悪役令嬢の逆襲~バッドエンドからのスタート

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第34日目 迷宮『マターファ』(モンスター討伐)その⑤(残り時間38日)

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 やはりモンスターの正体はベソとノッポが火炎放射器で焼き殺した巨大蟹だったようである。

「しかし・・・このリヤカーの荷物は一体どうすればいいのだ・・・?」

タリク王子がハーハー言いながらリヤカーを引いている。そして私達に抗議した。

「おいっ!お前達ッ!幾ら何でもこれは不公平だと思わないかっ?!何故俺ばかりがこの重いリヤカーを引いて洞窟内を歩かなければならないっ?!誰か替われ!」

「それにしても・・この洞窟は随分先が長いんですねえ・・・。でも光る鉱石のお陰かな?明るくていいですけど。」

ノッポが言う。

「どうかもうモンスターが出ませんように。どうか蝙蝠の大群に襲われませんように・・・・。」

ベソが両手を組んで、ブルブル震えながら歩いている。

「大丈夫だってっ!ベソはシューティングゲームが上手なんだから、仮にまた蝙蝠が現れたって、機関銃であっという間よ!所詮ベソの敵じゃ無いから。」

ベソの背中をバンバン叩きながら私は言う。

「お前ら~っ!!俺を無視するなああッ!」

タリク王子が大声で叫び、洞窟内にその声がこだまする。

「チッ!」

煩い王子だ・・・思わず舌打ちをついてしまう。

「お、おいエリス・・・・お前今俺に舌打ちしなかったか・・?」

タリク王子が声を震わせながら尋ねて来た。

「いーえ、まさか。仮にも一国の王子様に舌打ちなんてタダのメイドが出来るはず無いじゃないですか~。」

頬に手を当ててニッコリ笑う。するとそれを見てタリク王子が頬を染める。と言うか、何故頬を染めるっ?!

「う、うむ。そうだな・・・仮にも俺の嫁になるエリスが舌打ちなどするはずがないか・・・。」

タリク王子はブツブツ言っている。あ、この王子・・・まだそんな間抜けな事を言ってるよ。何度も嫌ですと断っているのに、理解出来ないなんて、とんでもなく馬鹿なのか、あるいはかなりのナルシストなのかもしれない。

「い、いやっ!今はそんな事を言ってる場合ではないっ!いいかっ?!何故俺ばかりにこの重たいリヤカーを引かせるのだっ?!普通は交代か全員で引くべきだろう?!」

「そんな事言ってもタリク王子。荷物運搬係をお願いしたら心よく引きうけて下さったじゃないですか?」

私が言うとウッと言葉に詰まるタリク王子。

「それにベソとノッポはモンスター討伐が任務ですよ?仮にリヤカーを引っ張っている時にモンスターに襲われたらどうするんですか?」

「ううっ!そ、それはっ!」

先程からベソとノッポは無言で私達の話を聞いては頷いている。

「それに・・・。」

私は目を潤ませて上目遣いにタリク王子に言った。

「タリク王子は・・・まさかこの私に重たいリヤカーを引っ張れ・・・とおっしゃるのですか?」

「ううう・・・だ、だが・・・・。」

タリク王子は顔を真っ赤にしながらたじろいでる。よし!もう一押しだっ!ところが・・・。

「い、いやっ!そ、その手には乗らないぞっ!だったら皆で引っ張ればいいんだ!それが無理だと言うなら、俺はここから一歩も動かないぞっ!さあ~どうする?うん?」

「いいですよ、それならそれで。」

私は言った。

「はい?」

タリク王子が間の抜けた声を出す。

「そうですね・・・別にもう無理してついて来て貰う必要は無いですね。」

ノッポが言う。

「ええ。考えてみればそのリヤカーの荷物・・・不必要なものばかりですし。」

「お、おい・・・お前らさっきから何を言ってるんだ?」

「あ~でも・・・そう言えば、そのリヤカーにはタリク王子の大好きなサボテンが沢山まだ積んであるんですよね・・・?まさかタリク王子がその大切なサボテンを置き去りにして洞窟を進むとも思えないし・・・・。」

私は溜息をつきながらタリク王子をチラリと見た。

「うううう・・・わ、分かったっ!俺が1人で運べばいいんだろう?!運べばっ!」

とうとうタリク王子は観念して再びリヤカーを引っ張りながら私達の後をついて来るのだった―。


 この『マターファ』は迷宮と呼ばれるだけあって複雑な造りしているのだが、どうも鉱石を採掘する人々がご丁寧に道標となる五芒星を埋め込んでくれていたようで一度も迷うことなく、魔鉱石が採掘できると言われている洞窟の最深部に辿り着く事が出来た。

「フウ~やっと着いたわね・・。」

「ええ。いささか遠かったですね。

ノッポが言う。

「無事に辿り着けて良かったですよ。」

ベソも安堵の溜息をつく中・・・・洞窟内には重いリヤカーをここまで引っ張って歩いて来たタリク王子が完全に地面に伸びている。うん、お疲れの様だから魔鉱石を採掘している間はそっとしておいてあげよう。

