悪役令嬢の逆襲~バッドエンドからのスタート

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第36日目 万能救急箱

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 しかし困った・・・・アレから小一時間経過するのに、誰一人として目を覚まさない。ううう・・・魔法の絨毯さえメンテナンス中でなければ、こんなところ一人でさっさと逃げ出しているのに、今の私はそれすら出来ない。
それにしても・・・。
傍らに倒れている美少年アスピダをチラリと見た。本当にこの少年がドラゴンだとすると、私が傷つけてしまった彼の逆鱗を治す事が出来れば元の姿に戻って、ひょっとするとあっという間にこの洞窟を飛んで連れ出してくれるかもしれない。
よし!そうと決まればまずアスピダの怪我の具合を見てみよう!

「ごめんね~・・・アスピダ・・・。ちょ~っと・・・傷の具合をお姉さんに見せてね・・・。」

そろりそろりと彼のシャツをまくる私・・・・。もう一度言っておくが、私は決してショタコンなどでは無い。純粋に彼の傷の具合を見る為なのである!
そして私はシャツをめくってアスピダの傷の具合を確認し・・・慌ててシャツを元に戻した。


ウエ・・・・。思っていた以上にき、傷の具合が・・・グロイ。グロすぎる・・・。ダメだ!ホラー映画が苦手な私にはとても正視出来る傷では無いっ!

「な、何か便利アイテムは無い?!た、例えば飲めばたちどころに治ってしまう傷薬とか・・・!」

液晶画面をタップして、急いでアイテム一覧表をチェックする。
う~ん・・風邪薬、胃薬、目薬・・・何でこんなアイテムがあるのだろう?
お?救急箱があるな・・・よし!この中に何か使えるものがあるかもしれない。

「え~とポイントは・・・え?20000?そんなにポイントが必要なの・・・?でもそれだけ期待できるアイテムって事だよね?!いいや!エイッ!アイテム交換よっ!」

そして私は液晶画面をタップした。するとポンッと軽い音がしたと同時に、突如として救急箱が現れた。

「よし、この中に何か入っているかな・・・。」

ワクワクしながら救急箱を開けて・・・固まってしまった。

「な・・何これ・・・中身が・・無い・・・・っ?!」

何とこのアイテムは救急箱のみのアイテムだったのだ。

「な、何よおっ!このアイテムはっ!!空箱じゃないのっ!!」

思わず怒って救急箱を投げつけそうになり・・・やめた。

「いいえ、駄目よ。私の貴重なポイントを20000も消費して交換したアイテムなんだから・・・乱暴な真似をしては壊れてしまうわ。ここは冷静に深呼吸して・・。」

スーハー深呼吸して、ふと自分の右手の手のひらを擦りむいて少し怪我をしていることに気が付いた。

「あれ?いつの間に・・・。う~ん・・・消毒液でもここにあれば良かったのにな・・・。」

そう呟いたとき、突如救急箱がピカアッと光り輝いた。

「え?光った・・・?」

何故光ったのだろう?恐る恐る救急箱を開けて・・・私は目を見開いた。

「おおっ!こ、これは・・・この液体が入った瓶は諸毒薬っ!」

500mlほどのボトルには透明な液体が入っており、ラベルには「万能消毒液」と記載されたラベルが貼られている。

「すごい!ひょっとすると・・これは自分が欲しい治療薬が取り出せるお助け便利救急箱なんだっ!道理で交換ポイントが高いと思ったよ・・。」

とりあえず、私は自分の手に消毒薬を振りかけてみると・・・あら不思議。たちどころに擦り傷が消えてしまったのだ。

「え・・?す・・すごい・・すごすぎるっ!こんな一瞬で怪我が治ってしまうなんて・・・と言う事は・・・?」

私は地面で伸びているアスピダをチラリと見た。
そうだ、きっとアスピダにこの消毒薬を振りかければ・・きっとたちどころに傷が治るはずっ!

