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13話 思っていたのと違う
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「それではトレイシー、行ってくるわね」
自転車にまたがったオリビエが、外まで見送りに出てきたトレイシーに笑顔を向ける。
「はい、お気をつけて行ってらっしゃいませ。必ずオリビエ様に言われた通り、実行いたしますのご安心下さい」
「ありがとう、よろしくね」
オリビエは黄昏の空の下、自転車に乗って町へと向かった。
「お気をつけてー!」
トレイシーは姿が見えなくなるまで手を振り続けた――
****
オリビエが町へ到着した頃には、すっかり夜になっていた。
ガス燈が灯され、オレンジ色に明るく照らされた町並みは、いつも見慣れた光景とは違い、新鮮味を感じられる。
それでもまだ時刻は19時になったばかりなので、多くの老若男女が行き交っている。
「すごい……夜の町って、こんなに賑わっていたのね」
自転車を押しながら、オリビエは目当ての店を探して歩く。
彼女が探している店は、最近学生たちの間で話題になっている店だった。
「女性一人でも気軽に入れる店」を謳い文句に、まだ若い女性オーナーが経営している店だと言う。
『内装もお洒落で、女性向きのメニューが豊富』と、女子学生たちが騒いでいたのを耳にしたことがある。
その時から機会があれば一度、行ってみたいと思っていたのだ。
「確かお店の外観は、レンガ造りの建物に紺色の屋根って言ってたわね。そして店の名前は……」
すると、前方に赤レンガに紺色屋根の建物を発見した。入り口には立て看板もある。
「あれかもしれないわ!」
オリビエは自転車のハンドルを握りしめると、急ぎ足で向かった。
「この店だわ……『ボヌール』。間違いないわ」
店の名前も事前情報で知っていた。窓から店内を覗き込んでみると20人程の客がいいて、全員オリビエと同年代に思えた。
客層が若いと言う事に後押しされたオリビエ。早速店脇に邪魔にならないように自転車を止めると、緊張する面持ちでドアノブを回した。
――カランカラン
ドアベルが鳴り響くと中にいた何人かの客がこちらを振り向き、緊張するオリビエ。けれどすぐに視線が離れたので、ゆっくり店内に足を踏み入れた。
店内にいた客は男女合わせて半々というところだった。けれど、店に1人で来たのはオリビエだけのようだった。
(え? 女性一人でも気軽に入れるお店と聞いていたけど……何だか思っていたのと違うわ)
しかし、今更店を出ることも出来ない。オリビエは覚悟を決めると、壁際に2人掛けのテーブル席を見つけて着席した。
メニュー表が置かれていたので、早速オリビエは手に取って眺めていた時。
「へ~女性の一人客なんて珍しいな」
不意に声をかけられ、驚いて顔を上げる。
すると見知らぬ青年がオリビエを見下ろしていた——
自転車にまたがったオリビエが、外まで見送りに出てきたトレイシーに笑顔を向ける。
「はい、お気をつけて行ってらっしゃいませ。必ずオリビエ様に言われた通り、実行いたしますのご安心下さい」
「ありがとう、よろしくね」
オリビエは黄昏の空の下、自転車に乗って町へと向かった。
「お気をつけてー!」
トレイシーは姿が見えなくなるまで手を振り続けた――
****
オリビエが町へ到着した頃には、すっかり夜になっていた。
ガス燈が灯され、オレンジ色に明るく照らされた町並みは、いつも見慣れた光景とは違い、新鮮味を感じられる。
それでもまだ時刻は19時になったばかりなので、多くの老若男女が行き交っている。
「すごい……夜の町って、こんなに賑わっていたのね」
自転車を押しながら、オリビエは目当ての店を探して歩く。
彼女が探している店は、最近学生たちの間で話題になっている店だった。
「女性一人でも気軽に入れる店」を謳い文句に、まだ若い女性オーナーが経営している店だと言う。
『内装もお洒落で、女性向きのメニューが豊富』と、女子学生たちが騒いでいたのを耳にしたことがある。
その時から機会があれば一度、行ってみたいと思っていたのだ。
「確かお店の外観は、レンガ造りの建物に紺色の屋根って言ってたわね。そして店の名前は……」
すると、前方に赤レンガに紺色屋根の建物を発見した。入り口には立て看板もある。
「あれかもしれないわ!」
オリビエは自転車のハンドルを握りしめると、急ぎ足で向かった。
「この店だわ……『ボヌール』。間違いないわ」
店の名前も事前情報で知っていた。窓から店内を覗き込んでみると20人程の客がいいて、全員オリビエと同年代に思えた。
客層が若いと言う事に後押しされたオリビエ。早速店脇に邪魔にならないように自転車を止めると、緊張する面持ちでドアノブを回した。
――カランカラン
ドアベルが鳴り響くと中にいた何人かの客がこちらを振り向き、緊張するオリビエ。けれどすぐに視線が離れたので、ゆっくり店内に足を踏み入れた。
店内にいた客は男女合わせて半々というところだった。けれど、店に1人で来たのはオリビエだけのようだった。
(え? 女性一人でも気軽に入れるお店と聞いていたけど……何だか思っていたのと違うわ)
しかし、今更店を出ることも出来ない。オリビエは覚悟を決めると、壁際に2人掛けのテーブル席を見つけて着席した。
メニュー表が置かれていたので、早速オリビエは手に取って眺めていた時。
「へ~女性の一人客なんて珍しいな」
不意に声をかけられ、驚いて顔を上げる。
すると見知らぬ青年がオリビエを見下ろしていた——
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