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48話 悪女の返上
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「う、うるさい! それはこちらの台詞だ! アデリーナッ! お前こそ逃げたりしたら承知しないからな! 大体そこのお前たち、何見てんだよ! 俺は見世物じゃないんだ! あっちへ行けよ! 一体俺を誰だと思っているんだ!」
ディートリッヒは上着を脱ぐと、周りで見ていた学生たちに向かって振り回し始めたのだ。
「うわ! ついにおかしくなったぞ!」
「八つ当たりし始めた!」
「早く行きましょう!」
学生たちは蜘蛛の子を散らすように逃げていき、再びディートリッヒはアデリーナを睨みつけてきた。
「くそっ! お前のせいで俺の評判がガタ落ちだ! 絶対にお前を倒してやる!」
吐き捨てるように言うとディートリッヒは逃げるように走り出した。
「え!? 待ってください! 置いていかないで! ディートリッヒ様!」
サンドラも慌てて後を追いかけ、その場に残されたのはオリビエとアデリーナの2人だけとなる。
そこでようやく、オリビエは背を向けているアデリーナに駆け寄った。
「アデリーナ様っ!」
「え? まぁ! オリビエさん! いつからそこにいたの?」
アデリーナは驚きで目を見開く。
「アデリーナ様がディートリッヒ様に決闘を申し込んだあたりからです」
「そうだったのね? 何だか恥ずかしいところを見られてしまったわね」
頬を赤らめるアデリーナにオリビエは首を振る。
「いいえ! そんなことはありません! むしろ、とても格好良かったです、最高に素敵でした!」
「フフ、ありがとう。オリビエさんにそんな風に言って貰えると嬉しいわ」
「ですが決闘なんて……しかも剣術での決闘ですよ? 相手はディートリッヒ様ですよ? 周りの人たちの話ではディートリッヒ様の剣術の腕前は中々だと評判でした。そんな方を相手になんて……。今日決闘をするなら、剣術の特訓だって出来ませんよ?」
オリビエの目からは、とてもではないがアデリーナが剣で戦えるとは思えなかったのだ。
「オリビエさん、私のことをそんなに心配してくれるのね? でも大丈夫よ。勝てない勝負をするつもりも無いから。私を信じてくれるかしら?」
「……分かりました。 私、アデリーナ様のことを信じます! 絶対にあんな男に負けないで下さいね!」
「あんな男……ね。フフフ、オリビエさんも言うようになったじゃない?」
「はい、私が変われたのはアデリーナ様のお陰ですから」
「そう言って貰えると嬉しいわ。そうだわ、オリビエさん。お昼はもう頂いたのかしら?」
「いえ、まだです」
「まだなら一緒に食事に行かない? 決闘の為に力をつけておかないとね」
「はい、是非ご一緒させて下さい」
オリビエはニコリと笑みを浮かべた——
****
—―13時
アデリーナとの食事を終えたオリビエは上機嫌で教室へ向かいながら、先程の出来事を思い出していた。
2人で学生食堂に入った途端、大勢の学生たちに取り囲まれたのだ。アデリーナが婚約者であるディートリッヒに決闘を申し込んだことは既に至るところで広がっており、全員がアデリーナを断固として応援すると声援を送ってくれた。
もはやアデリーナを悪女と呼ぶ者は誰もいなくなっていたのだ。
「フフフ……今日の食事は本当に楽しかったわ」
思わず笑った時。
「随分上機嫌だな」
すぐ傍で声をかけられ、慌てて振り返ると自分を見おろしているマックスの姿があった。
「やだ! 誰かと思ったらマックスじゃない。びっくりしたわ」
「そうか? 驚かして悪かった。だが、今日はもっと驚くことがあったんじゃないのか?」
「あ……もしかして、昼休みのこと?」
「あぁ、その通り。それにしても驚いたな。まさか侯爵令嬢が婚約者に決闘を申し込むとは思わなかった」
「私もびっくりよ」
「当然オリビエは応援に行くんだろう?」
「当たり前でしょう。アデリーナ様の勝利の瞬間をこの目で見届けるんだから」
「それは楽しみだ。あ、そうだ。もしアデリーナ令嬢が決闘に勝ったら、2人でお祝いに店に食事に来ないか? ご馳走するよ」
「本当? なら尋ねてみるわ」
するとマックスは笑顔になった。
「あぁ。是非頼む。2人が来てくれるだけで店の宣伝になりそうだからな。俺もアデリーナ令嬢の決闘を見届けに行くよ。オリビエも行くだろう?」
「当然よ。アデリーナ様の勝利をこの目で見守るのだから」
「ハハッ確かにそうだな。それじゃ俺はもう行くよ」
マックスは手を振ると、走り去って行った。
「さて、私も急がなくちゃ」
—―その後。
教室に戻ったオリビエを待ち受けていたのは、クラスメイト達の質問責めだった。
勿論アデリーナの決闘に対する質問だったのは……言うまでもない——
ディートリッヒは上着を脱ぐと、周りで見ていた学生たちに向かって振り回し始めたのだ。
「うわ! ついにおかしくなったぞ!」
「八つ当たりし始めた!」
「早く行きましょう!」
学生たちは蜘蛛の子を散らすように逃げていき、再びディートリッヒはアデリーナを睨みつけてきた。
「くそっ! お前のせいで俺の評判がガタ落ちだ! 絶対にお前を倒してやる!」
吐き捨てるように言うとディートリッヒは逃げるように走り出した。
「え!? 待ってください! 置いていかないで! ディートリッヒ様!」
サンドラも慌てて後を追いかけ、その場に残されたのはオリビエとアデリーナの2人だけとなる。
そこでようやく、オリビエは背を向けているアデリーナに駆け寄った。
「アデリーナ様っ!」
「え? まぁ! オリビエさん! いつからそこにいたの?」
アデリーナは驚きで目を見開く。
「アデリーナ様がディートリッヒ様に決闘を申し込んだあたりからです」
「そうだったのね? 何だか恥ずかしいところを見られてしまったわね」
頬を赤らめるアデリーナにオリビエは首を振る。
「いいえ! そんなことはありません! むしろ、とても格好良かったです、最高に素敵でした!」
「フフ、ありがとう。オリビエさんにそんな風に言って貰えると嬉しいわ」
「ですが決闘なんて……しかも剣術での決闘ですよ? 相手はディートリッヒ様ですよ? 周りの人たちの話ではディートリッヒ様の剣術の腕前は中々だと評判でした。そんな方を相手になんて……。今日決闘をするなら、剣術の特訓だって出来ませんよ?」
オリビエの目からは、とてもではないがアデリーナが剣で戦えるとは思えなかったのだ。
「オリビエさん、私のことをそんなに心配してくれるのね? でも大丈夫よ。勝てない勝負をするつもりも無いから。私を信じてくれるかしら?」
「……分かりました。 私、アデリーナ様のことを信じます! 絶対にあんな男に負けないで下さいね!」
「あんな男……ね。フフフ、オリビエさんも言うようになったじゃない?」
「はい、私が変われたのはアデリーナ様のお陰ですから」
「そう言って貰えると嬉しいわ。そうだわ、オリビエさん。お昼はもう頂いたのかしら?」
「いえ、まだです」
「まだなら一緒に食事に行かない? 決闘の為に力をつけておかないとね」
「はい、是非ご一緒させて下さい」
オリビエはニコリと笑みを浮かべた——
****
—―13時
アデリーナとの食事を終えたオリビエは上機嫌で教室へ向かいながら、先程の出来事を思い出していた。
2人で学生食堂に入った途端、大勢の学生たちに取り囲まれたのだ。アデリーナが婚約者であるディートリッヒに決闘を申し込んだことは既に至るところで広がっており、全員がアデリーナを断固として応援すると声援を送ってくれた。
もはやアデリーナを悪女と呼ぶ者は誰もいなくなっていたのだ。
「フフフ……今日の食事は本当に楽しかったわ」
思わず笑った時。
「随分上機嫌だな」
すぐ傍で声をかけられ、慌てて振り返ると自分を見おろしているマックスの姿があった。
「やだ! 誰かと思ったらマックスじゃない。びっくりしたわ」
「そうか? 驚かして悪かった。だが、今日はもっと驚くことがあったんじゃないのか?」
「あ……もしかして、昼休みのこと?」
「あぁ、その通り。それにしても驚いたな。まさか侯爵令嬢が婚約者に決闘を申し込むとは思わなかった」
「私もびっくりよ」
「当然オリビエは応援に行くんだろう?」
「当たり前でしょう。アデリーナ様の勝利の瞬間をこの目で見届けるんだから」
「それは楽しみだ。あ、そうだ。もしアデリーナ令嬢が決闘に勝ったら、2人でお祝いに店に食事に来ないか? ご馳走するよ」
「本当? なら尋ねてみるわ」
するとマックスは笑顔になった。
「あぁ。是非頼む。2人が来てくれるだけで店の宣伝になりそうだからな。俺もアデリーナ令嬢の決闘を見届けに行くよ。オリビエも行くだろう?」
「当然よ。アデリーナ様の勝利をこの目で見守るのだから」
「ハハッ確かにそうだな。それじゃ俺はもう行くよ」
マックスは手を振ると、走り去って行った。
「さて、私も急がなくちゃ」
—―その後。
教室に戻ったオリビエを待ち受けていたのは、クラスメイト達の質問責めだった。
勿論アデリーナの決闘に対する質問だったのは……言うまでもない——
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