私は再度、アスピダのシャツをめくり・・傷を見ないように消毒薬をドバドバ振りかけた。
すると・・・・。

「いって~っ!!し、染みる~っ!!」

アスピダが逆鱗を抑えて転げまわった。

「え?ね、ねえ。大丈夫っ?!アスピダッ!」

慌ててアスピダに声を掛けると、涙目になって怒鳴りつけてきた。

「て、てめえ・・・っ!一体なにしやがるん・・・だ・・?」

突如アスピダの様子が変わった。

「え・・・ど、どうしたの・・・?」

「痛くない・・・。」

「え?」

「傷が・・・傷がちっとも痛くないっ!」

そしてアスピダは自分の着ているシャツをガバッとめくってわき腹を確認した。

「う、嘘だろう・・・?あれ程酷かった逆鱗の傷が・・塞がってるっ!!」

見ると確かにあれ程見るに堪えなかった傷がきれいさっぱり消えている。

「すごいっ!こんなあっという間に治せるなんて・・・お前・・・すごいなっ!」

「フフフ・・まあね。」

私は若干得意げに言う。

「よし、傷も完全に治ったところで・・・。」

言いながらアスピダはチラリと私を見ると言った。

「とりあえず、お前のせいで傷を負ったのは確かだが・・あっという間に治してくれたから何か礼をしないとな?」

「本当?それじゃ・・・。」

私は床の上に倒れて気持ちよさげに眠っている白銀のナイト達を指さすと言った。

「彼らを・・起こしてくれる?」

「何だ、それ位お安い御用さ。」

アスピダは立ち上がると、白銀のナイト達の処へ行くと1人1人揺さぶっていく。

「え・・?ここはどこだっけ・・?」

最初に目を覚ましたのはアドニスだった。そして次にジェフリー、エディ、アベル、エリオット、アンディ、最後にフレッドが目を覚ました。

良かった・・・皆目が覚めて・・・。
少し遠くから離れた場所で見守っていると、白銀のナイト達は目の前に立っているアスピダを見て次々と質問を始めた。

「おい?お前、どこの子供だ?親はどうした?」

ジェフリーが尋ねた。

「うるさいな。お前たちに関係ないだろう?」

「何だと・・・貴様・・・目上の者に対する口の利き方を知らないようだな・・?」

フレッドが剣に触れながら言う。

「何だ?もう一度俺とやる気か?」

「あーもう!フレッドは本当に血の気がおおいなあ・・・。」

そこへアドニスが間に割って入って来た。

他のナイト達もアスピダを見て騒ぎ始めた。うう・・これではらちが明かない。

「皆さん、目が覚めたようで良かったですね。」

私はやむを得ず白銀のナイト達の前に現れた。

「エリスッ?!何故、ここに?」

真っ先に駆け寄って来たのはアンディだった。

「ええ・・・これには少し訳がありまして・・・。」

ハハハと笑ってごまかそうとしたところ・・・。突如、アスピダがアンディと私の前に立ち塞がると言った。

「おい、お前。俺の番に馴れ馴れしくするなっ!」

「ええっ?!」

驚いて私はアスピダを見た。
誰が番だっ!誰がっ!

「怪我が治って全て思い出した。お前はドラゴンである俺を倒した。よって、お前を俺の番にする事に決めたんだ。おい、喜べ。」

アスピダは得意そうに言う。
しかし、それを聞いていた白銀のナイト達は顔を見合わせ・・・一斉に大笑いを始めたのだ。

「お、お前がドラゴンだって・・・わ、笑わせるなよっ!チビのくせにっ!」

自分の身長を棚に上げて、アベルはお腹を押さえて笑っている。

「全く・・・何を言い出すかと思えば・・・エリスを番だとか・・言葉の使い方も分からないお子様の様だ。」

クイッと眼鏡を上げながらエディが言う。

皆に大笑いされてアスピダは顔を真っ赤にさせてブルブルと震え始めた。あ、何か・・ヤバい雰囲気・・・。

私は慌ててアスピダを自分の胸に抱きしめると言った。

「皆さん!この子は偶然町で出会った子で・・私と友達になったんです。それでこの子を魔法の絨毯に乗せてあげようとしたところ・・何故か辿り着いた場所がここだったんですっ!とにかく・・今はここを出ませんか?さ、寒くてたまらないので・・・。」

すると私の腕の中にいるアスピダが言った。

「何だ?この場所を出たいのか?ついでに行きたい場所はあるか?」

「う・・・ん、それなら・・・エタニティス学園に戻りたいかな?」

「よし!いいぜっ!」

アスピダがパチンと指を鳴らした瞬間・・・その場に立っていた私たちの目の前の景色がぐにゃりと歪んだ―。





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