22 / 519
第2章 12 夜明けの中で
しおりを挟む
夜明け―
私は全く寝た気がしなかった。お姉ちゃんのことが心配で、目が覚めた時に思い余って自殺でもしてしまうのではないかと思うと不安でたまらず一睡もする事が出来なかった。
ソファの上でウトウト微睡んでいると、突然玄関のチャイムが激しく何度も鳴らされた。
「何?何?」
半分寝ぼけ眼で玄関のドアを開けると、そこには亮平が立っていた。
「・・・おはよう、鈴音。」
「うん・・おはよう・・。どうしたの?こんな朝早くから・・・まだ6時前だよ?」
私は玄関に置いてある置時計を見ながら言った。
「いや・・・あんなことがあったから・・朝ご飯の用意どころじゃないと思って・・。」
見ると亮平の右手にはコンビニの袋がぶら下がっている。
「まさか・・朝ご飯買ってきてくれたの?」
「ああ・・。上がるぞ。」
亮平は短く言うと、靴を脱いで上がり込んできた。ダイニングテーブルにコンビニの袋を置くと天井を見上げた。
「忍さんは・・・?どうしてる?」
「寝てる・・・。何回か部屋に様子を見に行ったけど・・・泣きながら眠っていたよ。でも睡眠薬が効いてるのかな?起きた気配は無いよ。」
「そうか・・。それでどれ食べる?」
亮平は言いながらレジ袋から次から次へと食べ物を取り出した。おにぎりやお弁当、カップ麺にサンドイッチ、総菜パンや菓子パン・・・挙句に冷凍食品まで出してきた。
「ちょ、ちょっと亮平・・・これは幾ら何でも買い過ぎじゃない?こんなに食べきれないよ。」
苦笑しながら言うと、亮平はポツリと言った。
「だよな・・・。でも・・・どれなら忍さんが食事してくれるか分からなかったから・・。」
「そっか・・・。」
またしてもしんみりとした雰囲気になってしまった。だけど・・・こんな事していていいのだろうか?姉は睡眠薬のせいで眠りっぱなしだし、かといって私は進さんの連絡先しか知らない。お葬式の話だってあるだろうけど、私にはそれを確認する手段が無かった。かといって姉を起こすのもしのびない。
「これからどうしよう・・。」
考えなくちゃいけない事は沢山あるのに、夜が明けたせいなのか、それとも亮平が来てくれた安心からなのか・・・急激に眠気が襲ってきた。それでも必死で欠伸を噛み殺していると亮平が言った。
「鈴音・・・もしかして眠いのか?寝て無いのか?」
「うん・・・お姉ちゃんが心配で・・・眠れなかった。」
すると亮平が言った。
「鈴音。お前・・・今日仕事は?」
「うん。本当はあるんだけど・・・昨夜のうちに上司に電話を入れたの。姉の婚約者が車にひき逃げされて亡くなって・・姉が心配だから本日お休みさせて下さいってお願いした。それにたまたま明日は仕事も休みだったし・・・。」
「そうか・・・なら少し寝ろよ。」
「え・・・?でも・・・。」
私が言い淀むと亮平は言った。
「大丈夫だ、忍さんの事なら俺が見ておくから・・・とにかくお前は仮眠を取れ。どうせ近いうちにお葬式が行われるんだろう?そうなると身体を休めなくなるんじゃないのか?」
確かに亮平の言う事も一理あるかも・・・。
「うん、それじゃお言葉に甘えて寝かせて貰うね。」
二階に上がろうとした所で亮平に引き留められた。
「鈴音。」
「何?」
「ほら、何か食ってから寝ろよ。」
コンビで買って来た食べ物を前に亮平は言った。
「うん・・・分かったよ・・。」
本当は食欲なんか無かったけれども、折角亮平が買ってきてくれたんだから・・・。
取りあえず私は焼きたらこおにぎりを1個だけ食べると仮眠を取る為に二階へ上がって行った。
姉の隣の部屋が私の部屋だ。
「・・・。」
私はそっと姉の部屋を開けると、そこには寝息を立てて眠っている姉の姿がある。
「お姉ちゃん・・・。」
私はそっと扉を閉めると自室へ向かった—。
私は全く寝た気がしなかった。お姉ちゃんのことが心配で、目が覚めた時に思い余って自殺でもしてしまうのではないかと思うと不安でたまらず一睡もする事が出来なかった。
ソファの上でウトウト微睡んでいると、突然玄関のチャイムが激しく何度も鳴らされた。
