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第8章 14 心配の影には
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翌朝9時―
ピンポーン
部屋のインターホンが鳴った。念の為にドアに近付きドアアイで確認すると、そこにはマフラーを巻き付け、ダウンジャケットを着た亮平が両手に紙袋を下げて立っていた。
「おはよう、亮平。」
ガチャリとドアを開けると亮平は震えながら言った。
「おはよう・・・う~寒いっ!中へ早く入れてくれ。」
「う、うん・・。」
避けると亮平は玄関の中へ入り込み、さっさと靴を脱いで上がり込んでくると、紙袋をドサリとテーブルの上に置いた。
「ね、ねぇ・・何?この紙袋は?」
マフラーと上着を脱ぐ亮平に私は尋ねた。
「うん?これは差し入れだ。」
「差し入れ?」
「そう、母さんから。色々おかずを作ったから鈴音に持たせてやってくれって。相変わらず昔から母さんは鈴音に甘いよな?あ、ハンガーあるか?」
亮平は脱いだマフラーと上着を手に持つと私に言った。
「あ、ハンガーね?うん。ちょっと待ってて。」
クローゼットを開けて私はハンガーを取り出すと亮平に手渡した。
「はい、どうぞ。」
「ああ、サンキュー。」
亮平は脱いだ上着、マフラーをハンガーにかけてフックに引っ掛けると私に言った。
「寒かった。熱いコーヒーでも淹れてくれよ。」
「うん。ちょっと待ってて。とりあえず、適当に座っていてよ。」
やかんに水を入れてガスコンロに掛けると、亮平のお母さんが持たせてくれたコンテナボックスに入ったおかずを紙袋から取り出した。
中にはお煮しめやきんぴらごぼう、ひじきの煮物、里芋の煮っころがし、青菜の胡麻和え、ミートソース等々合計10種類のおかずが入っていた。
「うわぁ・・すごい!こんなにたくさん・・・!」
思わず感動の声を上げると床に胡坐をかき、テレビを眺めていた亮平が声を掛けてきた。
「鈴音、食いきれなかったら小分けにして冷凍保存しておけって母さんが言ってたぞ。」
「うん。そうだね・・そうさせてもらうよ。」
ちょうどその時、ピーッとお湯が沸く音が鳴ったのでガスを止めると、昨日買ってきたばかりのインスタントコーヒーを開封した。
マグカップにティースプーンで小さじ2杯、亮平が好む味だ。そこにお湯を注いで2人分のコーヒーを用意すると両手に持って部屋に入り、亮平の前のテーブルにトンと置いた。
「はい、コーヒー淹れたよ。ちょっと待ってて。今何か食べ物出すから。」
立ち上がろうとすると亮平が引き留めた。
「いや、大丈夫だ。朝飯食べた来たばかりだから。それより鈴音、お前もここに座ってコーヒーを飲めよ。」
亮平は自分の真向かいの席を人差し指でトントン叩きながら言った。
「うん・・・分かった・・・。」
言われた通りに座ると亮平は黙ってコーヒーを飲みながら私をじっと見た。
「鈴音・・・お前、本当にちゃんと食ってるのか・・・?去年忍と一緒に住んでいた時と比べて、えらく体形が変わってしまったじゃないか・・。」
そして溜息をつくと、再びコーヒーに口をつける。
「あ、ありがとう。心配・・・してくれているんだよね?」
「ああ、そんなの当然だろう?」
それを聞いた私は嬉しくなった。けど・・次の瞬間、亮平の言葉に凍り付いた。
「全く・・・忍が調子悪いって言うのに・・鈴音まで具合悪くしたら・・いざって時に忍に何かあったら俺一人じゃ対処できないかもしれないじゃないか。だからさ、鈴音はちゃんと体調管理しておけよ?」
「!」
え・・?それって・・・お姉ちゃんの為に体調管理しておけって事なの・・?でも、一応私の事を心配してくれいるんだよね・・?
「う、うん・・・分かったよ・・。」
何とか亮平に返事をする。
「よし、鈴音。それじゃさっそく始めようか?」
突然亮平が言った。え・・・?始める・・?一体亮平はこれから何を始めると言うんだろう?
