430 / 519
川口直人 5
しおりを挟む
「あの、ケーキ買うんですか?」
じっとスイーツコーナーを見つめていた加藤さんに声を掛けた。
「はい、今夜はクリスマスイブだから…でも残念です。どれも2個セットなんですね。食べきれそうにないので諦める事にします。別にケーキが無くてもイブはすごせますから」
加藤さんの言葉に言う。
「でも、本当は食べたいんですよね?」
「え?ええ…まぁそうですけど。でも別にいいんです」
加藤さんは言うとスイーツコーナーを離れようとした。
「なら2人で分けませんか?丁度ケーキを食べたいと思ったんですよ。1個ずつ分けましょう」
「え…?で、でも本当にいいんですか?」
大きな目を見開いてじっと俺を見つめる加藤さんに胸が高鳴る。
「ええ。もちろんです。ラップを買って持ち帰りましょう。だから包みやすいケーキの方がいいですね」
「ならチーズケーキなんてどうですか?これならラップに包んで持って帰れますよ?チーズケーキはお好きですか?」
やっぱり加藤さんはケーキが食べたかったようだ。
「それじゃ、買ってきますね。あ、ラップも買ってこなくちゃ」
「え?会計なら俺が…」
しかし、加藤さんは俺の声が耳に入っていなかったのか、商品を持ってレジへ行ってしまった―。
****
コンビニを出て、簡単に自己紹介をすると加藤さんが俺にラップにくるんだケーキを渡して来た。
「はい、どうぞ。」
「ありがとうございます。」
良かった、これで少しは加藤さんとお近づきになれたかもしれない。
「それじゃ、半分ケーキのお金払いますよ」
お金を支払おうとすると止められた。
「いいんですよ、ケーキ2個あって困っていたので、貰ってくれた方がありがたいんですから」
「そうですか…?」
別に遠慮する事は無いのに…。けれど、あまりしつこくするのもよくないかもしれない。
「はい、それでは失礼します」
加藤さんは頭を下げると、背を向けて歩き始める。声を掛け損ねてしまった俺は何となく無言で少し距離を開けて歩き始めると、怪訝そうに振り返った。
「あの…?」
しまった。これではストーカーと思われてしまうかもしれない。何ともバツがわるくなり、頭を掻きながら言った。
「いえ…特に言う必要は無いかと思ったんですけど、実は住んでいるマンションですけど、加藤さんのお隣なんです」
「え?そうだったんですか?」
並んで歩きながら加藤さんが俺を見上げた。
「ええ、そうですよ」
返事をしながら俺は加藤さんをじっと見た。彼女は小柄で背も低く、とても華奢な体つきで、思わず庇護欲をかりたてられてしまう。…本当に一体どんな男が彼女を手放したのだろう?俺だったら…絶対にそんな事はしないのに。
「ところで加藤さんは何のお仕事をしているんですか?」
少しでも彼女のことを知りたくて質問した。
「私ですか?旅行会社の代理店で働いています」
「そうなんですか?ひょっとすると旅行が好きなんですか?」
「そうですね…。旅行は好きですよ?学生時代は友達と温泉旅行に行ったりもしましたし」
「温泉旅行ですか…」
俺も温泉が好き友人や恋人…それに弟の和也と一緒に行ったこともある。加藤さんと行ければ楽しめるだろうな…。
「引越屋さんのお仕事って大変じゃないですか?」
加藤さんが話題を変えてきた。
「そうですね…肉体労働で大変ですけど、やりがいはありますよ。でも夏場は正直言うと大変ですね」
「でも立派ですよ。誰かがやらなければいけない仕事ですから…尊敬します」
笑みを浮かべて俺を見る加藤さんに心臓が高鳴った。何故だろう…過去に付き合ってきた彼女たちにはこんな感情を抱いた事もないのに…。もう少しだけ…一緒にいたい…。そう思ったけれども…。
マンションに到着してしまった―。
じっとスイーツコーナーを見つめていた加藤さんに声を掛けた。
「はい、今夜はクリスマスイブだから…でも残念です。どれも2個セットなんですね。食べきれそうにないので諦める事にします。別にケーキが無くてもイブはすごせますから」
加藤さんの言葉に言う。
