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第13章 10 理解出来ない亮平の行動
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「お、おばさん・・。本当にお姉ちゃんが・・退院してきたのですか?」
知らず知らず声が震えていた。
『え?ええ・・そうよ。若い男性と一緒にタクシーに乗って降りてきたのよ。私の処に忍ちゃんが男性と一緒に挨拶にやってきたもの。長い間入院して・・・ご無沙汰してましたって。』
「え・・?若い男性・・?」
誰なのだろう・・・?まさか笠井先生が一緒に家まで付き添うはずが無いし・・。
『そうそう、その男性って・・確か保健センターのケースワーカーさんらしいわ。忍ちゃんは重度の精神疾患を長い事患っていたから・・・今度は経過観察のために定期的に訪問することになったらしくて、忍ちゃんの担当になったらしいのよ。』
「ケースワーカーの方・・・ですか・・あ、と言う事は・・もうお姉ちゃんは良くなったのでしょうか?」
『鈴音ちゃん・・・本当に亮平から何も聞いていなかったの?』
おばさんが不思議そうに尋ねて来る。
「は、はい・・・何も聞いていません・・・。」
でも何故?どうして亮平は昨夜私の部屋に泊ったのに・・何一つ話してくれなかったのだろう。酷いよ・・・亮平。やっぱりそんなにお姉ちゃんの事・・私には話したくなかったの?やっぱり私は・・・亮平にとって取るに足らない人間だったの・・?
『もしもし?どうしたの?鈴音ちゃん・・・大丈夫?具合でも悪いの?』
私が突然黙ってしまったからだろうか・・受話器越しからおばさんの心配そうな声が聞こえて来た。
「いいえ、大丈夫です。ただ・・少し疲れてしまって・・。」
『あら、そうなの?大丈夫?今から鈴音ちゃんの部屋に行こうか?』
「平気です、おばさん。心配して頂いて・・・ありがとうございます。それじゃ私・・少し休みますね。」
『ええ、そうね。ゆっくり休んで頂戴。またね、鈴音ちゃん。』
「はい、失礼します・・・。」
ピッ
スマホの電話を切ると、私はゴロリとベッドに横になり、部屋の窓から見える青空をじっと眺めた。
「本当に・・・亮平・・・何考えてるの・・・?」
お姉ちゃんが昨日退院してきたなら・・・私の処じゃなく、お姉ちゃんの処に行ってあるべきだったんじゃないの?しかも泊って行くなんて・・。お姉ちゃんの事・・話す時間は沢山あったはずなのに、尋ねてくるのは川口さんの事ばかりだったし・・。それこそ、亮平にとってはどうでもよい・・関係ない話なんじゃないの?
「もう・・・何も分からないよ・・・亮平・・・」
私は瞳を閉じ・・そのまま眠ってしまった―。
「ん・・・?」
レースのカーテンが揺れて、顔にかかり・・・私はおもむろに目が覚めた。
「あ・・・。私・・また眠っちゃってたんだ・・・。」
ゆっくりベッドから起き上がり、窓の外を眺めるといつの間にか空はオレンジ色にそまり、イワシ雲がきれいに空に浮かんでいた。
「事故の後遺症なのかな・・?」
身体が痛むとかは無いけれども、ちょっとしたことですぐに眠ってしまう。しかも一度眠ってしまうと数時間は目が覚めない。
「どうしよう・・困ったな・・こんな状態で・・・私本当に社会復帰できるのかな?」
次回退院後の初めての受診日は来週の火曜日になっている。木曜日からは仕事に戻る予定なのだけども・・私は自分の健康状態に何だか不安を覚えてしまった。
「あ・・そう言えば今何時なんだろう?」
時計を見ると18時15分になっている。
< 今夜7時・・・あの焼き鳥屋の店の前で待ってる。 >
不意に川口さんの言葉が頭に浮かんだ。そうだった・・・返事はしていないけども・・焼き鳥屋さんに誘われたんだっけ・・。
昨夜の負い目の事もあったし・・何より川口さんに悲し気な顔をさせるのは気が引けた。
「やっぱり・・行かないと・・・。」
眠った事で身体もすっきりしていたし、何より歩くことは自分のリハビリになると言い聞かせ、ベッドから起き上ると出かける準備を始めた―。
知らず知らず声が震えていた。
『え?ええ・・そうよ。若い男性と一緒にタクシーに乗って降りてきたのよ。私の処に忍ちゃんが男性と一緒に挨拶にやってきたもの。長い間入院して・・・ご無沙汰してましたって。』
「え・・?若い男性・・?」
誰なのだろう・・・?まさか笠井先生が一緒に家まで付き添うはずが無いし・・。
『そうそう、その男性って・・確か保健センターのケースワーカーさんらしいわ。忍ちゃんは重度の精神疾患を長い事患っていたから・・・今度は経過観察のために定期的に訪問することになったらしくて、忍ちゃんの担当になったらしいのよ。』
「ケースワーカーの方・・・ですか・・あ、と言う事は・・もうお姉ちゃんは良くなったのでしょうか?」
『鈴音ちゃん・・・本当に亮平から何も聞いていなかったの?』
おばさんが不思議そうに尋ねて来る。
「は、はい・・・何も聞いていません・・・。」
でも何故?どうして亮平は昨夜私の部屋に泊ったのに・・何一つ話してくれなかったのだろう。酷いよ・・・亮平。やっぱりそんなにお姉ちゃんの事・・私には話したくなかったの?やっぱり私は・・・亮平にとって取るに足らない人間だったの・・?
『もしもし?どうしたの?鈴音ちゃん・・・大丈夫?具合でも悪いの?』
私が突然黙ってしまったからだろうか・・受話器越しからおばさんの心配そうな声が聞こえて来た。
「いいえ、大丈夫です。ただ・・少し疲れてしまって・・。」
『あら、そうなの?大丈夫?今から鈴音ちゃんの部屋に行こうか?』
「平気です、おばさん。心配して頂いて・・・ありがとうございます。それじゃ私・・少し休みますね。」
『ええ、そうね。ゆっくり休んで頂戴。またね、鈴音ちゃん。』
「はい、失礼します・・・。」
ピッ
スマホの電話を切ると、私はゴロリとベッドに横になり、部屋の窓から見える青空をじっと眺めた。
「本当に・・・亮平・・・何考えてるの・・・?」
お姉ちゃんが昨日退院してきたなら・・・私の処じゃなく、お姉ちゃんの処に行ってあるべきだったんじゃないの?しかも泊って行くなんて・・。お姉ちゃんの事・・話す時間は沢山あったはずなのに、尋ねてくるのは川口さんの事ばかりだったし・・。それこそ、亮平にとってはどうでもよい・・関係ない話なんじゃないの?
「もう・・・何も分からないよ・・・亮平・・・」
私は瞳を閉じ・・そのまま眠ってしまった―。
「ん・・・?」
レースのカーテンが揺れて、顔にかかり・・・私はおもむろに目が覚めた。
「あ・・・。私・・また眠っちゃってたんだ・・・。」
ゆっくりベッドから起き上がり、窓の外を眺めるといつの間にか空はオレンジ色にそまり、イワシ雲がきれいに空に浮かんでいた。
「事故の後遺症なのかな・・?」
身体が痛むとかは無いけれども、ちょっとしたことですぐに眠ってしまう。しかも一度眠ってしまうと数時間は目が覚めない。
「どうしよう・・困ったな・・こんな状態で・・・私本当に社会復帰できるのかな?」
次回退院後の初めての受診日は来週の火曜日になっている。木曜日からは仕事に戻る予定なのだけども・・私は自分の健康状態に何だか不安を覚えてしまった。
「あ・・そう言えば今何時なんだろう?」
時計を見ると18時15分になっている。
< 今夜7時・・・あの焼き鳥屋の店の前で待ってる。 >
不意に川口さんの言葉が頭に浮かんだ。そうだった・・・返事はしていないけども・・焼き鳥屋さんに誘われたんだっけ・・。
昨夜の負い目の事もあったし・・何より川口さんに悲し気な顔をさせるのは気が引けた。
「やっぱり・・行かないと・・・。」
眠った事で身体もすっきりしていたし、何より歩くことは自分のリハビリになると言い聞かせ、ベッドから起き上ると出かける準備を始めた―。
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