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亮平 63
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翌朝―
ピピピピ…
「う~ん…」
スマホにかけておいたアラームの音で目が覚める。
「フワアァァ…」
大きく伸びをしてアラームを止めると、着信が入っていることに気が付いた。
「着信…誰からだ…?」
スマホを操作すると、着信相手は川口からだった。
「え…?川口…?何だ?昨夜電話で話したばかりなのに…一体…」
スマホを操作してメールを開いた。
『常盤商事が提示していた資金を昨夜用意する事が出来た。本日常盤商事へ行って婚約破断の申し入れをしてくる』
メールにはそれだけが書かれていた。
「川口…」
俺は…呆然とそのメールを見ていた。その時、突然スマホが鳴りだした。
「川口か?!」
しかし、着信の相手は意外な事に忍からだった。
「え…?忍…?」
途惑いながらも電話に出た。
「はい、もしもし」
『あ、おはよう。亮平君』
忍の明るい声が聞こえてくる。
「はい。おはようございます」
『あのね、今朝は鈴音ちゃんが家にいるじゃない?だから3人で朝ごはん食べないかと思って電話を入れたのよ。どう?来る?』
鈴音と一緒に朝ご飯…。
「はい、勿論です。行きますっ!」
『フフフ…そう言うと思ったわ。それじゃ待っているからいつでもどうぞ』
それだけ言うと電話は切れた。こうしてはいられない!俺は慌てて準備を始めた。
「おはよう!」
スーツに着換えた俺は台所にいる母さんに声を掛けた。
「あら、おはよう。亮平。どうしたの?今朝は随分早いわねぇ。それじゃ朝ご飯食べて行く?」
お椀に味噌汁をよそおうとしている母さんを止めた。
「いや、いい。今朝は忍の処で朝飯食べるから」
「え…?忍ちゃんの家で…?」
途端に母さんの眉が吊り上がる。…そんな事は分り切っている。母さんは忍の事を良く思っていない。それなのに俺が忍の家で朝飯を食べるなんて言ったものだから、途端に機嫌が悪くなってしまったのだ。
「ちょ、ちょっと待ってくれよっ!落ち着いてくれよ、朝飯を食べに行くのは鈴音もいるからだよ」
「あ、そう言えばそうだったわね。鈴音ちゃんが泊まりに来ていたわよね?」
「ああ、そうなんだよ。ほら、あの2人…色々あっただろう?だから俺がいた方がいいんだよ。その方が2人共気まずくないだろうからさ」
俺は口から出まかせを言ってしまった。本当は俺なんかいなくても、今の忍と鈴音の関係は良好だ。ただ俺が鈴音と一緒に朝飯を食べたいから…あの2人の関係を利用してしまった。
「分ったわ。それじゃ鈴音ちゃんと…忍ちゃんによろしくね」
「ああ、行ってきます!」
ダウンコートにカバンを持つと、急いで忍の家へ向かった。
****
ピンポーン
忍の家の玄関のインターホンを押すと扉が開かれた。
「おはよう、亮平君」
忍が笑顔で出迎えてくれる。
「おはようございます。」
「それじゃ上がって。すぐに朝ご飯の準備をするから」
「はい、お邪魔します」
忍に言われ、部屋の中に上がり込んでリビングへ行ってみるが、鈴音の姿が見えない。
「あれ…?鈴音…?」
キョロキョロ部屋の中を見渡しても鈴音の姿が見えない。するとそこへ料理が乗ったお盆を持って忍がリビングに現れた。
「あ、ごめんね。鈴音ちゃん…まだ起きて来ないのよ」
「え?あいつ…まだ寝てるんですかっ?!」
何だよ…折角鈴音の顔が見れると思ったのに…。するとそんな俺の考えを見越してか、忍が笑いながら言った。
「あら?鈴音ちゃんに会えなくて残念だった?」
「ま、まさか!それに…大体鈴音にはまだ忘れられない男が…」
そこまで言いかけて、俺は川口の話を思い出した。
「あら?どうしたの?亮平君」
忍が俺の様子が変わった事に気付いてか、声を掛けて来た。
「忍さん…」
「何?」
「俺の…話、聞いて貰えますか…?」
