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60話 撃退

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「アデリーナ様!? どうしてここに!?」

するとアデリーナが振り返った。

「今日は1日オリビエさんに会えなかったから、ここに来ればきっと会えると思っていたのよ」

「私を捜してくれていたのですか? ありがとうございます!」

感動のあまり、オリビエの目が潤む。

「一体何の真似だ! 俺は今オリビエと話の真っ最中だったんだ! 部外者は黙ってろよ!」

あろうことかギスランは、年上でしかも侯爵令嬢のアデリーナにとんでもない口をたたいた。

「ギスランッ! アデリーナ様に何て口の利き方をするのよ!」

「うるさいっ! オリビエのくせに黙ってろ!」

「いいのよ、オリビエさん。私は気にしていないから」

アデリーナは言い合いするオリビエを優しく制すると、次にギスランを睨みつけた。

「生憎、部外者じゃないわ。彼女は私の大切な親友なのよ。彼女に乱暴な真似をするのは、この私が許さないわ」

「何だって……? 女のくせに生意気だな。だったらお前から痛い目に遭わせてやるよ!」

ギスランはアデリーナにつかみかかろうとして、逆に悲鳴を上げた。

「ギャアッ! い、いってー!」

アデリーナはギスランの腕を素早くかいくぐると、右腕を背中にねじり上げていたのだ。

「畜生っ! 離せよ! くそっ! こ、こんなの振り解いて…‥イタタタタッ!! 痛い! 頼む、やめくれっ!」

ギスランはアデリーナの腕を振り解こうとするも、増々ねじり上げられる。余程痛いのか、その目には涙すら浮かべている。

「離して欲しければ、金輪際オリビエさんには近づかないと誓いなさい」

更にギスランの腕をねじ上げるアデリーナ。

「ひぃ! わ、分かった! 分かりましたっ! お願いです! は、離して下さい……!」

ヒィヒィ叫ぶギスランの腕をねじり上げながら、アデリーナはオリビエに尋ねた。

「オリビエさん、どうする? こんなことを言ってるけど」

「はい、離してあげてください。これ以上耳障りな悲鳴を聞きたくも無いので」

「それもそうね?」

アデリーナはニコリと笑みを浮かべて手を離すと、ギスランは無様に地面に膝をついた。

「ギスランと言ったかしら? オリビエに感謝する事ね。約束通り、二度と彼女にまとわりつかないことね。さもなくば……」

ジリッとアデリーナがにじり寄る。

「ヒッ! はい、勿論です!! 誓います! 二度と近寄らないと誓います!」

ギスランは立ち上がると、脱兎の如く逃げだして行った。

「全く、口ほどにも無い男ね」

アデリーナはため息をつくとオリビエを見つめた。

「オリビエさん、怪我はなかった?」

「はい、全くありません。アデリーナ様のお陰で助かりました。でも本当にお強いのですね。ますます素敵です」

「フフ、ありがとう。剣術や護身術は貴族の嗜みとして鍛えてきたのよ」

「さすがですね。あ、ところでアデリーナ様。今夜お暇ですか? もし何も予定が無ければ、一緒にお食事に行きませんか? 実はお勧めのお店があって、是非一度アデリーナ様にも召し上がって頂きたいのです」

するとアデリーナはニコリと笑みを浮かべた。

「それは素敵なお誘いね。ええ、是非オリビエさんと一緒に行きたいわ」

「本当ですか!? ありがとうございます! それで場所ですが……」

その後……。
2人は時間と待ち合わせ場所を決めると、それぞれの帰路へと着いた——
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