489 / 519
川口直人 63
しおりを挟む
気まずい雰囲気のまま食事を終えると、すぐに常盤恵理が命じて来た。
「はい、スマホ出して」
手のひらを広げて催促してくる。
「…」
渋々新しく手渡されたスマホを手渡すと、睨み付けて来た。
「ちょっと…ふざけてるの?」
「え?」
「これは私が直人に渡したスマホでしょう?誰がそんなもの貸してって言うのよ!前から持っているスマホを出しなさいって言ってるのよ!」
「な、何だって…?どうして…?」
「どうしてですって?当然じゃないの?昔の女に電話を掛けていないか調べる為よ。ほら。やましい事が無いなら貸しなさい」
「…ッ!」
何てイヤな女なんだ…!無意識のうちに俺は常盤恵理を睨み付けていた。
「な、何よ。その反抗的な目は…。私にそんな態度を取っていいと思っているの?川口家電の社員が貴方のせいで路頭に迷ってもいいと言うのね?」
「そ、それは…分った…」
仕方なしに自分のスマホを渡す。あれを見られたらどうしよう…。心臓が早鐘を打ち、口から今にも飛び出しそうだ。
常盤恵理は無言でスマホを手にするとためらうことなくタップした。
ピッピッ
スマホの操作音を鳴らしながらじっと画面を見ていたが…。
「ふ~ん…連絡はいれていないみたいね…。でもまさか元恋人の名前を男で登録していたりしていないわよね?」
「あ、当たり前だろう?そんな事するはずはない」
良かった…事前に鈴音の発信履歴を消しておいて…。それにしても物凄い発想力だ。心底、この女が恐ろしく感じる。
「そう?でも男はすぐ嘘をつくからね…」
言いながらまだ俺のスマホを操作する事をやめない。
「おい?もういいだろう?いい加減返してくれ…」
言いかけた時―。
「な、何よっ!これはっ!」
突如目を見開き、俺を睨み付けて来た。
「え?」
その言葉に心臓が飛び跳ねそうになる。
「この写真…一体何っ?!」
写真だってっ?!
「この女が…直人の元恋人なのねっ?!」
画面を俺に見せて来た。それはディズニーランドの写真スポットで鈴音を撮影したものだった。そこには笑顔で映る愛しい鈴音の姿があった。
鈴音…。思わず胸が熱くなった。
だが…!
「何故勝手に写真を開くんだっ?!」
「何よ!私は貴方の婚約者なんだから調べるのは当然でしょう?!」
その言葉に呆れてしまった。
「当然…?当然だって?そんな権利、君には無いっ!」
ここがカフェだと言う事も忘れて俺も常盤恵理も声を荒げてしまう。
「そんな事はもうどうでもいいわ。でもその態度にこの女の向ける笑顔…直人の元恋人なんでしょう?…ふん。大したことないわね」
その言葉に苛立ちが募る。
大したこと無いだって?鈴音がどれ程綺麗で、心が優しい人間かも知らないくせに。お前の方が余程鈴音に劣っているくせに。
俺は心の中で毒づいた。
「名前は?」
「え?」
「だから名前よ!この女の名前を教えなさい」
「何故だ?何故名前を教えなくちゃならないんだ?」
こんな女に鈴音の事を話せるものか。教えれば…鈴音に何をしでかすか分った物じゃない。
「あら…そう?川口家電の社員がどうなっても…」
「それでも言うものか。そんなに川口家電を追い詰めたいならそうするがいい。だがな…そんな事をすれば…俺は一生お前を許さないからな」
俺は憎悪を込めた目で常盤恵理を睨み付けた。
「…!な、何よ…!そ、そんな事したって私と貴方は結婚するのよ?!」
「ああ、お前が望むならそうするしか無いだろう?だが、うちの会社を完全に潰そうとするなら…一生 お前と、常盤商事を憎むからな」
「…!わ、分ったわよ…聞かないでおくわよ。ならいいんでしょう?その代わり…いまここで全ての画像を消しなさいっ!」
「…分った…」
そして俺は常盤恵理の見ている目の前で鈴音の画像を1枚ずつ削除させられていった。
鈴音…。
鈴音の画像が消えていくたびに…自分の心が徐々に失われていく…。
