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47話 決闘方法とクズな男
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「ほう~俺が決闘内容を決めて良いというのか? 随分と余裕があるじゃないか?」
ディートリッヒの挑戦的な言葉に、アデリーナはフッと笑う。
「一応貴方はまだ私の婚約者ですからね。せめてもの恩情です。さ、どれになさいますか? 馬術、剣術? それとも学力試験で競い合いましょうか? カードで勝負するのも良いかもしれませんね?」
「な、なんて生意気な女だ……いいだろう、なら俺から決闘方法を選ばせてもらおう」
「ええ、どうぞ」
「そうだな、なら……」
ディートリッヒは偉そうな態度を取ってはいるが、心中は全く余裕が無かった。彼は心底、今のアデリーナに怯えていたのだった。
(一体、アデリーナの堂々とした態度は何だっていうんだ? いや、違うな。この女は昔からふてぶてしい態度を取り続けていた。いつも何処か俺を見下したような態度を取って全く可愛げが無い生意気な女だった。だから俺は外見は可愛くて、頭が空っぽそうなサンドラにちょっと声をかけただけなのに……)
自分の腕にしがみつき、すがるような目を向けてくるサンドラをうんざりした気分で
チラリと見る。
本当は、とっくにサンドラに飽きてしまって今すぐ縁を切りたい位なのに、世間では恋人同士と認識されているのでそれすら出来ない。
「ディートリッヒ様、私どんな勝負でも貴方が勝てるって信じてますから」
猫なで声を出すサンドラに、ディートリッヒは心の中で舌打ちする。
(チッ! 人の気も知らないで、いい気なもんだ。サンドラがこんなに馬鹿だとは思わなかった。自分の立場もわきまえず、いい気になりやがって。周囲に俺と恋人同士になったと言いふらし、いつでもどこでも付きまとってくるから、切りたくても切れやしない。元はといえばサンドラのせいで俺がこんな目に遭っているっていうのに)
呆れたことに、ディートリッヒは自分の浮気を全てアデリーナとサンドラのせいにしていたのだ。
「どうしたのです? ディートリッヒ様。早く決闘方法を決めて下さりませんか? これ以上無駄な時間を費やしたくはありませんので、もし決められないのなら私が決めてしまいますよ?」
アデリーナの催促に増々焦りが募る。
「う、うるさい! 何が無駄な時間だ! こっちはなぁ、どんな決闘なら少しでもお前が有利に戦えるかって、さっきからずっと考えているんだよ!」
「あら、そうですか? それはお気遣いありがとうございます。ですが、そんな配慮は一切必要ありませんよ? どんな決闘でも、私は貴方に勝てる自信がありますから!」
ビシッとディートリッヒを指さし、当然ディートリッヒは切れた。
「な、何だと! よぉしっ! ならいいだろう! 勝負は剣術だ! 相手の剣を叩き落として降参させた方が勝ちだ! いいなっ!」
その言葉に周囲が騒めく。
「え? 嘘だろう?」
「剣術なんて……女性相手に」
「確かディートリッヒ様は剣術が得意だったよな?」
「なんと卑怯な……」
当然オリビエの胸に不安がよぎる。
(そんな……! よりにもよって剣術で勝負なんて……! いくらなんでもディートリッヒ様は酷すぎるわ!)
けれど当のアデリーナは余裕の態度だ。
「いいでしょう。ディートリッヒ様、それでは決闘内容は剣術。今日の16時、場所はここで行います! 逃げたりしたら許しませんよ!? 決闘の証人はこちらにいる皆さまです!」
アデリーナの凛とした声が響き渡った。
「何っ!? いきなり今日か!?」
驚愕するディートリッヒ。
その直後……周囲にいた学生たちから歓声が沸き上がったのは言うまでもない——
ディートリッヒの挑戦的な言葉に、アデリーナはフッと笑う。
「一応貴方はまだ私の婚約者ですからね。せめてもの恩情です。さ、どれになさいますか? 馬術、剣術? それとも学力試験で競い合いましょうか? カードで勝負するのも良いかもしれませんね?」
「な、なんて生意気な女だ……いいだろう、なら俺から決闘方法を選ばせてもらおう」
「ええ、どうぞ」
「そうだな、なら……」
ディートリッヒは偉そうな態度を取ってはいるが、心中は全く余裕が無かった。彼は心底、今のアデリーナに怯えていたのだった。
(一体、アデリーナの堂々とした態度は何だっていうんだ? いや、違うな。この女は昔からふてぶてしい態度を取り続けていた。いつも何処か俺を見下したような態度を取って全く可愛げが無い生意気な女だった。だから俺は外見は可愛くて、頭が空っぽそうなサンドラにちょっと声をかけただけなのに……)
自分の腕にしがみつき、すがるような目を向けてくるサンドラをうんざりした気分で
チラリと見る。
本当は、とっくにサンドラに飽きてしまって今すぐ縁を切りたい位なのに、世間では恋人同士と認識されているのでそれすら出来ない。
「ディートリッヒ様、私どんな勝負でも貴方が勝てるって信じてますから」
猫なで声を出すサンドラに、ディートリッヒは心の中で舌打ちする。
(チッ! 人の気も知らないで、いい気なもんだ。サンドラがこんなに馬鹿だとは思わなかった。自分の立場もわきまえず、いい気になりやがって。周囲に俺と恋人同士になったと言いふらし、いつでもどこでも付きまとってくるから、切りたくても切れやしない。元はといえばサンドラのせいで俺がこんな目に遭っているっていうのに)
呆れたことに、ディートリッヒは自分の浮気を全てアデリーナとサンドラのせいにしていたのだ。
「どうしたのです? ディートリッヒ様。早く決闘方法を決めて下さりませんか? これ以上無駄な時間を費やしたくはありませんので、もし決められないのなら私が決めてしまいますよ?」
アデリーナの催促に増々焦りが募る。
「う、うるさい! 何が無駄な時間だ! こっちはなぁ、どんな決闘なら少しでもお前が有利に戦えるかって、さっきからずっと考えているんだよ!」
「あら、そうですか? それはお気遣いありがとうございます。ですが、そんな配慮は一切必要ありませんよ? どんな決闘でも、私は貴方に勝てる自信がありますから!」
ビシッとディートリッヒを指さし、当然ディートリッヒは切れた。
「な、何だと! よぉしっ! ならいいだろう! 勝負は剣術だ! 相手の剣を叩き落として降参させた方が勝ちだ! いいなっ!」
その言葉に周囲が騒めく。
「え? 嘘だろう?」
「剣術なんて……女性相手に」
「確かディートリッヒ様は剣術が得意だったよな?」
「なんと卑怯な……」
当然オリビエの胸に不安がよぎる。
(そんな……! よりにもよって剣術で勝負なんて……! いくらなんでもディートリッヒ様は酷すぎるわ!)
けれど当のアデリーナは余裕の態度だ。
「いいでしょう。ディートリッヒ様、それでは決闘内容は剣術。今日の16時、場所はここで行います! 逃げたりしたら許しませんよ!? 決闘の証人はこちらにいる皆さまです!」
アデリーナの凛とした声が響き渡った。
「何っ!? いきなり今日か!?」
驚愕するディートリッヒ。
その直後……周囲にいた学生たちから歓声が沸き上がったのは言うまでもない——
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