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第17章 15 私を気にかけてくれる人たち
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食事も終え、片付けを済ませるとバスルームに移動してバスタブにお湯を張り始めた。お湯を貯めながら脱衣所の棚に置いてある入浴剤を眺めた。
「今夜はどの入浴剤にしようかな…?よし、これにしよう」
手に取ったのは特別な入浴剤のバスボムでラベンダーの香り。
「フフ…いい香り。今夜はリッチな気分で入ろう」
だってクリスマスだしね。特別な日の為に買ったバスボム。今夜はこのお風呂にゆっく浸かって寝ることにしよう。そして着替えを取りに行った―。
「あ~…いい気持ち…」
浴槽の中でシュワシュワ弾けるバスボムを見つめながら久しぶりに穏やかな気持ちでお風呂に入った。それにしても我ながら、単純な人間だと思ってしまった。だって入浴剤入のお風呂で穏やかな気持ちになってしまうのだから。そこで私は気がついた。そうだ、好きな物に囲まれていれば…失恋の傷が早く癒えるかもしれない。私はお風呂が好きだから、これからは入浴タイムを大切にしよう、と―。
****
お風呂から上がって、濡れた髪をバスタオルで拭きながら部屋に戻るとテーブルの上に乗せたスマホがチカチカ光っている。
「あれ?着信が入っている…。亮平かお姉ちゃんかな?」
スマホを手にして、タップしてみる3件の着信が入っている。まさか恵利さんからは来てないよね…?もう最後のメールと言っていたから大丈夫だとは思うけど…。
着信相手は亮平とお姉ちゃん、そして…。
「え…?太田先輩…?」
今まで一度もメールなんか届いた事無かったのに?とりあえず亮平のメールから見てみることにした。
『メリークリスマス!鈴音。忍の家で2人でクリスマスツリーを飾ったからお前にもみせてやるよ』
メールには画像ファイルがつけられている。画像を開いてみると、そこには美しく飾られたクリスマスツリーの画像が表示された。
「へ~…本格的だな…2人で飾り付けしたんだ。亮平とお姉ちゃん…うまくいってるんだね…」
次にお姉ちゃんのメールをタップしてみた。
『メリークリスマス★鈴音ちゃん。年末年始は家に泊まってくれるわよね?亮平君も泊まってくれるっていうから3人でお泊り会しましょう?実はおせち料理も通販で注文済みなの。待ってるから」
「お姉ちゃん…。私を元気付ける為に呼んでるのかな?でも亮平も来るのに…私邪魔じゃないかな…」
とりあえず、年末年始に家に泊まる話は、保留にしておこう。そして最後に太田先輩のメールを表示させてみた。
『メリークリスマス。加藤さん。とっておきの動画を見せてあげるよ』
「え…?とっておきの動画…?」
見ると確かに動画ファイルが貼り付けてある。一瞬画像ファイルを目にしたときに直人さんの別れを告げるメッセージ動画を思い出し、首を振った。ううん、このメールは直人さんからではない。太田先輩からのメールなのだから…。
震える指先で画像フィルをタップし…動画が再生された。
「え…?子猫…?」
動画は真っ白な子猫がおもちゃで遊んでいる姿だった。猫じゃらしで遊んでいるかと思えば、次に映し出されたのはミルクを飲んでいる姿、それに餌を食べながら力尽きて眠ってしまう子猫。どれもがとても愛らしい姿だった。
「フフフ…可愛いな…」
いつしか夢中になって動画を見ていた。やがて動画の再生が終わる頃には心が暖かくなっていた。
「太田先輩って…ひょっとして猫飼ってるのかな?」
早速お礼のメールを先輩に打った。
『子猫の動画、見ました。とても可愛かったです、ありがとうございます』
すると、すぐに返信が来た。
「え?もう返信?」
タップしてみると、やはりそれは太田先輩からだった。
『少しは元気になったか?返信は良いから、感想は明日聞かせてもらうよ。おやすみ』
そのメールには先輩の気遣いが感じられた。
「私…相当心配かけさせていたのかな…?」
ありがとうございます、先輩。私は心の中でお礼を述べた。
