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亮平 62
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俺と鈴音は向かい合ってそれぞれ自分たちが注文した料理を口にしていた。
チラリ
鈴音を盗み見すると、片側の髪を耳にかけ、髪が垂れて来ない様にうなじ部分を押さえて食べている。…妙に色気のある食べ方をしているからだろうか…先程から近くに座る男どもが鈴音に注目している。
チッ…。
少しは自覚しろ。自分が周りの男たちからどんな目で見られているのかを…。それにもっと気になるのは川口の弟の方だ。確か19歳って言ってたけど…鈴音よりも随分年下のくせに、あんな目で見やがって…!
「なぁ…鈴音」
イライラしながら俺は鈴音に声を掛けた。
「何?」
「あのさっきの男…」
「え?」
鈴音の顔色がサッと変わる。オイ…マジかよ。ひょっとして鈴音…。いや…鈴音に限ってそれは無い…だろう。そんな事よりも鈴音と同じ会社に勤めている男達のほうが気がかりだ。そこで俺は食事をしながら鈴音に質問をすることにした―。
****
「うわっ!さっむ~いっ!!早く帰ろう!」
店を出た鈴音は大袈裟なくらい寒がった。
「何だ?そんなに寒いか?」
俺は大田という先輩がバリ島へ旅立ったという話を聞かされ、良い気分で鈴音に声を掛けた。本当にあの男がいなくなってくれて良かった…。あいつが今、一番頭の痛い存在だったから喜びもひとしおだ。そして俺たちは他愛もない話をしながら…帰路に着いた―。
****
22時―
帰宅して風呂からあがった俺は自室にこもると、早速スマホをタップした。電話を掛ける相手は当然川口だ。
トゥルルルルル…
5回目のコール音の後、川口が電話に出た。
『もしもし』
「俺だ」
『ああ…丁度電話しようかと思っていたんだ。今日、鈴音と駅前のファミレスに行ったんだろう?和也に聞いたよ』
「そうか…お前の弟、早速連絡入れたのか」
『ああ、まぁな…所で…』
「何だよ?」
『鈴音に…手を出したりしていないよな?』
「な、何言い出すんだよ!お前はっ!」
思わず大きな声を上げてしまう。
『何でそんなに驚くんだ?あ!まさか…』
「いや、待て!お前が思っているような事は何も無いからな?!」
俺は慌てて弁明する。恐らく川口の言う『手を出す』というのは…男女の関係の事をさしているに違いない。だったら問題ないだろう。…俺は鈴音にキスだけしかしたことが無いから…。うん、ぎりぎりセーフだ。やましい気持ちを抑えつつ、俺は自分にそう言い聞かせた。
『そう…か、ならいいんだが…。ところで何の用があって電話してきたんだ?』
「ああ、お前にとっておきの情報を教えてやろうと思ってな?」
『とっておき…?』
「ああ、そうだ。鈴音にいいよっていた会社の男がバリ島へ転勤になったんだよ」
『え?何だって?』
「どうもはっきり鈴音は言わなかったが…多分その男は鈴音にバリ島へ一緒に来てもらいたかったんだろうな?だが、鈴音に全くその気は無かった。それであっさりふられたんだろう?」
『そう…か…』
答える川口の声がどこか暗い。
「何だよ、そんな暗い声出して…嬉しくないのかよ?鈴音はまだお前が忘れられなくてその男を振ったんだぞ?」
『そうかも知れないが…相手の男の気持ちを考えると…気の毒で…』
「はぁ?お前…何言ってるんだよ?邪魔者がいなくなったんだ。普通は喜ぶべきだろう?」
『そんな言い方するなよ。お前…誰かに告白するって事がどれだけ勇気がいることなのか分かっているのか?それが決して叶わないのが分かりきっていながら、それでも告白するって言うのがどれ程のものか…』
「…」
俺は川口の言葉に黙ってしまった。
『…でも、教えてくれてありがとう。それじゃ…またな』
「あ、ああ…またな…」
川口は電話を切りたがっているのを何となく察知した俺は余計な事を言うのはやめることにした。
ピッ
そして俺と川口は互いに電話を切った―。
チラリ
鈴音を盗み見すると、片側の髪を耳にかけ、髪が垂れて来ない様にうなじ部分を押さえて食べている。…妙に色気のある食べ方をしているからだろうか…先程から近くに座る男どもが鈴音に注目している。
チッ…。
少しは自覚しろ。自分が周りの男たちからどんな目で見られているのかを…。それにもっと気になるのは川口の弟の方だ。確か19歳って言ってたけど…鈴音よりも随分年下のくせに、あんな目で見やがって…!
「なぁ…鈴音」
イライラしながら俺は鈴音に声を掛けた。
「何?」
「あのさっきの男…」
「え?」
鈴音の顔色がサッと変わる。オイ…マジかよ。ひょっとして鈴音…。いや…鈴音に限ってそれは無い…だろう。そんな事よりも鈴音と同じ会社に勤めている男達のほうが気がかりだ。そこで俺は食事をしながら鈴音に質問をすることにした―。
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「うわっ!さっむ~いっ!!早く帰ろう!」
店を出た鈴音は大袈裟なくらい寒がった。
「何だ?そんなに寒いか?」
俺は大田という先輩がバリ島へ旅立ったという話を聞かされ、良い気分で鈴音に声を掛けた。本当にあの男がいなくなってくれて良かった…。あいつが今、一番頭の痛い存在だったから喜びもひとしおだ。そして俺たちは他愛もない話をしながら…帰路に着いた―。
****
22時―
帰宅して風呂からあがった俺は自室にこもると、早速スマホをタップした。電話を掛ける相手は当然川口だ。
トゥルルルルル…
5回目のコール音の後、川口が電話に出た。
『もしもし』
「俺だ」
『ああ…丁度電話しようかと思っていたんだ。今日、鈴音と駅前のファミレスに行ったんだろう?和也に聞いたよ』
「そうか…お前の弟、早速連絡入れたのか」
『ああ、まぁな…所で…』
「何だよ?」
『鈴音に…手を出したりしていないよな?』
「な、何言い出すんだよ!お前はっ!」
思わず大きな声を上げてしまう。
『何でそんなに驚くんだ?あ!まさか…』
「いや、待て!お前が思っているような事は何も無いからな?!」
俺は慌てて弁明する。恐らく川口の言う『手を出す』というのは…男女の関係の事をさしているに違いない。だったら問題ないだろう。…俺は鈴音にキスだけしかしたことが無いから…。うん、ぎりぎりセーフだ。やましい気持ちを抑えつつ、俺は自分にそう言い聞かせた。
『そう…か、ならいいんだが…。ところで何の用があって電話してきたんだ?』
「ああ、お前にとっておきの情報を教えてやろうと思ってな?」
『とっておき…?』
「ああ、そうだ。鈴音にいいよっていた会社の男がバリ島へ転勤になったんだよ」
『え?何だって?』
「どうもはっきり鈴音は言わなかったが…多分その男は鈴音にバリ島へ一緒に来てもらいたかったんだろうな?だが、鈴音に全くその気は無かった。それであっさりふられたんだろう?」
『そう…か…』
答える川口の声がどこか暗い。
「何だよ、そんな暗い声出して…嬉しくないのかよ?鈴音はまだお前が忘れられなくてその男を振ったんだぞ?」
『そうかも知れないが…相手の男の気持ちを考えると…気の毒で…』
「はぁ?お前…何言ってるんだよ?邪魔者がいなくなったんだ。普通は喜ぶべきだろう?」
『そんな言い方するなよ。お前…誰かに告白するって事がどれだけ勇気がいることなのか分かっているのか?それが決して叶わないのが分かりきっていながら、それでも告白するって言うのがどれ程のものか…』
「…」
俺は川口の言葉に黙ってしまった。
『…でも、教えてくれてありがとう。それじゃ…またな』
「あ、ああ…またな…」
川口は電話を切りたがっているのを何となく察知した俺は余計な事を言うのはやめることにした。
ピッ
そして俺と川口は互いに電話を切った―。
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