「ところで魔鉱石って・・・どれだっけ・・・?」

首を捻るとノッポが言った。

「エリスさん。しっかりして下さいよ。魔鉱石は黒い岩の中に黄色く光る石が埋め込まれているんですが、その黄色の石が魔鉱石じゃないですか。」

「あ~確かそうだったわね。うん。それじゃ・・・あれだ。」

指さした方向には黒い岩の壁。そして所々黄色い鉱石が埋め込まれているのが見える。

「あれよ!あれが魔鉱石よっ!よし、ベソッ!ノッポ!あれを採掘するわよ!」

シュバッ!と指さした方角を唖然とした顔で見るベソにノッポ。

「ちょっとお!何でそんな辛気臭い顔してるのよ!早く採掘しなくちゃ!」

するとベソが半べそで言う。

「どうやって・・・?」

「え?」

「そもそも・・・採掘する道具を何一つ持って来ていないじゃないですかっ!」

ガーンッ!!

「そ、そうか・。そうだった・・・!私としたことが・・・モンスターの事ばかり考えていて・・・肝心の採掘道具を一切持ちこむのを忘れていたわっ!!」

「うわーんっ!!どうするんですかあっ!エリスさんの馬鹿っ!!」

とうとうベソが子供の様に泣き叫んでしまった!

「どうするんですかあああ!ここまで来て・・手ぶらで帰ったら元も子もありませんよっ?!」

ノッポが喚く。
そしてタリク王子は疲れて眠っている。
ううう・・・・か、かくなるうえは・・・・。そこでふと私はある画期的なアイデアが浮かんだ。

「そうよ・・・手榴弾よっ!」

「「え?」」

「私達には手榴弾があるじゃないのっ!確か魔鉱石って凄く固い鉱石なのよね?爆弾の威力でも破壊できない固い鉱石ってゲーム中で紹介されていたはずよっ!」

「ああ!そう言えばそうでしたね!」

ノッポがポンと手を打つ。

「それじゃあ早速始めましょう!」

言うといきなり、ベソは口でカチリと手榴弾の栓?を抜くと正面の黒い壁に向かって投げつけた。

「ば、馬鹿っ!!いきなり何てことする・・・!」

言い終わる前に激しい爆発で岩が吹っ飛ばされる!ついでに私達も吹っ飛ばされるっ!

いやあああっ!!このままでは・・・壁に・・壁に激突するうううっ!!

その時・・・フワリと身体が壁に激突する瞬間空中で止まる。え?どういう事?
そして見渡すとベソやノッポの身体も空中で止まっている。

「え・・・?こ、これは一体・・・?」

空中でフワフワと浮いた状態で互いの顔を見渡すベソとノッポと私。
すると・・・。

「ハハ・・・どうやら間に合ったみたいだな・・・。」

え・・?その声は・・・。

「オリバー様っ?!」

「ああ、そうだ。お前達モンスター討伐終わったみたいだな?」

オリバーは空中でフワフワ浮く私達を見上げながら言う。

「い、いえ。そんな事よりどうして私達空中で浮かんでいるのですかっ?!」

下にいるオリバーに尋ねた。

「ああ、それはな、この辺一帯は全て強いN極の磁力を帯びている洞窟らしいんだ。それで万一落石事故が遭っても大丈夫なように彼等は同じN極の磁力のバリアを張れる魔法のアイテムを身につけているらしいんだ。それで俺もそのアイテムを購入して駆けつけた所・・・物凄い爆発音で、お前達が吹っ飛んできたのを見て、一か八かこのアイテムを投げつけたのさ、そしたら運よくお前達にヒットしてN極のバリアを身体にはって・・・・今のような状態になっていると言う訳さ。」

「成程・・仕組みは分かりましたが・・・どうすれば我々は下に降りれるのですか?」

ベソが尋ねた。

ハッ!確かに・・・このままいつまでもフワフワ浮いている場合では無かった!

「そうですよ・・・早く降ろて下さいよお。」

ノッポが情けない声を出す。するとオリバーが言った。

「いやあ・・それが後30分は降りられないと思う・・・。」

「何故ですかっ?!」

ベソが悲鳴交じりの声を上げた。

「そのバリア・・・30分は効果が持続するらしいから・・・。」


こうして私達は30分間フワフワと空中を漂う事になるのだった。その後、バリアが解けた私達は魔鉱石を拾えるだけ拾い集め、未だに伸びているタリク王子をリヤカーに乗せて全員で運び出し、魔法陣を使って『アルハール』まで帰って来た。
その後は、タリク王子を城の前に置いて来くると、今後の予定を話し合った。
そして話し合いの結果、今日は疲れたので、エタニティス学園には明日戻る事にして本日は飛び切り素敵な宿に泊まる事に決めたのである。

『お疲れさまでした。34日目無事終了致しました。モンスター退治、おめでとうございます。『白銀のナイト』達の好感度が下がっています。好感度を奪い返して下さい。残り時間は残り39日となります。』

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