悪役令嬢の逆襲~バッドエンドからのスタート

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多重ループ空間 第?日目 ②

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「あら、御免なさいね。エリスさん。忙しいのに引き留めてしまって、早く仕事に向ったら?」

廊下で白銀のナイト達に思い切り嫌みを言われた後、オリビアが私に言った。

「あ、はい。そうですね。行ってきます。」

私の言葉を聞いたオリビアは満足げに頷くと、背を向けて白銀のナイト達を連れて去って行く・・・。その後ろ姿を見届けながら私は思わず呟いた。

「ああ・・・今朝も同じ事言われちゃった・・・。」

そこでふと気が付く。あれ・・?私、今何て言った・・?も・・って言わなかったっけ?今朝・・一体いつから私はこの生活を続けているのだろう?今のやり取りは昨日もその前の日も・・・ずっと繰り返されてきた気がする・・・。
それに何か重要な事を忘れている気がするのに、それが何かを思い出す事が出来ない。何故なら考えようとすれば頭にモヤがかかったかのような状態になってしまうからだ。

「あ、こんな事してられないっ!早く食器洗いに行かなくちゃっ!」

私は急いで学食へと向かった—。



「エリス、今日は体育館の裏手にある旧校舎の掃除をして来い。」

食器洗いを済ませた私はトビーに呼び出されて仕事を命じられた。

「旧校舎の掃除・・・ですか?」

「ああ、そうだ。学生達の話ではどうもそこの部屋の一室は空き部屋なのだが、今度そこを物置に使うらしい。長い間空き部屋だったので埃だらけの上に蜘蛛の巣も酷いらしいんだ。だからそこを掃除して来い、いいな?手抜きをすれば食事は抜きだぞ?」

言いながらトビーは私にほうきとバケツにぞうきんを差し出してきた。

「はい、分かりました。体育館の裏手にある旧校舎ですね?では行ってきます。」

こうして私は掃除用具を持って旧校舎へと向かった―。


「おかしい・・・?何でだろう・・・?」

私は今その部屋の前に立っているのだが・・・始めて来たはずなのに、何故かどうしても違和感を拭えない。何度も何度も私はこの場所を訪れた事がある気がしてならないのだ。

「う~ん・・・。でもここにずっと立っていてもしようが無いし・・・ってあれ?」

私はドアを見上げて目を擦った。今一瞬ドアにプレートがかかっている様に見えたからだ。しかし、ここは空き部屋なので当然プレートはついていない。

「おかしいな・・?見間違えだったのかな?」

再度呟きながらドアを開け・・・私は一瞬目を見張った。何とそこには沢山の机が並べられ、何やら何処かで見た事があるような物体が沢山置かれている。壁には巨大な額縁のような物が掛けてあるし、床には何か細長いコードが何本も張り巡らされている。
私は思わず無意識に呟いた。

「ベソ・・・ノッポ ・・・。」


そこでハッとなった。気付けば部屋の中はがらんどうで、カビと埃の匂いが充満していた。
「あれ・・・今のって何だったんだろう・・・?幻覚・・・?でも・・どこか懐かしく感じたな・・・。」

そこでくしゃみが連発して起こる。

クシャンクシャン!

「うう、駄目だ・・・埃とカビで鼻がムズムズする・・・。窓を空けなくちゃ!」

そして部屋の中へ足を踏み入れると、急いで部屋中の窓を開けて換気をする。途端に部屋の中に新鮮な空気が流れ込んできた。

「よし!それじゃお掃除始めようかな?!」

早速私は掃除を開始した。まずは、はたきを念入りにかけて、埃やら蜘蛛の巣を綺麗に払う。そして床をほうきで掃いて塵取りでごみを集めて床を丁寧に水拭きする。何故か分からないけど、この部屋だけは念入りに掃除をしてあげなければと言う気にさせられるから不思議だ。
やがてたっぷり2時間かけて部屋の掃除を済ませると、そこはピカピカになっていた。

「フウ~綺麗になった!」

するとその時、部屋の隅でまるで蛍の様にボンヤリと光る物体が目に止まった。

「え・・・?何だろう・・?」

近寄って手に取ると、突然目の前に今迄見た事もない光景が広がった。まるで映画のスクリーンのような物が何もない空間に現れ、そこに文字が表示されたのだ。


『記憶の欠片を見つけました。残り4ピースです。この部屋の何処かにあります。」見つけてください。』

「え・・?何?記憶の欠片って・・・・。でも・・。」

不思議だ。この蛍の様に光り輝く物体はとても温かく感じる。確かにこれを見つめていると何かを思い出せるような気がする。それは決して忘れてはいけない記憶。それが何なのかは思い出す事が出来ないけれども・・・。

「よしっ!こうなったら残り4ピース、絶対に見つけてやるっ!」

そして私は目を皿のようにして必死で『記憶の欠片』の捜索を始めた—。


「やった!あった!ついに見つけたっ!最後の一個!」

私は天井付近にフワフワと浮かんでいた『記憶の欠片』を手に入れた。これで全ての欠片を見つけた事になる。

「さて・・全部見つけるとどうなるのかな・・・?」

ワクワクしながら掌にある『記憶の欠片』を見つめていると、それは突然私の手を離れ、空中に浮かぶと眩しい位に光り輝き出した。

「うわっ!ま、眩し・・・・っ!!」

思わず目を強く閉じ・・・急激に意識が遠のいていくのを感じた—。



「・・・・ス・・エリスッ!!」

誰かが遠くで私の名前を呼んでいる・・・。

「う~ん・・・。」

それに周りも煩くて堪らない。もっと眠っていたいのにな・・・。

「エリスッ!」

誰かが大声で叫んだ。

「えっ?!」

思わずパッと目が覚めると、私は先ほどまでいた部屋に寝かされていた。しかもご丁寧にベッドの上で。

「あれ・・?ここは・・?」

そして私のベッドの周りには攻略対象キャラ達が情けない位ボロボロと泣いて私を見下ろしているでは無いか。
『白銀のナイト』達だけでなく、アスピダにオリバー、トビー、ジョージ、ニコル、そして・・・ええええっ?!

「タ・・・タリク王子・・・な、何故ここに・・・・?」

起き上がってタリク王子を見ると、ただでさえ泣いていた王子はさらに目にブワッと涙を浮かべ、突然抱きしめてくるとウオンウオンと泣き始めた。

「エ・・・エリスッ!お・・お前・・・30日間も眠り続けていたんだぞっ?!しかも・・まるで人形のようになってだっ!」

そしてギュウギュウに締め付けて来る。

「王子ッ!その手を離せっ!」

フレッドはボロボロ泣きながらタリク王子に剣を向けるし、トビーに至っては鼻水迄垂れ流してる。きったないなあ・・・。
兎に角全員が私を取り囲んでボロボロと泣いているので話にもならない。そして何気なく彼らの頭上を見て私は息を飲んだ。
なんと全員の好感度が500でカンストされているではないかっ!
え・・・?ど、どういう事・・・。

するとアスピダと視線があった。アスピダも泣いていた。ドラゴンなのに・・・。
アスピダは私と目が合うと言った。

「お前・・・俺の封印を解いた女にやられたんだよ。」

「え?」

いつの間にか周りはしんと静まり返り、全員がアスピダと私に注目している。

「あの女って・・もしかして・・オリビア・・?」

「そうか、あの女・・オリビアって言うのか・・・・。俺はあの時、目が覚めて急いでエリスの後を追いかけんたんだよ。そしたらあの女がお前に向って怪しげな光を放って・・・お前はそれをまともにくらって、地面に倒れてしまったんだ。それで俺はあの女を捕まえた。」

「エリス・・・今オリビアはこの学園の牢屋にいるんだ。・・俺達が全員で決めていれたんだよ。」

アンディが泣きはらした目で私を見ながら言った。

「え・・?」

その後、私は全員から少しずつ話を聞いた。オリビアに倒されてしまった私はまるで魂が抜けてしまった人形のようになってしまったそうだ。そして『白銀のナイト』達が招集されたが、彼等の魔力を使っても私の意識は戻らなかったらしい。オリビアはすぐに捉えられて地下牢に入れられたが決して口を割らない。ドラゴンであるアスピダも手が負えず、困り果てた頃に慌てた様子でベソとノッポが現れ、自分達にまかせてくれと言われて私を2人に託したらしい。騒ぎを聞きつけたタリク王子も現れ、全員が私の目を覚ますのを待っていたそうだ。

「・・・昨日の事だったんだよ。俺達の前にベソとノッポが現れ、ここへ運ぶように言って来たんだ。あの2人はついにエリスを助ける方法を見つけたと言って来たんだ。そして3人だけにしてくれと言われて・・・もしエリスの目が覚めたらよろしく頼むと言って、この部屋から俺達を締め出したんだ。」

エリックがポツリポツリと話す。

「そ、それで・・・?」

私は続きを促した。

「俺達は全員この部屋の外で待っていたら・・・ついさっきだよ。突然部屋が眩しく光り出して・・ドアが開いたんだよ。そしたら光に包まれたお前が眠っていて・・皆で駆けよったら・・・。」

「私が・・・目を覚ました・・?」

その言葉に全員が頷いた―。


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