悪役令嬢の逆襲~バッドエンドからのスタート

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第25日目 恐怖の時計台調査 ②

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「エリス、今夜は時計台の調査という大事な任務があるから・・・だから昼間の仕事は免除してあげるよ?」

トビーが笑顔で語り掛けて来る。
あ、つまり・・という事は・・・・。

「トビー・・・。それはやはり私に時計台の調査をしろ・・・と言う事ですね?」
恨めしそうな目でトビーを見る。

「ええええ?!そ、そんな目で・・・見ないでおくれよ。エリス・・・。君にそんな目で見られたら僕はどうしたらいいのか分からなくなってしまうよ・・・・。」

どこか媚びるような態度でじっと見つめてくるトビーに思わず鳥肌が立ってくる。

「分かりましたよ・・・。調査に向かえばいいんでしょう、向かえば・・・。あ!だ、だけど・・・一人で行くなんて絶対に嫌ですからね!当然、誰かついてきてくれるんですよね?!」

トビーの顔をじろりと睨み付けながら言うと、彼はサッと視線をそらす。
うん・・・?何だか嫌な予感が・・・。

「そ、それが・・・今回は『白銀のナイト』達はついてこれないんだよ。」

トビーが私をチラチラと見ながら言う。

「え・・・ええっ?!そ、それは一体どういう事なんですかっ?!何故・・・誰もついてきてくれないんですかっ?!」

「え、ええと・・ここから約100k程離れた「ヴィヨン」という村に・・モンスターが出現したという事で、彼らはあと3時間後に討伐隊として出発することになっているんだ。場所も遠いし・・・モンスター討伐と言う任務だから、とてもじゃないけど今夜中に学園に戻って来ることは不可能だと・・思わないかい?エリス。」

トビーはどこか悲しそうに目を伏せながら言う。

「はああああっ?!ふ、ふざけないでくださいよっ!だったら・・・何も今夜調査する必要なんかな無いですよね?『白銀のナイト』達がいるときに調査すればいいだけの話じゃないですかあっ?!」

半分涙目になって訴える。

「ああ、僕の愛しいエリス。そんな悲し気な瞳で見つめないでおくれ。だって・・仕方が無いんだよ。上層部から絶対に今夜調査をするように言われているのだから・・・。そ、そうだ・・よし、分かったよ。それではエリス。僕と一緒にこの学園を逃げ出そう。手と手を取り合って、追手も来ない誰も知らない遠い場所に逃げてそこで2人で幸せに暮らそう?」

ガシイッと私の手を握りしめるトビーにガルシアは仰天した。

「お、おいっ!トビーッ!お前・・何所まで本気で言ってるんだ?いや、それ以前にだったらお前が時計台の調査について行ってあげればいいだろう?」

「無理を言うなぁっ!!ガルシアッ!俺が付いていて何の役に立つと思ってるんだ?腰が抜けて歩けなくなって、逆にエリスの足を引っ張るに決まっているだろう?!」

そして私はいがみ合う二人は放っておいて、朝の厨房の仕事に取り掛かり始める事にした。
玉ねぎの皮むきをしながら私は沢山考えた。
そうだ、誰も当てに出来ないのなら・・・ベソとノッポに頼めばいいんだ。
上層部と言うのは恐らくゲーム制作会社の人達の事だろう。そして何故今夜調査を命じるかと言う事は・・・つまり時計台に現れた正体不明?はコンピューターウィルスで早急に処理する必要があるのだろう。
よし、さっさと厨房の仕事を終わらせてベソとノッポの元へ行かなくては!
私は急ピッチで玉ねぎの皮むきをするのだった-。


「ふう~・・・。やっと終わった・・・。朝の仕事が・・。」

思い切り伸びをしながら厨房を出た私は早速ベソとノッポのいる『管理事務局』へと足を向けた。
その道すがら考える。そう言えば・・・好感度が下げられたのは一体誰なのだろう?下げられた好感度は今日中に取り返さないとならないのだろうか?だとしたら・・これは非常にまずい事態かもしれない。
彼らはもうすぐ「ヴィヨン」という村に行ってしまうのだから・・・!

「だ、だけど・・・仮に誰が好感度を下げられたのかが分かっとして・・・どうやって好感度を取り戻せばいいのよ・・・!」

そこまで考えて、私にナイスなアイディアが浮かんだ。
そうだ!私にはポイントと呼ばれる心強い味方がついているじゃない!確かゲーム中でもあったよねえ?ヒロインが意中の男性の好感度を上げる為にプレゼントを渡す場面が・・・・!
本当はプレゼント交換というくだらない?ものに貴重なポイントを使わなくてはならないなんて・・・!
「プ、プレゼント・・・万人向けプレゼントアイテムは・・・?!どれ?!」

腕時計式タッチパネルで必死に探す。

「え~と・・・打ち粉・・は駄目だな。これは・・刀を装備しているフレッドが喜ぶアイテムだ。これは・・・カルシウムの粉・・・?ひょっとして背の低いアベル用かなあ・・?トランプカード・・・これは絶対にジェフリー用のプレゼントだっ!それじゃあ・・・」

次々と画面をスワイプしていけども、中々万人受けするプレゼントが見つからない。

「うう~ん・・・困った・・ってあれ・・・?こ、これってもしかして・・!」

私はついに、万人受けするプレゼントを見つけた!これなら・・!

