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42話 出て行って下さい
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「分かりました。お父様とどのような話をしたのか、お話いたします」
「そうよ! 早く言いなさい!」
ゾフィーは身を乗り出してきた。
「ですが、その前に条件があります。その条件を飲んでくれない限り、お話することは出来ません」
「どんな条件よ? お金でも欲しいのかしら? いくら欲しいのよ」
「お金? そんなものは別にいりません。条件は一つだけです。私の話が終わったら、一切の質問もせずに即刻この部屋を出て行って下さい。いいですか?」
「分かったわよ。それじゃ、どんな話をしていたのか言いなさい!」
膝を組み、腕を組む。何処までも高飛車な態度のゾフィー。
「お父様は、言ってましたよ。もう我が家は家庭崩壊だ、あんな家族と一緒の食事は楽しめないからごめんだと。これからは私と2人で食事をしようと提案してきたのです」
(もっとも、そんな提案私はお断りだけどね)
その話に、見る見るうちにゾフィーの顔が険しくなっていく。
「な、な、何ですって……? ランドルフがそんなことを……? ちょっと! それは一体どういう……!」
「そこまでです!」
オリビエはゾフィーの前に右手をかざし、大きな声をあげた。その声に驚き、ゾフィーの肩が跳ねあがる。
「ちょ! ちょっと! そんな大きな声を上げないでちょうだい! 驚くでしょう!?」
「そこまでです。先ほどの私との約束をもうお忘れなのですか? 話を聞いた後は一切の質問もせずに即刻この部屋を出て行くと言う約束を交わしましたよね?」
「う……お、覚えているわよ!」
「だったら、今すぐ出て行って下さい。何か言いたいことがあるなら私にではなく、父に言っていただけますか?」
「な、何ていやな娘なの!? ランドルフに聞けないから、お前の所に来たっていうのに……!」
「頼んでもいないのに、勝手にこの部屋に来たのはどちら様でしょうか? とにかく、約束は守って頂きます。今すぐに出て行って下さい」
オリビエはゾフィーを見据えたまま、部屋の扉を指さした。
「くっ! オリビエのくせに生意気な……! ええ分かりましとも! 出て行くわよ! 出て行けば良いのでしょう!? 全く……ちょっとランドルフに贔屓にされたからって、いい気になって!」
椅子に座った時と同様に、ガタンと大きな音を立ててゾフィーは立ち上がった。
「……お邪魔したわね!」
「ええ、そうですね」
睨みつけるように見下ろすゾフィーの視線にひるむことなく堂々と受けるオリビエに、徐々にゾフィーは恐れのような、何とも形容しがたい気持ちを抱き始めていた。
(一体何だって言うのよ? ついこの間までは人の顔色をビクビク疑うような娘だったのに……少し気味が悪いわ。やはりここは出て行った方が良さそうね)
「フンッ!」
ゾフィーはわざと強がった態度で部屋を出ていった。
—―バタンッ!
乱暴に扉が閉じられると、オリビエは肩をすくめる。
「全く煩い人ね……。でもこれでようやく一人の時間を楽しめるわ」
ワインを手に、笑みを浮かべるオリビエ。
もう彼女は家の者に屈しない。憧れのアデリーナのように強い女性を目指すのだと決めたのだから——
「そうよ! 早く言いなさい!」
ゾフィーは身を乗り出してきた。
「ですが、その前に条件があります。その条件を飲んでくれない限り、お話することは出来ません」
「どんな条件よ? お金でも欲しいのかしら? いくら欲しいのよ」
「お金? そんなものは別にいりません。条件は一つだけです。私の話が終わったら、一切の質問もせずに即刻この部屋を出て行って下さい。いいですか?」
「分かったわよ。それじゃ、どんな話をしていたのか言いなさい!」
膝を組み、腕を組む。何処までも高飛車な態度のゾフィー。
「お父様は、言ってましたよ。もう我が家は家庭崩壊だ、あんな家族と一緒の食事は楽しめないからごめんだと。これからは私と2人で食事をしようと提案してきたのです」
(もっとも、そんな提案私はお断りだけどね)
その話に、見る見るうちにゾフィーの顔が険しくなっていく。
「な、な、何ですって……? ランドルフがそんなことを……? ちょっと! それは一体どういう……!」
「そこまでです!」
オリビエはゾフィーの前に右手をかざし、大きな声をあげた。その声に驚き、ゾフィーの肩が跳ねあがる。
「ちょ! ちょっと! そんな大きな声を上げないでちょうだい! 驚くでしょう!?」
「そこまでです。先ほどの私との約束をもうお忘れなのですか? 話を聞いた後は一切の質問もせずに即刻この部屋を出て行くと言う約束を交わしましたよね?」
「う……お、覚えているわよ!」
「だったら、今すぐ出て行って下さい。何か言いたいことがあるなら私にではなく、父に言っていただけますか?」
「な、何ていやな娘なの!? ランドルフに聞けないから、お前の所に来たっていうのに……!」
「頼んでもいないのに、勝手にこの部屋に来たのはどちら様でしょうか? とにかく、約束は守って頂きます。今すぐに出て行って下さい」
オリビエはゾフィーを見据えたまま、部屋の扉を指さした。
「くっ! オリビエのくせに生意気な……! ええ分かりましとも! 出て行くわよ! 出て行けば良いのでしょう!? 全く……ちょっとランドルフに贔屓にされたからって、いい気になって!」
椅子に座った時と同様に、ガタンと大きな音を立ててゾフィーは立ち上がった。
「……お邪魔したわね!」
「ええ、そうですね」
睨みつけるように見下ろすゾフィーの視線にひるむことなく堂々と受けるオリビエに、徐々にゾフィーは恐れのような、何とも形容しがたい気持ちを抱き始めていた。
(一体何だって言うのよ? ついこの間までは人の顔色をビクビク疑うような娘だったのに……少し気味が悪いわ。やはりここは出て行った方が良さそうね)
「フンッ!」
ゾフィーはわざと強がった態度で部屋を出ていった。
—―バタンッ!
乱暴に扉が閉じられると、オリビエは肩をすくめる。
「全く煩い人ね……。でもこれでようやく一人の時間を楽しめるわ」
ワインを手に、笑みを浮かべるオリビエ。
もう彼女は家の者に屈しない。憧れのアデリーナのように強い女性を目指すのだと決めたのだから——
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