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第8章 12 茜色の空
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「さっきの電話の相手だけどさ・・・。」
川口さんはコーヒーを一口飲み、カチャリとソーサーの上に置くと言った。
「俺が・・・以前付き合っていた彼女なんだ。」
「・・・・。」
私は黙って川口さんの話を聞いていた。
「彼女とは・・・交際を始めて3年目だったんだけど・・半年ほど前から彼女には別に男が出来て・・・二股かけられてたんだよ。」
「え・・?」
あまりにも意外な話に思わず私は声を出してしまった。
「こんな話・・驚くよな?段々彼女と連絡を取りずらくなって・・会う時間も減っていって・・・挙句にデート中にメールが入ってきたり、着信が入ってきたり・・・こんなのどんなに鈍い男だって普通は気づくよな?」
川口さんは自嘲気味に笑った。
「それで俺は聞いたんだ。相手は誰だって・・・そしたら同じ職場の同期だって言うんだ。部署も同じらしくて・・当然そっちの男といる時間の方が長いだろう?挙句に・・・付き合い始めたって言うんだから・・。それで彼女謝ってきたんだ。俺の事も・・・相手の事も好きだから、どっちも切れないって。別れたくないなんて言うんだから笑っちゃうよ。」
「川口さん・・・。」
「相手の男は俺という彼氏がいるのか知ってるのかって尋ねたら・・知ってるって言うんだよ。俺はその男の図々しさにも呆れてしまったよ。それで・・つい最近の事だよ。とうとう相手の男と彼女とカフェで会って・・・3人で話し合うことになになったんだ。そしたら・・・あの2人が日替わりで付き合おうって言い出したんだ。」
「え・・?」
私はあまりにも突拍子もない話に驚いてしまった。
「そうだよな・・・・?普通なら加藤さんみたいな反応するのが当然だよ。なのにあの2人はそれがさもベストみたいな雰囲気で・・・それで俺は身を引いたのさ。もう馬鹿らしくて付き合っていられなくなってね。」
「そうだったの・・・でも何故また彼女は川口さんに電話を入れてきたのかな?」
「・・・。」
川口さんは最初、苦々し気に口を閉ざしていたけど・・ポツリポツリと話し出した。
「俺が身を引いた直後・・・相手の男からいきなり振られたんだってよ。」
「え?何故?!」
私には相手の男性の気持ちがさっぱり理解できなかった。
「相手の男は・・彼氏がいる女性がいいんだってよ。その方が魅力を感じるって・・・。」
「そ、そんな・・・。」
「それで、すみれは俺にヨリを戻してほしいって泣きついてきたんだ。」
「そう・・だったんだ・・・。」
「だけど、俺の気持ちは・・もう冷めていたから当然断ったよ。それなのに・・いつまでもしつこく電話を掛けてきて・・。」
川口さんは忌々し気に言った。
「だからさ、あんな電話・・・気にする事無いんだ。もうすみれとは終わった話だし・・。未練も何もない。むしろ今俺が気になる女性は・・・。」
「川口さん。」
私は川口さんの言葉を遮るように言った。
「な、何・・・?」
「本当に・・・相手の事が嫌だったら・・むしろ電話もメールも全て着信拒否するよね?だけど・・川口さんはそれをしていなかったんだよね?」
「あ・・・。」
不意を突かれたかのように川口さんは俯いた。
「もう一度だけ・・すみれさんと会って話をしてみたらどうかな?そうすればお互いの気持ち・・はっきり分かるんじゃないの?余計なお世話かもしれないけど・・。」
川口さんは少しの間考え込むような素振りを見せていたけど・・やがて言った。
「加藤さんは・・どうなの?」
「え?」
「好きなんじゃないの?あの幼馴染の事・・・。」
「うん、でも・・・私はいいの。だって亮平はお姉ちゃんの彼氏で・・亮平はお姉ちゃんにしか興味が無いから。私はこの先もずっと亮平に告白するつもりは無いし、私の物になることは永遠に来ないって事は分かってるから・・。このままでいいの。」
「何だ・・否定はしないのかぁ・・でも幼馴染は本当にそう思ってるのかな・・・。」
「何?」
「いや・・本当に彼は・・加藤さんの事を何とも思っていないのかなって・・・。」
「勿論・・・当然だよ・・・。」
「そう・・でも分かったよ。」
「え?」
「すみれと・・もう一度会って話してみるよ。」
「うん。そうだね・・・うまくいくと・・いいね。」
私が笑顔で言うと、川口さんは溜息をつきながら頭をかいた。
「あ~あ・・・そこまではっきり言われると・・・脈なしかぁ・・。」
「え?」
何の事が分からず首をひねると川口さんが笑った。
「ハハハ・・・何でもない。ごめんね。引き留めて・・・・それじゃ・・そろそろ帰ろうか?」
「うん、そうだね。」
そして私たちはカフェを出た。
いつの間にか・・・空は茜色に染まっていた―。
川口さんはコーヒーを一口飲み、カチャリとソーサーの上に置くと言った。
「俺が・・・以前付き合っていた彼女なんだ。」
「・・・・。」
私は黙って川口さんの話を聞いていた。
「彼女とは・・・交際を始めて3年目だったんだけど・・半年ほど前から彼女には別に男が出来て・・・二股かけられてたんだよ。」
「え・・?」
あまりにも意外な話に思わず私は声を出してしまった。
「こんな話・・驚くよな?段々彼女と連絡を取りずらくなって・・会う時間も減っていって・・・挙句にデート中にメールが入ってきたり、着信が入ってきたり・・・こんなのどんなに鈍い男だって普通は気づくよな?」
川口さんは自嘲気味に笑った。
「それで俺は聞いたんだ。相手は誰だって・・・そしたら同じ職場の同期だって言うんだ。部署も同じらしくて・・当然そっちの男といる時間の方が長いだろう?挙句に・・・付き合い始めたって言うんだから・・。それで彼女謝ってきたんだ。俺の事も・・・相手の事も好きだから、どっちも切れないって。別れたくないなんて言うんだから笑っちゃうよ。」
「川口さん・・・。」
「相手の男は俺という彼氏がいるのか知ってるのかって尋ねたら・・知ってるって言うんだよ。俺はその男の図々しさにも呆れてしまったよ。それで・・つい最近の事だよ。とうとう相手の男と彼女とカフェで会って・・・3人で話し合うことになになったんだ。そしたら・・・あの2人が日替わりで付き合おうって言い出したんだ。」
「え・・?」
私はあまりにも突拍子もない話に驚いてしまった。
「そうだよな・・・・?普通なら加藤さんみたいな反応するのが当然だよ。なのにあの2人はそれがさもベストみたいな雰囲気で・・・それで俺は身を引いたのさ。もう馬鹿らしくて付き合っていられなくなってね。」
「そうだったの・・・でも何故また彼女は川口さんに電話を入れてきたのかな?」
「・・・。」
川口さんは最初、苦々し気に口を閉ざしていたけど・・ポツリポツリと話し出した。
「俺が身を引いた直後・・・相手の男からいきなり振られたんだってよ。」
「え?何故?!」
私には相手の男性の気持ちがさっぱり理解できなかった。
「相手の男は・・彼氏がいる女性がいいんだってよ。その方が魅力を感じるって・・・。」
「そ、そんな・・・。」
「それで、すみれは俺にヨリを戻してほしいって泣きついてきたんだ。」
「そう・・だったんだ・・・。」
「だけど、俺の気持ちは・・もう冷めていたから当然断ったよ。それなのに・・いつまでもしつこく電話を掛けてきて・・。」
川口さんは忌々し気に言った。
「だからさ、あんな電話・・・気にする事無いんだ。もうすみれとは終わった話だし・・。未練も何もない。むしろ今俺が気になる女性は・・・。」
「川口さん。」
私は川口さんの言葉を遮るように言った。
「な、何・・・?」
「本当に・・・相手の事が嫌だったら・・むしろ電話もメールも全て着信拒否するよね?だけど・・川口さんはそれをしていなかったんだよね?」
「あ・・・。」
不意を突かれたかのように川口さんは俯いた。
「もう一度だけ・・すみれさんと会って話をしてみたらどうかな?そうすればお互いの気持ち・・はっきり分かるんじゃないの?余計なお世話かもしれないけど・・。」
川口さんは少しの間考え込むような素振りを見せていたけど・・やがて言った。
「加藤さんは・・どうなの?」
「え?」
「好きなんじゃないの?あの幼馴染の事・・・。」
「うん、でも・・・私はいいの。だって亮平はお姉ちゃんの彼氏で・・亮平はお姉ちゃんにしか興味が無いから。私はこの先もずっと亮平に告白するつもりは無いし、私の物になることは永遠に来ないって事は分かってるから・・。このままでいいの。」
「何だ・・否定はしないのかぁ・・でも幼馴染は本当にそう思ってるのかな・・・。」
「何?」
「いや・・本当に彼は・・加藤さんの事を何とも思っていないのかなって・・・。」
「勿論・・・当然だよ・・・。」
「そう・・でも分かったよ。」
「え?」
「すみれと・・もう一度会って話してみるよ。」
「うん。そうだね・・・うまくいくと・・いいね。」
私が笑顔で言うと、川口さんは溜息をつきながら頭をかいた。
「あ~あ・・・そこまではっきり言われると・・・脈なしかぁ・・。」
「え?」
何の事が分からず首をひねると川口さんが笑った。
「ハハハ・・・何でもない。ごめんね。引き留めて・・・・それじゃ・・そろそろ帰ろうか?」
「うん、そうだね。」
そして私たちはカフェを出た。
いつの間にか・・・空は茜色に染まっていた―。
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