「ええ。聞かせて」
忍は俺の言葉に頷いた―。
ピピピピ…
「う~ん…」
スマホにかけておいたアラームの音で目が覚める。
「フワアァァ…」
大きく伸びをしてアラームを止めると、着信が入っていることに気が付いた。
「着信…誰からだ…?」
スマホを操作すると、着信相手は川口からだった。
「え…?川口…?何だ?昨夜電話で話したばかりなのに…一体…」
スマホを操作してメールを開いた。
『常盤商事が提示していた資金を昨夜用意する事が出来た。本日常盤商事へ行って婚約破断の申し入れをしてくる』
メールにはそれだけが書かれていた。
「川口…」
俺は…呆然とそのメールを見ていた。その時、突然スマホが鳴りだした。
「川口か?!」
しかし、着信の相手は意外な事に忍からだった。
「え…?忍…?」
途惑いながらも電話に出た。
「はい、もしもし」
『あ、おはよう。亮平君』
忍の明るい声が聞こえてくる。
「はい。おはようございます」
『あのね、今朝は鈴音ちゃんが家にいるじゃない?だから3人で朝ごはん食べないかと思って電話を入れたのよ。どう?来る?』
鈴音と一緒に朝ご飯…。
「はい、勿論です。行きますっ!」
『フフフ…そう言うと思ったわ。それじゃ待っているからいつでもどうぞ』
それだけ言うと電話は切れた。こうしてはいられない!俺は慌てて準備を始めた。
「おはよう!」
スーツに着換えた俺は台所にいる母さんに声を掛けた。
「あら、おはよう。亮平。どうしたの?今朝は随分早いわねぇ。それじゃ朝ご飯食べて行く?」
お椀に味噌汁をよそおうとしている母さんを止めた。
「いや、いい。今朝は忍の処で朝飯食べるから」
「え…?忍ちゃんの家で…?」
途端に母さんの眉が吊り上がる。…そんな事は分り切っている。母さんは忍の事を良く思っていない。それなのに俺が忍の家で朝飯を食べるなんて言ったものだから、途端に機嫌が悪くなってしまったのだ。
「ちょ、ちょっと待ってくれよっ!落ち着いてくれよ、朝飯を食べに行くのは鈴音もいるからだよ」
「あ、そう言えばそうだったわね。鈴音ちゃんが泊まりに来ていたわよね?」
「ああ、そうなんだよ。ほら、あの2人…色々あっただろう?だから俺がいた方がいいんだよ。その方が2人共気まずくないだろうからさ」
俺は口から出まかせを言ってしまった。本当は俺なんかいなくても、今の忍と鈴音の関係は良好だ。ただ俺が鈴音と一緒に朝飯を食べたいから…あの2人の関係を利用してしまった。
「分ったわ。それじゃ鈴音ちゃんと…忍ちゃんによろしくね」
「ああ、行ってきます!」
ダウンコートにカバンを持つと、急いで忍の家へ向かった。
****
ピンポーン
忍の家の玄関のインターホンを押すと扉が開かれた。
「おはよう、亮平君」
忍が笑顔で出迎えてくれる。
「おはようございます。」
「それじゃ上がって。すぐに朝ご飯の準備をするから」
「はい、お邪魔します」
忍に言われ、部屋の中に上がり込んでリビングへ行ってみるが、鈴音の姿が見えない。
「あれ…?鈴音…?」
キョロキョロ部屋の中を見渡しても鈴音の姿が見えない。するとそこへ料理が乗ったお盆を持って忍がリビングに現れた。
「あ、ごめんね。鈴音ちゃん…まだ起きて来ないのよ」
「え?あいつ…まだ寝てるんですかっ?!」
何だよ…折角鈴音の顔が見れると思ったのに…。するとそんな俺の考えを見越してか、忍が笑いながら言った。
「あら?鈴音ちゃんに会えなくて残念だった?」
「ま、まさか!それに…大体鈴音にはまだ忘れられない男が…」
そこまで言いかけて、俺は川口の話を思い出した。
「あら?どうしたの?亮平君」
忍が俺の様子が変わった事に気付いてか、声を掛けて来た。
「忍さん…」
「何?」
「俺の…話、聞いて貰えますか…?」
「ええ。聞かせて」
忍は俺の言葉に頷いた―。
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