私は亮平の言葉に首を傾げた―。
ピンポーン
部屋のインターホンが鳴った。念の為にドアに近付きドアアイで確認すると、そこにはマフラーを巻き付け、ダウンジャケットを着た亮平が両手に紙袋を下げて立っていた。
「おはよう、亮平。」
ガチャリとドアを開けると亮平は震えながら言った。
「おはよう・・・う~寒いっ!中へ早く入れてくれ。」
「う、うん・・。」
避けると亮平は玄関の中へ入り込み、さっさと靴を脱いで上がり込んでくると、紙袋をドサリとテーブルの上に置いた。
「ね、ねぇ・・何?この紙袋は?」
マフラーと上着を脱ぐ亮平に私は尋ねた。
「うん?これは差し入れだ。」
「差し入れ?」
「そう、母さんから。色々おかずを作ったから鈴音に持たせてやってくれって。相変わらず昔から母さんは鈴音に甘いよな?あ、ハンガーあるか?」
亮平は脱いだマフラーと上着を手に持つと私に言った。
「あ、ハンガーね?うん。ちょっと待ってて。」
クローゼットを開けて私はハンガーを取り出すと亮平に手渡した。
「はい、どうぞ。」
「ああ、サンキュー。」
亮平は脱いだ上着、マフラーをハンガーにかけてフックに引っ掛けると私に言った。
「寒かった。熱いコーヒーでも淹れてくれよ。」
「うん。ちょっと待ってて。とりあえず、適当に座っていてよ。」
やかんに水を入れてガスコンロに掛けると、亮平のお母さんが持たせてくれたコンテナボックスに入ったおかずを紙袋から取り出した。
中にはお煮しめやきんぴらごぼう、ひじきの煮物、里芋の煮っころがし、青菜の胡麻和え、ミートソース等々合計10種類のおかずが入っていた。
「うわぁ・・すごい!こんなにたくさん・・・!」
思わず感動の声を上げると床に胡坐をかき、テレビを眺めていた亮平が声を掛けてきた。
「鈴音、食いきれなかったら小分けにして冷凍保存しておけって母さんが言ってたぞ。」
「うん。そうだね・・そうさせてもらうよ。」
ちょうどその時、ピーッとお湯が沸く音が鳴ったのでガスを止めると、昨日買ってきたばかりのインスタントコーヒーを開封した。
マグカップにティースプーンで小さじ2杯、亮平が好む味だ。そこにお湯を注いで2人分のコーヒーを用意すると両手に持って部屋に入り、亮平の前のテーブルにトンと置いた。
「はい、コーヒー淹れたよ。ちょっと待ってて。今何か食べ物出すから。」
立ち上がろうとすると亮平が引き留めた。
「いや、大丈夫だ。朝飯食べた来たばかりだから。それより鈴音、お前もここに座ってコーヒーを飲めよ。」
亮平は自分の真向かいの席を人差し指でトントン叩きながら言った。
「うん・・・分かった・・・。」
言われた通りに座ると亮平は黙ってコーヒーを飲みながら私をじっと見た。
「鈴音・・・お前、本当にちゃんと食ってるのか・・・?去年忍と一緒に住んでいた時と比べて、えらく体形が変わってしまったじゃないか・・。」
そして溜息をつくと、再びコーヒーに口をつける。
「あ、ありがとう。心配・・・してくれているんだよね?」
「ああ、そんなの当然だろう?」
それを聞いた私は嬉しくなった。けど・・次の瞬間、亮平の言葉に凍り付いた。
「全く・・・忍が調子悪いって言うのに・・鈴音まで具合悪くしたら・・いざって時に忍に何かあったら俺一人じゃ対処できないかもしれないじゃないか。だからさ、鈴音はちゃんと体調管理しておけよ?」
「!」
え・・?それって・・・お姉ちゃんの為に体調管理しておけって事なの・・?でも、一応私の事を心配してくれいるんだよね・・?
「う、うん・・・分かったよ・・。」
何とか亮平に返事をする。
「よし、鈴音。それじゃさっそく始めようか?」
突然亮平が言った。え・・・?始める・・?一体亮平はこれから何を始めると言うんだろう?
私は亮平の言葉に首を傾げた―。
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