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第11章 9 長すぎた片思い
しおりを挟む「忍の部屋にはしょっちゅう入っていたのにな・・・。」
亮平の呟いた言葉が私の心を抉る。亮平が私の部屋に入ったのは小学生の時までだった。中学生になってから亮平は私の部屋に来ることは無くなった。その代わりにお姉ちゃんの部屋にはよく遊びに行くようになっていたんだ。でも、それも亮平が中学3年になった頃には部屋には上がることが無くなって・・・。
そして・・2人が恋人同士になってからは・・・またお姉ちゃんの部屋に入るようになったって事だよね・・?
その時私、ふと思った。
もしかして、亮平がお姉ちゃんに暗示をかけはじめられたのって・・・?
気付けばコーヒーカップを持っていた手がカタカタと震えていた。
「どうした?鈴音・・・何だか顔色が悪いぞ?青くなっている。」
目の前に座る亮平が私の異変に気が付いたのか、声を掛けて来た。
「あ・・う、ううん・・・もしかしてって思ったんだけど・・・。
「何が?」
「亮平がいつ頃から・・お姉ちゃんに暗示を掛けられていたのかなって考えていて、ちょっと思い当たる節があったから・・。」
「え?そうなのか?俺は・・自分自身の事のくせに分からないのにお前は分かったっていうのか?」
「う、うん。でもこれは私の勘なんだけど・・やっぱり中学生になってからじゃないかな・・・亮平がお姉ちゃんに暗示をかけられるようになったのは・・。」
「何でそう思うんだ?」
やっぱり亮平は理由を尋ねてきた。
「それはね、亮平がお姉ちゃんの部屋に遊びに行くようになったのが中学生になってからだからだよ?」
そしてそれとはまるで反比例するかのように亮平は私の事をあまり相手にしてくれなくなったんだよね・・・。
「そうか・・・忍は中学生の頃から俺に・・・。」
亮平は腕組みをすると俯いて、少し考えこむような仕草をしていたけれども、やがて顔を上げると言った。
「なあ・・鈴音。」
「何?」
「どうして・・・忍は俺に暗示を掛けたりしたのかな・・・。」
「え?どうしてって言われても・・・。」
そんなの・・答えられるはずないじゃない。だってお姉ちゃんが亮平に自分を好きになるように暗示をかけたのは・・私がずっと子供の頃から亮平の事を好きだったからだよ。だけど・・・そんな事本人の前で言えるはずない。
「わ・・・私には分からないよ・・。」
視線をそらせた。
「そうか・・・でも、別にそんな事しなくたって・・。」
「え?」
「そんな事しなくたって・・・俺はずっと子供の頃から忍の事憧れていたのにな・・。」
「そ、そうなんだ・・。あ、そ・そうだったね?亮平・・・そう言えば子供の頃からお姉ちゃんに憧れていたよね?」
必死に自分の動揺を隠しつつ、亮平の言葉に相槌を打った。
そうか・・・やっぱりそうだったんだ・・・。亮平は子供の頃からお姉ちゃんを・・。だから亮平に暗示をかける事が出来たのかな?だってもともと自分の事を好きだった相手なんだもの・・。
だけど・・それじゃ、やっぱり笠井先生が亮平に掛けられた暗示を解くことが出来たとしても・・亮平がお姉ちゃんを好きな気持ちは変わらないって事なのかな・・?
胸がずきずきと痛む。
お姉ちゃん、いっそ・・・私にも暗示をかけてくれれば良かったのに。亮平の事を諦められる暗示を・・。
ううん、でもきっと違う。こんな事考えたくないけど・・お姉ちゃんは多分私の事を苦しめる為だけに亮平に暗示をかけたんだ。
お姉ちゃんは私がお姉ちゃんの大切なものを奪っていったと思っている。私にはそんなつもりは全くなかったけれども・・・お姉ちゃんはそんな風に思っていたんだ。
だからお姉ちゃんは私から亮平を奪うつもりで・・?
亮平・・・。
私は亮平の顔を見た。亮平は不思議そうな顔で私を見ている。
「亮平は・・お姉ちゃんからの暗示・・解きたいと思っている・・?」
「俺か?う~ん・・・。どうだろうな・・俺が子供の頃から忍を好きだった気持ちは変わらないし・・ただ、問題なのは・・。」
「問題・・なのは・・?」
「忍は・・本当に俺の事を・・一度でも好きになってくれたことはあるのかな・・・。」
亮平は寂し気に呟いた―。
亮平の呟いた言葉が私の心を抉る。亮平が私の部屋に入ったのは小学生の時までだった。中学生になってから亮平は私の部屋に来ることは無くなった。その代わりにお姉ちゃんの部屋にはよく遊びに行くようになっていたんだ。でも、それも亮平が中学3年になった頃には部屋には上がることが無くなって・・・。
そして・・2人が恋人同士になってからは・・・またお姉ちゃんの部屋に入るようになったって事だよね・・?
その時私、ふと思った。
もしかして、亮平がお姉ちゃんに暗示をかけはじめられたのって・・・?
気付けばコーヒーカップを持っていた手がカタカタと震えていた。
「どうした?鈴音・・・何だか顔色が悪いぞ?青くなっている。」
目の前に座る亮平が私の異変に気が付いたのか、声を掛けて来た。
「あ・・う、ううん・・・もしかしてって思ったんだけど・・・。
「何が?」
「亮平がいつ頃から・・お姉ちゃんに暗示を掛けられていたのかなって考えていて、ちょっと思い当たる節があったから・・。」
「え?そうなのか?俺は・・自分自身の事のくせに分からないのにお前は分かったっていうのか?」
「う、うん。でもこれは私の勘なんだけど・・やっぱり中学生になってからじゃないかな・・・亮平がお姉ちゃんに暗示をかけられるようになったのは・・。」
「何でそう思うんだ?」
やっぱり亮平は理由を尋ねてきた。
「それはね、亮平がお姉ちゃんの部屋に遊びに行くようになったのが中学生になってからだからだよ?」
そしてそれとはまるで反比例するかのように亮平は私の事をあまり相手にしてくれなくなったんだよね・・・。
「そうか・・・忍は中学生の頃から俺に・・・。」
亮平は腕組みをすると俯いて、少し考えこむような仕草をしていたけれども、やがて顔を上げると言った。
「なあ・・鈴音。」
「何?」
「どうして・・・忍は俺に暗示を掛けたりしたのかな・・・。」
「え?どうしてって言われても・・・。」
そんなの・・答えられるはずないじゃない。だってお姉ちゃんが亮平に自分を好きになるように暗示をかけたのは・・私がずっと子供の頃から亮平の事を好きだったからだよ。だけど・・・そんな事本人の前で言えるはずない。
「わ・・・私には分からないよ・・。」
視線をそらせた。
「そうか・・・でも、別にそんな事しなくたって・・。」
「え?」
「そんな事しなくたって・・・俺はずっと子供の頃から忍の事憧れていたのにな・・。」
「そ、そうなんだ・・。あ、そ・そうだったね?亮平・・・そう言えば子供の頃からお姉ちゃんに憧れていたよね?」
必死に自分の動揺を隠しつつ、亮平の言葉に相槌を打った。
そうか・・・やっぱりそうだったんだ・・・。亮平は子供の頃からお姉ちゃんを・・。だから亮平に暗示をかける事が出来たのかな?だってもともと自分の事を好きだった相手なんだもの・・。
だけど・・それじゃ、やっぱり笠井先生が亮平に掛けられた暗示を解くことが出来たとしても・・亮平がお姉ちゃんを好きな気持ちは変わらないって事なのかな・・?
胸がずきずきと痛む。
お姉ちゃん、いっそ・・・私にも暗示をかけてくれれば良かったのに。亮平の事を諦められる暗示を・・。
ううん、でもきっと違う。こんな事考えたくないけど・・お姉ちゃんは多分私の事を苦しめる為だけに亮平に暗示をかけたんだ。
お姉ちゃんは私がお姉ちゃんの大切なものを奪っていったと思っている。私にはそんなつもりは全くなかったけれども・・・お姉ちゃんはそんな風に思っていたんだ。
だからお姉ちゃんは私から亮平を奪うつもりで・・?
亮平・・・。
私は亮平の顔を見た。亮平は不思議そうな顔で私を見ている。
「亮平は・・お姉ちゃんからの暗示・・解きたいと思っている・・?」
「俺か?う~ん・・・。どうだろうな・・俺が子供の頃から忍を好きだった気持ちは変わらないし・・ただ、問題なのは・・。」
「問題・・なのは・・?」
「忍は・・本当に俺の事を・・一度でも好きになってくれたことはあるのかな・・・。」
亮平は寂し気に呟いた―。
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