか?」
「え!? お姉ちゃん!?」
ビリーが驚いて私を見上げ、人々はざわつく。
「お客様、我々だけで行くのでお部屋で休んでいてください」
宿屋の主人の言葉に私は首を振った。
「いいえ、行きます。言い出したのは私ですから。お願いです、どうか一緒に行かせて下さい」
「ですが……危険なのかもしれないのですよね? それなのにお客様を巻き込むわけにはいきません」
「それは皆さんだって同じことです。人数は大いに越したことがありませんから」
本当は怖い。
だけど教会の地下に気付かない可能性がある。この先の未来を知っている私がついて行かなければ、同じ歴史が繰り返されてしまうかもしれない。
「お願いです。私も子供たちが心配なのです。だって……私にも大切な存在がいますから」
ビリーの手を握りしめた。
すると私の気持ちが伝わったのだろう。
「分かった、俺達と一緒に行こう」
「そうだな、人数が多い方が心強い」
「一緒に行きましょう」
「ではお客様、我々と一緒に行きましょう」
「はい!」
宿屋の主人の誘いに、私は大きな声で返事をした――
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