明日、朝一番に太田先輩にお礼を言おう。
そして部屋の明かりを消すとベッドへ入り、眠りについた―。
「今夜はどの入浴剤にしようかな…?よし、これにしよう」
手に取ったのは特別な入浴剤のバスボムでラベンダーの香り。
「フフ…いい香り。今夜はリッチな気分で入ろう」
だってクリスマスだしね。特別な日の為に買ったバスボム。今夜はこのお風呂にゆっく浸かって寝ることにしよう。そして着替えを取りに行った―。
「あ~…いい気持ち…」
浴槽の中でシュワシュワ弾けるバスボムを見つめながら久しぶりに穏やかな気持ちでお風呂に入った。それにしても我ながら、単純な人間だと思ってしまった。だって入浴剤入のお風呂で穏やかな気持ちになってしまうのだから。そこで私は気がついた。そうだ、好きな物に囲まれていれば…失恋の傷が早く癒えるかもしれない。私はお風呂が好きだから、これからは入浴タイムを大切にしよう、と―。
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お風呂から上がって、濡れた髪をバスタオルで拭きながら部屋に戻るとテーブルの上に乗せたスマホがチカチカ光っている。
「あれ?着信が入っている…。亮平かお姉ちゃんかな?」
スマホを手にして、タップしてみる3件の着信が入っている。まさか恵利さんからは来てないよね…?もう最後のメールと言っていたから大丈夫だとは思うけど…。
着信相手は亮平とお姉ちゃん、そして…。
「え…?太田先輩…?」
今まで一度もメールなんか届いた事無かったのに?とりあえず亮平のメールから見てみることにした。
『メリークリスマス!鈴音。忍の家で2人でクリスマスツリーを飾ったからお前にもみせてやるよ』
メールには画像ファイルがつけられている。画像を開いてみると、そこには美しく飾られたクリスマスツリーの画像が表示された。
「へ~…本格的だな…2人で飾り付けしたんだ。亮平とお姉ちゃん…うまくいってるんだね…」
次にお姉ちゃんのメールをタップしてみた。
『メリークリスマス★鈴音ちゃん。年末年始は家に泊まってくれるわよね?亮平君も泊まってくれるっていうから3人でお泊り会しましょう?実はおせち料理も通販で注文済みなの。待ってるから」
「お姉ちゃん…。私を元気付ける為に呼んでるのかな?でも亮平も来るのに…私邪魔じゃないかな…」
とりあえず、年末年始に家に泊まる話は、保留にしておこう。そして最後に太田先輩のメールを表示させてみた。
『メリークリスマス。加藤さん。とっておきの動画を見せてあげるよ』
「え…?とっておきの動画…?」
見ると確かに動画ファイルが貼り付けてある。一瞬画像ファイルを目にしたときに直人さんの別れを告げるメッセージ動画を思い出し、首を振った。ううん、このメールは直人さんからではない。太田先輩からのメールなのだから…。
震える指先で画像フィルをタップし…動画が再生された。
「え…?子猫…?」
動画は真っ白な子猫がおもちゃで遊んでいる姿だった。猫じゃらしで遊んでいるかと思えば、次に映し出されたのはミルクを飲んでいる姿、それに餌を食べながら力尽きて眠ってしまう子猫。どれもがとても愛らしい姿だった。
「フフフ…可愛いな…」
いつしか夢中になって動画を見ていた。やがて動画の再生が終わる頃には心が暖かくなっていた。
「太田先輩って…ひょっとして猫飼ってるのかな?」
早速お礼のメールを先輩に打った。
『子猫の動画、見ました。とても可愛かったです、ありがとうございます』
すると、すぐに返信が来た。
「え?もう返信?」
タップしてみると、やはりそれは太田先輩からだった。
『少しは元気になったか?返信は良いから、感想は明日聞かせてもらうよ。おやすみ』
そのメールには先輩の気遣いが感じられた。
「私…相当心配かけさせていたのかな…?」
ありがとうございます、先輩。私は心の中でお礼を述べた。
明日、朝一番に太田先輩にお礼を言おう。
そして部屋の明かりを消すとベッドへ入り、眠りについた―。
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