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亮平 37
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「全て話すけど…頼みがある。俺と会った事は鈴音には決して言わないで欲しいんだ。それに…もう今日でこのスマホも解約する。代わりにあんたには新しい俺の連絡先を渡しておくよ」
川口は事前にメモしてきたのか、新しいスマホの電話番号とメールアドレスが書かれたメモ紙を俺のテーブルの前に差し出して来た。
「解約って…どういう事だよ」
「婚約者は…俺に恋人がいる事を知ってるんだよ。それで二度と連絡取れない様にスマを変えるよう、言われたんだ」
川口は青ざめた顔で言う。まただ。また婚約者の話が出て来た。
「川口…お前って最低な男だったんだな。何所の世界に婚約者がいるくせに恋人を作る奴がいるんだよ!それともアレか?婚約者と結婚した後、愛人として鈴音を囲うつもりだったのか?」
「違うっ!」
俺の言葉に川口が反論した。
「違う…そうじゃない。彼女が婚約者に突然決まったのは今からほんの半月ほど前の事だったんだ…婚約だって俺の意思じゃない…」
川口は頭を両手で押さえて苦し気に言う。
「おい…一体お前の身に何が起こったんだよ?全部教えろ。俺には状況がさっぱり分らないんだからな」
「ああ、分ったよ…」
川口はポツリポツリと語りだした―。
****
目の前のコーヒを一口飲むと川口は言った。
「川口家電…って知ってるか?」
「ああ、知ってるぞ。主に小型の家電を作っている企業だろう?炊飯器やらホットプレートとか…調理家電が得意分野じゃ無かったか?」
「へ~中々詳しいんだな?」
川口が感心したように言う。
「別にこれくらい、普通だろう?…ん?待てよ…。ひょっとしてお前…川口家電ってお前の会社かっ?!」
すると川口が苦笑した。
「別に俺の会社ってわけじゃないさ。父が作った会社だからね」
「何言ってるんだよ、だけどお前はその会社の御曹司なんだからゆくゆくは後を継ぐわけじゃないか」
「後を継ぐ…か…」
川口の表情に暗い影が落ちる。
「どうした?」
「それじゃ、この話は知ってるか?川口家電は赤字続きで、倒産寸前だって話は」
「え…?」
「俺は…会社の後を継ぎたくなくて、反対を押し切って引っ越し会社に入社して家を出ていたんだ。だから…全然知らなかった。業績不振で倒産寸前だって事を…。半月ほど前に突然父から電話が入って来たんだ。会社が今にも潰れそうだ、助けてくれって。社員を守りたいんだって。それで俺は父と一緒になって銀行融資を頼んでみたけど、どこも断られてしまった…。そこで今度は事業提携を結んでくれる会社を探したんだ」
俺は黙って聞いていた。確かに銀行は業績不振や赤字経営、債務超過があれば融資を断って当然だ。だけど…。
「俺に…少しでも相談してくれれば良かったのに…」
気づけば口に出ていた。
「え…?」
川口が意外そうな顔で俺を見る。
「そうか…お前は知らなかったかもな。俺は銀行員なのさ」
「え…?そ、そうだったのか…」
「ああ、そうだ。今から相談に乗ってやろうか?」
だが川口は首を振る。
「いや…もう手遅れだよ。そもそも俺が婚約したのも…事業連携してくれる商事会社の社長令嬢に何故か気に入られて…結婚することが条件にされてしまったからなのさ。いわゆる…政略結婚…。いや、それは違うか。俺は買われたんだよ。常盤商事にね」
「…!」
その話に俺は言葉を失ってしまった―。
川口は事前にメモしてきたのか、新しいスマホの電話番号とメールアドレスが書かれたメモ紙を俺のテーブルの前に差し出して来た。
「解約って…どういう事だよ」
「婚約者は…俺に恋人がいる事を知ってるんだよ。それで二度と連絡取れない様にスマを変えるよう、言われたんだ」
川口は青ざめた顔で言う。まただ。また婚約者の話が出て来た。
「川口…お前って最低な男だったんだな。何所の世界に婚約者がいるくせに恋人を作る奴がいるんだよ!それともアレか?婚約者と結婚した後、愛人として鈴音を囲うつもりだったのか?」
「違うっ!」
俺の言葉に川口が反論した。
「違う…そうじゃない。彼女が婚約者に突然決まったのは今からほんの半月ほど前の事だったんだ…婚約だって俺の意思じゃない…」
川口は頭を両手で押さえて苦し気に言う。
「おい…一体お前の身に何が起こったんだよ?全部教えろ。俺には状況がさっぱり分らないんだからな」
「ああ、分ったよ…」
川口はポツリポツリと語りだした―。
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目の前のコーヒを一口飲むと川口は言った。
「川口家電…って知ってるか?」
「ああ、知ってるぞ。主に小型の家電を作っている企業だろう?炊飯器やらホットプレートとか…調理家電が得意分野じゃ無かったか?」
「へ~中々詳しいんだな?」
川口が感心したように言う。
「別にこれくらい、普通だろう?…ん?待てよ…。ひょっとしてお前…川口家電ってお前の会社かっ?!」
すると川口が苦笑した。
「別に俺の会社ってわけじゃないさ。父が作った会社だからね」
「何言ってるんだよ、だけどお前はその会社の御曹司なんだからゆくゆくは後を継ぐわけじゃないか」
「後を継ぐ…か…」
川口の表情に暗い影が落ちる。
「どうした?」
「それじゃ、この話は知ってるか?川口家電は赤字続きで、倒産寸前だって話は」
「え…?」
「俺は…会社の後を継ぎたくなくて、反対を押し切って引っ越し会社に入社して家を出ていたんだ。だから…全然知らなかった。業績不振で倒産寸前だって事を…。半月ほど前に突然父から電話が入って来たんだ。会社が今にも潰れそうだ、助けてくれって。社員を守りたいんだって。それで俺は父と一緒になって銀行融資を頼んでみたけど、どこも断られてしまった…。そこで今度は事業提携を結んでくれる会社を探したんだ」
俺は黙って聞いていた。確かに銀行は業績不振や赤字経営、債務超過があれば融資を断って当然だ。だけど…。
「俺に…少しでも相談してくれれば良かったのに…」
気づけば口に出ていた。
「え…?」
川口が意外そうな顔で俺を見る。
「そうか…お前は知らなかったかもな。俺は銀行員なのさ」
「え…?そ、そうだったのか…」
「ああ、そうだ。今から相談に乗ってやろうか?」
だが川口は首を振る。
「いや…もう手遅れだよ。そもそも俺が婚約したのも…事業連携してくれる商事会社の社長令嬢に何故か気に入られて…結婚することが条件にされてしまったからなのさ。いわゆる…政略結婚…。いや、それは違うか。俺は買われたんだよ。常盤商事にね」
「…!」
その話に俺は言葉を失ってしまった―。
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