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6話 婚約者との関係
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――16時
本日全ての講義が終わって帰り支度をしているオリビエに、エレナが声をかけてきた。
「それじゃ、オリビエ。また明日ね」
「ええ、また明日」
エレナは手を振ると、急ぎ足で去って行った。教室の入口には彼女の婚約者、カールが待っている。
「……2人で一緒に帰るのね。デートでもするのかしら?」
ポツリとつぶやき、ギスランの顔を思い浮かべた。
オリビエとギスランは子供時代から婚約者していたが、一度も一緒に登下校したこともなければ2人きりで出かけたこともない。
ただ月に数回、学校が休みの週末にだけ顔合わせという名目でどちらかの屋敷で会うだけだった。
その際、特に会話をするわけでもない。同じ空間にいれば良いだけなので、ギスランはいつも持参した本を読み、オリビエを相手にしようとはしない。
そこでオリビエは出来るだけ読書の邪魔にならないように、気を使って静かに刺繍をして過ごし……時間になるとギスランは帰って行く。
そんな関係がずっと続いていた。
本当はもっとギスランと仲良くなりたいと思っていた。しかし、相手がそれを望んでいない以上どうすることも出来なかった。
どうせいずれは結婚するのだから、2人の関係もそのうち変わって来るだろうとオリビエは割り切ることにしたのだが……シャロンが15歳になった頃から変化が起こり始めた。
気づけばギスランとシャロンが急接近し、オリビエとの距離が遠のいていたのだ。
2人はオリビエが気づかない間に親密になり……今では隠すこと無く堂々と一緒に過ごすようになっていた。
それが、たとえオリビエの眼の前であろうとも。
「……仕方ないわね。シャロンは私と違って、可愛らしくて魅力的だもの……」
ポツリとつぶやき、自分のダークブロンドの髪にそっと触れる。
シャロンの髪はオリビエと違い、眩しく光り輝くようなプラチナブロンドだった。瞳は深い海のような青い色。
容姿だけでは、どれもオリビエには敵わない。ただ、シャロンより秀でていることがあるとすれば頭の良さだけだったろう。
オリビエは才女だったが、シャロンはそれほど賢くは無かった。だが、頭の良い女性は男性からは敬遠されがちだった。
「婚約解消されるのも時間の問題かもしれないわね……そして代わりにシャロンと……」
ため息をつくとオリビエは立ち上がり、教室を後にした――
****
オリビエは大学の図書館を訪れていた。
家に自分の居場所が無いオリビエは、あまり早く帰りたくはなかった。そこで放課後は大学の図書館に立ち寄るのが日課になっていたのだ。
放課後にわざわざ図書館に寄る学生は、滅多にいない。静かな図書館でオリビエは小説を探していた。
(何か、ときめくような恋愛小説は無いかしら……)
家族からは勉強しか脳がないと思われているオリビエだったが、実は恋愛小説を読むのが趣味だった。
棚の中から適当に女性向け小説を手に取り、パラパラと試し読みをしてみる。
「これは中々面白そうだわ……今日はこれを借りることにしましょう」
オリビエは早速、貸出カウンターへ向かうと目を見開いた。
驚くべきことにカウンターに座っていたのは、侯爵令嬢のアデリーナだったのだ――
本日全ての講義が終わって帰り支度をしているオリビエに、エレナが声をかけてきた。
「それじゃ、オリビエ。また明日ね」
「ええ、また明日」
エレナは手を振ると、急ぎ足で去って行った。教室の入口には彼女の婚約者、カールが待っている。
「……2人で一緒に帰るのね。デートでもするのかしら?」
ポツリとつぶやき、ギスランの顔を思い浮かべた。
オリビエとギスランは子供時代から婚約者していたが、一度も一緒に登下校したこともなければ2人きりで出かけたこともない。
ただ月に数回、学校が休みの週末にだけ顔合わせという名目でどちらかの屋敷で会うだけだった。
その際、特に会話をするわけでもない。同じ空間にいれば良いだけなので、ギスランはいつも持参した本を読み、オリビエを相手にしようとはしない。
そこでオリビエは出来るだけ読書の邪魔にならないように、気を使って静かに刺繍をして過ごし……時間になるとギスランは帰って行く。
そんな関係がずっと続いていた。
本当はもっとギスランと仲良くなりたいと思っていた。しかし、相手がそれを望んでいない以上どうすることも出来なかった。
どうせいずれは結婚するのだから、2人の関係もそのうち変わって来るだろうとオリビエは割り切ることにしたのだが……シャロンが15歳になった頃から変化が起こり始めた。
気づけばギスランとシャロンが急接近し、オリビエとの距離が遠のいていたのだ。
2人はオリビエが気づかない間に親密になり……今では隠すこと無く堂々と一緒に過ごすようになっていた。
それが、たとえオリビエの眼の前であろうとも。
「……仕方ないわね。シャロンは私と違って、可愛らしくて魅力的だもの……」
ポツリとつぶやき、自分のダークブロンドの髪にそっと触れる。
シャロンの髪はオリビエと違い、眩しく光り輝くようなプラチナブロンドだった。瞳は深い海のような青い色。
容姿だけでは、どれもオリビエには敵わない。ただ、シャロンより秀でていることがあるとすれば頭の良さだけだったろう。
オリビエは才女だったが、シャロンはそれほど賢くは無かった。だが、頭の良い女性は男性からは敬遠されがちだった。
「婚約解消されるのも時間の問題かもしれないわね……そして代わりにシャロンと……」
ため息をつくとオリビエは立ち上がり、教室を後にした――
****
オリビエは大学の図書館を訪れていた。
家に自分の居場所が無いオリビエは、あまり早く帰りたくはなかった。そこで放課後は大学の図書館に立ち寄るのが日課になっていたのだ。
放課後にわざわざ図書館に寄る学生は、滅多にいない。静かな図書館でオリビエは小説を探していた。
(何か、ときめくような恋愛小説は無いかしら……)
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棚の中から適当に女性向け小説を手に取り、パラパラと試し読みをしてみる。
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驚くべきことにカウンターに座っていたのは、侯爵令嬢のアデリーナだったのだ――
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