そんな感覚に襲われながら―。
「はい、スマホ出して」
手のひらを広げて催促してくる。
「…」
渋々新しく手渡されたスマホを手渡すと、睨み付けて来た。
「ちょっと…ふざけてるの?」
「え?」
「これは私が直人に渡したスマホでしょう?誰がそんなもの貸してって言うのよ!前から持っているスマホを出しなさいって言ってるのよ!」
「な、何だって…?どうして…?」
「どうしてですって?当然じゃないの?昔の女に電話を掛けていないか調べる為よ。ほら。やましい事が無いなら貸しなさい」
「…ッ!」
何てイヤな女なんだ…!無意識のうちに俺は常盤恵理を睨み付けていた。
「な、何よ。その反抗的な目は…。私にそんな態度を取っていいと思っているの?川口家電の社員が貴方のせいで路頭に迷ってもいいと言うのね?」
「そ、それは…分った…」
仕方なしに自分のスマホを渡す。あれを見られたらどうしよう…。心臓が早鐘を打ち、口から今にも飛び出しそうだ。
常盤恵理は無言でスマホを手にするとためらうことなくタップした。
ピッピッ
スマホの操作音を鳴らしながらじっと画面を見ていたが…。
「ふ~ん…連絡はいれていないみたいね…。でもまさか元恋人の名前を男で登録していたりしていないわよね?」
「あ、当たり前だろう?そんな事するはずはない」
良かった…事前に鈴音の発信履歴を消しておいて…。それにしても物凄い発想力だ。心底、この女が恐ろしく感じる。
「そう?でも男はすぐ嘘をつくからね…」
言いながらまだ俺のスマホを操作する事をやめない。
「おい?もういいだろう?いい加減返してくれ…」
言いかけた時―。
「な、何よっ!これはっ!」
突如目を見開き、俺を睨み付けて来た。
「え?」
その言葉に心臓が飛び跳ねそうになる。
「この写真…一体何っ?!」
写真だってっ?!
「この女が…直人の元恋人なのねっ?!」
画面を俺に見せて来た。それはディズニーランドの写真スポットで鈴音を撮影したものだった。そこには笑顔で映る愛しい鈴音の姿があった。
鈴音…。思わず胸が熱くなった。
だが…!
「何故勝手に写真を開くんだっ?!」
「何よ!私は貴方の婚約者なんだから調べるのは当然でしょう?!」
その言葉に呆れてしまった。
「当然…?当然だって?そんな権利、君には無いっ!」
ここがカフェだと言う事も忘れて俺も常盤恵理も声を荒げてしまう。
「そんな事はもうどうでもいいわ。でもその態度にこの女の向ける笑顔…直人の元恋人なんでしょう?…ふん。大したことないわね」
その言葉に苛立ちが募る。
大したこと無いだって?鈴音がどれ程綺麗で、心が優しい人間かも知らないくせに。お前の方が余程鈴音に劣っているくせに。
俺は心の中で毒づいた。
「名前は?」
「え?」
「だから名前よ!この女の名前を教えなさい」
「何故だ?何故名前を教えなくちゃならないんだ?」
こんな女に鈴音の事を話せるものか。教えれば…鈴音に何をしでかすか分った物じゃない。
「あら…そう?川口家電の社員がどうなっても…」
「それでも言うものか。そんなに川口家電を追い詰めたいならそうするがいい。だがな…そんな事をすれば…俺は一生お前を許さないからな」
俺は憎悪を込めた目で常盤恵理を睨み付けた。
「…!な、何よ…!そ、そんな事したって私と貴方は結婚するのよ?!」
「ああ、お前が望むならそうするしか無いだろう?だが、うちの会社を完全に潰そうとするなら…一生 お前と、常盤商事を憎むからな」
「…!わ、分ったわよ…聞かないでおくわよ。ならいいんでしょう?その代わり…いまここで全ての画像を消しなさいっ!」
「…分った…」
そして俺は常盤恵理の見ている目の前で鈴音の画像を1枚ずつ削除させられていった。
鈴音…。
鈴音の画像が消えていくたびに…自分の心が徐々に失われていく…。
そんな感覚に襲われながら―。
0
お気に入りに追加
865
あなたにおすすめの小説


