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第32日目 私のお願い その2
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「ここが用具室だ。」
ダンが案内してくれたのは私達従業員が寝起きする宿舎の裏手にある建物の一角だった。
「エリス、手押し一輪車なんか何に使うんだい?」
私の背後に立つトビーが耳元に口を近づけて話しかけてきた。トビーの息が首筋にあたって思わず全身に鳥肌が立つ。
「ト、トビーさんっ!お願いですから息を吹きかけながら話しかけてくるのはやめて下さいっ!背筋がゾワゾワしますから・・・。」
首筋を抑えながらトビーの方を振り向き、私は抗議した。
「何いっ?!トビーッ!お前・・・なんて真似をエリスにしてくれるんだっ?!」
ダンが怒気を含んだ声でトビーを睨み付けた。
「え?ごめんよ・・・エリス。君の背があまりに小さいからつい聞こえないと思って耳元で話したんだけど・・・もしかして・・感じてしまったかい?」
トビーの妙な言い回しに私はプツリと切れかけたが・・・・。
「トビーッ!!次に・・・妙な言葉遣いをエリスに言えば・・・寝込みを襲ってやるからなっ?!」
ダンがトビーの襟首を掴み、壁際に追い詰めながら威嚇するように言った。
と言うか・・・寝込みを襲うって・・・ダン・・・。貴方の方が余程妙な言葉遣いをしてますよ・・。
その後もひと悶着?あった後・・・私達は2台の手押し一輪車を持って『管理事務局』へと向かった―。
「ベソ~ッ、ノッポ~、入りますよ~。」
コンコンとノックをしながら『管理事務局』のドアを開けると、そこにはソファに寝かされたエディとフレッドの姿があった。幸いな事に彼らはまだ目を覚ましてはいない。しかし、それにしても・・ご丁寧に2人には毛布迄かけてある。
う~ん・・・ベソとノッポが何故床に転がっている2人をソファ迄運び、尚且つ毛布迄掛けたのだろうか・・・。
うん、きっとこれはアレだな。
恐らく彼ら二人が仮に目を覚ました時の自分達の身の保全の為にここまで気を遣っている現れなんだろうな・・・。
一方のベソとノッポはと言うと・・・。
テーブルやロッカーで築き上げられたバリケードの奥で2人は震えながら机の下から顔を覗かせている。そして2人は私の姿を見ると、途端に涙目になった。
「お、遅いじゃないですかっ!エリスさんっ!一体何処で油を売っていたんですかっ?!」
ノッポが悲鳴じみた声で抗議してくる。
「そうですよっ!あまりに遅いから俺達を・・・見殺しにするかとおもったじゃないですかっ!」
大袈裟にベソは半べそで・・・。
「ベソなんかかいていませんっ!」
ぬぬぬ・・・・私の考えを読むとは・・・なかなかやるなっ?!
