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川口直人 44
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「朝ご飯の準備をしてあるんだ。すぐに用意するから鈴音は座って待っているといいよ」
抱きしめていた腕を離すと鈴音に言った。
「え?用意してくれていたの?」
鈴音が俺を見上げて尋ねる。
「ああ、そうだよ。料理するの意外と好きなんだ」
「そうなの?直人さんてすごいね」
「いや、そんな事無いけど…でも鈴音にそう言って貰えると嬉しいな。それじゃ座って待っていて」
「うん、ありがとう」
鈴音は部屋に上がり、ローソファに座った。
「よし、やるか」
小さく呟くとキッチンへ向かった―。
****
「え…?これ、全部直人さんが作ったの?」
センターテーブルに並べられた朝ご飯を見て鈴音が驚いている。
「そうだよ。食べよう」
笑みを浮かべて鈴音に言う。
「す、すごい…直人さんて料理が得意だったんだね…料理が得意な男の人って初めて見たよ。すごく美味しそう。頂きまーす」
鈴音は笑顔で言うと、美味しそうに食事を食べ始める。その姿を見ているだけで幸せだ。鈴音は得に卵焼きをとても喜んでくれた。
「ねえ、このだしまき卵って、前に一緒に食べに行った焼き鳥屋さんの親子丼に味が似てる気がする」
それは当然だ。鈴音の喜ぶ顔が見たくて作ったんだから。その事を告げると鈴音が「ありがとう」と頬を染めた。
「恋人なんだから当然さ」
俺がそう言うとますます赤くなる鈴音。本当に何て可愛いのだろう。だから昨夜は鈴音に対する思いが強すぎて…無理をさせて抱いてしまったのではないかと思い、謝罪すると鈴音は何故かむせそうになってしまった。
その後、鈴音のお姉さんから電話がかかって来て呼ばれたようだが断ってくれたそうだ。俺との時間を優先してくれた事がとても嬉しかった。
食事の終わった後、鈴音が片づけを申し出てくれた。そんな事はしなくていいと言ったけれども鈴音が食事まで御馳走になった上に、片付けまでやってもらうのは申し訳ないと訴えたからだった。
なので、その間俺は鈴音との初デート場所をネットで検索していると鈴音が声を掛けて来た。それはこの部屋の家賃についてだった。だから本当の家賃の値段と補助が出ている話をすると、鈴音は羨ましがった。
「そっか~。だからその金額でいいんだ…羨ましいな」
その時、俺の頭の中にある考えが浮かんだ。そうだ…鈴音と一緒に暮らせれば…。
「なら…俺と一緒に暮らす?」
「え?!」
鈴音は驚いて俺を見る。しまった…ひょっとして性急すぎただろうか?
だけど、俺は1分1秒でも長く鈴音に傍にいてもらいたかった。
「この部屋は12畳あるし、2人で住んでも十分だと思わないかい?ベッドだってセミダブルだし、鈴音は身体が小さいから一緒に寝ても問題無かったし…何なら大きいサイズに買い替えたっていいけど?」
気付けば俺は必死に鈴音に訴えていた。
「またまた…冗談ばっかり…」
けれど鈴音は本気で取ってくれない。
「別に冗談で言ったわけじゃないよ。だって鈴音とずっと一緒にいたいから…。でもちょっと焦っていたかもな。何せ鈴音の陰にはあの男がいるから」
つい、嫉妬が混ざった言葉を使ってしまった。
「な、何言ってるの。亮平は…単なる幼馴染だから直人さんが気に病むようなことは何一つないからね?」
すると鈴音は慌てたように言う。…ひょっとして鈴音はまだあの幼馴染に未練を残しているのだろうか?
そう思うと、やはり不安が込み上げて来る。
鈴音は本当に俺の事が好きで恋人になってくれたのだろうか…?