「でも、本当は食べたいんですよね?」
「え?ええ…まぁそうですけど。でも別にいいんです」
加藤さんは言うとスイーツコーナーを離れようとした。
「なら2人で分けませんか?丁度ケーキを食べたいと思ったんですよ。1個ずつ分けましょう」
「え…?で、でも本当にいいんですか?」
大きな目を見開いてじっと俺を見つめる加藤さんに胸が高鳴る。
「ええ。もちろんです。ラップを買って持ち帰りましょう。だから包みやすいケーキの方がいいですね」
「ならチーズケーキなんてどうですか?これならラップに包んで持って帰れますよ?チーズケーキはお好きですか?」
やっぱり加藤さんはケーキが食べたかったようだ。
「それじゃ、買ってきますね。あ、ラップも買ってこなくちゃ」
「え?会計なら俺が…」
しかし、加藤さんは俺の声が耳に入っていなかったのか、商品を持ってレジへ行ってしまった―。
****
コンビニを出て、簡単に自己紹介をすると加藤さんが俺にラップにくるんだケーキを渡して来た。
「はい、どうぞ。」
「ありがとうございます。」
良かった、これで少しは加藤さんとお近づきになれたかもしれない。
「それじゃ、半分ケーキのお金払いますよ」
お金を支払おうとすると止められた。
「いいんですよ、ケーキ2個あって困っていたので、貰ってくれた方がありがたいんですから」
「そうですか…?」
別に遠慮する事は無いのに…。けれど、あまりしつこくするのもよくないかもしれない。
「はい、それでは失礼します」
加藤さんは頭を下げると、背を向けて歩き始める。声を掛け損ねてしまった俺は何となく無言で少し距離を開けて歩き始めると、怪訝そうに振り返った。
「あの…?」
しまった。これではストーカーと思われてしまうかもしれない。何ともバツがわるくなり、頭を掻きながら言った。
「いえ…特に言う必要は無いかと思ったんですけど、実は住んでいるマンションですけど、加藤さんのお隣なんです」
「え?そうだったんですか?」
並んで歩きながら加藤さんが俺を見上げた。
「ええ、そうですよ」
返事をしながら俺は加藤さんをじっと見た。彼女は小柄で背も低く、とても華奢な体つきで、思わず庇護欲をかりたてられてしまう。…本当に一体どんな男が彼女を手放したのだろう?俺だったら…絶対にそんな事はしないのに。
「ところで加藤さんは何のお仕事をしているんですか?」
少しでも彼女のことを知りたくて質問した。
「私ですか?旅行会社の代理店で働いています」
「そうなんですか?ひょっとすると旅行が好きなんですか?」
「そうですね…。旅行は好きですよ?学生時代は友達と温泉旅行に行ったりもしましたし」
「温泉旅行ですか…」
俺も温泉が好き友人や恋人…それに弟の和也と一緒に行ったこともある。加藤さんと行ければ楽しめるだろうな…。
「引越屋さんのお仕事って大変じゃないですか?」
加藤さんが話題を変えてきた。
「そうですね…肉体労働で大変ですけど、やりがいはありますよ。でも夏場は正直言うと大変ですね」
「でも立派ですよ。誰かがやらなければいけない仕事ですから…尊敬します」
笑みを浮かべて俺を見る加藤さんに心臓が高鳴った。何故だろう…過去に付き合ってきた彼女たちにはこんな感情を抱いた事もないのに…。もう少しだけ…一緒にいたい…。そう思ったけれども…。
マンションに到着してしまった―。
11
お気に入りに追加
865
あなたにおすすめの小説

関係を終わらせる勢いで留学して数年後、犬猿の仲の狼王子がおかしいことになっている
百門一新
恋愛
人族貴族の公爵令嬢であるシェスティと、獣人族であり六歳年上の第一王子カディオが、出会った時からずっと犬猿の仲なのは有名な話だった。賢い彼女はある日、それを終わらせるべく(全部捨てる勢いで)隣国へ保留学した。だが、それから数年、彼女のもとに「――カディオが、私を見ないと動機息切れが収まらないので来てくれ、というお願いはなんなの?」という変な手紙か実家から来て、帰国することに。そうしたら、彼の様子が変で……?
