本日、私の大好きな幼馴染が大切な姉と結婚式を挙げます

結城芙由奈@コミカライズ発売中

文字の大きさ
上 下
195 / 519

第13章 16 私の気持ち

しおりを挟む
「亮平・・・今の・・本気で言ってるの?」

スマホを持つ手が震えてしまう。

『ああ、勿論本気だ。あいつ・・本当にお前の事好きみたいだな?お前が今住んでいる部屋に引っ越した時、偶然知り合ったんだろう?真面目そうな男だし・・ああいうタイプの男なら安心してお前を任せられるよ。まあ・・実際に付き合うか、付き合わないかはお前が決めることだけどな?でも乗り気じゃないなら・・・。』

まるで父親か兄にでもなったかのような言い方をする亮平。この言葉だけで充分だった。亮平は・・・私の事を異性として、少しも見ていないという事が・・。

「そう・・分かったよ・・。」

『え?鈴音・・・?』

「亮平が・・・そこまで言うなら、川口さんとお付き合いしてもいいかもね?大切にしてもらえそうだし・・・。」

気づけば、勝手に口が動いていた。

『そ、そうか・・・。』

何故か亮平の狼狽えた声が聞こえる。でも、そんな事よりも・・・。

「ねぇ、亮平。お姉ちゃんの事で聞きたい事があるんだけど・・。」

『忍の?』

「うん、そう。お姉ちゃんを担当しているケースワーカーの人・・何て名前の人なの?亮平なら・・知ってるでしょう?」

『あ、ああ・・・。確か名字は服部って言ってたかな・・・?』

「その人って保健センターの人だよね?」

『そうだ。・・・母さんから聞いたのか?』

「うん、そうだよ。ありがとう、それじゃまたね。」

電話を切ろうとしたら受話器越しから慌てた様子で亮平が言った。

『え?それじゃ・・・って、それで終わりなのか?』

「うん、そうだよ。」

『俺から忍の話・・・聞かないのか?いつもなら聞いてくるじゃないか・・。』

「だって、おばさんに聞いたけど・・・亮平は最近全然お姉ちゃんに会っていないんでしょう?それじゃお姉ちゃんの今の状態・・分からないよね?ケースワーカーさんなら詳しく話を聞けそうだもの。明日にでも保健センターに電話してみるよ。それじゃあね。」

『お、おい!ちょっと待っ・・』

ピッ

私はまだ何か言いたげな亮平の電話を切ってしまった。だって・・・亮平がいきなり川口さんになら私を任せられるなんていうから・・・。
亮平は私の気持ちを知らないからあんなことを言ったのだろうけど、それでも自分の好きな相手から別の男性を薦められるのはショックだった。だからつい、こっちもムキになって『お付き合いしてもいいかもね』なんて言ってしまったけども・・・私には全くそんな気にはなれなかった。

「服部さんていう人か・・。」

テーブルの上に乗っていた筆記用具に、名前を忘れないように名前をメモし、次にスマホで保険センターのある場所を確認した。

「・・渋谷まで出ないといけないんだ・・・。」

私はベッドの上にごろりと横になって天井を見上げた。とりあえず・・明日渋谷の保険センターに電話してみよう。そこで服部さんというケースワーカーさんがいるか尋ねて・・・。そこまで考えていると、また私は眠くなってしまい・・そのままベッドの上で眠りについてしまった―。


「う~ん・・・。」

ベッドの上でゴロリと寝返りを打って、突然目が覚めた。部屋の中は真っ暗で、今一瞬自分が何処にいるのかさえ、分からなかった。

「え・・と・・・?ここ・・・どこだっけ?」

暗闇に目が慣れてきて、ここは自分の部屋だという事を思い出した。そしてまた自分がうっかり眠ってしまった事を思い出した。

「あ・・そうだ。私、また眠っちゃったんだ・・・。」

今、何時なんだろう・・・?手探りで枕元にあったスマホを見つけ、画面を開いてい驚いた。時刻は午前4時半をさしていた。

「困ったな・・今度病院に行ったら、きちんと診察してもらわなくちゃ・・。」

こんな時間に起きていたも仕方がないので、2時間後の6時半にアラームをセットすると、私は再び眠りについた―。



しおりを挟む
感想 208

あなたにおすすめの小説

睡蓮

樫野 珠代
恋愛
入社して3か月、いきなり異動を命じられたなぎさ。 そこにいたのは、出来れば会いたくなかった、会うなんて二度とないはずだった人。 どうしてこんな形の再会なの?

関係を終わらせる勢いで留学して数年後、犬猿の仲の狼王子がおかしいことになっている

百門一新
恋愛
人族貴族の公爵令嬢であるシェスティと、獣人族であり六歳年上の第一王子カディオが、出会った時からずっと犬猿の仲なのは有名な話だった。賢い彼女はある日、それを終わらせるべく(全部捨てる勢いで)隣国へ保留学した。だが、それから数年、彼女のもとに「――カディオが、私を見ないと動機息切れが収まらないので来てくれ、というお願いはなんなの?」という変な手紙か実家から来て、帰国することに。そうしたら、彼の様子が変で……? ※さくっと読める短篇です、お楽しみいだたけましたら幸いです! ※他サイト様にも掲載

溺婚

明日葉
恋愛
 香月絢佳、37歳、独身。晩婚化が進んでいるとはいえ、さすがにもう、無理かなぁ、と残念には思うが焦る気にもならず。まあ、恋愛体質じゃないし、と。  以前階段落ちから助けてくれたイケメンに、馴染みの店で再会するものの、この状況では向こうの印象がよろしいはずもないしと期待もしなかったのだが。  イケメン、天羽疾矢はどうやら絢佳に惹かれてしまったようで。 「歳も歳だし、とりあえず試してみたら?こわいの?」と、挑発されればつい、売り言葉に買い言葉。  何がどうしてこうなった?  平凡に生きたい、でもま、老後に1人は嫌だなぁ、くらいに構えた恋愛偏差値最底辺の絢佳と、こう見えて仕事人間のイケメン疾矢。振り回しているのは果たしてどっちで、振り回されてるのは、果たしてどっち?

忘れられたら苦労しない

菅井群青
恋愛
結婚を考えていた彼氏に突然振られ、二年間引きずる女と同じく過去の恋に囚われている男が出会う。 似ている、私たち…… でもそれは全然違った……私なんかより彼の方が心を囚われたままだ。 別れた恋人を忘れられない女と、運命によって引き裂かれ突然亡くなった彼女の思い出の中で生きる男の物語 「……まだいいよ──会えたら……」 「え?」 あなたには忘れらない人が、いますか?──

とある虐げられた侯爵令嬢の華麗なる後ろ楯~拾い人したら溺愛された件

紅位碧子 kurenaiaoko
恋愛
侯爵令嬢リリアーヌは、10歳で母が他界し、その後義母と義妹に虐げられ、 屋敷ではメイド仕事をして過ごす日々。 そんな中で、このままでは一生虐げられたままだと思い、一念発起。 母の遺言を受け、自分で自分を幸せにするために行動を起こすことに。 そんな中、偶然訳ありの男性を拾ってしまう。 しかし、その男性がリリアーヌの未来を作る救世主でーーーー。 メイド仕事の傍らで隠れて淑女教育を完璧に終了させ、語学、経営、経済を学び、 財産を築くために屋敷のメイド姿で見聞きした貴族社会のことを小説に書いて出版し、それが大ヒット御礼! 学んだことを生かし、商会を設立。 孤児院から人材を引き取り育成もスタート。 出版部門、観劇部門、版権部門、商品部門など次々と商いを展開。 そこに隣国の王子も参戦してきて?! 本作品は虐げられた環境の中でも懸命に前を向いて頑張る とある侯爵令嬢が幸せを掴むまでの溺愛×サクセスストーリーです♡ *誤字脱字多数あるかと思います。 *初心者につき表現稚拙ですので温かく見守ってくださいませ *ゆるふわ設定です

【完結】双子の伯爵令嬢とその許婚たちの物語

ひかり芽衣
恋愛
伯爵令嬢のリリカとキャサリンは二卵性双生児。生まれつき病弱でどんどん母似の美女へ成長するキャサリンを母は溺愛し、そんな母に父は何も言えない……。そんな家庭で育った父似のリリカは、とにかく自分に自信がない。幼い頃からの許婚である伯爵家長男ウィリアムが心の支えだ。しかしある日、ウィリアムに許婚の話をなかったことにして欲しいと言われ…… リリカとキャサリン、ウィリアム、キャサリンの許婚である公爵家次男のスターリン……彼らの物語を一緒に見守って下さると嬉しいです。 ⭐︎2023.4.24完結⭐︎ ※2024.2.8~追加・修正作業のため、2話以降を一旦非公開にしていました。  →2024.3.4再投稿。大幅に追加&修正をしたので、もしよければ読んでみて下さい(^^)

「好き」の距離

饕餮
恋愛
ずっと貴方に片思いしていた。ただ単に笑ってほしかっただけなのに……。 伯爵令嬢と公爵子息の、勘違いとすれ違い(微妙にすれ違ってない)の恋のお話。 以前、某サイトに載せていたものを大幅に改稿・加筆したお話です。

訳あり冷徹社長はただの優男でした

あさの紅茶
恋愛
独身喪女の私に、突然お姉ちゃんが子供(2歳)を押し付けてきた いや、待て 育児放棄にも程があるでしょう 音信不通の姉 泣き出す子供 父親は誰だよ 怒り心頭の中、なしくずし的に子育てをすることになった私、橋本美咲(23歳) これはもう、人生詰んだと思った ********** この作品は他のサイトにも掲載しています

処理中です...