「だけど・・どの位ポイントが必要になるのかな・・・?って嘘ッ!」

私はそのポイントの桁違いの数字を見て眩暈を起こしかけた。

「そ・・・そんな・・・10000ポイントもするなんて・・・。」

一体、今自分の手持ちポイントはどの位あるのだろうか?慌ててポイントを確認してみると・・・。

「ええええっ?!う、うそ・・・っ!50000ポイントもたまってる・・・!」

これは・・・もう交換するしかないでしょう!そして私は液晶画面をタップした。
するとピカッ!と眩しい光と共に私の手に指輪が現れた。
そう、この指輪こそ万人に喜ばれるアイテム・・・その名も『マジックリング』だ。

 白銀のナイト達はその強すぎる魔力に翻弄されている。そこで常日頃、魔力を押さえる指輪をはめているのだが、これがまた値段は高価だし、消耗品となっているのだ。

「フフフフ・・・。きっとこれを好感度の下がった相手にプレゼントとして渡せば・・・。」

そこで私はハタと気が付いた。

「どうやって・・・好感度の下がった相手を見極めればいいんだろう・・?それに受け取ってくれるかどうかも分からないよねえ・・・。」

そこで私はうんと考え・・・・。ベソとノッポを巻き込む事にした。


「ベソ、ノッポ、いるんでしょう?入るわよ。」

『管理事務局』へ着くとドアをノックしながら2人に呼びかけた。
すると少しの間、中でゴソゴソ音が聞こえ・・・ガチャリとドアが開かれて出てきた覆面男はノッポであった。

「エリスさん・・・また俺達の所へ来たんですか・・?」

うんざりしたようなノッポの言い方に流石にカチンと来る私。

「何言ってるのよ!そもそも貴方達がコンピューターウィルスの侵入を許したから、私は苦労させられているんでしょう?それに何よっ!今日は・・夜中に時計台の調査をしに行かせるなんて・・!どうせこれもコンピューターウィルスなんでしょ?!」

「え・えええっ?!な、何ですか?その話・・俺達知りませんよ?!」

奥でPCをいじっていたベソが言った。

「すぐに調べないとッ!」

ノッポは急いでPCへ向かうと、2人は物凄いタイピングでPCを叩いてゆく。
やがてピタリとノッポが動きを止めると言った。

「ほんとうだ・・・。さっきまでウィルスが確認出来なかったのに・・・。」

呆然とした顔で呟くノッポに私は言った。

「え?ちょっと待ってよっ!確かウィルスらしきものに遭遇したのは昨晩の事だったんだよ?それなら昨晩から発見されてても良いはずでしょう?」

「た、確かに・・・。」
「言われてみれば・・・。」

ベソとノッポが考え込んでしまった。・・・これはある意味都合がいい。
私はほくそ笑むと言った。

「よし、それならベソ、ノッポ、今夜は私に付きあうのよっ!3人で時計台の調査をするのよっ!」

「ええっ?!そ、そんなっ!」

ノッポが情けない声を上げる。

「あ、あんまりですよっ!」

ベソが半べそかいてる。

「う・・・うるさいわねっ!それなら1人で真夜中時計台へ上れって言うの?!冗談じゃないわよっ!貴方達・・・男なら私を守りなさいよっ!」

私は涙目で訴え・・・渋々彼等は承諾してくれた。



「だからと言って・・・今度は何故俺達がエリスさんの『白銀のナイト』達との面会に俺達まで連れて行くんですか・・・?」

ノッポが恨めしそうな声で言う。

「だから何度もいったでしょう?オリビアのせいで好感度を下げられたキャラがいるのに、誰か分からないのよ。一体どうなってるのよ?」

「多分・・・ウィルスの仕業ですよ・・・。なかなかシステムの重要部分を狙ってきますね~。」

ベソの言葉に私は言った。

「そんな感心している場合じゃないでしょ?そのせいで今すごく苦労させられているのよ?だから貴方達も協力してよっ!」

そして、何やかや言っている内に・・私達は白銀のナイト達専用の特別室へとやって来た。この部屋は、彼等だけが使用する事の出来る特別室なのだ。

「いい?それじゃ・・・いくわよ?」
私はベソとノッポを伴い、彼等の腕に手を絡め、大きく深呼吸をした―。





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