上 下
69 / 129

第28日目 死の砂漠から呼ぶ者は ②

しおりを挟む
ドンドンドンッ!

「ベソッ!ノッポッ!ここにいるのは分かってるのよ?早く出てきてよっ!」

ドアをノックしながらベソとノッポを呼ぶ。

ガチャリ・・・・。

12回目のノックでようやく出てきたのは黒髪イケメンのノッポであった。

「おはようございます、エリスさん・・・。最近毎日俺達の処へ来ていますよね・・・・。」

寝ぼけまなこ?で目をこすりながらノッポが言う。

「何言ってるの?用事があるから貴方達の処へ来ているんでしょう?ところでなんでいつもそんなに眠そうなの?もう朝の7時を過ぎてるけど?」

液晶時計を見ながらノッポに言うと、奥からベソも出てきた。

「エリスさん・・・。俺達今日寝たのは午前1時なんですよ・・・。もう少し寝かせて下さいよ。」

茶髪イケメンのベソが欠伸をしながら顔をのぞかせてきた。

「ええ?だってそれでも今は7時だから6時間は寝てるじゃない。それだけ寝れば大丈夫だってば・・って言うか、そんなのんびりしている場合じゃないのよっ!ねえ、今朝のミッションは一体どういう事なのよっ!」

「え?今朝ミッション?また何か無茶なミッションでも入って来たんですか?」

ベソののんびりした言い方に何だか無性にイラッとくる。

「あ・・・あのねえっ!少なくとも貴方達はプログラマーでしょう?この世界の神でしょう?なのに、何故今どんな事件がこの世界で起こっているのか分からないのよっ!」

思わず、グイッとベソの襟首を掴んで自分の方へ引き寄せる。

「ぐ・・・く、苦しいですよ。エリスさん・・・。」

ベソが涙目で訴える。

「あ、ご・ごめんなさい・・・。つい興奮のあまり・・・。」

パッと手を放して慌ててベソに謝罪をする。

「ま、まあ・・・別にいいですけど・・それで何があったんですか?」

ベソが肩で息をしながら私を見た。

「と・・とにかく、このメッセージを見てよっ!」

私は液晶パネルを操作して、2人にメッセージの内容を見せると、途端に顔色を変える2人。うん、ここまで来れば彼らも理解しただろう。

「エ、エリスさん・・・。ま、まさか・・・?」

「じょ・・・冗談・・・ですよね・・・?」

青ざめた顔で私を見つめるノッポとベソ。

「何言ってるの?冗談でこんな従業員宿舎から離れた管理事務局までわざわざ足を運ぶと思う?」

「ヒエエエッ!勘弁して下さいよっ!」

ノッポが情けない声を上げる。

「そうですよっ!これ以上俺達を巻き込まないで下さいっ!」

ベソが半ベソを・・・。

「ですからベソなんかかいていませんっ!」

・・・考えを先読みされてしまった。

「あのねですね・・・。何度も言わせて頂きますが・・・・私はあくまで乙女ゲームのバーチャル世界へやって来たわけですよね?それが・・・。」

「わーっ!わ、分かりました!行きますっ!行けばいいんでしょうっ?!訴えられたらりしたらたまったもんじゃありませんからっ!」

「ありがとう、ノッポ。ついに覚悟を決めてくれたわけね?」

パチンと手を叩いてニッコリ微笑む私。

「・・・全く仕方ありませんねえ・・・。」

ベソもため息をつきながら渋々返事をした。

「おおっ!2人とも・・・大分話が分かるようになって来たじゃないの?それで・・2人で今回のコンピューターウィルスの正体を調べられる?」

「う~ん・・・どうでしょうねえ・・?まあ一応は調べてみますが、あまり期待はしないでくださいよ?」

ノッポが頭をポリポリ掻きながら言う。

「それより、エリスさん。他にあと3名誰を連れて行くか選ばなければいけないんですよねえ?誰にするんですか?」

ベソがPCのキーボードをたたきながら質問してきた。

「う~ん・・・。そこなんだよねえ・・・。もし誰か好感度を下げられていた『白銀のナイト』がいたら、その人を連れて行こうと思ったんだけど、今回に限っては好感度を下げられたキャラはいないみたいだし・・・」

腕組みしながら考え込むとノッポが言った。

「それなら戦う事が好きな『白銀のナイト』に声をかければいいんじゃいなですか?」

「戦う事が好きな・・・ねえ・・。」

真っ先に頭に浮かんだのはフレッドだ。そして・・・次にアンディ・・・そして・・うん!魔法が得意なエリオットが付いてきてくれれば心強い!

「どうやら誰に声を掛けたいか決まったようですね?出来れば頼もしい人をお願いしますよ?俺達も行かなくてはならないんですから。」

ベソが震えながらこちらを見る。

「分かったわよ・・・。それじゃちょっと行ってくるね。『アルハール』って、確か・・・かなり遠かったよね・・?日帰りなんて・・・無理だよね?」

部屋を出るときに2人を振り返って質問してみた。

「当り前じゃないですかっ。移動だけで半日かかりますよ。」

ノッポの話にベソが声を荒げた。

「そうだっ!PCのメンテナンスがあるから、やっぱり俺達行けないですよっ!エリスさん、残念ですが日帰りで行ける場所じゃないと俺達付き添えませんよ。お付き合い出来なくて申し訳ないです。」

・・・気のせいだろうか?ベソの声が何だか嬉しそうに聞こえる・・・・。

「わ・・・分かったわよ・・。仕方ない・・・今回は貴方達にお願いするのは・・・断念するわ。その代り・・・。」

ジロリと恨みを込めた目でベソとノッポを見ると言った。

「貴方達、ウィルス駆除器持ってるでしょう?あれ、あれを貸してよっ!そうじゃないと・・・私、『アルハール』には行かないからねっ!」


「「えええっ?!そ、そんな・・・!」」



こうして今回私はベソとノッポから強引に「ウィルス駆除器」を借りてきたのである。


「さて・・・それじゃ・・・フレッド、アンディ、エリオット以外に誰に頼もうかな・・・?」

歩きながら、液晶画面を操作して『白銀のナイト』達の居場所を検索してみると、なんと全員が集まっているではないかっ!

「おおっ!これは・・・なんてラッキーなの?まさか全員が一堂に会しているなんて・・・。それじゃあ場所は何所なのかな・・・?ってあれ・・・この場所ってもしかして・・・?」

部屋のマップを何度か表示させ・・・私は自分の顔が青ざめていくのが分かった。

こ、この場所って・・・!

「わ・・・私の部屋じゃないのっ!や・・・やだっ!また・・・燃やされてしまうかもっ!!」

急いでメイド服のスカートの裾を広げると、一目散に自室へ向かった。


バーンッ!!

自室のドアを開けると、一斉にこちらを振り向く14個の目。

「「「「「「「エリスッ!!」」」」」」」

7人全員がそろって私の名前を言う。

「な・・・何やってるんですか?!皆さんっ!ひ、人の留守中に・・仮にも女性の部屋に勝手に入るなんて・・・!」

半分恨みを込めた目で彼らを見ると、真っ先に動いたのはアドニスだった。

「ごめんよ!エリスッ!僕たちは・・・君が心配でつい、いてもたってもいられなくなって・・・つい・・・。」

「言っておくが全員でここへ来ようって決めた分けなじゃいからなっ?!ここに集まったのはほんとに偶然なんだっ!」

エリオットが人混みをかき分けて現れた。

「そうなんだよっ!だけど、一番初めに駆けつけのはこの俺だからなっ?!」

負けじとアベルが声を荒げる。

「エリスッ!俺は・・・何としてもお前について行くからな?!」

ジェフリーがアベルを押しのけて私の前に現れるとギュっと手を握りしめてきた。

「抜け駆けするなっ!俺も行くぞっ!」

フレッドが背後から声を掛けてきた。

「キャアッ!と、突然後ろから声を掛けないでくださいよっ!」

思わず涙目になる私。

「エリス。『アルハール』はとても暑くて女性には辛い場所だ。この私を連れて行けばきっと役立つぞ?」

エリオットが笑みを浮かべて私を見る。

「さあ、エリス。誰を連れて行くか選んでくれ。」

最後に現れたのはアンディだった。う~ん・・・しかし・・私には選べない・・・。
選べないから・・・。

「それじゃ、皆さん。あみだくじで決めましょう!」

私は紙とペンを取り出して『白銀のナイト』達に言った。


「「「「「「「あみだくじ・・?」」」」」」」


その後私は彼らにあみだくじの説明をし、公平性を期す為に、全員に線を引いてもらい、あみだくじ大会?が開催された-。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢の慟哭

浜柔
ファンタジー
 前世の記憶を取り戻した侯爵令嬢エカテリーナ・ハイデルフトは自分の住む世界が乙女ゲームそっくりの世界であり、自らはそのゲームで悪役の位置づけになっている事に気付くが、時既に遅く、死の運命には逆らえなかった。  だが、死して尚彷徨うエカテリーナの復讐はこれから始まる。 ※ここまでのあらすじは序章の内容に当たります。 ※乙女ゲームのバッドエンド後の話になりますので、ゲーム内容については殆ど作中に出てきません。 「悪役令嬢の追憶」及び「悪役令嬢の徘徊」を若干の手直しをして統合しています。 「追憶」「徘徊」「慟哭」はそれぞれ雰囲気が異なります。

3×歳(アラフォー)、奔放。

まる
ファンタジー
これは職業・主婦(3×歳)の物語。 結婚妊娠後、家事育児パートにと奔走し、気が付いたらアラフォー真っ只中。 夫は遊び歩き午前様、子供たちも自由気まま。何の為に生きているのか苦悩する日々。 パート帰りの川縁でひとり月を見上げた主婦は、疲れた顔で願った。 —このままくたばりたくない。 と。 月明かりなのか何なのか、眩しさに目を閉じると主婦の意識はそこで途絶えた。 眼前に広がる大草原。小鳥の囀り。 拾われ連れられた先、鏡に映る若い娘の姿に、触れた頬の肌のハリに、果たしてアラフォーの主婦は— 開放感と若さを手にし、小躍りしながら第二の人生を闊歩しようと異界の地で奮闘するお話です。 狙うは玉の輿、出来れば若いイケメンが良い。 空回りしながらも青春を謳歌し、泣き笑い苦悶しアラフォーも改めて成長を遂げる…といいな。 *この作品は「小説家になろう」にも掲載しています。

悪役令嬢には、まだ早い!!

