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78話 逮捕してください!

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 大学から帰宅したオリビエは異変を感じた。屋敷の前に見たこともない馬車が3台も止められているのだ。

「あら? あの馬車は一体何かしら?」

いやな予感を抱きながら、扉を開けて驚いた。エントランスには大勢の使用人が集まっていたのだ。

「あ! オリビエ様! お帰りなさいませ!」
「お待ちしておりました! オリビエ様!」

使用人達が口々にオリビエに挨拶してきた。

「ただいま。一体、これは何の騒ぎなのかしら?」

すると一番古株のフットマンが手を上げた。

「私から説明させて下さい。実は先程、警察の方達がいらしたのです」

「え!? 警察!? ど、どうして警察が……って駄目だわ、思い当たることが多すぎるわ」

片手で額を抑えてため息をつく。
今は屋敷を追い出されてしまったが、義母のゾフィーは違法賭博にのめりこんでいた。兄のミハエルは裏金を積んで王宮騎士団に裏口入団し、父ランドルフは裏金を貰って、でたらめなコラムを書いていたことで閉店に追いこんだ飲食店もあるのだ。

「それでは、屋敷の前に止められた馬車は警察の馬車ということね? それで警察の人達は何処にいるのかしら?」

「はい、皆さんは旦那様とミハエル様、それにゾフィー様の部屋にいらしています」

「何ですって!? 全員なのね!? もしかしてお父様だけかと思っていたけれど……とにかく、挨拶に行った方が良さそうね」

そのとき。

「いえ、それには及びませんよ」

背後で声が聞こえて、オリビエは振り返った。すると10人以上の警察官が、紙袋やら箱を手に立っ警察官が

「失礼、あなたはこちらの御令嬢でいらっしゃいますか?」

先頭に立ち、口ひげを生やした警察官がオリビエに尋ねてきた。

「はい、私はこの屋敷に住むオリビエ・フォードです」

「留守中にお邪魔してしまい、大変申し訳ありません。実はフォード家の人々に買収と賭博の容疑がそれぞれかけられまして、証拠物を押収させていただきました」

「そうでしたか。ご苦労様です」

ペコリと頭を下げると、警察官は不思議そうにオリビエを見つめる。

「あの、何か?」

「いえ、随分冷静だと思いまして。驚かれないのですかな?」

「ええ、勿論驚いています。それで証拠が見つかればどうなりますか?」

「勿論賭博も買収も犯罪ですからね。逮捕されるのは時間の問題でしょう。既にランドルフ氏は連行されていきましたから」

その言葉に、オリビエはニコリと笑う。

「本当ですか? 連行されたということは、既に警察に連れていかれたと言う事なのですね? 兄も義母もいずれは連行されるのですよね?」

「そうですね、証拠が全て揃えばですけど」

「本当ですか!? もし証拠不十分であると言うなら、私がいつでも協力させて頂きますから、いつでも仰って下さい!」

目を輝かせて、身を乗り出すオリビエ。

「ええっ!? こ、これはまた随分積極的ですね……良いのですか? 仮にもあなたのご家族ですよね?」

「はい、そうです。ですが、家族だからこそ罪を認め、悔い改めて更生の道を歩んで欲しいのです」

まさか私的怨恨があるから協力するとは言えない、目を潤ませて演技をする。

「なるほど、確かにあなたのおっしゃる通りかもしれませんな。その考え、心打たれました! 早急に彼らを逮捕することをお約束いたしましょう!」

「はい、ありがとうございます」


こうして、警察官たちはフォード家から大量の証拠物を押収していった。


それからほどなくして、ゾフィーとミハエルが逮捕された知らせがオリビエの元に届いたのだった――


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