あいつの事なんか忘れるくらいに…鈴音の頭の中を俺の事だけで埋め尽くす事が出来ればいいのに―。
抱きしめていた腕を離すと鈴音に言った。
「え?用意してくれていたの?」
鈴音が俺を見上げて尋ねる。
「ああ、そうだよ。料理するの意外と好きなんだ」
「そうなの?直人さんてすごいね」
「いや、そんな事無いけど…でも鈴音にそう言って貰えると嬉しいな。それじゃ座って待っていて」
「うん、ありがとう」
鈴音は部屋に上がり、ローソファに座った。
「よし、やるか」
小さく呟くとキッチンへ向かった―。
****
「え…?これ、全部直人さんが作ったの?」
センターテーブルに並べられた朝ご飯を見て鈴音が驚いている。
「そうだよ。食べよう」
笑みを浮かべて鈴音に言う。
「す、すごい…直人さんて料理が得意だったんだね…料理が得意な男の人って初めて見たよ。すごく美味しそう。頂きまーす」
鈴音は笑顔で言うと、美味しそうに食事を食べ始める。その姿を見ているだけで幸せだ。鈴音は得に卵焼きをとても喜んでくれた。
「ねえ、このだしまき卵って、前に一緒に食べに行った焼き鳥屋さんの親子丼に味が似てる気がする」
それは当然だ。鈴音の喜ぶ顔が見たくて作ったんだから。その事を告げると鈴音が「ありがとう」と頬を染めた。
「恋人なんだから当然さ」
俺がそう言うとますます赤くなる鈴音。本当に何て可愛いのだろう。だから昨夜は鈴音に対する思いが強すぎて…無理をさせて抱いてしまったのではないかと思い、謝罪すると鈴音は何故かむせそうになってしまった。
その後、鈴音のお姉さんから電話がかかって来て呼ばれたようだが断ってくれたそうだ。俺との時間を優先してくれた事がとても嬉しかった。
食事の終わった後、鈴音が片づけを申し出てくれた。そんな事はしなくていいと言ったけれども鈴音が食事まで御馳走になった上に、片付けまでやってもらうのは申し訳ないと訴えたからだった。
なので、その間俺は鈴音との初デート場所をネットで検索していると鈴音が声を掛けて来た。それはこの部屋の家賃についてだった。だから本当の家賃の値段と補助が出ている話をすると、鈴音は羨ましがった。
「そっか~。だからその金額でいいんだ…羨ましいな」
その時、俺の頭の中にある考えが浮かんだ。そうだ…鈴音と一緒に暮らせれば…。
「なら…俺と一緒に暮らす?」
「え?!」
鈴音は驚いて俺を見る。しまった…ひょっとして性急すぎただろうか?
だけど、俺は1分1秒でも長く鈴音に傍にいてもらいたかった。
「この部屋は12畳あるし、2人で住んでも十分だと思わないかい?ベッドだってセミダブルだし、鈴音は身体が小さいから一緒に寝ても問題無かったし…何なら大きいサイズに買い替えたっていいけど?」
気付けば俺は必死に鈴音に訴えていた。
「またまた…冗談ばっかり…」
けれど鈴音は本気で取ってくれない。
「別に冗談で言ったわけじゃないよ。だって鈴音とずっと一緒にいたいから…。でもちょっと焦っていたかもな。何せ鈴音の陰にはあの男がいるから」
つい、嫉妬が混ざった言葉を使ってしまった。
「な、何言ってるの。亮平は…単なる幼馴染だから直人さんが気に病むようなことは何一つないからね?」
すると鈴音は慌てたように言う。…ひょっとして鈴音はまだあの幼馴染に未練を残しているのだろうか?
そう思うと、やはり不安が込み上げて来る。
鈴音は本当に俺の事が好きで恋人になってくれたのだろうか…?
あいつの事なんか忘れるくらいに…鈴音の頭の中を俺の事だけで埋め尽くす事が出来ればいいのに―。
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