本日、私の大好きな幼馴染が大切な姉と結婚式を挙げます

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第3章 9 仮のお付き合いだけど・・・

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 亮平は私が急に黙ってしまったのを不思議に思ったのか声を掛けてきた。

「おい、どうしたんだよ鈴音。うん・・?何だ、お前良く見れば顔色が悪いぞ?あ・・お前、まさか俺と忍さんが付き合うって話を聞いてショック受けているのか?」

「な、な、何言ってるのかな・・?ハハッ・・・そ、それくらいでショ、ショック受けるなんて・・・。」

図星をつかれ、思わず慌ててしまう私。

「嘘言うなよ。鈴音。さっきからお前・・・言葉噛みっぱなしだ。」

「う・・・。」

「やっぱりな~・・そうだと思ったよ。」

亮平は両腕を頭の後ろで組むと言った。

「な、何がやっぱりなのよ。」

言いながら私の心臓は口から今にも飛び出しそうだ。まさか・・・亮平・・気づいていたの・・?私が子供の頃から亮平の事を好きだった事に・・・。


しかし亮平の口から出てきた言葉は意外なものだった。

「お前、昔から忍さんにべったりだったからな。鈴音・・お前、俺に忍さんを取られそうで嫌だと思っているんだろう?」

へ・・?

思わずぽかんとした顔で亮平を見ると、私の頭を小突いてきた。

「お前なあ・・・いくら俺が忍さんと付き合ったって、姉妹の縁が切れるわけじゃないんだからそんな顔するなって。あ、それとももしかして俺が忍さんを泣かしたりするんじゃないかって思ってるんじゃないだろうな?」

「さ、さあ・・・それはどうかな~。」

内心の動揺を隠すために私はわざと軽いノリで言う。

「俺が忍さんを泣かすような真似なんかするはずないだろう?何せ俺は昔からずっと忍さんの事が好きだったんだから。それにな・・・まだ正式に付き合う話にはなっていないんだよ・・・。」

「え?それってどういう事?」

「うん・・・とりあえず1カ月お試しで付き合ってから正式に付き合うかどうか考えるって忍さんが言ったんだ。」

「え・・何それ・・・。」

それじゃあ、亮平は正式にお姉ちゃんとお付き合いが決まったわけでもないのに眠っているお姉ちゃんに勝手にキスしたって事になるんじゃない!
そのことに気づいた私の目に徐々に軽蔑の目が宿る・・・・。

「お、おい・・。何だ?お前のその眼付・・・何か怖いんだけど・・?」

亮平が一歩後ずさる。そんな態度を取るならこっちにだって考えがあるんだからね?
私はずんずん亮平に近づき、車まで追い詰めると亮平の襟首を掴むと言ってやった。

「この痴漢。」

「な、何で!この俺が痴漢なんだよっ!って・・まずいっ!」

亮平はここがしんと静まり返った夜の住宅街であった事を思い出したのか、慌てて口を押える。

「なんで俺が痴漢なんだよっ!」

亮平は小声で抗議してきた。

「だってそうでしょう?亮平とお姉ちゃんは仮のお付き合いでしょう?それってキスはダメなんじゃないの?」

「な、何言ってるんだよっ!キ・キスまでならいいって、忍さんから許可貰ってるんだよっ!」

亮平の言葉に私は今度こそ凍り付いた。え・・?キスまでならいい・・?お姉ちゃんから許可も貰ってる・・・?私は亮平の襟首から手を離した。心臓がうるさいほどにドキドキと鳴っている。駄目だ、私・・・。冷静にならなくちゃ・・・。

「あ・・・。」

思わず俯くと、亮平が声を掛けてくる。

「どうした?鈴音。」

「あ・・・な~んだ・・アハハハ。そうだったんだ~キスまでならOKだったんだね?それならそうと言ってくれれば良かったのに・・。」

「あのなあ・・・そんな事言う前にお前が勝手に思い込みしたんだろう?第一、どうして俺と忍さんの事お前に話さなくちゃならないんだよ。普通恋人同士の話を他の人間に話さないだろう?お前には何の関係も無いんだから。」

関係ない・・・。そうだ、確かに私には亮平とお姉ちゃんの事は関係無いんだ。

「うん、そうだったよね。いや~ごめんごめん。さて、それじゃお姉ちゃんを車から起こしてあげないと。」

私はわざと明るい声で助手席のドアを開けてお姉ちゃんを揺さぶった。

「お姉ちゃん。ほら、起きて。」

「う~ん・・・・。」

しかし、お姉ちゃんは全く目が覚める気配がない。

「仕方ないな・・・。鈴音、ちょっとどいてくれ。」

背後で亮平に言われ、どけると亮平はお姉ちゃんの膝と背中にスルリと腕を回して抱き上げた。

「!」

亮平は軽々とお姉ちゃんを御姫様抱っこすると私に言う。

「鈴音、玄関のドア開けてくれ。」

「う、うん。」

急いで玄関のドアを開けると亮平は靴を脱いで上がり込み、ソファの上にお姉ちゃんを横たわらせた。


「あ・・ははは・・・。亮平って・・力持ちなんだね・・。」

「忍さんは軽いからな。お前は・・・。」

そう言いながら亮平は私の事を頭のてっぺんからつま先まで見ると言った。

「ま・・・お前はあと2、3キロ・・ってな・何で睨むんだよっ!」

「そんなセリフ・・乙女に言っていいと思ってるのかな~。」

私の迫力に押されたのか、亮平は後ずさると言った。

「お・・俺、帰るわっ!じゃあなっ!」

そして脱兎のごとく逃げるように玄関から飛び出して行った。亮平が去って、姉の寝息だけが聞こえてくる。

「お姉ちゃん・・・。」

毛布を持ってくると眠っているお姉ちゃんにかけてあげた―。



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