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2章1 旅の始まり
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ガラガラガラガラ……
荷馬車を走らせていると、御者台に座っていたビリーがウトウトしている。
「ビリー。眠いんじゃないの? 荷台で横になっていなさいよ。一緒になって起きている必要は無いのよ?」
「オフィーリア様が起きているのに……僕だけ寝るなんて……」
必死に眠い目を起こそうとしているのか、ビリーがゴシゴシ目をこする。
「そんなこと気にしなくていいのよ? だってビリーはまだ子供じゃない。子供は沢山寝なくちゃダメよ。次の町まではまだ大分先なのだから」
ビリーの目は今にも閉じそうになっている。
「だけど……」
「あ~もう! だけども何も無いの! そんな今にも眠ってしまいそうな状況で荷台に乗っていたら危ないでしょう? 転げ落ちたらどうするの? 大怪我をするかもしれないでしょう。迷惑かけられるのはごめんなのよ」
そこまで言ってハッとする。
いけない、つい言い過ぎてしまった。これからは心を入れ替えようと思っていたのに、私としたことが……。
ビリーを傷つけてしまっただろうか……?
チラリとビリーの様子を伺う。ビリーはポカンとした表情を浮かべていたが、突然笑顔になる。
「ありがとうございます。 オフィーリア様は僕を心配してくれているんですね? 嬉しいです……それじゃ、僕寝ます」
ビリーは御者台から荷台へ移動すると、そのままゴロリと寝転がった。
「ちょっと! それじゃ、床が硬くて痛いでしょう? 荷台に毛布が積んであるから、それを敷いて寝なさい」
「はい。分かりました」
私の言う通り、ビリーは毛布を広げるとその上に寝転がる。
「どう? 床に直接寝るより、マシでしょう?」
「はい。そうですね。オフィーリア様って……」
「何? 思ったより優しいって言いたいの?」
「何だかお母さんみたいですね」
「はぁ? 変なこと言わないの。私は結婚したことも子供を産んだことだって無いんだから。馬鹿なこと言ってないで寝なさい。次の町に着いたら起こしてあげるから」
そう、私は結局80歳になっても独身だった。……ろくに恋愛することもなく。
「ビリー……?」
話しかけても返事が無い。荷台を振り返ると、既にビリーは眠りについていた。
「まぁ、仕方ないわね。あの時間、厩舎に現れたと言うことは多分まともにねていないでしょうからね」
けれど……何故、ビリーはあの時間に厩舎に現れたのだろう? ひょっとして誰かが教えたのだろうか?
「まぁ、別にどうでもいいわね。今はそんなことよりも早く『ルーズ』に向かわなくちゃ」
最初に向かう町は『ラント』。
ここで『ルーズ』で暮らす為に必要な物を少しずつ買いそろえていこう。
『ルーズ』までの道のりは遠い。
愛馬のロードを疲れさせない為には、最初から沢山の荷物を積んで走らせるわけにはいかない。
何しろ60年前、最初から荷馬車に沢山荷物を積んでロードを走らせたせいか『ルーズ』に到着してすぐに……死んでしまったからだ。
「ロード、今度はあなたをこき使わないからね」
私は愛馬の手綱を握りしめた――
荷馬車を走らせていると、御者台に座っていたビリーがウトウトしている。
「ビリー。眠いんじゃないの? 荷台で横になっていなさいよ。一緒になって起きている必要は無いのよ?」
「オフィーリア様が起きているのに……僕だけ寝るなんて……」
必死に眠い目を起こそうとしているのか、ビリーがゴシゴシ目をこする。
「そんなこと気にしなくていいのよ? だってビリーはまだ子供じゃない。子供は沢山寝なくちゃダメよ。次の町まではまだ大分先なのだから」
ビリーの目は今にも閉じそうになっている。
「だけど……」
「あ~もう! だけども何も無いの! そんな今にも眠ってしまいそうな状況で荷台に乗っていたら危ないでしょう? 転げ落ちたらどうするの? 大怪我をするかもしれないでしょう。迷惑かけられるのはごめんなのよ」
そこまで言ってハッとする。
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チラリとビリーの様子を伺う。ビリーはポカンとした表情を浮かべていたが、突然笑顔になる。
「ありがとうございます。 オフィーリア様は僕を心配してくれているんですね? 嬉しいです……それじゃ、僕寝ます」
ビリーは御者台から荷台へ移動すると、そのままゴロリと寝転がった。
「ちょっと! それじゃ、床が硬くて痛いでしょう? 荷台に毛布が積んであるから、それを敷いて寝なさい」
「はい。分かりました」
私の言う通り、ビリーは毛布を広げるとその上に寝転がる。
「どう? 床に直接寝るより、マシでしょう?」
「はい。そうですね。オフィーリア様って……」
「何? 思ったより優しいって言いたいの?」
「何だかお母さんみたいですね」
「はぁ? 変なこと言わないの。私は結婚したことも子供を産んだことだって無いんだから。馬鹿なこと言ってないで寝なさい。次の町に着いたら起こしてあげるから」
そう、私は結局80歳になっても独身だった。……ろくに恋愛することもなく。
「ビリー……?」
話しかけても返事が無い。荷台を振り返ると、既にビリーは眠りについていた。
「まぁ、仕方ないわね。あの時間、厩舎に現れたと言うことは多分まともにねていないでしょうからね」
けれど……何故、ビリーはあの時間に厩舎に現れたのだろう? ひょっとして誰かが教えたのだろうか?
「まぁ、別にどうでもいいわね。今はそんなことよりも早く『ルーズ』に向かわなくちゃ」
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何しろ60年前、最初から荷馬車に沢山荷物を積んでロードを走らせたせいか『ルーズ』に到着してすぐに……死んでしまったからだ。
「ロード、今度はあなたをこき使わないからね」
私は愛馬の手綱を握りしめた――
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