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ゲームクリア。そしてエンディング <完>
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「あ、あの・・・それでベソとノッポは・・?」
何だか嫌な予感がする。いや、そもそも目が覚めた時から何となく胸騒ぎがあったのだ。何故ならここは『管理事務局』であり、ベソとノッポの職場?だった。PC機器で溢れかえっていたこの部屋は何故か綺麗に片付けられ、ベッドが1台置かれているだけ。そして姿を見せないベソとノッポ。
すると私の言葉に顔を曇らせたのがフレッドだった。
「あいつらは・・・もういない。」
「え・・?いない・・?」
一体どういう事だろう?心臓の鼓動が煩いほどドキドキしている。
「言葉通りだ。あの2人はこの部屋から出て行った気配は無い。何故なら俺達はずっとこのドアの前にいたんだからな。そしてこの部屋に飛び込んできた時には・・あの2人の姿は既に無かったんだよ。」
「そ・・そんな・・・。」
何故?何故ベソとノッポは姿を消してしまったのだろう?あの2人は私と同じバーチャル世界に送り込まれてきたリアルな人間だったのに・・・彼等が消えるなんてありえない。しかし、そんな私の不安を他所に何故か攻略キャラ達は互いに頷きあっている。
「エリス・・・聞いてくれるか・・・?」
突如頬を赤らめながらジェフリーが私を見た。
「はい・・?」
何だろう・・?
すると・・・全員が声を揃えて大声で叫んだ。
『 エリスッ!!俺達は全員お前の事が大好きだっ!! 』
「え・・ええええ~っ!!」
何と私はこの場で一斉に全員から告白された。すると・・・・
突然何処からともなくファンファーレが流れ出し、目の前に液晶画面が表示された。
『おめでとうございます!全員の好感度をマックスにし、告白を受けました。ゲームクリアです!今から現実世界に戻ります。』
まさか!いきなりのゲームクリアだ。すると途端に目の前の光景が煙のようにかききえ・・・気が付けば私はエアーベッドの中で横たわっている事に気が付いた。そして目の前に液晶画面が現れた。
それはゲームのエンドロールの映像だった。そこにはあのゲームの後日談が映像と音楽のみで映し出されている。オリビアが学園を追われて出ていき、そこへ今迄私が演じていたエリスが現れ、学園に復帰し『白銀のナイト』達の聖女となった映像が映し出されて行く。アスピダは洞窟へ戻り、タリク王子は何故か学園の生徒として転入し・・・トビー達の日常生活が映し出される。そして最後の映像を観て私は息を飲んだ。そこに映し出されたのはベソとノッポの姿だったのだ。そして文字が映し出される。『ヒロイン・エリスを助ける為に自らの命を差し出した2人の英雄達』と紹介されたのだった—。
「う・・嘘でしょう・・・・?」
私は呆然とゲームのエンドロールを眺めていた。やがて画面は今迄登場したキャラ達の名前が流れ始め・・そこにはっきりと攻略対象の中にベソとノッポの名前が映し出されたのだった。
つまり、私がリアルな世界の存在だと思っていたベソとノッポは実はゲーム中でしか存在しないキャラクターだったのだ—。
ゲームクリアの翌日・・・
私は「アースプロダクツエンターテイメント」の会社に来ていた。無事にテストプレイを期限内に終わらせたと言う事で呼ばれたのだった。
「瀬戸様、本日はようこそおいで下さいました。貴女のお陰でゲーム内におけるバグを全て取り除く事が出来ました。後は調整を行って、いよいよアプリゲームとして配信する事が出来ます。」
私の前に座るのはこのゲームのチーフプロデューサーを名乗る眼鏡をかけた30代程の男性だった。
「いえ・・・それ程でもありませんが・・・。でもあれは幾ら何でも酷いですよ。恋愛ゲームのはずがモンスターと戦わされたり、脱出ゲームまでさせられたり・・・。」
私はげんなりしながら言う。
「それに対しては・・・本当に申し訳ないと思っております。なにせ内部に侵入したウィルス『オリビア』が勝手にプログラムを書き換えていくので・・・でも瀬戸様のおかげです。ゲーム内部からウィルスを駆除して下さったのですから。」
「そうですか・・・。」
「あの・・・瀬戸様、なんだか元気が無いように見えますが・・・ひょっとしてプレイ中に気分でも悪くされてしまったのでしょうか?」
心配気に尋ねて来た。
「い、いえ・・・そう言う訳では・・・。」
そこまで言いかけて私は気付いた。そうだ、今私の中にあるのは虚無感だ。ベソとノッポがまさか・・・ゲームの中だけの存在だったなんて・・・。
「もしかして・・サポートキャラ達の事を気にしてるのですか?」
不意を突かれた言葉に私は顔を上げた。
「そうです・・・。あの2人はてっきりこの会社の社員だとばかり思っていたので・・・。」
すると男性は言った。
「申し訳ございませんでした。自分一人だけがリアルの人間の状態でゲームプレイした人々の中には鬱病を発症した方々がいたので、あたかも現実世界の人間のようなキャラを作り上げたのです。それにしても驚きました・・・・。まさか彼等の好感度もマックスにされてしまうのですから。」
「え?どういうことですか?」
私は顔を上げた。
「いえ、最期のシーンですよ。あれはあの2人の好感度がマックスで無ければあのエンディングを迎える事が出来なかったのです。あれこそが真のハッピーエンドだったのですよ。あのキャラ達は・・・ゲーム中の貴女を本当に大切に思っていたんですね・・・。自分達の命を懸けたのですから・・・・。」
ベソ・・・ノッポ・・・。
ついに私はこらえきれなくなり、机に突っ伏すと情けない位に泣いてしまった。
ベソ・・・ノッポ・・・もう一度現実世界で貴方達に会いたかったよ―。
そんな私をチーフプロデューサーはオロオロして見ていたが、不意に声を掛けてきた。
「落ち着いて下さい、瀬戸様。実は・・・あの2人のモデルになった男性が我が社にいるんですよ。すぐに連れて来るから待っていてくださいねっ!」
慌てて席を立つと男性はそのモデルを呼びに行ってしまった。
そんな事をしても無駄なのに・・・私の心は晴れるはずが無い・・。
それから5分程経過した時、ノックの音がして扉が開いた。私は顔をあげてその人物を見て言葉を失った。
そこに現れたのは・・・遠距離恋愛中の彼氏だったのだ—。
夕暮れのオフィス街で―
「ねえ、一体どう言う事なのよっ!!」
私は彼氏―「竹内信也」に詰め寄っていた。
「ごめん、葵。だますつもりはほんとに無かったんだよ!」
信也は頭を下げて許しを乞う。
「大体、いつ東京に戻っていたの?それに転職したなんて聞いて無かったけど?!」
「うん・・・葵はゲームが好きだっただろう?だから驚かしたかったんだよ。それで俺がこのテストプレイヤーに葵を指名したんだ。だってあのゲーム前作プレイしただろう?」
「それはそうだけど・・・。」
「それにさ、あのゲーム・・ほら、ベソとノッポだっけ?あれは俺の分身みたいなものなのさ。より一層リアルな人間に近付けるために専門家に俺の性格を分析して貰って、その分析データをあの2名のキャラに投影させたんだぜ?」
何故か照れくさそうに信也は言う。
「ふ~ん・・・そうだったんだ・・・。」
私は振り向くと笑顔で言った。
「ベソ、ノッポ。私は2人の事が大好きだったよ?」
「葵・・それは俺の事が大好きって意味だろう?」
言いながら信也は私を抱きしめて来ると耳元で言った。
「葵・・・俺ももう東京に戻って来れたし・・・結婚するか?」
私はそれを聞いて信也を見上げた。
「随分・・・唐突だね・・?」
「いや・・・そうでもないさ。このゲームが完成したらプロポーズするつもりだったんだから。」
そして信也は言った。
「エリスさん、俺と結婚して下さい。」
勿論私の返事は決まってる。
「喜んで。ベソ、ノッポ。」
そして私たちは夕暮れの街角でキスをした―。
<終>
何だか嫌な予感がする。いや、そもそも目が覚めた時から何となく胸騒ぎがあったのだ。何故ならここは『管理事務局』であり、ベソとノッポの職場?だった。PC機器で溢れかえっていたこの部屋は何故か綺麗に片付けられ、ベッドが1台置かれているだけ。そして姿を見せないベソとノッポ。
すると私の言葉に顔を曇らせたのがフレッドだった。
「あいつらは・・・もういない。」
「え・・?いない・・?」
一体どういう事だろう?心臓の鼓動が煩いほどドキドキしている。
「言葉通りだ。あの2人はこの部屋から出て行った気配は無い。何故なら俺達はずっとこのドアの前にいたんだからな。そしてこの部屋に飛び込んできた時には・・あの2人の姿は既に無かったんだよ。」
「そ・・そんな・・・。」
何故?何故ベソとノッポは姿を消してしまったのだろう?あの2人は私と同じバーチャル世界に送り込まれてきたリアルな人間だったのに・・・彼等が消えるなんてありえない。しかし、そんな私の不安を他所に何故か攻略キャラ達は互いに頷きあっている。
「エリス・・・聞いてくれるか・・・?」
突如頬を赤らめながらジェフリーが私を見た。
「はい・・?」
何だろう・・?
すると・・・全員が声を揃えて大声で叫んだ。
『 エリスッ!!俺達は全員お前の事が大好きだっ!! 』
「え・・ええええ~っ!!」
何と私はこの場で一斉に全員から告白された。すると・・・・
突然何処からともなくファンファーレが流れ出し、目の前に液晶画面が表示された。
『おめでとうございます!全員の好感度をマックスにし、告白を受けました。ゲームクリアです!今から現実世界に戻ります。』
まさか!いきなりのゲームクリアだ。すると途端に目の前の光景が煙のようにかききえ・・・気が付けば私はエアーベッドの中で横たわっている事に気が付いた。そして目の前に液晶画面が現れた。
それはゲームのエンドロールの映像だった。そこにはあのゲームの後日談が映像と音楽のみで映し出されている。オリビアが学園を追われて出ていき、そこへ今迄私が演じていたエリスが現れ、学園に復帰し『白銀のナイト』達の聖女となった映像が映し出されて行く。アスピダは洞窟へ戻り、タリク王子は何故か学園の生徒として転入し・・・トビー達の日常生活が映し出される。そして最後の映像を観て私は息を飲んだ。そこに映し出されたのはベソとノッポの姿だったのだ。そして文字が映し出される。『ヒロイン・エリスを助ける為に自らの命を差し出した2人の英雄達』と紹介されたのだった—。
「う・・嘘でしょう・・・・?」
私は呆然とゲームのエンドロールを眺めていた。やがて画面は今迄登場したキャラ達の名前が流れ始め・・そこにはっきりと攻略対象の中にベソとノッポの名前が映し出されたのだった。
つまり、私がリアルな世界の存在だと思っていたベソとノッポは実はゲーム中でしか存在しないキャラクターだったのだ—。
ゲームクリアの翌日・・・
私は「アースプロダクツエンターテイメント」の会社に来ていた。無事にテストプレイを期限内に終わらせたと言う事で呼ばれたのだった。
「瀬戸様、本日はようこそおいで下さいました。貴女のお陰でゲーム内におけるバグを全て取り除く事が出来ました。後は調整を行って、いよいよアプリゲームとして配信する事が出来ます。」
私の前に座るのはこのゲームのチーフプロデューサーを名乗る眼鏡をかけた30代程の男性だった。
「いえ・・・それ程でもありませんが・・・。でもあれは幾ら何でも酷いですよ。恋愛ゲームのはずがモンスターと戦わされたり、脱出ゲームまでさせられたり・・・。」
私はげんなりしながら言う。
「それに対しては・・・本当に申し訳ないと思っております。なにせ内部に侵入したウィルス『オリビア』が勝手にプログラムを書き換えていくので・・・でも瀬戸様のおかげです。ゲーム内部からウィルスを駆除して下さったのですから。」
「そうですか・・・。」
「あの・・・瀬戸様、なんだか元気が無いように見えますが・・・ひょっとしてプレイ中に気分でも悪くされてしまったのでしょうか?」
心配気に尋ねて来た。
「い、いえ・・・そう言う訳では・・・。」
そこまで言いかけて私は気付いた。そうだ、今私の中にあるのは虚無感だ。ベソとノッポがまさか・・・ゲームの中だけの存在だったなんて・・・。
「もしかして・・サポートキャラ達の事を気にしてるのですか?」
不意を突かれた言葉に私は顔を上げた。
「そうです・・・。あの2人はてっきりこの会社の社員だとばかり思っていたので・・・。」
すると男性は言った。
「申し訳ございませんでした。自分一人だけがリアルの人間の状態でゲームプレイした人々の中には鬱病を発症した方々がいたので、あたかも現実世界の人間のようなキャラを作り上げたのです。それにしても驚きました・・・・。まさか彼等の好感度もマックスにされてしまうのですから。」
「え?どういうことですか?」
私は顔を上げた。
「いえ、最期のシーンですよ。あれはあの2人の好感度がマックスで無ければあのエンディングを迎える事が出来なかったのです。あれこそが真のハッピーエンドだったのですよ。あのキャラ達は・・・ゲーム中の貴女を本当に大切に思っていたんですね・・・。自分達の命を懸けたのですから・・・・。」
ベソ・・・ノッポ・・・。
ついに私はこらえきれなくなり、机に突っ伏すと情けない位に泣いてしまった。
ベソ・・・ノッポ・・・もう一度現実世界で貴方達に会いたかったよ―。
そんな私をチーフプロデューサーはオロオロして見ていたが、不意に声を掛けてきた。
「落ち着いて下さい、瀬戸様。実は・・・あの2人のモデルになった男性が我が社にいるんですよ。すぐに連れて来るから待っていてくださいねっ!」
慌てて席を立つと男性はそのモデルを呼びに行ってしまった。
そんな事をしても無駄なのに・・・私の心は晴れるはずが無い・・。
それから5分程経過した時、ノックの音がして扉が開いた。私は顔をあげてその人物を見て言葉を失った。
そこに現れたのは・・・遠距離恋愛中の彼氏だったのだ—。
夕暮れのオフィス街で―
「ねえ、一体どう言う事なのよっ!!」
私は彼氏―「竹内信也」に詰め寄っていた。
「ごめん、葵。だますつもりはほんとに無かったんだよ!」
信也は頭を下げて許しを乞う。
「大体、いつ東京に戻っていたの?それに転職したなんて聞いて無かったけど?!」
「うん・・・葵はゲームが好きだっただろう?だから驚かしたかったんだよ。それで俺がこのテストプレイヤーに葵を指名したんだ。だってあのゲーム前作プレイしただろう?」
「それはそうだけど・・・。」
「それにさ、あのゲーム・・ほら、ベソとノッポだっけ?あれは俺の分身みたいなものなのさ。より一層リアルな人間に近付けるために専門家に俺の性格を分析して貰って、その分析データをあの2名のキャラに投影させたんだぜ?」
何故か照れくさそうに信也は言う。
「ふ~ん・・・そうだったんだ・・・。」
私は振り向くと笑顔で言った。
「ベソ、ノッポ。私は2人の事が大好きだったよ?」
「葵・・それは俺の事が大好きって意味だろう?」
言いながら信也は私を抱きしめて来ると耳元で言った。
「葵・・・俺ももう東京に戻って来れたし・・・結婚するか?」
私はそれを聞いて信也を見上げた。
「随分・・・唐突だね・・?」
「いや・・・そうでもないさ。このゲームが完成したらプロポーズするつもりだったんだから。」
そして信也は言った。
「エリスさん、俺と結婚して下さい。」
勿論私の返事は決まってる。
「喜んで。ベソ、ノッポ。」
そして私たちは夕暮れの街角でキスをした―。
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