本日、私の大好きな幼馴染が大切な姉と結婚式を挙げます

結城芙由奈@コミカライズ発売中

文字の大きさ
上 下
297 / 519

第18章 7 亮平の迎え

しおりを挟む
 夕方6時―

帰宅すると部屋の中にはシチューの匂いが漂っていた。

「ただいま~」

するとお姉ちゃんが玄関に迎えに来てくれた。

「お帰りなさい、鈴音ちゃん」

「美味しそうな匂いがするね。今夜はシチューなんだね」

玄関から上がり込むとお姉ちゃんを見た。

「ええ、だけど亮平君がスーパー銭湯で食事するって電話かけてきたのよ」

「え?そうなの?別に家で食べていけばいいのに…」

「ふふ。お風呂上がりお酒が飲みたいんじゃないのかしら?」

「そっか…まあ別にいいけどね」

ダウンジャケットを脱いでコート掛けに掛けると手を洗いに洗面台へ向かった。


 手を石鹸でよく洗って部屋に戻るとお姉ちゃんがリビングで洗濯物を畳んでいた。

「私も手伝うよ」

「そう、ありがとう」

笑みを浮かべるお姉ちゃん。2人でリビングで洗濯物を畳んでいるとお姉ちゃんが話しかけてきた。

「鈴音ちゃん、何買ってきたの?」

「うん、バスグッズを買ってきたの。今のマンションはお風呂が付いているから、色々な入浴剤試してみたくて。でも結局入浴剤じゃなくてシャンプーやコンディショナーを買っちゃったんだけどね」

「そうだったの。鈴音ちゃんはお風呂好きだものね」

「うん」

2人で会話をしながらこうしていると何だか昔に戻ったみたいだ。お姉ちゃんはもう…普通と変わりないように見えた―。


****

午後7時―

ピンポーン

玄関のインターホンが部屋に鳴り響いた。お姉ちゃんと2人でニュース番組を見ているときだった。

「きっと亮平君ね。鈴音ちゃん、出てくれる?」

「う、うん。別にいいけど…」

恋人のお姉ちゃんが出迎えなくていいのかな?少し疑問に思ったけど、ソファから立ち上がると玄関へ向かった。


ガチャリ

扉を開けると、そこにはダウンジャケットをきたジーンズ姿の亮平がスポーツバックを持って立っていた。

「お待たせ、鈴音」

「こんばんは、亮平」

亮平は私の姿を見ると言った。

「何だよ、まだ出掛けられる準備出来ていないのか?」

「そんな事無いよ、もうお風呂に行ける準備は終わっているよ。ほら荷物はこれだもの。」

私は玄関に置いておいた大きめのビニール製のトートバックを指差すと言った。

「よし、それじゃすぐ行こうぜ。上着持ってこいよ」

「うん、でも待って。お姉ちゃんにも出掛ける準備するように声掛けてこなくちゃいけないから」

「何言ってるんだ?忍は行かないぞ?」

「え?嘘でしょう?何で?」

「何でって最初から俺とお前で行く予定なんだから」

「ええっ?!ど、どうしてなの?!」

その時―

「あら、まだ出掛けてなかったの?」

お姉ちゃんが私のダウンコートを持って玄関に現れた。

「あ、こんばんは。忍さん」

亮平が笑顔でお姉ちゃんに挨拶する。だけど…忍さん?何だか亮平の言葉にお姉ちゃんに対して他人行儀に感じるのは気の所為かな?

「それじゃ、亮平君。鈴音ちゃんをよろしくね。はい、上着」

お姉ちゃん私に上着を渡してきた。

「はい、勿論。よし、鈴音。行くぞ」

亮平はさっさと玄関から出ていってしまう。

「え?あ、あの!」

焦ってお姉ちゃんを見ると、ニコニコしながら私に言った。

「ほら、亮平君行ったわよ。早く行かないと」

今の状況を理解できなかったけれども、後で話は亮平に聞けばいいかな。

「う、うん…行ってきます」

玄関を出ると、亮平が門の外で待っていた。

「遅いぞ、鈴音」

白い息を吐きながら亮平が言う。

「うん、ごめんね」

「よし、行くか」

そして亮平が歩き始めたので私もその後を追った―。
しおりを挟む
感想 208

あなたにおすすめの小説

関係を終わらせる勢いで留学して数年後、犬猿の仲の狼王子がおかしいことになっている

百門一新
恋愛
人族貴族の公爵令嬢であるシェスティと、獣人族であり六歳年上の第一王子カディオが、出会った時からずっと犬猿の仲なのは有名な話だった。賢い彼女はある日、それを終わらせるべく(全部捨てる勢いで)隣国へ保留学した。だが、それから数年、彼女のもとに「――カディオが、私を見ないと動機息切れが収まらないので来てくれ、というお願いはなんなの?」という変な手紙か実家から来て、帰国することに。そうしたら、彼の様子が変で……? ※さくっと読める短篇です、お楽しみいだたけましたら幸いです! ※他サイト様にも掲載

余命宣告を受けたので私を顧みない家族と婚約者に執着するのをやめる事にしました 〜once again〜

結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
【アゼリア亡き後、残された人々のその後の物語】 白血病で僅か20歳でこの世を去った前作のヒロイン、アゼリア。彼女を大切に思っていた人々のその後の物語 ※他サイトでも投稿中

溺婚

明日葉
恋愛
 香月絢佳、37歳、独身。晩婚化が進んでいるとはいえ、さすがにもう、無理かなぁ、と残念には思うが焦る気にもならず。まあ、恋愛体質じゃないし、と。  以前階段落ちから助けてくれたイケメンに、馴染みの店で再会するものの、この状況では向こうの印象がよろしいはずもないしと期待もしなかったのだが。  イケメン、天羽疾矢はどうやら絢佳に惹かれてしまったようで。 「歳も歳だし、とりあえず試してみたら?こわいの?」と、挑発されればつい、売り言葉に買い言葉。  何がどうしてこうなった?  平凡に生きたい、でもま、老後に1人は嫌だなぁ、くらいに構えた恋愛偏差値最底辺の絢佳と、こう見えて仕事人間のイケメン疾矢。振り回しているのは果たしてどっちで、振り回されてるのは、果たしてどっち?

睡蓮

樫野 珠代
恋愛
入社して3か月、いきなり異動を命じられたなぎさ。 そこにいたのは、出来れば会いたくなかった、会うなんて二度とないはずだった人。 どうしてこんな形の再会なの?

訳あり冷徹社長はただの優男でした

あさの紅茶
恋愛
独身喪女の私に、突然お姉ちゃんが子供(2歳)を押し付けてきた いや、待て 育児放棄にも程があるでしょう 音信不通の姉 泣き出す子供 父親は誰だよ 怒り心頭の中、なしくずし的に子育てをすることになった私、橋本美咲(23歳) これはもう、人生詰んだと思った ********** この作品は他のサイトにも掲載しています

余命六年の幼妻の願い~旦那様は私に興味が無い様なので自由気ままに過ごさせて頂きます。~

流雲青人
恋愛
商人と商品。そんな関係の伯爵家に生まれたアンジェは、十二歳の誕生日を迎えた日に医師から余命六年を言い渡された。 しかし、既に公爵家へと嫁ぐことが決まっていたアンジェは、公爵へは病気の存在を明かさずに嫁ぐ事を余儀なくされる。 けれど、幼いアンジェに公爵が興味を抱く訳もなく…余命だけが過ぎる毎日を過ごしていく。

忙しい男

菅井群青
恋愛
付き合っていた彼氏に別れを告げた。忙しいという彼を信じていたけれど、私から別れを告げる前に……きっと私は半分捨てられていたんだ。 「私のことなんてもうなんとも思ってないくせに」 「お前は一体俺の何を見て言ってる──お前は、俺を知らな過ぎる」 すれ違う想いはどうしてこうも上手くいかないのか。いつだって思うことはただ一つ、愛おしいという気持ちだ。 ※ハッピーエンドです かなりやきもきさせてしまうと思います。 どうか温かい目でみてやってくださいね。 ※本編完結しました(2019/07/15) スピンオフ &番外編 【泣く背中】 菊田夫妻のストーリーを追加しました(2019/08/19) 改稿 (2020/01/01) 本編のみカクヨムさんでも公開しました。

「好き」の距離

饕餮
恋愛
ずっと貴方に片思いしていた。ただ単に笑ってほしかっただけなのに……。 伯爵令嬢と公爵子息の、勘違いとすれ違い(微妙にすれ違ってない)の恋のお話。 以前、某サイトに載せていたものを大幅に改稿・加筆したお話です。

処理中です...