「何?何?」
半分寝ぼけ眼で玄関のドアを開けると、そこには亮平が立っていた。
「・・・おはよう、鈴音。」
「うん・・おはよう・・。どうしたの?こんな朝早くから・・・まだ6時前だよ?」
私は玄関に置いてある置時計を見ながら言った。
「いや・・・あんなことがあったから・・朝ご飯の用意どころじゃないと思って・・。」
見ると亮平の右手にはコンビニの袋がぶら下がっている。
「まさか・・朝ご飯買ってきてくれたの?」
「ああ・・。上がるぞ。」
亮平は短く言うと、靴を脱いで上がり込んできた。ダイニングテーブルにコンビニの袋を置くと天井を見上げた。
「忍さんは・・・?どうしてる?」
「寝てる・・・。何回か部屋に様子を見に行ったけど・・・泣きながら眠っていたよ。でも睡眠薬が効いてるのかな?起きた気配は無いよ。」
「そうか・・。それでどれ食べる?」
亮平は言いながらレジ袋から次から次へと食べ物を取り出した。おにぎりやお弁当、カップ麺にサンドイッチ、総菜パンや菓子パン・・・挙句に冷凍食品まで出してきた。
「ちょ、ちょっと亮平・・・これは幾ら何でも買い過ぎじゃない?こんなに食べきれないよ。」
苦笑しながら言うと、亮平はポツリと言った。
「だよな・・・。でも・・・どれなら忍さんが食事してくれるか分からなかったから・・。」
「そっか・・・。」
またしてもしんみりとした雰囲気になってしまった。だけど・・・こんな事していていいのだろうか?姉は睡眠薬のせいで眠りっぱなしだし、かといって私は進さんの連絡先しか知らない。お葬式の話だってあるだろうけど、私にはそれを確認する手段が無かった。かといって姉を起こすのもしのびない。
「これからどうしよう・・。」
考えなくちゃいけない事は沢山あるのに、夜が明けたせいなのか、それとも亮平が来てくれた安心からなのか・・・急激に眠気が襲ってきた。それでも必死で欠伸を噛み殺していると亮平が言った。
「鈴音・・・もしかして眠いのか?寝て無いのか?」
「うん・・・お姉ちゃんが心配で・・・眠れなかった。」
すると亮平が言った。
「鈴音。お前・・・今日仕事は?」
「うん。本当はあるんだけど・・・昨夜のうちに上司に電話を入れたの。姉の婚約者が車にひき逃げされて亡くなって・・姉が心配だから本日お休みさせて下さいってお願いした。それにたまたま明日は仕事も休みだったし・・・。」
「そうか・・・なら少し寝ろよ。」
「え・・・?でも・・・。」
私が言い淀むと亮平は言った。
「大丈夫だ、忍さんの事なら俺が見ておくから・・・とにかくお前は仮眠を取れ。どうせ近いうちにお葬式が行われるんだろう?そうなると身体を休めなくなるんじゃないのか?」
確かに亮平の言う事も一理あるかも・・・。
「うん、それじゃお言葉に甘えて寝かせて貰うね。」
二階に上がろうとした所で亮平に引き留められた。
「鈴音。」
「何?」
「ほら、何か食ってから寝ろよ。」
コンビで買って来た食べ物を前に亮平は言った。
「うん・・・分かったよ・・。」
本当は食欲なんか無かったけれども、折角亮平が買ってきてくれたんだから・・・。
取りあえず私は焼きたらこおにぎりを1個だけ食べると仮眠を取る為に二階へ上がって行った。
姉の隣の部屋が私の部屋だ。
「・・・。」
私はそっと姉の部屋を開けると、そこには寝息を立てて眠っている姉の姿がある。
「お姉ちゃん・・・。」
私はそっと扉を閉めると自室へ向かった—。
2
お気に入りに追加
865
あなたにおすすめの小説

関係を終わらせる勢いで留学して数年後、犬猿の仲の狼王子がおかしいことになっている
百門一新
恋愛
人族貴族の公爵令嬢であるシェスティと、獣人族であり六歳年上の第一王子カディオが、出会った時からずっと犬猿の仲なのは有名な話だった。賢い彼女はある日、それを終わらせるべく(全部捨てる勢いで)隣国へ保留学した。だが、それから数年、彼女のもとに「――カディオが、私を見ないと動機息切れが収まらないので来てくれ、というお願いはなんなの?」という変な手紙か実家から来て、帰国することに。そうしたら、彼の様子が変で……?
※さくっと読める短篇です、お楽しみいだたけましたら幸いです!
※他サイト様にも掲載
余命宣告を受けたので私を顧みない家族と婚約者に執着するのをやめる事にしました 〜once again〜
結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
【アゼリア亡き後、残された人々のその後の物語】
白血病で僅か20歳でこの世を去った前作のヒロイン、アゼリア。彼女を大切に思っていた人々のその後の物語
※他サイトでも投稿中

溺婚
明日葉
恋愛
香月絢佳、37歳、独身。晩婚化が進んでいるとはいえ、さすがにもう、無理かなぁ、と残念には思うが焦る気にもならず。まあ、恋愛体質じゃないし、と。
以前階段落ちから助けてくれたイケメンに、馴染みの店で再会するものの、この状況では向こうの印象がよろしいはずもないしと期待もしなかったのだが。
イケメン、天羽疾矢はどうやら絢佳に惹かれてしまったようで。
「歳も歳だし、とりあえず試してみたら?こわいの?」と、挑発されればつい、売り言葉に買い言葉。
何がどうしてこうなった?
平凡に生きたい、でもま、老後に1人は嫌だなぁ、くらいに構えた恋愛偏差値最底辺の絢佳と、こう見えて仕事人間のイケメン疾矢。振り回しているのは果たしてどっちで、振り回されてるのは、果たしてどっち?

訳あり冷徹社長はただの優男でした
あさの紅茶
恋愛
独身喪女の私に、突然お姉ちゃんが子供(2歳)を押し付けてきた
いや、待て
育児放棄にも程があるでしょう
音信不通の姉
泣き出す子供
父親は誰だよ
怒り心頭の中、なしくずし的に子育てをすることになった私、橋本美咲(23歳)
これはもう、人生詰んだと思った
**********
この作品は他のサイトにも掲載しています
余命六年の幼妻の願い~旦那様は私に興味が無い様なので自由気ままに過ごさせて頂きます。~
流雲青人
恋愛
商人と商品。そんな関係の伯爵家に生まれたアンジェは、十二歳の誕生日を迎えた日に医師から余命六年を言い渡された。
しかし、既に公爵家へと嫁ぐことが決まっていたアンジェは、公爵へは病気の存在を明かさずに嫁ぐ事を余儀なくされる。
けれど、幼いアンジェに公爵が興味を抱く訳もなく…余命だけが過ぎる毎日を過ごしていく。

忙しい男
菅井群青
恋愛
付き合っていた彼氏に別れを告げた。忙しいという彼を信じていたけれど、私から別れを告げる前に……きっと私は半分捨てられていたんだ。
「私のことなんてもうなんとも思ってないくせに」
「お前は一体俺の何を見て言ってる──お前は、俺を知らな過ぎる」
すれ違う想いはどうしてこうも上手くいかないのか。いつだって思うことはただ一つ、愛おしいという気持ちだ。
※ハッピーエンドです
かなりやきもきさせてしまうと思います。
どうか温かい目でみてやってくださいね。
※本編完結しました(2019/07/15)
スピンオフ &番外編
【泣く背中】 菊田夫妻のストーリーを追加しました(2019/08/19)
改稿 (2020/01/01)
本編のみカクヨムさんでも公開しました。
「好き」の距離
饕餮
恋愛
ずっと貴方に片思いしていた。ただ単に笑ってほしかっただけなのに……。
伯爵令嬢と公爵子息の、勘違いとすれ違い(微妙にすれ違ってない)の恋のお話。
以前、某サイトに載せていたものを大幅に改稿・加筆したお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる