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第33日目 夫婦喧嘩は犬も食わない(残り時間39日)
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先程の怪しげ?な宿泊所の店主の言った通り、5軒先に宿屋があった。
土の壁で作られており、いかにも砂漠の町の宿屋と言った雰囲気を醸し出している。
「よし、エリス。部屋が空いてるか聞いてみようぜ?」
「そうですね。では先にお入りください。」
「?あ、ああ・・・別に構わないけど?」
一瞬オリバーは不思議そうな顔をしながらドアを開けた。さて、解説しよう。何故私が先にオリバーを宿屋の中に入らせたかと言うと、大抵のゲームの世界では何処か新しい街や村などへ行った場合、酒場や宿屋などの場所へ行くと、何らかの事件に巻き込まれる場合がある。つまり、ここ『アルハール』でも事件に巻き込まれる可能性があるからで・・・薄情かもしれないがその時はオリバーを宿屋に残して逃げようと思ったからである。
そして私の予想はピタリと当たった・・・・。
「こんにちはー。」
オリバーが宿屋のドアを開けた途端、激しい喧嘩の声と同時に騒がしい音が聞こえて来た。何かが激しく壊れるような音、ガチャーンッ!とガラスが割れるような音等々・・・。
お店の人だろうか、お願いです、やめてくださいと鳴き声で訴える声も聞こえて来る・・。
う~ん・・・これはまずい・・・。
私は自然な動き?でオリバーを宿に残したまま・・後ずさり、ドアをバタンと閉めた。
おい、エリス?!とオリバーの私を呼ぶ声が聞こえたが・・・・悪いけど私は関わりたくないっ!オリバー、ファイトッ!
私は宿屋の外の向かい側の店の前の植え込みに隠れると、遠目から宿屋の様子を伺った。
宿屋の中はさらにヒートアップしたようで、ガラスは割れるわ、そこから色んなものが外に向かって飛んでくるわで酷い騒ぎとなっていた・・・。
そして約20分後・・・。
やつれた様子のオリバーがフラフラと宿屋の外に出てきたのを見届けると、急いで私はオリバーの元へと駆けよった。
「オリバー様っ!大丈夫でしたかっ?!」
「あれ・・?エリス・・・お前、今迄何処に行ってたんだよっ?!」
オリバーはガシイッと私の両肩を掴んできた。う~ん・・・これは怒ってる・・・のかも?
「すみません。オリバー様。店の中で何やら激しい物音がしたので、もしやこれは喧嘩では無いかと思い、誰か助けを呼びに行ったのですが、生憎誰も助っ人になってくれる人物が現れず・・・こうなったら自分一人でも手助けに行かなければと思い、たった今戻って来た次第です。それで喧嘩はどうなったのでしょうか?」
我ながら口からペラペラと嘘を言えるものだと自分自身に感心しながら、喧嘩の行方をオリバーに尋ねると意外な答えが返って来た。
「いやあ・・・それが喧嘩は喧嘩でも・・・夫婦喧嘩だったんだよ。」
オリバーが頭をガリガリ掻きながら言った。
「へ・・・夫婦・・喧嘩・・?」
すると宿屋から一組の若い男女が現れた。
「いやあ~お恥ずかしい・・・実は俺達、今ハネムーン旅行中でこの宿に泊まっていたんですけど・・・妻を部屋に残して、ここでお酒を飲んで酔っぱらって部屋に帰ってきた時に、結婚指輪をはめていなかったから彼女が怒って・・・・。」
男性が照れ笑いしながら言う。
「ええ、それで激怒した私が指輪を何処に無くしたのか問い詰めている内に夫婦喧嘩が始まって・・・。」
その後を若い女性が続ける。
「そしたらこの男性が喧嘩を止めてくれたんです。ひょっとすると何処かポケットにでも入っていないか探すように言ったんです。」
「すると・・・指輪があったんですよっ!彼のポケットから出て来たんです。この方の言う通りでしたッ!」
女性がキラキラした目でオリバーを見る。するとオリバーは言った。
「ああ、アルコールを飲むと身体がむくみやすいからな。それで飲む前に指輪を事前に外していたんじゃないかと思って。それでポケットの中とかよく探すように言ったら、出て来たんだよ。」
「あ・・・そうだったんですか・・・。でも夫婦仲が改善されて良かったですね・・。」
愛想笑いをしながら若い夫婦に私は言ったが・・・男性の顔はひっかき傷だらけやら、青あざが出来ているし、片方の袖は破れてる。一方の女性の方はまるきりの無傷である。どうやら彼女はかなりの恐妻家の要だ。
私の見立てでは・・・きっとこの夫婦はもって後2年てところかな?
「「本当にありがとうございました。」」
若い夫婦はペコペコ頭を下げてオリバーにお礼を言っている。
「ああ、気にするなって。仲良くやれよ。」
オリバーが言うと、若夫婦はそのまま荷物を持って宿屋を出ようとし・・・・。
「ちょと、お前さん達・・・一体どこへいくつもりだい?」
若夫婦が振り返るとそこには腕組みをして2人を睨み付ける宿屋の店主の姿が立ちはだかった。
「あんた達のせいでこの宿屋は大損害だ。ここを今すぐ片付けて、壊した家具や割れた窓ガラスなどを請求させてもらうからなっ!」
「わ・・・分かりました・・。」
「ご迷惑・・おかけしました・・・。」
夫に続き、妻も謝罪し、その後2人は宿屋の店主に言われるまま、掃除を始めた。
そんな彼等を見届けると、今度は私とオリバーに向き直ると言った。
「お待たし致しました。お客様。何人でお泊りになりますか?」
ええっ?!店がこんな状態で営業するの?!だって店の中は割れた瓶やら食器で酷い有様だけどっ?!私はあきれ顔で店主を見た。
「ああ。それじゃ男3人。女1人で部屋を頼む。」
オリバーが言う。
えええっ?!まさかここに泊まるつもりなのっ?!こんな・・・明日の朝も食事ができ無さそうなこの宿屋でっ?!
し、信じられない・・・。
そこで私はオリバーの袖を引っ張った。
「何だ?エリス?」
オリバーが身をかがめたので私は彼に耳打ちするように言った。
「オリバー様、本気でこの宿屋に泊まるつもりですか?あの夫婦だけで明日の朝までにこの食堂が元通りに営業再開出来ると思うんですか?ここに私達が止まれば、下手したら今夜の食事はおろか、明日の朝も恐らく食事は絶望的ですよ?だから他の宿屋に泊まりましょうよ。」
すると私の台詞を背後から聞いていたのか店主が言った。
「お客様っ!それなら心配ご無用ですっ!うちの宿屋と提携している食堂があるんですよっ!そこから好きなメニューを注文してお取り寄せする事が出来るのですから、そんな事言わずにうちに宿泊して下さいよっ!え・・・と、そうだ!うちに宿泊してくだされば耳よりな情報を教えて差し上げますっ!こう見えても私はこの国の噂話なら何でも知ってるんですよ?『早耳のザヒード』とは、つまり私の事なのですからっ!」
口髭を生やし、でっぷりしたお腹を揺すりながらこの宿屋の店主『早耳のザヒード』
が言う。そうか・・・そんなに噂話に詳しいのなら・・・。
私は店主を見た。
「オリバー様のお陰ですよ。」
2人でベソとノッポを迎えに行く道すがら、私は言った。
「え?何で俺のお陰なんだ?」
オリバーは不思議そうに言う。
「だってオリバー様があの宿屋に入ったお陰で、最終的に洞窟に住むモンスターの話を聞く事が出来たのですから。有難うございます。」
そして頭を下げた。
「エリス・・・。」
名前を呼ばれて、オリバーの顔を見上げて私は顔が思わず青ざめてしまった。
何と、オリバーの好感度が450にアップしていたのだった。
まずいまずい。これ以上好感度を上げない様に気を付けないと。
その後、私とオリバーは道端の上で倒れていたベソとノッポを発見し、魔法の絨毯で宿屋に連れ帰ったのだが・・・彼等は余計体調を崩し、ぐでんぐでんになってしまったのは言うまでも無かった―。
『お疲れさまでした。33日目無事終了致しました。モンスターが暴れています。早めに退治して下さい。残り時間は残り39日間となります。』
土の壁で作られており、いかにも砂漠の町の宿屋と言った雰囲気を醸し出している。
「よし、エリス。部屋が空いてるか聞いてみようぜ?」
「そうですね。では先にお入りください。」
「?あ、ああ・・・別に構わないけど?」
一瞬オリバーは不思議そうな顔をしながらドアを開けた。さて、解説しよう。何故私が先にオリバーを宿屋の中に入らせたかと言うと、大抵のゲームの世界では何処か新しい街や村などへ行った場合、酒場や宿屋などの場所へ行くと、何らかの事件に巻き込まれる場合がある。つまり、ここ『アルハール』でも事件に巻き込まれる可能性があるからで・・・薄情かもしれないがその時はオリバーを宿屋に残して逃げようと思ったからである。
そして私の予想はピタリと当たった・・・・。
「こんにちはー。」
オリバーが宿屋のドアを開けた途端、激しい喧嘩の声と同時に騒がしい音が聞こえて来た。何かが激しく壊れるような音、ガチャーンッ!とガラスが割れるような音等々・・・。
お店の人だろうか、お願いです、やめてくださいと鳴き声で訴える声も聞こえて来る・・。
う~ん・・・これはまずい・・・。
私は自然な動き?でオリバーを宿に残したまま・・後ずさり、ドアをバタンと閉めた。
おい、エリス?!とオリバーの私を呼ぶ声が聞こえたが・・・・悪いけど私は関わりたくないっ!オリバー、ファイトッ!
私は宿屋の外の向かい側の店の前の植え込みに隠れると、遠目から宿屋の様子を伺った。
宿屋の中はさらにヒートアップしたようで、ガラスは割れるわ、そこから色んなものが外に向かって飛んでくるわで酷い騒ぎとなっていた・・・。
そして約20分後・・・。
やつれた様子のオリバーがフラフラと宿屋の外に出てきたのを見届けると、急いで私はオリバーの元へと駆けよった。
「オリバー様っ!大丈夫でしたかっ?!」
「あれ・・?エリス・・・お前、今迄何処に行ってたんだよっ?!」
オリバーはガシイッと私の両肩を掴んできた。う~ん・・・これは怒ってる・・・のかも?
「すみません。オリバー様。店の中で何やら激しい物音がしたので、もしやこれは喧嘩では無いかと思い、誰か助けを呼びに行ったのですが、生憎誰も助っ人になってくれる人物が現れず・・・こうなったら自分一人でも手助けに行かなければと思い、たった今戻って来た次第です。それで喧嘩はどうなったのでしょうか?」
我ながら口からペラペラと嘘を言えるものだと自分自身に感心しながら、喧嘩の行方をオリバーに尋ねると意外な答えが返って来た。
「いやあ・・・それが喧嘩は喧嘩でも・・・夫婦喧嘩だったんだよ。」
オリバーが頭をガリガリ掻きながら言った。
「へ・・・夫婦・・喧嘩・・?」
すると宿屋から一組の若い男女が現れた。
「いやあ~お恥ずかしい・・・実は俺達、今ハネムーン旅行中でこの宿に泊まっていたんですけど・・・妻を部屋に残して、ここでお酒を飲んで酔っぱらって部屋に帰ってきた時に、結婚指輪をはめていなかったから彼女が怒って・・・・。」
男性が照れ笑いしながら言う。
「ええ、それで激怒した私が指輪を何処に無くしたのか問い詰めている内に夫婦喧嘩が始まって・・・。」
その後を若い女性が続ける。
「そしたらこの男性が喧嘩を止めてくれたんです。ひょっとすると何処かポケットにでも入っていないか探すように言ったんです。」
「すると・・・指輪があったんですよっ!彼のポケットから出て来たんです。この方の言う通りでしたッ!」
女性がキラキラした目でオリバーを見る。するとオリバーは言った。
「ああ、アルコールを飲むと身体がむくみやすいからな。それで飲む前に指輪を事前に外していたんじゃないかと思って。それでポケットの中とかよく探すように言ったら、出て来たんだよ。」
「あ・・・そうだったんですか・・・。でも夫婦仲が改善されて良かったですね・・。」
愛想笑いをしながら若い夫婦に私は言ったが・・・男性の顔はひっかき傷だらけやら、青あざが出来ているし、片方の袖は破れてる。一方の女性の方はまるきりの無傷である。どうやら彼女はかなりの恐妻家の要だ。
私の見立てでは・・・きっとこの夫婦はもって後2年てところかな?
「「本当にありがとうございました。」」
若い夫婦はペコペコ頭を下げてオリバーにお礼を言っている。
「ああ、気にするなって。仲良くやれよ。」
オリバーが言うと、若夫婦はそのまま荷物を持って宿屋を出ようとし・・・・。
「ちょと、お前さん達・・・一体どこへいくつもりだい?」
若夫婦が振り返るとそこには腕組みをして2人を睨み付ける宿屋の店主の姿が立ちはだかった。
「あんた達のせいでこの宿屋は大損害だ。ここを今すぐ片付けて、壊した家具や割れた窓ガラスなどを請求させてもらうからなっ!」
「わ・・・分かりました・・。」
「ご迷惑・・おかけしました・・・。」
夫に続き、妻も謝罪し、その後2人は宿屋の店主に言われるまま、掃除を始めた。
そんな彼等を見届けると、今度は私とオリバーに向き直ると言った。
「お待たし致しました。お客様。何人でお泊りになりますか?」
ええっ?!店がこんな状態で営業するの?!だって店の中は割れた瓶やら食器で酷い有様だけどっ?!私はあきれ顔で店主を見た。
「ああ。それじゃ男3人。女1人で部屋を頼む。」
オリバーが言う。
えええっ?!まさかここに泊まるつもりなのっ?!こんな・・・明日の朝も食事ができ無さそうなこの宿屋でっ?!
し、信じられない・・・。
そこで私はオリバーの袖を引っ張った。
「何だ?エリス?」
オリバーが身をかがめたので私は彼に耳打ちするように言った。
「オリバー様、本気でこの宿屋に泊まるつもりですか?あの夫婦だけで明日の朝までにこの食堂が元通りに営業再開出来ると思うんですか?ここに私達が止まれば、下手したら今夜の食事はおろか、明日の朝も恐らく食事は絶望的ですよ?だから他の宿屋に泊まりましょうよ。」
すると私の台詞を背後から聞いていたのか店主が言った。
「お客様っ!それなら心配ご無用ですっ!うちの宿屋と提携している食堂があるんですよっ!そこから好きなメニューを注文してお取り寄せする事が出来るのですから、そんな事言わずにうちに宿泊して下さいよっ!え・・・と、そうだ!うちに宿泊してくだされば耳よりな情報を教えて差し上げますっ!こう見えても私はこの国の噂話なら何でも知ってるんですよ?『早耳のザヒード』とは、つまり私の事なのですからっ!」
口髭を生やし、でっぷりしたお腹を揺すりながらこの宿屋の店主『早耳のザヒード』
が言う。そうか・・・そんなに噂話に詳しいのなら・・・。
私は店主を見た。
「オリバー様のお陰ですよ。」
2人でベソとノッポを迎えに行く道すがら、私は言った。
「え?何で俺のお陰なんだ?」
オリバーは不思議そうに言う。
「だってオリバー様があの宿屋に入ったお陰で、最終的に洞窟に住むモンスターの話を聞く事が出来たのですから。有難うございます。」
そして頭を下げた。
「エリス・・・。」
名前を呼ばれて、オリバーの顔を見上げて私は顔が思わず青ざめてしまった。
何と、オリバーの好感度が450にアップしていたのだった。
まずいまずい。これ以上好感度を上げない様に気を付けないと。
その後、私とオリバーは道端の上で倒れていたベソとノッポを発見し、魔法の絨毯で宿屋に連れ帰ったのだが・・・彼等は余計体調を崩し、ぐでんぐでんになってしまったのは言うまでも無かった―。
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