「エリス・・・あの2人は一体何者なんだ?随分親しそうに見えるが・・・?」
ダンが何故か敵意を込めた目で彼等を見ながら私に尋ねて来る。
「え・・・?あの2人ですか?彼等は『管理事務局』の2人ですけど・・・?」
「何いっ?!するとあいつらがいつもいつも理不尽な業務をエリスに命じている輩だなっ?!ゆ、許せんっ!お前らそこから出て来いっ!叩きのめしてやるっ!」
そしてますます凶悪そうな目つきでベソとノッポを睨み付ける。
「「ひええええっ!!」」
ベソとノッポは抱き合って震え上がっている。
「ま、待って下さいッ!ダンッ!彼等ではありませんよ?毎回私に理不尽な命令を下しているのは・・・!」
慌ててダンに声をかける。
「ああ、そうだ。落ち着け、ダン。俺のエリスに無茶苦茶な難題を押し付けて来るのはあの2人じゃ無いぞっ?!上層部の人間だっ!勿論彼等がどんな顔をしているのか俺は見た事が無いけどなっ?!」
俺のエリスと言う言葉に、もはやつっこむ気力も持てないが、トビーもダンを宥めるように説得している。
それにしても・・知らなかったっ!トビーが上層部の人間の顔を見た事が無かったなんて。それではいつもトビーはどういう状況で指示を受けているのだろう?これは後でじっくりベソとノッポに確認する必要がありそうだ。しかし、まずはその前に・・・。
「ダンッ!トビーッ!そんな事よりもまずはあのソファの上で眠っているエディ様とフレッド様を彼等の寮へ運んで下さいよっ!その為にお2人をここへ呼んだんですよっ!」
「そ、そ、そうですよっ!は、早くこの2人をここから連れ出して下さいっ!も、もし彼等が目を覚ましたら・・・俺達どんな目に遭わされるか分かったものじゃないですよっ!」
「早くして下さいよっ!目を覚ますじゃないですかっ!」
ベソとノッポが交互にわめきたてる。
するとダンが腕組みをしながら意地悪そうに言った。
「ほーう。それも面白そうだな。白銀のナイト達がここで目を覚ました場合の様子を是非拝んでみたいものだ。」
そして意地悪そうに笑う。
その言葉に震え上がるベソにノッポ。
「ちょ、ちょっと待って下さい、ダン。何故あの2人に意地悪しようとするのですか?」
慌ててダンの袖を掴みながら顔を見上げる。
「何故かって?それは妙にエリス・・・あの2人がお前と仲が良さそうだからだ。」
ダンは仏頂面で答える。
「うん、それは僕も気になっている所だったんだよ?エリス・・君は彼等2人の・・こ、恋人なの・・?」
ウルウルした目で私をじっと見つめるトビー。うっ!き、気色悪い・・・。
すると私が返事をする前にノッポとベソが喚いた。
「何てこと言うんですかっ!絶対にそんな事あるはず無いじゃないですかっ!」
「ええ、そうですよっ!俺達にだって選ぶ権利がありますよっ!」
・・・失礼な奴等だ。後で覚えてなさいよ・・。
「うう・・・ん・・・。」
その時、エディが身じろぎした。
ま、マズイ・・・ッ!エディが目を覚ますかもしれない・・・っ!
幸い?私はまだ魔女っ娘メイドの姿をしているし、魔法のステッキも持っている。
そこで私は再びステッキを振りかざし、エディとフレッドに向けて弱めの攻撃?を放った。
「メイドのお仕置きっ!」
すると、途端に杖から再び、ピンク色の光の洪水が放たれて包み込まれるエディとフレッド。
その様子を何故か呆れたような顔で見つめるダンとトビーの姿が目に入ったけど・・・うん。ここは知らんぷりをしておこう。
やがて光が止み、辺りは静寂に包まれる。そんな中・・恐る恐る2人に近付く私。
「お、おい。エリス・・・お前、一体何するつもりだ?」
ダンの問いかけには答えず、2人を軽く揺すぶって見たり、指でツンツンしてみても彼等はピクリとも動かず、全くの無反応である。
私はダンとトビーを振り向くと言った。
「うまくいきましたよ。2人は伸びているので当分目を覚ます事はなさそうですよ。さあ、ダン。トビー。彼等を手押し一輪車に乗せてここから運び出しましょう。」
「あ、ああ・・・。」
「わ、分かったよ。エリス。」
ダンもトビーも素直に私の指示に従ってくれて、2人がかりでそれぞれ手押し一輪車にエディとフレッドを乗せる。
「さあ、彼等が目を覚ます前に2人をここから運び出しましょう!」
ダンとトビーに指示すると、未だにバリケードの奥で震えているベソとノッポをチラリと見る。
う~ん・・・まだ震えてるよ、あの2人。
先に手押し一輪車を押して『管理事務局』を出て行くトビーとダン。
そして私も後に続き、部屋を出て行く間際にベソとノッポに言った。
「それじゃあまたね~。ベソにノッポ。今度来る時は私、天丼が食べたいな~。用意しておいてね。」
「じょ、冗談じゃないですよっ!」
「そうですっ!と、当分ここには来ないで下さいよっ!」
ノッポとベソが交互に喚く声を後に、私も『管理事務局』を後にした―。
ダンが案内してくれたのは私達従業員が寝起きする宿舎の裏手にある建物の一角だった。
「エリス、手押し一輪車なんか何に使うんだい?」
私の背後に立つトビーが耳元に口を近づけて話しかけてきた。トビーの息が首筋にあたって思わず全身に鳥肌が立つ。
「ト、トビーさんっ!お願いですから息を吹きかけながら話しかけてくるのはやめて下さいっ!背筋がゾワゾワしますから・・・。」
首筋を抑えながらトビーの方を振り向き、私は抗議した。
「何いっ?!トビーッ!お前・・・なんて真似をエリスにしてくれるんだっ?!」
ダンが怒気を含んだ声でトビーを睨み付けた。
「え?ごめんよ・・・エリス。君の背があまりに小さいからつい聞こえないと思って耳元で話したんだけど・・・もしかして・・感じてしまったかい?」
トビーの妙な言い回しに私はプツリと切れかけたが・・・・。
「トビーッ!!次に・・・妙な言葉遣いをエリスに言えば・・・寝込みを襲ってやるからなっ?!」
ダンがトビーの襟首を掴み、壁際に追い詰めながら威嚇するように言った。
と言うか・・・寝込みを襲うって・・・ダン・・・。貴方の方が余程妙な言葉遣いをしてますよ・・。
その後もひと悶着?あった後・・・私達は2台の手押し一輪車を持って『管理事務局』へと向かった―。
「ベソ~ッ、ノッポ~、入りますよ~。」
コンコンとノックをしながら『管理事務局』のドアを開けると、そこにはソファに寝かされたエディとフレッドの姿があった。幸いな事に彼らはまだ目を覚ましてはいない。しかし、それにしても・・ご丁寧に2人には毛布迄かけてある。
う~ん・・・ベソとノッポが何故床に転がっている2人をソファ迄運び、尚且つ毛布迄掛けたのだろうか・・・。
うん、きっとこれはアレだな。
恐らく彼ら二人が仮に目を覚ました時の自分達の身の保全の為にここまで気を遣っている現れなんだろうな・・・。
一方のベソとノッポはと言うと・・・。
テーブルやロッカーで築き上げられたバリケードの奥で2人は震えながら机の下から顔を覗かせている。そして2人は私の姿を見ると、途端に涙目になった。
「お、遅いじゃないですかっ!エリスさんっ!一体何処で油を売っていたんですかっ?!」
ノッポが悲鳴じみた声で抗議してくる。
「そうですよっ!あまりに遅いから俺達を・・・見殺しにするかとおもったじゃないですかっ!」
大袈裟にベソは半べそで・・・。
「ベソなんかかいていませんっ!」
ぬぬぬ・・・・私の考えを読むとは・・・なかなかやるなっ?!
「エリス・・・あの2人は一体何者なんだ?随分親しそうに見えるが・・・?」
ダンが何故か敵意を込めた目で彼等を見ながら私に尋ねて来る。
「え・・・?あの2人ですか?彼等は『管理事務局』の2人ですけど・・・?」
「何いっ?!するとあいつらがいつもいつも理不尽な業務をエリスに命じている輩だなっ?!ゆ、許せんっ!お前らそこから出て来いっ!叩きのめしてやるっ!」
そしてますます凶悪そうな目つきでベソとノッポを睨み付ける。
「「ひええええっ!!」」
ベソとノッポは抱き合って震え上がっている。
「ま、待って下さいッ!ダンッ!彼等ではありませんよ?毎回私に理不尽な命令を下しているのは・・・!」
慌ててダンに声をかける。
「ああ、そうだ。落ち着け、ダン。俺のエリスに無茶苦茶な難題を押し付けて来るのはあの2人じゃ無いぞっ?!上層部の人間だっ!勿論彼等がどんな顔をしているのか俺は見た事が無いけどなっ?!」
俺のエリスと言う言葉に、もはやつっこむ気力も持てないが、トビーもダンを宥めるように説得している。
それにしても・・知らなかったっ!トビーが上層部の人間の顔を見た事が無かったなんて。それではいつもトビーはどういう状況で指示を受けているのだろう?これは後でじっくりベソとノッポに確認する必要がありそうだ。しかし、まずはその前に・・・。
「ダンッ!トビーッ!そんな事よりもまずはあのソファの上で眠っているエディ様とフレッド様を彼等の寮へ運んで下さいよっ!その為にお2人をここへ呼んだんですよっ!」
「そ、そ、そうですよっ!は、早くこの2人をここから連れ出して下さいっ!も、もし彼等が目を覚ましたら・・・俺達どんな目に遭わされるか分かったものじゃないですよっ!」
「早くして下さいよっ!目を覚ますじゃないですかっ!」
ベソとノッポが交互にわめきたてる。
するとダンが腕組みをしながら意地悪そうに言った。
「ほーう。それも面白そうだな。白銀のナイト達がここで目を覚ました場合の様子を是非拝んでみたいものだ。」
そして意地悪そうに笑う。
その言葉に震え上がるベソにノッポ。
「ちょ、ちょっと待って下さい、ダン。何故あの2人に意地悪しようとするのですか?」
慌ててダンの袖を掴みながら顔を見上げる。
「何故かって?それは妙にエリス・・・あの2人がお前と仲が良さそうだからだ。」
ダンは仏頂面で答える。
「うん、それは僕も気になっている所だったんだよ?エリス・・君は彼等2人の・・こ、恋人なの・・?」
ウルウルした目で私をじっと見つめるトビー。うっ!き、気色悪い・・・。
すると私が返事をする前にノッポとベソが喚いた。
「何てこと言うんですかっ!絶対にそんな事あるはず無いじゃないですかっ!」
「ええ、そうですよっ!俺達にだって選ぶ権利がありますよっ!」
・・・失礼な奴等だ。後で覚えてなさいよ・・。
「うう・・・ん・・・。」
その時、エディが身じろぎした。
ま、マズイ・・・ッ!エディが目を覚ますかもしれない・・・っ!
幸い?私はまだ魔女っ娘メイドの姿をしているし、魔法のステッキも持っている。
そこで私は再びステッキを振りかざし、エディとフレッドに向けて弱めの攻撃?を放った。
「メイドのお仕置きっ!」
すると、途端に杖から再び、ピンク色の光の洪水が放たれて包み込まれるエディとフレッド。
その様子を何故か呆れたような顔で見つめるダンとトビーの姿が目に入ったけど・・・うん。ここは知らんぷりをしておこう。
やがて光が止み、辺りは静寂に包まれる。そんな中・・恐る恐る2人に近付く私。
「お、おい。エリス・・・お前、一体何するつもりだ?」
ダンの問いかけには答えず、2人を軽く揺すぶって見たり、指でツンツンしてみても彼等はピクリとも動かず、全くの無反応である。
私はダンとトビーを振り向くと言った。
「うまくいきましたよ。2人は伸びているので当分目を覚ます事はなさそうですよ。さあ、ダン。トビー。彼等を手押し一輪車に乗せてここから運び出しましょう。」
「あ、ああ・・・。」
「わ、分かったよ。エリス。」
ダンもトビーも素直に私の指示に従ってくれて、2人がかりでそれぞれ手押し一輪車にエディとフレッドを乗せる。
「さあ、彼等が目を覚ます前に2人をここから運び出しましょう!」
ダンとトビーに指示すると、未だにバリケードの奥で震えているベソとノッポをチラリと見る。
う~ん・・・まだ震えてるよ、あの2人。
先に手押し一輪車を押して『管理事務局』を出て行くトビーとダン。
そして私も後に続き、部屋を出て行く間際にベソとノッポに言った。
「それじゃあまたね~。ベソにノッポ。今度来る時は私、天丼が食べたいな~。用意しておいてね。」
「じょ、冗談じゃないですよっ!」
「そうですっ!と、当分ここには来ないで下さいよっ!」
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