325 / 519
第19章 11 私だったら…
しおりを挟む
午後6時―
この日はいつもより代理店を訪れるお客は少なかった。なので定時であがれた。
「お疲れさまでした」
社員の人達に挨拶をして帰りかけた時、井上君に呼び止められた。
「加藤さん」
「何?」
「あ、あのさ…」
「?」
「夜…メールするから・・あ、いや。電話入れるからさ。新年会の事で」
「う、うん…?」
「そ、それじゃお疲れ!」
「うん。お疲れ様…」
今のは一体何だったんだろう?私は首を傾げながらロッカールームへ向かった―。
制服から私服に着替えて、お店の社員用通用口から出るとスマホを確認した。するとお姉ちゃんからメールが入っていた。え?お姉ちゃん…?どうかしたのかな?スマホをタップして、メッセージを開いた。
『鈴音ちゃん。実家に帽子忘れていってるわよ。連絡頂戴』
「帽子…あ、そうか。持って行ってたんだっけ」
私はすぐにスマホをタップしてお姉ちゃんに電話を掛けた。
ピッ
トゥルルルルル…
トゥルルルルル…
『もしもし?』
「あ、お姉ちゃん。この間は色々ありがとう」
『何言ってるの?当然でしょう?それで鈴音ちゃん。ニットの帽子を忘れていってるけど…』
「うん。そうみたいだね。実は忘れて帰った事自体、忘れていたの」
『何、それ?』
電話越しでお姉ちゃんがクスクス笑っている声が聞こえた。
「それで帽子なんだけど、今度のお休みの日に取りに行くから置いておいてもらえる?」
『え?それでいいの?明日から凄く冷え込んで雪が降るかもしれないってニュースで言ってるわよ?』
「うん、大丈夫だよ」
『そう?分かったわ。ところで鈴音ちゃん、もう仕事は終わったの?』
「うん、今日は早番だったし、お店に来るお客さんが少なかったから今から帰るところだよ」
『そう、分かったわ。それじゃ気をつけて帰ってね。またね、鈴音ちゃん』
「うん、またね」
ピッ
スマホを切ると、私は自転車を取りに行った―。
****
18時半―
「ただいま~」
誰もいないマンションへ帰ると、壁についているスイッチを押して明かりをつける。
「う~寒かった…」
ハーハー手に息を掛けながら、部屋の中に置いてあるエアコンのリモコンに手を伸ばして、早速電源を入れる。その後に上着を脱ぐとフックに掛けて洗面台へ向かった。
手を洗ってキッチンへ向かうと早速冷蔵庫を開けて、お姉ちゃんが詰めてくれたおせちが入ったタッパと、作ってくれた煮物を取り出して煮物はレンジで温めた。
ピーピー
レンジが温まり、火傷しないように慎重に取り出すとお盆の上におせちと煮物を乗せて部屋へと運んだ。そしてテレビをつけるとパチンと手を合わせた。
「いただきまーす」
そして私はお一人様おせちで夜ご飯を食べ始めた。
「うわっ!この里芋おいし~」
お姉ちゃんの煮物は絶品だった。お姉ちゃんは料理が上手だから、亮平は幸せものかも知れない。
テレビではバラエティ番組をやっている。その番組を見ながら私は全く別の事を考えていた。それにしても…2人は何月頃式を挙げるんだろう?私に報告はいつしてくれるのかな…?そんな風に思いながら、私は1人置いてけぼりをされているような感覚になり、妙に寂しさを覚えた。
パクリ
大好きな黒豆を口に入れ…私はため息をついた―。
****
22時―
お風呂から上がって、PCでネット配信ドラマを観ていると不意にスマホに着信が入ってきた。スマホを手繰り寄せると着信相手は井上君だった。
ピッ
スマホをタップして電話を受けた。
「もしもし、井上君?」
『ごめん。夜遅くに』
「いいよ。普通に起きてたから」
『今忙しい?』
「ううん、ネットでドラマ観てただけだから大丈夫だよ?」
『そっか、なら良かった。それで、新年会の会場と場所なんだけど…』
井上君は場所と予算の説明を始め、私は相槌を打ちながら聞いた。でも、これって…メールで送ってもらった方がいいんじゃないかな?だから井上君の説明が終わると言った。
「ねぇ、井上君」
『な、何?』
「悪いけど、今の内容…メールでもう一度送っておいて貰える?」
『あ、ああ…そうだね。…最初からメールにしとけば良かったかな?』
何故か元気ない声が聞こえてくる。
「え?別にどっちも良かったと思うよ?」
『それじゃ、後でメール送っておくよ。それじゃまた』
「うん、またね」
ピッ
そして電話を切ると、私は結婚式を紹介するHPを開いた。
「私だったら…自然に囲まれた教会で結婚式を挙げたいな…」
ポツリと呟いた―。
この日はいつもより代理店を訪れるお客は少なかった。なので定時であがれた。
「お疲れさまでした」
社員の人達に挨拶をして帰りかけた時、井上君に呼び止められた。
「加藤さん」
「何?」
「あ、あのさ…」
「?」
「夜…メールするから・・あ、いや。電話入れるからさ。新年会の事で」