※さくっと読める短篇です、お楽しみいだたけましたら幸いです!
※他サイト様にも掲載
余命宣告を受けたので私を顧みない家族と婚約者に執着するのをやめる事にしました 〜once again〜
結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
【アゼリア亡き後、残された人々のその後の物語】
白血病で僅か20歳でこの世を去った前作のヒロイン、アゼリア。彼女を大切に思っていた人々のその後の物語
※他サイトでも投稿中

溺婚
明日葉
恋愛
香月絢佳、37歳、独身。晩婚化が進んでいるとはいえ、さすがにもう、無理かなぁ、と残念には思うが焦る気にもならず。まあ、恋愛体質じゃないし、と。
以前階段落ちから助けてくれたイケメンに、馴染みの店で再会するものの、この状況では向こうの印象がよろしいはずもないしと期待もしなかったのだが。
イケメン、天羽疾矢はどうやら絢佳に惹かれてしまったようで。
「歳も歳だし、とりあえず試してみたら?こわいの?」と、挑発されればつい、売り言葉に買い言葉。
何がどうしてこうなった?
平凡に生きたい、でもま、老後に1人は嫌だなぁ、くらいに構えた恋愛偏差値最底辺の絢佳と、こう見えて仕事人間のイケメン疾矢。振り回しているのは果たしてどっちで、振り回されてるのは、果たしてどっち?

訳あり冷徹社長はただの優男でした
あさの紅茶
恋愛
独身喪女の私に、突然お姉ちゃんが子供(2歳)を押し付けてきた
いや、待て
育児放棄にも程があるでしょう
音信不通の姉
泣き出す子供
父親は誰だよ
怒り心頭の中、なしくずし的に子育てをすることになった私、橋本美咲(23歳)
これはもう、人生詰んだと思った
**********
この作品は他のサイトにも掲載しています
余命六年の幼妻の願い~旦那様は私に興味が無い様なので自由気ままに過ごさせて頂きます。~
流雲青人
恋愛
商人と商品。そんな関係の伯爵家に生まれたアンジェは、十二歳の誕生日を迎えた日に医師から余命六年を言い渡された。
しかし、既に公爵家へと嫁ぐことが決まっていたアンジェは、公爵へは病気の存在を明かさずに嫁ぐ事を余儀なくされる。
けれど、幼いアンジェに公爵が興味を抱く訳もなく…余命だけが過ぎる毎日を過ごしていく。

忙しい男
菅井群青
恋愛
付き合っていた彼氏に別れを告げた。忙しいという彼を信じていたけれど、私から別れを告げる前に……きっと私は半分捨てられていたんだ。
「私のことなんてもうなんとも思ってないくせに」
「お前は一体俺の何を見て言ってる──お前は、俺を知らな過ぎる」
すれ違う想いはどうしてこうも上手くいかないのか。いつだって思うことはただ一つ、愛おしいという気持ちだ。
※ハッピーエンドです
かなりやきもきさせてしまうと思います。
どうか温かい目でみてやってくださいね。
※本編完結しました(2019/07/15)
スピンオフ &番外編
【泣く背中】 菊田夫妻のストーリーを追加しました(2019/08/19)
改稿 (2020/01/01)
本編のみカクヨムさんでも公開しました。
「好き」の距離
饕餮
恋愛
ずっと貴方に片思いしていた。ただ単に笑ってほしかっただけなのに……。
伯爵令嬢と公爵子息の、勘違いとすれ違い(微妙にすれ違ってない)の恋のお話。
以前、某サイトに載せていたものを大幅に改稿・加筆したお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる