185 / 519
第13章 6 頼んでもいないのに
しおりを挟む
亮平が買い物に行き、部屋に1人になると冷蔵庫の整理を始めた。本当は疲れていたから休みたかったけど・・何かしていないと先ほどの川口さんの悲し気な顔が頭に浮かんでしまうから。
次々と古くなった食材を取り出してはビニール袋に入れてきっちり結び、ゴミ袋に捨てる。
やっぱり長い間家を空けていたから結局殆どの食材を捨てる事になってしまった。結局冷蔵庫の中に残されたのは味噌だけだった。それにしても・・・調味料迄駄目になっていたなんて思いもしなった。
冷凍庫の中は霜だらけになっていたし・・・。
「ふう・・。」
冷蔵庫の中身の整理が終わると、再び先ほどの出来事が思い出された。悲しげな顔をして私を見ていた川口さんの表情がどうしても頭から離れなかった。
「でも・・・どうして・・?」
どうして川口さんはここにやって来たんだろう?ひょっとして・・私の事を好きなのだろうか?
ううん、きっと・・・。
「間違いなく、私の事を好きなんだ・・。」
だけど・・川口さんは私のどこが良かったのだろう?お姉ちゃんのように美人でもないし、女らしくも無い。それなのに・・。
その時・・・。
ピンポーン
部屋のチャイムが鳴った。
ドアアイで確認すると、そこに立っていたのはやはり亮平だった。両手にレジ袋を下げている。鍵を開けてドアを開くと、亮平は黙って上がり込んできてテーブルの上にレジ袋を置いた。そして床の上にある起きなゴミ袋をチラリと見ると私の方を振り向いた。
「冷蔵庫の中を片付けていたのか?」
「うん・・そうだよ。」
「全く・・・それ位なら俺がやるから鈴音は休んでいればいいのに・・。」
そして次から次へとテーブルの上に買ってきたものを並べる。
麦茶にコーラ、野菜ジュースにヨーグルト、ファミリーボックスのアイス・・・。
「鈴音、どれにする?残りは冷蔵庫に全部入れるから。」
「えっと・・それじゃアイスにしようかな・・・。」
「分かった。」
亮平は紙の箱を開封すると、カップに入ったバニラアイスを取り出して私の前に置くと、もう一つ取り出した。
「亮平も食べるの?」
「ああ。」
そして亮平は麦茶以外を全部レジ袋に戻すとキッチンへ行き、冷蔵庫にしまうと部屋にある食器棚から2本のスプーンを取り出すと、再び床に座った。
「ほら、スプーン。」
「うん・・・ありがとう。」
亮平はアイスの蓋を外すと、早速食べ始めた。
「うん、旨いな。」
「頂きます。」
私もふたを外してスプーンですくって口に入れてみる。途端に冷たくて甘い味とバニラの香りが広がる。
「ほんとだ・・美味しいね。」
「だろう?」
亮平は満足そうに笑みを浮かべた。それにしても・・・。
「亮平・・・買い物に行ってから・・随分遅かったね?」
時計を見るともうすぐ夜の10時になろうとしている。
「ああ・・ちょとな。野暮用があったから。」
「野暮用・・?それってどんな用なの?」
「・・・川口って男のマンションに行ってた。」
「え?!な、何で?!」
亮平はいつの間にかアイスを食べ終えていたようで蓋を締めながら言った。
「鈴音に近付くなって釘を刺しに行ったんだよ。あいつ・・・お前を連れて俺がマンションに入る時、すっげー目で俺を睨んでいたからな。」
「だからって・・・。何もわざわざ言いに行く必要は無いでしょう?」
どうしてそんなに勝手な真似をするのだろう?
「何でだよ?お前・・あいつと話していた時、すごく困った顔していたじゃないか!あいつ・・隣のマンションに住んでいるからって・・図々しくも・・。鈴音は退院してきばかりだって言うのに・・・。」
何故か亮平はイライラした様子で話している。
「あれは別に困っていたんじゃなくて、戸惑っていただけだってば。」
「あいつはお前の意見なんか無視して付きまとっているストーカーみたいなもんだ。何でそれが分からないんだ。」
私の意見を無視して・・・?それなら亮平が今やっている事は何だって言うの?勝手に川口さんのマンションへ行って・・釘を刺しに行くなんて・・。
亮平こそ・・何考えているのよ・・・。お姉ちゃんという恋人がいるくせに・・私に構ったりして・・。
私は目の前に座る亮平をじっと見ると口を開いた―。
次々と古くなった食材を取り出してはビニール袋に入れてきっちり結び、ゴミ袋に捨てる。
やっぱり長い間家を空けていたから結局殆どの食材を捨てる事になってしまった。結局冷蔵庫の中に残されたのは味噌だけだった。それにしても・・・調味料迄駄目になっていたなんて思いもしなった。
冷凍庫の中は霜だらけになっていたし・・・。
「ふう・・。」
冷蔵庫の中身の整理が終わると、再び先ほどの出来事が思い出された。悲しげな顔をして私を見ていた川口さんの表情がどうしても頭から離れなかった。
「でも・・・どうして・・?」
どうして川口さんはここにやって来たんだろう?ひょっとして・・私の事を好きなのだろうか?
ううん、きっと・・・。
「間違いなく、私の事を好きなんだ・・。」
だけど・・川口さんは私のどこが良かったのだろう?お姉ちゃんのように美人でもないし、女らしくも無い。それなのに・・。
その時・・・。
ピンポーン
部屋のチャイムが鳴った。
ドアアイで確認すると、そこに立っていたのはやはり亮平だった。両手にレジ袋を下げている。鍵を開けてドアを開くと、亮平は黙って上がり込んできてテーブルの上にレジ袋を置いた。そして床の上にある起きなゴミ袋をチラリと見ると私の方を振り向いた。
「冷蔵庫の中を片付けていたのか?」
「うん・・そうだよ。」
「全く・・・それ位なら俺がやるから鈴音は休んでいればいいのに・・。」
そして次から次へとテーブルの上に買ってきたものを並べる。
麦茶にコーラ、野菜ジュースにヨーグルト、ファミリーボックスのアイス・・・。
「鈴音、どれにする?残りは冷蔵庫に全部入れるから。」
「えっと・・それじゃアイスにしようかな・・・。」
「分かった。」
亮平は紙の箱を開封すると、カップに入ったバニラアイスを取り出して私の前に置くと、もう一つ取り出した。
「亮平も食べるの?」
「ああ。」
そして亮平は麦茶以外を全部レジ袋に戻すとキッチンへ行き、冷蔵庫にしまうと部屋にある食器棚から2本のスプーンを取り出すと、再び床に座った。
「ほら、スプーン。」
「うん・・・ありがとう。」
亮平はアイスの蓋を外すと、早速食べ始めた。
「うん、旨いな。」
「頂きます。」
私もふたを外してスプーンですくって口に入れてみる。途端に冷たくて甘い味とバニラの香りが広がる。
「ほんとだ・・美味しいね。」
「だろう?」
亮平は満足そうに笑みを浮かべた。それにしても・・・。
「亮平・・・買い物に行ってから・・随分遅かったね?」
時計を見るともうすぐ夜の10時になろうとしている。
「ああ・・ちょとな。野暮用があったから。」
「野暮用・・?それってどんな用なの?」
「・・・川口って男のマンションに行ってた。」
「え?!な、何で?!」
亮平はいつの間にかアイスを食べ終えていたようで蓋を締めながら言った。
「鈴音に近付くなって釘を刺しに行ったんだよ。あいつ・・・お前を連れて俺がマンションに入る時、すっげー目で俺を睨んでいたからな。」
「だからって・・・。何もわざわざ言いに行く必要は無いでしょう?」
どうしてそんなに勝手な真似をするのだろう?
「何でだよ?お前・・あいつと話していた時、すごく困った顔していたじゃないか!あいつ・・隣のマンションに住んでいるからって・・図々しくも・・。鈴音は退院してきばかりだって言うのに・・・。」
何故か亮平はイライラした様子で話している。
「あれは別に困っていたんじゃなくて、戸惑っていただけだってば。」
「あいつはお前の意見なんか無視して付きまとっているストーカーみたいなもんだ。何でそれが分からないんだ。」
私の意見を無視して・・・?それなら亮平が今やっている事は何だって言うの?勝手に川口さんのマンションへ行って・・釘を刺しに行くなんて・・。
亮平こそ・・何考えているのよ・・・。お姉ちゃんという恋人がいるくせに・・私に構ったりして・・。
私は目の前に座る亮平をじっと見ると口を開いた―。
14
お気に入りに追加
865
あなたにおすすめの小説

関係を終わらせる勢いで留学して数年後、犬猿の仲の狼王子がおかしいことになっている
百門一新
恋愛
人族貴族の公爵令嬢であるシェスティと、獣人族であり六歳年上の第一王子カディオが、出会った時からずっと犬猿の仲なのは有名な話だった。賢い彼女はある日、それを終わらせるべく(全部捨てる勢いで)隣国へ保留学した。だが、それから数年、彼女のもとに「――カディオが、私を見ないと動機息切れが収まらないので来てくれ、というお願いはなんなの?」という変な手紙か実家から来て、帰国することに。そうしたら、彼の様子が変で……?
※さくっと読める短篇です、お楽しみいだたけましたら幸いです!
※他サイト様にも掲載


溺婚
明日葉
恋愛
香月絢佳、37歳、独身。晩婚化が進んでいるとはいえ、さすがにもう、無理かなぁ、と残念には思うが焦る気にもならず。まあ、恋愛体質じゃないし、と。
以前階段落ちから助けてくれたイケメンに、馴染みの店で再会するものの、この状況では向こうの印象がよろしいはずもないしと期待もしなかったのだが。
イケメン、天羽疾矢はどうやら絢佳に惹かれてしまったようで。
「歳も歳だし、とりあえず試してみたら?こわいの?」と、挑発されればつい、売り言葉に買い言葉。
何がどうしてこうなった?
平凡に生きたい、でもま、老後に1人は嫌だなぁ、くらいに構えた恋愛偏差値最底辺の絢佳と、こう見えて仕事人間のイケメン疾矢。振り回しているのは果たしてどっちで、振り回されてるのは、果たしてどっち?

忘れられたら苦労しない
菅井群青
恋愛
結婚を考えていた彼氏に突然振られ、二年間引きずる女と同じく過去の恋に囚われている男が出会う。
似ている、私たち……
でもそれは全然違った……私なんかより彼の方が心を囚われたままだ。
別れた恋人を忘れられない女と、運命によって引き裂かれ突然亡くなった彼女の思い出の中で生きる男の物語
「……まだいいよ──会えたら……」
「え?」
あなたには忘れらない人が、いますか?──

とある虐げられた侯爵令嬢の華麗なる後ろ楯~拾い人したら溺愛された件
紅位碧子 kurenaiaoko
恋愛
侯爵令嬢リリアーヌは、10歳で母が他界し、その後義母と義妹に虐げられ、
屋敷ではメイド仕事をして過ごす日々。
そんな中で、このままでは一生虐げられたままだと思い、一念発起。
母の遺言を受け、自分で自分を幸せにするために行動を起こすことに。
そんな中、偶然訳ありの男性を拾ってしまう。
しかし、その男性がリリアーヌの未来を作る救世主でーーーー。
メイド仕事の傍らで隠れて淑女教育を完璧に終了させ、語学、経営、経済を学び、
財産を築くために屋敷のメイド姿で見聞きした貴族社会のことを小説に書いて出版し、それが大ヒット御礼!
学んだことを生かし、商会を設立。
孤児院から人材を引き取り育成もスタート。
出版部門、観劇部門、版権部門、商品部門など次々と商いを展開。
そこに隣国の王子も参戦してきて?!
本作品は虐げられた環境の中でも懸命に前を向いて頑張る
とある侯爵令嬢が幸せを掴むまでの溺愛×サクセスストーリーです♡
*誤字脱字多数あるかと思います。
*初心者につき表現稚拙ですので温かく見守ってくださいませ
*ゆるふわ設定です
【完結】双子の伯爵令嬢とその許婚たちの物語
ひかり芽衣
恋愛
伯爵令嬢のリリカとキャサリンは二卵性双生児。生まれつき病弱でどんどん母似の美女へ成長するキャサリンを母は溺愛し、そんな母に父は何も言えない……。そんな家庭で育った父似のリリカは、とにかく自分に自信がない。幼い頃からの許婚である伯爵家長男ウィリアムが心の支えだ。しかしある日、ウィリアムに許婚の話をなかったことにして欲しいと言われ……
リリカとキャサリン、ウィリアム、キャサリンの許婚である公爵家次男のスターリン……彼らの物語を一緒に見守って下さると嬉しいです。
⭐︎2023.4.24完結⭐︎
※2024.2.8~追加・修正作業のため、2話以降を一旦非公開にしていました。
→2024.3.4再投稿。大幅に追加&修正をしたので、もしよければ読んでみて下さい(^^)
「好き」の距離
饕餮
恋愛
ずっと貴方に片思いしていた。ただ単に笑ってほしかっただけなのに……。
伯爵令嬢と公爵子息の、勘違いとすれ違い(微妙にすれ違ってない)の恋のお話。
以前、某サイトに載せていたものを大幅に改稿・加筆したお話です。
訳あり冷徹社長はただの優男でした
あさの紅茶
恋愛
独身喪女の私に、突然お姉ちゃんが子供(2歳)を押し付けてきた
いや、待て
育児放棄にも程があるでしょう
音信不通の姉
泣き出す子供
父親は誰だよ
怒り心頭の中、なしくずし的に子育てをすることになった私、橋本美咲(23歳)
これはもう、人生詰んだと思った
**********
この作品は他のサイトにも掲載しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる