本日、私の大好きな幼馴染が大切な姉と結婚式を挙げます

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第15章 2 仕事の帰り道で

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「お待たせ。」

着がえを終えて出てくると、すでに井上君が店の外で待っていた。

「いや、俺も今来たところだから大丈夫さ。」

「そう?それじゃ帰ろうか?」

「・・・うん。帰るか・・。」

2人で並んで繁華街を歩きながら井上君が話しかけてきた。

「どうだった?久しぶりの出勤は?」

「うん、最初は久しぶりだったから緊張したけど・・・でもその適度な緊張感が良かったのかな?いきなり眠くなってしまう事が無かったから。」

「ああ・・・それだね?加藤さん・・事故の後、突然強烈な眠気が襲って来て・・。」

「うん、そう。それで眠っちゃうの。下手したら4~5時間目が覚めない。」

「ええっ?!そ、そうなの・・・?!そこまでとは知らなかった・・・。」

井上君は呆然とした顔で私を見た。

「でも、その治療薬の薬を飲んでいるから多分大丈夫だよ。もっともまだ薬飲み始めたばかりなんだけどね・・・。それに定期的にカフェインを取っているし。」

「そう言えば今日はしょっちゅうコーヒーを飲んでいたけど・・それって眠気防止の為だったんだ?」

「うん。そうだよ。実はね、今日帰りに地元の駅でコーヒー豆を買って挽いてもらおうかと思っているんだ。カフェインが濃い豆が売ってるらしいから。」

「ふ~ん・・そうなのか・・。あ、あのさ・・。」

井上君が何か言いかけた時、突然私のスマホに着信が入って来た。

「あ、ごめんね。電話出てもいい?」

「うん。いいよ。」

ショルダーバッグからスマホを取り出すと着信相手は川口さんからだった。

「もしもし?」

『あ、もしもし?もう仕事終わったんだよね?』

「うん、そうだよ。あのね、今職場の人と一緒に帰っている所だから・・・また後で電話入れるね。」

『あ、そうなんだ。分った。電話・・・待ってるよ。』

「うん、それじゃあね。」

プツッ

電話を切って井上君を見た。

「ごめんね。話の途中だったのに・・・。え?ど、どうかしたの?」

井上君は呆然とした顔で私を見つめていた。

「加藤さん・・今の電話の相手って・・・?」

「あ、隣のマンションに住んでいる人だよ。友達なの。」

「友達って・・・ひょっとして男?」

「え?何でわかったの?!」

「や、やっぱり・・・!」

井上君は何故かショックを受けた顔をしている。

「仲・・・随分いいんだね。」

「う、うん。そうだね・・。でもどうして男の人からの電話って分ったの?」

「勘だよ。」

「勘・・・?」

「うん・・・女友達なら俺がいてもそのまま話をするかなと思って・・。」

「あ・・。」

確かに言われてみればそうかもしれない。

「それにすぐ電話を切ったって事は・・。何か訳アリとか?」

「そんな!訳なんか別にないよ!だって井上君と一緒に帰っているのに・・電話で話していたら・・悪いでしょう?」

それにしてもどうしたんだろう?随分追及して聞いて来るけど・・私の知る井上君はもっとあっさりした人だったのはずなのに・・。

「あ、あのさ・・。本当は今夜・・・一緒に食べて帰ろうかと思っていたんだけど・・無理そうだな。」

「それは・・。」

本当なら気にしないで井上君と食事をして帰っても、何も問題は無いはずだけど・・仮にも私は川口さんに告白されている。そんな状況で井上君と食事をして帰るのはまずい気がした。

「あ、あのね・・お昼休みに一緒に食事ならいいよ?夜は・・なるべく早く帰って早めに寝なくちゃいけないから・・。」

気付けば私は井上君に弁明していた。

「うん・・そうだよな。大体加藤さんは今日から出勤が始まったばかりだし・・明日も仕事だしね。」

「井上君・・・。」

気付けば、もうそこは駅だった。2人で階段を昇り、駅の改札まで一緒にやってきた。

「それじゃ・・・私、こっちだから。」

井上君とは反対向きのホームを指さしながら言う。

「うん。分ってるよ。」

苦笑しながら私を見る。

「それじゃあまたね。」

「うん。・・また。気を付けてね。」

そして私達は改札で何となく気まずい空気のまま別れた―。



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