関係を終わらせる勢いで留学して数年後、犬猿の仲の狼王子がおかしいことになっている
百門一新
恋愛
人族貴族の公爵令嬢であるシェスティと、獣人族であり六歳年上の第一王子カディオが、出会った時からずっと犬猿の仲なのは有名な話だった。賢い彼女はある日、それを終わらせるべく(全部捨てる勢いで)隣国へ保留学した。だが、それから数年、彼女のもとに「――カディオが、私を見ないと動機息切れが収まらないので来てくれ、というお願いはなんなの?」という変な手紙か実家から来て、帰国することに。そうしたら、彼の様子が変で……?
※さくっと読める短篇です、お楽しみいだたけましたら幸いです!
※他サイト様にも掲載

忘れられたら苦労しない
菅井群青
恋愛
結婚を考えていた彼氏に突然振られ、二年間引きずる女と同じく過去の恋に囚われている男が出会う。
似ている、私たち……
でもそれは全然違った……私なんかより彼の方が心を囚われたままだ。
別れた恋人を忘れられない女と、運命によって引き裂かれ突然亡くなった彼女の思い出の中で生きる男の物語
「……まだいいよ──会えたら……」
「え?」
あなたには忘れらない人が、いますか?──

溺婚
明日葉
恋愛
香月絢佳、37歳、独身。晩婚化が進んでいるとはいえ、さすがにもう、無理かなぁ、と残念には思うが焦る気にもならず。まあ、恋愛体質じゃないし、と。
以前階段落ちから助けてくれたイケメンに、馴染みの店で再会するものの、この状況では向こうの印象がよろしいはずもないしと期待もしなかったのだが。
イケメン、天羽疾矢はどうやら絢佳に惹かれてしまったようで。
「歳も歳だし、とりあえず試してみたら?こわいの?」と、挑発されればつい、売り言葉に買い言葉。
何がどうしてこうなった?
平凡に生きたい、でもま、老後に1人は嫌だなぁ、くらいに構えた恋愛偏差値最底辺の絢佳と、こう見えて仕事人間のイケメン疾矢。振り回しているのは果たしてどっちで、振り回されてるのは、果たしてどっち?

とある虐げられた侯爵令嬢の華麗なる後ろ楯~拾い人したら溺愛された件
紅位碧子 kurenaiaoko
恋愛
侯爵令嬢リリアーヌは、10歳で母が他界し、その後義母と義妹に虐げられ、
屋敷ではメイド仕事をして過ごす日々。
そんな中で、このままでは一生虐げられたままだと思い、一念発起。
母の遺言を受け、自分で自分を幸せにするために行動を起こすことに。
そんな中、偶然訳ありの男性を拾ってしまう。
しかし、その男性がリリアーヌの未来を作る救世主でーーーー。
メイド仕事の傍らで隠れて淑女教育を完璧に終了させ、語学、経営、経済を学び、
財産を築くために屋敷のメイド姿で見聞きした貴族社会のことを小説に書いて出版し、それが大ヒット御礼!
学んだことを生かし、商会を設立。
孤児院から人材を引き取り育成もスタート。
出版部門、観劇部門、版権部門、商品部門など次々と商いを展開。
そこに隣国の王子も参戦してきて?!
本作品は虐げられた環境の中でも懸命に前を向いて頑張る
とある侯爵令嬢が幸せを掴むまでの溺愛×サクセスストーリーです♡
*誤字脱字多数あるかと思います。
*初心者につき表現稚拙ですので温かく見守ってくださいませ
*ゆるふわ設定です
「好き」の距離
饕餮
恋愛
ずっと貴方に片思いしていた。ただ単に笑ってほしかっただけなのに……。
伯爵令嬢と公爵子息の、勘違いとすれ違い(微妙にすれ違ってない)の恋のお話。
以前、某サイトに載せていたものを大幅に改稿・加筆したお話です。

心は誰を選ぶのか
アズやっこ
恋愛
この国は人と獣人が暮らしている。
それでも人は人と、獣人は獣人と結婚する。
獣人には、今は幻となった『魂の番』が存在する。魂の番にはとても強い強制力がある。誰にも引き離せない固い絆。
出会えば直ぐに分かると言われている。お互いの魂が共鳴し合うらしい。
だから私は獣人が嫌い。
だって、魂の番は同じ種族にしかいないんだもの。
どれだけ私が貴方を好きでも、
どれだけ貴方が私を好きでも、
いつか貴方は魂の番の手を取るの…。
貴方は本能を取る?
それとも…
❈ 作者独自の世界観です。
❈ 作者独自の設定です。
【完結】双子の伯爵令嬢とその許婚たちの物語
ひかり芽衣
恋愛
伯爵令嬢のリリカとキャサリンは二卵性双生児。生まれつき病弱でどんどん母似の美女へ成長するキャサリンを母は溺愛し、そんな母に父は何も言えない……。そんな家庭で育った父似のリリカは、とにかく自分に自信がない。幼い頃からの許婚である伯爵家長男ウィリアムが心の支えだ。しかしある日、ウィリアムに許婚の話をなかったことにして欲しいと言われ……
リリカとキャサリン、ウィリアム、キャサリンの許婚である公爵家次男のスターリン……彼らの物語を一緒に見守って下さると嬉しいです。
⭐︎2023.4.24完結⭐︎
※2024.2.8~追加・修正作業のため、2話以降を一旦非公開にしていました。
→2024.3.4再投稿。大幅に追加&修正をしたので、もしよければ読んでみて下さい(^^)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる