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52話 婚約破棄宣言 2
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「え!? 婚約破棄だって!? まさかあのギスランとか!?」
マックスは余程驚いたのか、追いかけてきた。
「ええ、あのギスランよ。彼以外に他にギスランはいないわ」
「成程。オリビエもアデリーナ令嬢に触発されて、婚約破棄することを決意したのか」
マックスはどこか嬉しそうに笑顔になる。
「マックス……随分、嬉しそうね?」
「それはそうさ。オリビエは知らないだろうけど、あいつは良くクラスの連中に話していたんだぜ? 俺の婚約者は可愛げが無いが、妹はとても愛らしいって。彼女が婚約者だったらどんなにか良かったのになって……え? 何故そこで笑うんだ? 普通は怒るところだろう?」
オリビエが口元に笑みをうかべている様子にマックスは戸惑う。
「それはおかしいに決まっているわよ。私はギスランと婚約破棄したい、そして彼はそれを望んでいる。もっとおかしいのは妹が本当は彼を嫌っているのだから」
「何だって!? それは楽し……いや、大変な話だな。だけど妙だな……何故君の妹
は、ギスランのことが大嫌いなのに、愛嬌を振りまいていたんだ?」
「そんなのは簡単なことよ。私と妹は血の繋がりは無いの。そして義母は私を嫌っている。つまり私に嫌がらせする為に、わざとギスランに近付いたってわけよ」
「うわ、何だよそれ。随分な話だな」
マックスが眉をひそめる。
「でもそのお陰で、私はギスランと婚約破棄しやすくなったわ。それに面白いことになりそうじゃない? ギスランは妹に好かれていると思っていたのに、実際は嫌われていることをまだ知らないのよ? きっとそろそろ家で騒ぎが起きる頃だと思うの。どさくさに紛れて婚約破棄してやるわ。勿論妹との不貞の罪でね」
「そうか……それは楽しみだな。あいつに婚約破棄を突き付けてやれ!」
「ええ。任せて頂戴! それじゃ、私急ぐから!」
オリビエは元気良く手を振ると、馬繋場へ向かって駆けて行った。
「頑張れよ、オリビエ」
マックスは小さくなっていくオリビエの背中に告げた——
****
「遅くなってごめんなさい!」
馬繋場へ行くと、御者のテッドが待っていた。
「いいえ、そんなこと気にしないで下さい。仕事ですから」
「そう? ならここで御者として、貴方の腕前をみせてくれるかしら?」
「え? 何のことでしょう?」
首を傾げるテッド。
「事故に気を付けて、スピードを出してなるべく早く屋敷に連れ帰って頂戴」
「……へ?」
少しの間、テッドはポカンとした顔をしていたが……。
「分かりました、オリビエ様。御者歴8年、もうすぐベテランの域に達する俺の御者としての腕前をお見せしましょう。ではすぐにお乗りください!」
テッドは馬車の扉を開け、オリビエが素早く乗り込む。
「ではオリビエ様、出発致します。舌を噛まないように気を付けてくださいね?」
「ええ、お願いするわ」
オリビエが頷くとテッドは不敵に笑い、扉を閉めた。
そして素早く御者台に乗り込むと、手綱を握りしめた。
「はいよーっ!!」
テッドは雄たけびを上げると、ものすごい速さで馬車を走らせ始めた。それは他の御者たちが驚くほどの速さだった。
「どけどけどけーぃっ!! オリビエ様のお通りだっ!! ヒャッホー!!」
奇声を発しながらテッドは馬車を走らせ、尚且つ少々危険な近道を走りぬけ……ギスランよりも早く屋敷に到着することが出来たのだった――
マックスは余程驚いたのか、追いかけてきた。
「ええ、あのギスランよ。彼以外に他にギスランはいないわ」
「成程。オリビエもアデリーナ令嬢に触発されて、婚約破棄することを決意したのか」
マックスはどこか嬉しそうに笑顔になる。
「マックス……随分、嬉しそうね?」
「それはそうさ。オリビエは知らないだろうけど、あいつは良くクラスの連中に話していたんだぜ? 俺の婚約者は可愛げが無いが、妹はとても愛らしいって。彼女が婚約者だったらどんなにか良かったのになって……え? 何故そこで笑うんだ? 普通は怒るところだろう?」
オリビエが口元に笑みをうかべている様子にマックスは戸惑う。
「それはおかしいに決まっているわよ。私はギスランと婚約破棄したい、そして彼はそれを望んでいる。もっとおかしいのは妹が本当は彼を嫌っているのだから」
「何だって!? それは楽し……いや、大変な話だな。だけど妙だな……何故君の妹
は、ギスランのことが大嫌いなのに、愛嬌を振りまいていたんだ?」
「そんなのは簡単なことよ。私と妹は血の繋がりは無いの。そして義母は私を嫌っている。つまり私に嫌がらせする為に、わざとギスランに近付いたってわけよ」
「うわ、何だよそれ。随分な話だな」
マックスが眉をひそめる。
「でもそのお陰で、私はギスランと婚約破棄しやすくなったわ。それに面白いことになりそうじゃない? ギスランは妹に好かれていると思っていたのに、実際は嫌われていることをまだ知らないのよ? きっとそろそろ家で騒ぎが起きる頃だと思うの。どさくさに紛れて婚約破棄してやるわ。勿論妹との不貞の罪でね」
「そうか……それは楽しみだな。あいつに婚約破棄を突き付けてやれ!」
「ええ。任せて頂戴! それじゃ、私急ぐから!」
オリビエは元気良く手を振ると、馬繋場へ向かって駆けて行った。
「頑張れよ、オリビエ」
マックスは小さくなっていくオリビエの背中に告げた——
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「遅くなってごめんなさい!」
馬繋場へ行くと、御者のテッドが待っていた。
「いいえ、そんなこと気にしないで下さい。仕事ですから」
「そう? ならここで御者として、貴方の腕前をみせてくれるかしら?」
「え? 何のことでしょう?」
首を傾げるテッド。
「事故に気を付けて、スピードを出してなるべく早く屋敷に連れ帰って頂戴」
「……へ?」
少しの間、テッドはポカンとした顔をしていたが……。
「分かりました、オリビエ様。御者歴8年、もうすぐベテランの域に達する俺の御者としての腕前をお見せしましょう。ではすぐにお乗りください!」
テッドは馬車の扉を開け、オリビエが素早く乗り込む。
「ではオリビエ様、出発致します。舌を噛まないように気を付けてくださいね?」
「ええ、お願いするわ」
オリビエが頷くとテッドは不敵に笑い、扉を閉めた。
そして素早く御者台に乗り込むと、手綱を握りしめた。
「はいよーっ!!」
テッドは雄たけびを上げると、ものすごい速さで馬車を走らせ始めた。それは他の御者たちが驚くほどの速さだった。
「どけどけどけーぃっ!! オリビエ様のお通りだっ!! ヒャッホー!!」
奇声を発しながらテッドは馬車を走らせ、尚且つ少々危険な近道を走りぬけ……ギスランよりも早く屋敷に到着することが出来たのだった――
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