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1章22 まだ言えない
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「あ、あの……本当に僕、こんな素敵な馬車に乗っていいんですか?」
馬車を見たビリーがオドオドした様子で尋ねてきた。
「ええ、勿論。どうしてそんなこと聞いてくるの?」
「だって僕……こんなに汚れた服だし……」
俯くビリー。
「何言ってるの? 子供がそんな遠慮するものじゃないわ。大体私がビリーを連れて帰ろうと決めたのよ。さ、早く乗りなさい」
馬車の扉を開けると、爺やが驚く。
「ひぃ! オフィーリア様が平民の子供の為に扉を開けるなんて!」
爺やは一々驚き過ぎだ。
私は爺やに構わず、馬車を見上げるビリーに声をかけた。
「あら? どうしたの? 乗らないの?」
「の、乗ります!」
ビリーは慌てた様子で馬車に乗り込むと、私も続いて乗った。
「では、お屋敷に戻りますね」
爺やは扉を閉めると、馬車はすぐに音を立てて走り始めた。
「え、えっと……」
向かい側に座るビリーがモジモジしながら私に話しかけたそうにしている。
もしかして私の名前を聞きたいのだろうか?
「何? 私はオフィーリアよ」
「あの、オフィーリア様。僕、本当にお屋敷に行っていいんですか?」
「ええ。勿論よ」
「だけど、僕……」
「勘違いしないでね。私はビリーを働かせるために連れて行くのよ」
「え!?」
ビリーが驚いた様に目を見開く。
「ぼ、僕に出来る仕事があるんですか?」
やっぱり、肩身が狭く感じていたのだ。まだこんな子供なのに……。
「ええ、そうよ。仕事は山のようにあるから、覚悟しておくのよ」
「はい! 僕、頑張ります!」
ビリーはすっかり元気になると、今度は物珍しそうに馬車の外の景色を眺めている。
その横顔を見ながら、私は思った。
さて、ビリーにどんな仕事をさせればいいのだろう――と。
****
「ほら、見えてきたわ。あの屋敷がドヌーブ家よ」
屋敷が見えてきたのでビリーに教えてあげると、彼は目を見開いた。
「ええっ!? あ、あんな大きなお屋敷に住んでいるんですか!?」
「ふふん、まぁね」
でも、2日以内にはあの屋敷を出て行くのだけど……とは、言わないでおこう
馬車がドヌーブ家に到着すると、婆やがエントランスまで出迎えてくれた。
「オフィーリア様、お帰りなさいま……え? その子供は誰ですか!?」
婆やは私の後ろに隠れているビリーを指さした。
「あぁ、この子はね、『テミス』の町で拾ってきたのよ」
「そんな……犬や猫じゃあるまいし、拾ってきただなんて! 一体どういうことですか!? この子の親御さんはどうしているのですか?」
すると婆やの言葉を拒絶と捉えたのか、ビリーの顔色が曇る。
「あの……僕、やっぱり……迷惑ですよね……」
「何言ってるの? 迷惑なはず無いでしょう? 言ったわよね? 働いてもらうために連れて来たのだから」
そして私は婆やに向き直った。
「婆や。この子はね、父親を亡くして『テミス』の町で1人で暮らしていたのよ。親はいないのよ」
「え!? そうだったのですか? ……可愛そうに。まだこんな小さな子供なのに」
すると途端に婆やの態度が変わる。心なしか涙目にもなっている。
「婆や。この子はビリーって言うの。お風呂に入れて綺麗にしてあげてくれる? 私はお父様の所へ行ってくるから」
「はい、分かりました。ではビリー、行きましょう」
婆やがビリーを連れて行こうとした時。
「あ、あの! オフィーリア様!」
突然ビリーが私を呼んだ。
「どうかしたの?」
「後で……会えますよね?」
ビリーは縋り付くような視線を向けてくる。
「ええ。勿論よ。また後で会いましょう」
「はい!」
ビリーは笑顔になると、婆やに連れられて遠ざかって行った。
その後姿を見守る私。
「さて、私もお父様の所へ行かなくちゃ」
私は2日以内に、ここを出て行かなければならない。
その前に父に大事なお願いをしなければ――
馬車を見たビリーがオドオドした様子で尋ねてきた。
「ええ、勿論。どうしてそんなこと聞いてくるの?」
「だって僕……こんなに汚れた服だし……」
俯くビリー。
「何言ってるの? 子供がそんな遠慮するものじゃないわ。大体私がビリーを連れて帰ろうと決めたのよ。さ、早く乗りなさい」
馬車の扉を開けると、爺やが驚く。
「ひぃ! オフィーリア様が平民の子供の為に扉を開けるなんて!」
爺やは一々驚き過ぎだ。
私は爺やに構わず、馬車を見上げるビリーに声をかけた。
「あら? どうしたの? 乗らないの?」
「の、乗ります!」
ビリーは慌てた様子で馬車に乗り込むと、私も続いて乗った。
「では、お屋敷に戻りますね」
爺やは扉を閉めると、馬車はすぐに音を立てて走り始めた。
「え、えっと……」
向かい側に座るビリーがモジモジしながら私に話しかけたそうにしている。
もしかして私の名前を聞きたいのだろうか?
「何? 私はオフィーリアよ」
「あの、オフィーリア様。僕、本当にお屋敷に行っていいんですか?」
「ええ。勿論よ」
「だけど、僕……」
「勘違いしないでね。私はビリーを働かせるために連れて行くのよ」
「え!?」
ビリーが驚いた様に目を見開く。
「ぼ、僕に出来る仕事があるんですか?」
やっぱり、肩身が狭く感じていたのだ。まだこんな子供なのに……。
「ええ、そうよ。仕事は山のようにあるから、覚悟しておくのよ」
「はい! 僕、頑張ります!」
ビリーはすっかり元気になると、今度は物珍しそうに馬車の外の景色を眺めている。
その横顔を見ながら、私は思った。
さて、ビリーにどんな仕事をさせればいいのだろう――と。
****
「ほら、見えてきたわ。あの屋敷がドヌーブ家よ」
屋敷が見えてきたのでビリーに教えてあげると、彼は目を見開いた。
「ええっ!? あ、あんな大きなお屋敷に住んでいるんですか!?」
「ふふん、まぁね」
でも、2日以内にはあの屋敷を出て行くのだけど……とは、言わないでおこう
馬車がドヌーブ家に到着すると、婆やがエントランスまで出迎えてくれた。
「オフィーリア様、お帰りなさいま……え? その子供は誰ですか!?」
婆やは私の後ろに隠れているビリーを指さした。
「あぁ、この子はね、『テミス』の町で拾ってきたのよ」
「そんな……犬や猫じゃあるまいし、拾ってきただなんて! 一体どういうことですか!? この子の親御さんはどうしているのですか?」
すると婆やの言葉を拒絶と捉えたのか、ビリーの顔色が曇る。
「あの……僕、やっぱり……迷惑ですよね……」
「何言ってるの? 迷惑なはず無いでしょう? 言ったわよね? 働いてもらうために連れて来たのだから」
そして私は婆やに向き直った。
「婆や。この子はね、父親を亡くして『テミス』の町で1人で暮らしていたのよ。親はいないのよ」
「え!? そうだったのですか? ……可愛そうに。まだこんな小さな子供なのに」
すると途端に婆やの態度が変わる。心なしか涙目にもなっている。
「婆や。この子はビリーって言うの。お風呂に入れて綺麗にしてあげてくれる? 私はお父様の所へ行ってくるから」
「はい、分かりました。ではビリー、行きましょう」
婆やがビリーを連れて行こうとした時。
「あ、あの! オフィーリア様!」
突然ビリーが私を呼んだ。
「どうかしたの?」
「後で……会えますよね?」
ビリーは縋り付くような視線を向けてくる。
「ええ。勿論よ。また後で会いましょう」
「はい!」
ビリーは笑顔になると、婆やに連れられて遠ざかって行った。
その後姿を見守る私。
「さて、私もお父様の所へ行かなくちゃ」
私は2日以内に、ここを出て行かなければならない。
その前に父に大事なお願いをしなければ――
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