「う、うん…?」
「そ、それじゃお疲れ!」
「うん。お疲れ様…」
今のは一体何だったんだろう?私は首を傾げながらロッカールームへ向かった―。
制服から私服に着替えて、お店の社員用通用口から出るとスマホを確認した。するとお姉ちゃんからメールが入っていた。え?お姉ちゃん…?どうかしたのかな?スマホをタップして、メッセージを開いた。
『鈴音ちゃん。実家に帽子忘れていってるわよ。連絡頂戴』
「帽子…あ、そうか。持って行ってたんだっけ」
私はすぐにスマホをタップしてお姉ちゃんに電話を掛けた。
ピッ
トゥルルルルル…
トゥルルルルル…
『もしもし?』
「あ、お姉ちゃん。この間は色々ありがとう」
『何言ってるの?当然でしょう?それで鈴音ちゃん。ニットの帽子を忘れていってるけど…』
「うん。そうみたいだね。実は忘れて帰った事自体、忘れていたの」
『何、それ?』
電話越しでお姉ちゃんがクスクス笑っている声が聞こえた。
「それで帽子なんだけど、今度のお休みの日に取りに行くから置いておいてもらえる?」
『え?それでいいの?明日から凄く冷え込んで雪が降るかもしれないってニュースで言ってるわよ?』
「うん、大丈夫だよ」
『そう?分かったわ。ところで鈴音ちゃん、もう仕事は終わったの?』
「うん、今日は早番だったし、お店に来るお客さんが少なかったから今から帰るところだよ」
『そう、分かったわ。それじゃ気をつけて帰ってね。またね、鈴音ちゃん』
「うん、またね」
ピッ
スマホを切ると、私は自転車を取りに行った―。
****
18時半―
「ただいま~」
誰もいないマンションへ帰ると、壁についているスイッチを押して明かりをつける。
「う~寒かった…」
ハーハー手に息を掛けながら、部屋の中に置いてあるエアコンのリモコンに手を伸ばして、早速電源を入れる。その後に上着を脱ぐとフックに掛けて洗面台へ向かった。
手を洗ってキッチンへ向かうと早速冷蔵庫を開けて、お姉ちゃんが詰めてくれたおせちが入ったタッパと、作ってくれた煮物を取り出して煮物はレンジで温めた。
ピーピー
レンジが温まり、火傷しないように慎重に取り出すとお盆の上におせちと煮物を乗せて部屋へと運んだ。そしてテレビをつけるとパチンと手を合わせた。
「いただきまーす」
そして私はお一人様おせちで夜ご飯を食べ始めた。
「うわっ!この里芋おいし~」
お姉ちゃんの煮物は絶品だった。お姉ちゃんは料理が上手だから、亮平は幸せものかも知れない。
テレビではバラエティ番組をやっている。その番組を見ながら私は全く別の事を考えていた。それにしても…2人は何月頃式を挙げるんだろう?私に報告はいつしてくれるのかな…?そんな風に思いながら、私は1人置いてけぼりをされているような感覚になり、妙に寂しさを覚えた。
パクリ
大好きな黒豆を口に入れ…私はため息をついた―。
****
22時―
お風呂から上がって、PCでネット配信ドラマを観ていると不意にスマホに着信が入ってきた。スマホを手繰り寄せると着信相手は井上君だった。
ピッ
スマホをタップして電話を受けた。
「もしもし、井上君?」
『ごめん。夜遅くに』
「いいよ。普通に起きてたから」
『今忙しい?』
「ううん、ネットでドラマ観てただけだから大丈夫だよ?」
『そっか、なら良かった。それで、新年会の会場と場所なんだけど…』
井上君は場所と予算の説明を始め、私は相槌を打ちながら聞いた。でも、これって…メールで送ってもらった方がいいんじゃないかな?だから井上君の説明が終わると言った。
「ねぇ、井上君」
『な、何?』
「悪いけど、今の内容…メールでもう一度送っておいて貰える?」
『あ、ああ…そうだね。…最初からメールにしとけば良かったかな?』
何故か元気ない声が聞こえてくる。
「え?別にどっちも良かったと思うよ?」
『それじゃ、後でメール送っておくよ。それじゃまた』
「うん、またね」
ピッ
そして電話を切ると、私は結婚式を紹介するHPを開いた。
「私だったら…自然に囲まれた教会で結婚式を挙げたいな…」
ポツリと呟いた―。
0
お気に入りに追加
865
あなたにおすすめの小説

関係を終わらせる勢いで留学して数年後、犬猿の仲の狼王子がおかしいことになっている
百門一新
恋愛
人族貴族の公爵令嬢であるシェスティと、獣人族であり六歳年上の第一王子カディオが、出会った時からずっと犬猿の仲なのは有名な話だった。賢い彼女はある日、それを終わらせるべく(全部捨てる勢いで)隣国へ保留学した。だが、それから数年、彼女のもとに「――カディオが、私を見ないと動機息切れが収まらないので来てくれ、というお願いはなんなの?」という変な手紙か実家から来て、帰国することに。そうしたら、彼の様子が変で……?
※さくっと読める短篇です、お楽しみいだたけましたら幸いです!
※他サイト様にも掲載

溺婚
明日葉
恋愛
香月絢佳、37歳、独身。晩婚化が進んでいるとはいえ、さすがにもう、無理かなぁ、と残念には思うが焦る気にもならず。まあ、恋愛体質じゃないし、と。
以前階段落ちから助けてくれたイケメンに、馴染みの店で再会するものの、この状況では向こうの印象がよろしいはずもないしと期待もしなかったのだが。
イケメン、天羽疾矢はどうやら絢佳に惹かれてしまったようで。
「歳も歳だし、とりあえず試してみたら?こわいの?」と、挑発されればつい、売り言葉に買い言葉。
何がどうしてこうなった?
平凡に生きたい、でもま、老後に1人は嫌だなぁ、くらいに構えた恋愛偏差値最底辺の絢佳と、こう見えて仕事人間のイケメン疾矢。振り回しているのは果たしてどっちで、振り回されてるのは、果たしてどっち?
余命宣告を受けたので私を顧みない家族と婚約者に執着するのをやめる事にしました 〜once again〜
結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
【アゼリア亡き後、残された人々のその後の物語】
白血病で僅か20歳でこの世を去った前作のヒロイン、アゼリア。彼女を大切に思っていた人々のその後の物語
※他サイトでも投稿中

訳あり冷徹社長はただの優男でした
あさの紅茶
恋愛
独身喪女の私に、突然お姉ちゃんが子供(2歳)を押し付けてきた
いや、待て
育児放棄にも程があるでしょう
音信不通の姉
泣き出す子供
父親は誰だよ
怒り心頭の中、なしくずし的に子育てをすることになった私、橋本美咲(23歳)
これはもう、人生詰んだと思った
**********
この作品は他のサイトにも掲載しています

忙しい男
菅井群青
恋愛
付き合っていた彼氏に別れを告げた。忙しいという彼を信じていたけれど、私から別れを告げる前に……きっと私は半分捨てられていたんだ。
「私のことなんてもうなんとも思ってないくせに」
「お前は一体俺の何を見て言ってる──お前は、俺を知らな過ぎる」
すれ違う想いはどうしてこうも上手くいかないのか。いつだって思うことはただ一つ、愛おしいという気持ちだ。
※ハッピーエンドです
かなりやきもきさせてしまうと思います。
どうか温かい目でみてやってくださいね。
※本編完結しました(2019/07/15)
スピンオフ &番外編
【泣く背中】 菊田夫妻のストーリーを追加しました(2019/08/19)
改稿 (2020/01/01)
本編のみカクヨムさんでも公開しました。
余命六年の幼妻の願い~旦那様は私に興味が無い様なので自由気ままに過ごさせて頂きます。~
流雲青人
恋愛
商人と商品。そんな関係の伯爵家に生まれたアンジェは、十二歳の誕生日を迎えた日に医師から余命六年を言い渡された。
しかし、既に公爵家へと嫁ぐことが決まっていたアンジェは、公爵へは病気の存在を明かさずに嫁ぐ事を余儀なくされる。
けれど、幼いアンジェに公爵が興味を抱く訳もなく…余命だけが過ぎる毎日を過ごしていく。
「好き」の距離
饕餮
恋愛
ずっと貴方に片思いしていた。ただ単に笑ってほしかっただけなのに……。
伯爵令嬢と公爵子息の、勘違いとすれ違い(微妙にすれ違ってない)の恋のお話。
以前、某サイトに載せていたものを大幅に改稿・加筆したお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる