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第13章 11 再びの焼き鳥屋
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19時5分前に指定された焼き鳥屋さんに行くと、既に店の前には白いTシャツ姿にジーンズ姿の川口さんが待っていた。
川口さんは私の姿を見ると、パッと嬉しそうに笑みを浮かべて大股で近付いてきた。
そして私の前でぴたりと足を止めると言った。
「良かった・・・来てくれたんだね?」
そして嬉しそうに笑顔を浮かべる。
「う、うん・・。だってあの時・・・結局約束果たせなかったし・・昨夜は亮平が失礼なことしちゃったし・・・。」
何故か川口さんの表情が曇る。
「え・・?ひょっとしてそんな理由で・・・ここに来たの?」
「う、うん・・・・。」
「そうか・・。俺はてっきり・・・。」
川口さんは一瞬傷ついた様子で私を見た。
「え?川口さん・・?」
すると次の瞬間、笑顔で私を見た。
「でも・・理由はどうあれ、来てくれて嬉しいよ。ありがとう。」
「そんな、お礼を言われるほどの事じゃないから・・。」
しかし、それには答えず川口さんは言った。
「さ、それじゃ店の中に入ろう?」
「う、うん・・・。」
私は川口さんに促され、店内へと入った。
「いらっしゃいませー。空いているお席へどうぞー。」
店内へ入ると威勢の良い掛け声がかかる。すると川口さんが私を振り返ると言った。
「確か加藤さんは座敷の席よりもテーブルの方がいいんだよね?」
「うん。もしかして・・覚えていたの?」
「もちろんだよ。加藤さんとの会話は・・全部覚えてる。」
川口さんは私をじっと見つめ・・・意味深な言い方をする。
「そ、そうなの?記憶力いいんだね?」
その言葉が何を意味するかは・・深く考えないでおくことにしよう。
「それじゃ、あの席に座ろう。」
川口さんが決めた席はお店にお一番奥にある4人掛けのテーブル席だった。2人で向かい合わせに座ると、さっそく川口さんが言う。
「加藤さんは、親子丼が食べたいって言ってたよね?」
「うん。確かに言ったけど?」
「それじゃ2人で親子丼食べよう。」
そして川口さんはサッと手を挙げて、店員さんを呼ぶと親子丼2つを頼んだ。
店員さんが去ると川口さんが言った。
「お酒・・・今頼まなかったけど、ひょっとして飲みたかった?」
「ううん、親子丼食べたらお酒飲めないかもしれないから・・別に頼まなくていいよ。余裕があったら食べるから。」
「そうだね・・・」
川口さんはじっと私を見るといった。
「加藤さん・・入院生活大変だったんだろう?以前も瘦せていたけど・・今はその頃よりも痩せてしまったように見える。だから・・余計なお世話かもしれないけど、栄養をつけてもらいたくて、今日は強引に誘ってしまったんだ。」
「そうだったの?・・ありがとう。気を使ってくれたんだね。」
「いや・・それだけじゃないんだけどね。」
「?」
まさか・・・やっぱり・・?
「ところで、今は仕事休んでいるんだよね?今月いっぱいくらいは休むのかな?」
「ううん・・来週の木曜日からは仕事に復帰しようかと思って・・。一人暮らしだからお金の事もあるし・・何よりあまり休んでいたら会社クビになってしまうかもしれないしね。」
「え?!今の話・・本当に・・?」
「ち、違うってばっ!ほんの冗談だから・・今の話は忘れて。」
慌てて言ったその矢先・・・。
「お待たせいたしました。」
店員さんがやってきて私と川口さんの前に親子丼を置いた。
「ごゆっくりどうぞ。」
店員さんが去ると、私たちはさっそく丼ぶりの蓋を開けた。すると湯気とともに黄色に輝くとろとろの親子丼が姿を現した。
「うわあ~本当においしそう・・・。」
何だか久しぶりに食欲がわいてきた気がする。
「うん、この店の親子丼は本当においしいよ。それじゃいただきます。」
「いただきます。」
私も川口さんにならっていただきますを言う。
川口さんはさっそく箸をつけて食べ始めた。
「うん、おいしいっ!加藤さんも食べてみなよ!」
言われた私はさっそく箸で口に運んでみる。
その味は・・・やっぱり絶品だった―。
川口さんは私の姿を見ると、パッと嬉しそうに笑みを浮かべて大股で近付いてきた。
そして私の前でぴたりと足を止めると言った。
「良かった・・・来てくれたんだね?」
そして嬉しそうに笑顔を浮かべる。
「う、うん・・。だってあの時・・・結局約束果たせなかったし・・昨夜は亮平が失礼なことしちゃったし・・・。」
何故か川口さんの表情が曇る。
「え・・?ひょっとしてそんな理由で・・・ここに来たの?」
「う、うん・・・・。」
「そうか・・。俺はてっきり・・・。」
川口さんは一瞬傷ついた様子で私を見た。
「え?川口さん・・?」
すると次の瞬間、笑顔で私を見た。
「でも・・理由はどうあれ、来てくれて嬉しいよ。ありがとう。」
「そんな、お礼を言われるほどの事じゃないから・・。」
しかし、それには答えず川口さんは言った。
「さ、それじゃ店の中に入ろう?」
「う、うん・・・。」
私は川口さんに促され、店内へと入った。
「いらっしゃいませー。空いているお席へどうぞー。」
店内へ入ると威勢の良い掛け声がかかる。すると川口さんが私を振り返ると言った。
「確か加藤さんは座敷の席よりもテーブルの方がいいんだよね?」
「うん。もしかして・・覚えていたの?」
「もちろんだよ。加藤さんとの会話は・・全部覚えてる。」
川口さんは私をじっと見つめ・・・意味深な言い方をする。
「そ、そうなの?記憶力いいんだね?」
その言葉が何を意味するかは・・深く考えないでおくことにしよう。
「それじゃ、あの席に座ろう。」
川口さんが決めた席はお店にお一番奥にある4人掛けのテーブル席だった。2人で向かい合わせに座ると、さっそく川口さんが言う。
「加藤さんは、親子丼が食べたいって言ってたよね?」
「うん。確かに言ったけど?」
「それじゃ2人で親子丼食べよう。」
そして川口さんはサッと手を挙げて、店員さんを呼ぶと親子丼2つを頼んだ。
店員さんが去ると川口さんが言った。
「お酒・・・今頼まなかったけど、ひょっとして飲みたかった?」
「ううん、親子丼食べたらお酒飲めないかもしれないから・・別に頼まなくていいよ。余裕があったら食べるから。」
「そうだね・・・」
川口さんはじっと私を見るといった。
「加藤さん・・入院生活大変だったんだろう?以前も瘦せていたけど・・今はその頃よりも痩せてしまったように見える。だから・・余計なお世話かもしれないけど、栄養をつけてもらいたくて、今日は強引に誘ってしまったんだ。」
「そうだったの?・・ありがとう。気を使ってくれたんだね。」
「いや・・それだけじゃないんだけどね。」
「?」
まさか・・・やっぱり・・?
「ところで、今は仕事休んでいるんだよね?今月いっぱいくらいは休むのかな?」
「ううん・・来週の木曜日からは仕事に復帰しようかと思って・・。一人暮らしだからお金の事もあるし・・何よりあまり休んでいたら会社クビになってしまうかもしれないしね。」
「え?!今の話・・本当に・・?」
「ち、違うってばっ!ほんの冗談だから・・今の話は忘れて。」
慌てて言ったその矢先・・・。
「お待たせいたしました。」
店員さんがやってきて私と川口さんの前に親子丼を置いた。
「ごゆっくりどうぞ。」
店員さんが去ると、私たちはさっそく丼ぶりの蓋を開けた。すると湯気とともに黄色に輝くとろとろの親子丼が姿を現した。
「うわあ~本当においしそう・・・。」
何だか久しぶりに食欲がわいてきた気がする。
「うん、この店の親子丼は本当においしいよ。それじゃいただきます。」
「いただきます。」
私も川口さんにならっていただきますを言う。
川口さんはさっそく箸をつけて食べ始めた。
「うん、おいしいっ!加藤さんも食べてみなよ!」
言われた私はさっそく箸で口に運んでみる。
その味は・・・やっぱり絶品だった―。
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