皐月うしこ
ファンタジー
【完結】四人の攻略対象により、悲運な未来を辿る予定の悪役令嬢が生きる世界。乙女ゲーム『エリスクローズ』の世界に転生したのは、まさかのオタクなヤクザだった!? 「繁栄の血族」と称された由緒あるマトラコフ伯爵家。魔女エリスが魔法を授けてから1952年。魔法は「パク」と呼ばれる鉱石を介して生活に根付き、飛躍的に文化や文明を発展させてきた。これは、そんな異世界で、オタクなヤクザではなく、数奇な人生を送る羽目になるひとりの少女の物語である。 ※小説家になろう様でも同時連載中

そして乙女ゲームは始まらなかった

お好み焼き
恋愛
気付いたら9歳の悪役令嬢に転生してました。前世でプレイした乙女ゲームの悪役キャラです。悪役令嬢なのでなにか悪さをしないといけないのでしょうか?しかし私には誰かをいじめる趣味も性癖もありません。むしろ苦しんでいる人を見ると胸が重くなります。 一体私は何をしたらいいのでしょうか?

【完結】悪役令嬢の反撃の日々

アイアイ
恋愛
「ロゼリア、お茶会の準備はできていますか?」侍女のクラリスが部屋に入ってくる。 「ええ、ありがとう。今日も大勢の方々がいらっしゃるわね。」ロゼリアは微笑みながら答える。その微笑みは氷のように冷たく見えたが、心の中では別の計画を巡らせていた。 お茶会の席で、ロゼリアはいつものように優雅に振る舞い、貴族たちの陰口に耳を傾けた。その時、一人の男性が現れた。彼は王国の第一王子であり、ロゼリアの婚約者でもあるレオンハルトだった。 「ロゼリア、君の美しさは今日も輝いているね。」レオンハルトは優雅に頭を下げる。

悪役令嬢日記

瀬織董李
ファンタジー
何番煎じかわからない悪役令嬢モノ。 夜会で婚約破棄を宣言された侯爵令嬢がとった行動は……。 なろうからの転載。

申し訳ないけど、悪役令嬢から足を洗らわせてもらうよ!

甘寧
恋愛
この世界が小説の世界だと気づいたのは、5歳の頃だった。 その日、二つ年上の兄と水遊びをしていて、足を滑らせ溺れた。 その拍子に前世の記憶が凄まじい勢いで頭に入ってきた。 前世の私は東雲菜知という名の、極道だった。 父親の後を継ぎ、東雲組の頭として奮闘していたところ、組同士の抗争に巻き込まれ32年の生涯を終えた。 そしてここは、その当時読んでいた小説「愛は貴方のために~カナリヤが望む愛のカタチ~」の世界らしい。 組の頭が恋愛小説を読んでるなんてバレないよう、コソコソ隠れて読んだものだ。 この小説の中のミレーナは、とんだ悪役令嬢で学園に入学すると、皆に好かれているヒロインのカナリヤを妬み、とことん虐め、傷ものにさせようと刺客を送り込むなど、非道の限りを尽くし断罪され死刑にされる。 その悪役令嬢、ミレーナ・セルヴィロが今の私だ。 ──カタギの人間に手を出しちゃ、いけないねぇ。 昔の記憶が戻った以上、原作のようにはさせない。 原作を無理やり変えるんだ、もしかしたらヒロインがハッピーエンドにならないかもしれない。 それでも、私は悪役令嬢から足を洗う。 小説家になろうでも連載してます。 ※短編予定でしたが、長編に変更します。

断罪イベント返しなんぞされてたまるか。私は普通に生きたいんだ邪魔するな!!

ファンタジー
「ミレイユ・ギルマン!」 ミレヴン国立宮廷学校卒業記念の夜会にて、突如叫んだのは第一王子であるセルジオ・ライナルディ。 「お前のような性悪な女を王妃には出来ない! よって今日ここで私は公爵令嬢ミレイユ・ギルマンとの婚約を破棄し、男爵令嬢アンナ・ラブレと婚姻する!!」 そう宣言されたミレイユ・ギルマンは冷静に「さようでございますか。ですが、『性悪な』というのはどういうことでしょうか?」と返す。それに反論するセルジオ。彼に肩を抱かれている渦中の男爵令嬢アンナ・ラブレは思った。 (やっべえ。これ前世の投稿サイトで何万回も見た展開だ!)と。 ※pixiv、カクヨム、小説家になろうにも同じものを投稿しています。

処理中です...