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24話 綻びる家族 2
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「え!? ち、父上!? いつの間にこちらにいらしたのですか? てっきりまだ寝室にいたのだとばかり思っていましたが?」
「そんな話はどうでもいい! ミハエル! シャロンの言ったことは本当か!? お前は、賄賂を払って騎士団試験に合格させてもらったのか!?」
父、ランドルフはズカズカとミハエルに近付くと眼前で足を止めた。
「どうなのだ! 答えろ!」
「そ、それは……」
冷や汗を流すミハエルの側で、シャロンが大きな声で頷く。
「はい! そうです、お父様! お兄様は先月、屋敷を訪ねてきたフードをかぶった男性にお金を渡していました。私はたまたま近くでその様子を見ていたのでよーく分かっています。『ここに金貨100枚入っている。必ず俺を騎士団試験に合格させてくれ』と、はっきりおっしゃってました!」
「何! 金貨100枚だと!?」
「まぁ! 金貨100枚!?」
ランドルフとオリビエが同時に驚く。何しろ、金貨100枚と言えば大金だ。領地の税収1年分にあたる。
「シャロンッ! こ、このバカ!」
ミハエルは真っ青になって怒鳴りつけ、シャロンも負けじと言い返す。
「バカはどっちよ! 才能も無い癖に騎士団試験を受けようとするからでしょう!」
一方、高みの見物をしているのはオリビエだった。本当はシャロンとミハエルの口喧嘩が始まった段階で、退散しようとしたのだが父親の登場で話は変った。
(これは何だか面白いことになってきたわね)
ワクワクしながら様子を見守るオリビエの前で、今度はランドルフの怒りが爆発する。
「ミハエル! その金は一体何処から工面した! いくらお前でも、それほどの貯金があるとは思えぬぞ! もしや……金庫の金に手を出したか!?」
「た、確かに少し拝借しましたが……いいではありませんか! その賄賂のお陰で俺は、あの競争率の高い騎士団に入団出来たのですよ!? あそこはとても給料が高いです! すぐに元を取り戻せますよ!」
「何だと! 我が家の金庫の金に手を付け、尚且つ卑怯な手を使って騎士団に入団したくせに、開き直るな! このクズ息子め! こんなことなら、オリビエの方がお前よりもまだずっとずっとマシだ!!」
(あら、お父様がついに私のことを認めたのかしら?)
けれど、今更父親に認められてもオリビエの心には何も響かない。彼女はいつまでも自分を顧みない家族に見切りをつけ、アデリーナを崇拝しているからだ。
「クズ息子ですって!? だったら父上はどうなのですか! 俺は知っているんですよ! 食に関するコラムを書いていることをいいことに、金を積まれてライバル店をこきおろす批判記事を書いたでしょう! その記事のせいで、何件もの店を閉店に追い込んでいますよね! あげくにウェイトレスの愛人がいますよね!? 俺は知っているんですよ!」
ミハエルも父の胸倉を掴みかかった。
「ええ!? その話、本当なのですか、お父様!」
「ああ、そうだ。シャロン、良く聞くがいい。父にはまだ俺とさほど年が変わらないブロンドヘアの愛人がいる。俺は密会している現場を何度も目撃しているからな!」
「ミ、ミハエル! 貴様……私の後をつけていたのか!?」
ランドルフがミハエルをガクガクと揺すぶる。
「ええ、そうですよ! コソコソする方が悪いんだ!」
「酷い! お母様がいるのに、ウェイトレスの愛人がいるのですか!」
シャロンが悲痛な声を上げたその時。
「何ですって!? あなた……愛人がいたの!?」
今度はゾフィーの甲高い声が響き渡った——
「そんな話はどうでもいい! ミハエル! シャロンの言ったことは本当か!? お前は、賄賂を払って騎士団試験に合格させてもらったのか!?」
父、ランドルフはズカズカとミハエルに近付くと眼前で足を止めた。
「どうなのだ! 答えろ!」
「そ、それは……」
冷や汗を流すミハエルの側で、シャロンが大きな声で頷く。
「はい! そうです、お父様! お兄様は先月、屋敷を訪ねてきたフードをかぶった男性にお金を渡していました。私はたまたま近くでその様子を見ていたのでよーく分かっています。『ここに金貨100枚入っている。必ず俺を騎士団試験に合格させてくれ』と、はっきりおっしゃってました!」
「何! 金貨100枚だと!?」
「まぁ! 金貨100枚!?」
ランドルフとオリビエが同時に驚く。何しろ、金貨100枚と言えば大金だ。領地の税収1年分にあたる。
「シャロンッ! こ、このバカ!」
ミハエルは真っ青になって怒鳴りつけ、シャロンも負けじと言い返す。
「バカはどっちよ! 才能も無い癖に騎士団試験を受けようとするからでしょう!」
一方、高みの見物をしているのはオリビエだった。本当はシャロンとミハエルの口喧嘩が始まった段階で、退散しようとしたのだが父親の登場で話は変った。
(これは何だか面白いことになってきたわね)
ワクワクしながら様子を見守るオリビエの前で、今度はランドルフの怒りが爆発する。
「ミハエル! その金は一体何処から工面した! いくらお前でも、それほどの貯金があるとは思えぬぞ! もしや……金庫の金に手を出したか!?」
「た、確かに少し拝借しましたが……いいではありませんか! その賄賂のお陰で俺は、あの競争率の高い騎士団に入団出来たのですよ!? あそこはとても給料が高いです! すぐに元を取り戻せますよ!」
「何だと! 我が家の金庫の金に手を付け、尚且つ卑怯な手を使って騎士団に入団したくせに、開き直るな! このクズ息子め! こんなことなら、オリビエの方がお前よりもまだずっとずっとマシだ!!」
(あら、お父様がついに私のことを認めたのかしら?)
けれど、今更父親に認められてもオリビエの心には何も響かない。彼女はいつまでも自分を顧みない家族に見切りをつけ、アデリーナを崇拝しているからだ。
「クズ息子ですって!? だったら父上はどうなのですか! 俺は知っているんですよ! 食に関するコラムを書いていることをいいことに、金を積まれてライバル店をこきおろす批判記事を書いたでしょう! その記事のせいで、何件もの店を閉店に追い込んでいますよね! あげくにウェイトレスの愛人がいますよね!? 俺は知っているんですよ!」
ミハエルも父の胸倉を掴みかかった。
「ええ!? その話、本当なのですか、お父様!」
「ああ、そうだ。シャロン、良く聞くがいい。父にはまだ俺とさほど年が変わらないブロンドヘアの愛人がいる。俺は密会している現場を何度も目撃しているからな!」
「ミ、ミハエル! 貴様……私の後をつけていたのか!?」
ランドルフがミハエルをガクガクと揺すぶる。
「ええ、そうですよ! コソコソする方が悪いんだ!」
「酷い! お母様がいるのに、ウェイトレスの愛人がいるのですか!」
シャロンが悲痛な声を上げたその時。
「何ですって!? あなた……愛人がいたの!?」
今度はゾフィーの甲高い声が響き渡った——
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