悪役令嬢の逆襲~バッドエンドからのスタート

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第26日目 休暇日くらい、休ませて下さい ①

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 朝10時-

ドアがドンドン外で激しく叩かれている。う~ん・・・。うるさいなあ・・こっちは部屋に戻って来たのが深夜の2時、そこからシャワーを浴びたり、寝る準備をしたりで、ベッドに入ったのは3時頃だったんだから・・・昼まで眠るつもりだったのに。

「はいはい、起きればいいんでしょう・・・。もう、折角の休暇日だからゆっくり眠っていたかったのに・・・どうせアンでしょうけどね・・・。」

ピンク色でフリルたっぷりのネグリジェ姿にお揃いのナイトキャップを被ったまま、寝ぼけまなこでガチャリとドアを開けた。
すると、真っ先に目に飛び込んできたのはアンディ、ジェフリー、フレッドが真正面に立っている姿だった。

「「「「あ・・・・。」」」」

4人の声が一斉に重なる。

「か・・・可愛い・・・。」

フレッドが顔を赤くして口元を抑えながら呟く。

「エ、エリス・・・。眠るときも・・そ、その・・おしゃれだな・・。」

ファッションに敏感なアンディが目を細めて私を見る。

「エリスッ!、俺はお前の事が・・・っ!」

昨日からの高い好感度が引き続き続いているのか、ジェフリーが私の両手をガシイッと握りしめてくると、グイッとジェフリーが背後から何者かに襟首を掴まれ、後ろに引っ張られた。

「おまえ!どさくさに紛れてエリスに何するんだ!」

その人物はエリオット。

「おはよう、エリス。まだ眠っていたなんて知らなくて大勢で押しかけてすまなかったね。実は・・・。」

笑顔で話しかけるエリオットをグイッと押しのけて現れたのはアベルだった。

「エリスッ!俺達・・・今日はみんなでお前の服を買うために首都へ行こうと思って誘いに来たんだよっ!うん、そのパジャマ姿可愛いなあ。」

そして私の頭をなでなでして来る。

「は、はあ・・・ありがとうございます・・・。」

するとアベルの背後にはエディがいた。しかし、私と目が合うと顔を真っ赤にして視線をパッとそらしてしまう。
う~ん・・・。19歳なのに・・・ピュアだ。
だが・・・しかしっ!

「あ、あの・・・皆さん・・・。わざわざ貴重なお休みの日に、私なんかの為に時間を割くことはありませんよ。それに昨日は遠く離れた場所まで赴き、モンスター討伐に行かれたのですよね?なので本日はゆっくり休まれたらいかかですか?見ての通り、私も真夜中仕事があって、ベッドに入ったのが今朝の3時頃だったので・・。」

だからお帰り下さいと言う意味を込めて言ったのだが・・・。
何故か私の話を聞き、水を打ったように静まり返る『白銀のナイト』達。

「な・・・何だって・・・?真夜中の仕事って・・・何かあったのか?」

フレッドが声を震わせながら尋ねてくる。

「え・・?ひょっとして何も知らなかったんですか?」

目をぱちくりさせながら全員を見渡すと、神妙な面持ちで彼らは頷く。と言う事は・・・トビーの奴め・・・口ではなんだかんだと私を気に掛けるような事を言ってるくせに、やはり肝心な時には動いてくれないんだな・・・?

「トビー・・・。覚えていなさいよ・・・。」

思わず口の中で小さく呟く。するとそれを耳にしたアンディが声を掛けてきた。

「なんだ?トビーって・・・もしかして従業員のリーダーの事か?」

よし・・・こうなったら彼らに時計台の事を話してしまえ!

「ええ。そうなんですよ。でも・・・まあ立ち話もなんですから一度お入りください。」

「え?!い、いいのか?!エリスの部屋へ入っても!」

何故か嬉しそうなジェフリー。


「だ、だけど・・い、いいのか?エリス。その・・・み、見たところまだパジャマ姿のように見えるが・・・。」

エディが顔を真っ赤にしながら話しかけてきた。
あ・・・そう言えばそうだった。くっ・・・!わ、私としたことが・・・パジャマ姿だったことをすっかり忘れていたっ!

「そう言えばそうでしたね。今着替えてくるので、それまでは部屋の外で待っていて頂けますか?では後程・・・・。」

ホホホと笑いながら、『白銀のナイト』達をの前で部屋のドアを閉めると、自分の頭をぽかぽか叩いた。
う~っ!私の馬鹿馬鹿馬鹿っ!うっかり寝間着姿だったのだ!
と、とにかく早く着替えなければ・・・っ!

あ!そう言えば・・ベソとノッポに頼んでいた私の服・・・元に戻ってるのかなあ?
恐る恐るクローゼットを開けて見て、あらびっくり!

「う・・・うそお~っ!今まで着ていた服のデザインが全部変更されてる!うわあ。この洋服・・・素敵・・・。よし!今日はこれを着よう!」

今日の私の服のコンセプトはずばり、森をテーマにした服!
淡いパステルカラーの薄緑色のフード付きのロングワンピース。そして下から覗くフリルたっぷりのアンダースカートに足元は編み上げサンダル。
そして、くるりと鏡の前で一回転。

「よし、エリス。今日も貴女はとっても可愛いよ?」

そしてパチリとウィンクする。

「あ・・・そうだ、椅子。椅子を用意しなくちゃ。」

やはり相手はあの『白銀のナイト』達だ。立たせっぱなしでは申し訳ない。
部屋をぐるりと見渡し、おあつらえ向きの家具を見つけた。
それはこの間アンの部屋に泊めて貰った時にダンに運んでもらったソファベッド。
これを部屋の真ん中に運んで、後はここにある椅子を使えば全員座れるはず・・。

「う~ん・・・。」

必死でソファベッドを動かそうとしても、ウンともスンとも動かない。
ゼーゼー・・・ハアハア・・・。だ、駄目だ・・・。私ではとてもこの家具を動かすなんて絶対に無理!なんてやわなこの身体・・・。

「仕方ない・・・これ以上待たせるわけにもいかないし・・もう彼等に家具を動かして貰おう・・・。」

「すみません。お待たせ致しました・・・・ってあれ・・?」

何故かドアの目の前に立っていたはずの『白銀のナイト』達の姿が見えない。
果たして一体何処へ・・・?
すると廊下の奥でメイド仲間たちがアンディ達に詰め寄ってる姿が目に止まった。

何話してるんだろう・・・?少しだけ近付いてみよう

「ねえ、皆さん。何故エリスばかり気に掛けるんですか?最近はお部屋のお掃除だって頼みにきてくれないじゃないですか?」

ジャネットがフレッドにしなだれかかっている。おお~そうか・・・ジャネットのタイプはフレッドだったのね?

「へ、部屋の掃除なら間に合ってる。自分で片付けているから今は必要無いんだ!」

フレッドは若干腰が引いている。
なるほど・・・ああやって強気にグイグイ来られるタイプは苦手と言うわけか・・・。これは意外な一面を知る事が出来た。

「ねえ、アンディ様。エリスなんてチンチクリンなお子様じゃないですか?アンディ様にはとてもじゃありませんが不釣り合いだと思いませんか?」

おおっ!カミラ・・・。私がこの間自分の身長の話をしたものだから・・アンディに訴えているのね?そうかあ・・・アンディを狙ってたのかあ・・・。

「いや、エリスは小さくてとても可愛らしいじゃ無いか。ああいう女性を男なら守ってやりたくなるって思うのは当然だろう?それに・・・エリスはファッションセンスが抜群だ。だから俺とはすごく気が合うんだ。」

そしてニッコリ微笑む。出たっ!得意のキラースマイルだっ!!

そしてナタリーは・・・げげっ!残りの『白銀のナイト』達全員を壁際に追い詰めて色気を振りまいている!お・・・恐るべし・・・ナタリー・・・。

さて・・でもどうしようか・・?
彼等はメイド達に掴まっている。そして私はのんびりしたい。彼女達は彼等に興味深々・・・と言う事は・・・。うん。この場はメイド達に任せて・・・こっそり逃げ出してやれ・・・。
幸い誰もが私の存在に気が付いていない。
逃げるなら今の内だ—。

 そして私は抜き足、差し足でゆっくり廊下を歩き・・チラリと背後を振り返る
よし、まだ誰も気づいていないっ!

角まで曲がると、そこから先はダッシュで駆ける。
早く、早く一刻も早くここから逃げるんだ—ッ!!

「ハーハー・・・・。」

何とかバレずに外まで逃げきり、荒い息を吐きながら壁に手をついて呼吸を整える。

「ま、全く・・・たまの休み位・・・ひ、1人でのんびり過ごしたいのに・・・それより・・何処へ行こうかなあ・・?あ!そうだ!ベソとノッポの所へ行って、あの部屋で仮眠取らせて貰おう!幸い今日はコンピューターウィルスも出現していないし、好感度を下げられているキャラもいないようだし・・久しぶりにのんびり出来そうだっ!」

う~んっ、と伸びをした矢先・・・

ピロリンと音が鳴り響き、無情にも私の前に液晶画面が表示されるのであった―。





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