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第25日目 恐怖の時計台調査 ①
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以前のベッドとは違い、格段に良い寝心地の良いベッドでいつものように天井に浮かんでいる液晶画面を見つめる私。
「ふ~ん・・・。今日もオリビアから好感度を奪われている訳ね・・。でもたったひとりだけなら・・・何とかなるかな?」
何と言っても昨日はエディが好感度を奪われていたわけだが、あっさり奪い返す事が出来たのだ。きっと今回もうまくいくに違いない・・・・。だいたい、うじうじ悩むのは私の性に合わないのだ。うん、きっと今日もなんとかなるはずさっ!
「うん?そう言えば・・・今日はコンピューターウィルス・・・発生していないのかな?てっきりこれからは毎日ウィルス駆除をしなければいけないと思ったんだけど・・?まあいいか。」
そして私はメイド服に着替えると房へと向かった。
「おはようございます、ガルシアさん。」
「よう、お早うエリス。今朝も真面目に出勤だな?」
厨房に入るなり、ガルシアが声をかけてきたが・・・何となく様子がおかしい、少し元気が無いようにも見える。
「どうかしましたか?ガルシアさん・・・・何だか元気が無いように見えますけど?」
「ああ、実は・・・。」
ガルシアが言いかけた時。
バーンッ!!
突然厨房のドアが勢いよく開かれた。
ヒィッ!!い、一体・・何?!
「エリスッ!!」
中へ入ってきた人物は何とトビーであった。
「ト、トビー!い、一体何でしょうか・・・?こんな朝早くから・・・。」
大体ここの従業員だって年功序列制なのだ。厨房担当の料理長ガルシアは別として、私やアンのように新人メイドは朝早くから起きて、厨房の手伝いをしなくてはならない。まあ、そのおかげ?でガルシアとアンの間には・・・愛が生まれたのだけど。
という訳で、本来は他のメイドや従業員達は起床時間ではない。
なのに、ここにトビーがやって来たと言う事は・・・嫌な予感しかしない。
さてはまた厄介な案件が持ち込まれたのだろうか・・・?今朝の液晶画面には何も出ていなかったけどな・・・。
「エ・・・エリスゥッ!!」
トビーが涙目で私に駆け寄って来ると、私の両手をガシイッと握りしめてきた。
「ちょ、ちょっといきなり何するんですかっ!トビーッ!!」
「お、お願いだっ!今すぐ荷物をまとめてここから・・に、逃げておくれ~っ!!」
瞳に涙を一杯にたたえ、顔を真っ赤にして私の両手を握りしめて見つめる様は、最早怖いを通り越して気色悪い。大体『エリスゥッ!!』って一体何なんだ?
「ちょ、ちょっと!落ち着いて下さいってばっ!トビー!」
しかしトビーはオイオイ泣いて、あろう事か、今度は突然私を強く抱きしめ、さらに激しく泣きだす有様。
く・苦しい・・・・!!
「おい!いい加減にしろ!トビーッ!エリスが苦しがっているだろ?!」
ガルシアの声でようやくトビーは我に返ったようで、ハッとなると私の身体を離し、頭を下げてきた。
「ご、ごめんよ、エリスッ!つ、つい夢中になって君を強く締めあげてしまって・・!苦しかっただろう?」
トビーはオロオロしながら私の周りをチョロチョロと動きまわる。う~ん・・鬱陶しい男だ・・・。それに・・・私にはさっきから気になって仕方が無いことがあった。
チラリとトビーの頭上を見る。そこに確かに好感度を表すハートが浮いているにも関わらず・・・・何故かハートは真っ黒のサインペンで塗りつぶしたようなハートしか浮いていない。これでは好感度の数値を確認する事が出来ないじゃないの!
間違いないっ!絶対に・・・バグに違いない!ひょっとするとトビーはただいまバグってる真っ最中なのかもしれない!
「もう大丈夫ですから、落ち着いて下さい。それで・・・今朝は何をそんなに慌てているのですか?今すぐ荷物をまとめてここから逃げろってどういう意味なのでしょうか?」
するとトビーが今度は顔色を青ざめさせる。
全く・・・・器用に顔色を赤くしたり、青くしたりするなんて・・・まるで人間信号機みたいな男だ。この間は耳をピクピク動かしていたし・・トビーの才能?は計り知れない。
「あ、ああそうだったね。まず君の為に何があったのかきちんと伝えておかないとね・・・。実は明け方に僕の元に上層部から連絡が入ったんだよ。」
ようやくトビーは興奮が治まったのか、落ち着いた声で話し始めた。
しかし、この『上層部』一体何の事なのだろう・・・・?謎だ。
「実はこの学園には昔から古い時計台があってね・・・。もう何百年も前に出来た時計台と言われているらしいんだ。だけど・・・あまりにも老朽化が激しいので近々この時計台を新しく立て直す事に決めたらしい。しかし、ある学生達の噂では、昼間は静かな時計台が真夜中になると不気味な音が聞こえて来るという報告があがってきたんだよ。」
うん・・・?何だか話の流れが・・・妙な方向に行ってる気がする・・・。
「そこで昨夜現場作業員2名が時計台の内部調査をする為に真夜中、ランタンを片手に内部に入ったらしいんだ・・・。彼等の話では、辺りは蜘蛛の巣だらけと、ひどい埃とカビの匂いで、歩く度に床板はぎしぎしと不気味な音を立てて・・・静まり返った時計台内部に響き渡っていたらしい。その有様からもう何年も誰も足を踏み入れた様子が無いという事はすぐに分かったそうだよ・・。」
「は、はい・・・・。」
私はごくりと息を飲んでトビーの話を聞いていた。隣にはいつの間にかガルシア迄も椅子を持ってきており、2人で隣あわせに座り、トビーの話を聞く。
そ、それにしても・・・トビーは気が付いているのだろうか?自分の語り口調がいつの間にか怪談話をしているかようになっているのを・・・!
その証拠に隣に座って話しを聞くガルシアの自分のエプロンの裾を握りしめた両手は小刻みに震えている。
「時計台の内部には螺旋階段があってね・・その螺旋階段を上って時計が設置されている天辺に登れるらしい・・・。彼等は真っ暗な中、意を決して登ろうとしたその時、外で激しい雷鳴が轟いた!!」
「キャアアアアッ!!
突然のトビーの大きな声に思わず悲鳴を上げてしまった。
「ウワアアアッ?!」
ガルシアも私の悲鳴に驚いたのか叫び声をあげる!
それなのにトビーは私達が恐怖の色を顔に浮かべているのに見向きもせずに、話を続ける。
「そして・・・・雷鳴と共に突然時計台の窓がひとりでに開き、窓から無数の蝙蝠が飛び込んできたっ!!」
「イヤアアアッ!!」
ヒイイイッ!もう嫌だ。私は昔から怖い話が大嫌いなのだ。なのに・・・何故トビーはわざと人を怖がらせるような口調で話すのだっ?!
半分涙目になってトビーを睨み付けてやる。
「そして・・・蝙蝠はやがて・・群れを成す様に集まり・・・一つの固まりを成した・・・。そして・・・・その中から・・・突然鋭い爪を生やした両手が飛び出してきたッ!!」
「キャアアアアアッ!!イヤアアアアアンッ!!」
私は耳を押さえて、激しく身体をくねらせながら絶叫した。
「「・・・・。」」
それを・・・何故か顔を赤らめて見つめるトビーに・・・な、何故?!何故ガルシア迄もが私の事を頬を染めて見つめているのだっ?!ひょ、ひょっとしたら・・・まだ媚薬の香りが・・・?!
「コ、コホン・・・。す、すみません。大声で叫んでしまって・・・。」
「い、いや・・・気にしなくて・・・いいよ・・・。」
トビーが顔を赤らめながら言う。
「あ・ああ。そうだ、俺だって思わず叫びたくなるくらいだったからな。」
ガルシアは視線を逸らせながら続きを促した。
「そ、それでその後はどうなったんだ?」
「ああ、そしてそれを見た作業員は驚いて逃げ帰ったそうだよ・・・。」
そしてトビーは次に私を見ると、再び目をウルッとさせた。
あ・・・なんか、嫌な予感がする・・・。
「そ、そしてその上層部の奴らが・・・・エリスゥッ!!き、君を、内部調査員に任命して・・・今夜、調査に向かわせろって言うんだよっ?!しかも・・・必要があれば退治して来いって・・・!ウワアアアアンッ!ぼ、僕の大切なエリスをそんな危険な場所に送り込まなければならないなんて・・・!」
朝っぱらからトビーの泣きわめく声が、厨房に響き渡るのであった—。
「ふ~ん・・・。今日もオリビアから好感度を奪われている訳ね・・。でもたったひとりだけなら・・・何とかなるかな?」
何と言っても昨日はエディが好感度を奪われていたわけだが、あっさり奪い返す事が出来たのだ。きっと今回もうまくいくに違いない・・・・。だいたい、うじうじ悩むのは私の性に合わないのだ。うん、きっと今日もなんとかなるはずさっ!
「うん?そう言えば・・・今日はコンピューターウィルス・・・発生していないのかな?てっきりこれからは毎日ウィルス駆除をしなければいけないと思ったんだけど・・?まあいいか。」
そして私はメイド服に着替えると房へと向かった。
「おはようございます、ガルシアさん。」
「よう、お早うエリス。今朝も真面目に出勤だな?」
厨房に入るなり、ガルシアが声をかけてきたが・・・何となく様子がおかしい、少し元気が無いようにも見える。
「どうかしましたか?ガルシアさん・・・・何だか元気が無いように見えますけど?」
「ああ、実は・・・。」
ガルシアが言いかけた時。
バーンッ!!
突然厨房のドアが勢いよく開かれた。
ヒィッ!!い、一体・・何?!
「エリスッ!!」
中へ入ってきた人物は何とトビーであった。
「ト、トビー!い、一体何でしょうか・・・?こんな朝早くから・・・。」
大体ここの従業員だって年功序列制なのだ。厨房担当の料理長ガルシアは別として、私やアンのように新人メイドは朝早くから起きて、厨房の手伝いをしなくてはならない。まあ、そのおかげ?でガルシアとアンの間には・・・愛が生まれたのだけど。
という訳で、本来は他のメイドや従業員達は起床時間ではない。
なのに、ここにトビーがやって来たと言う事は・・・嫌な予感しかしない。
さてはまた厄介な案件が持ち込まれたのだろうか・・・?今朝の液晶画面には何も出ていなかったけどな・・・。
「エ・・・エリスゥッ!!」
トビーが涙目で私に駆け寄って来ると、私の両手をガシイッと握りしめてきた。
「ちょ、ちょっといきなり何するんですかっ!トビーッ!!」
「お、お願いだっ!今すぐ荷物をまとめてここから・・に、逃げておくれ~っ!!」
瞳に涙を一杯にたたえ、顔を真っ赤にして私の両手を握りしめて見つめる様は、最早怖いを通り越して気色悪い。大体『エリスゥッ!!』って一体何なんだ?
「ちょ、ちょっと!落ち着いて下さいってばっ!トビー!」
しかしトビーはオイオイ泣いて、あろう事か、今度は突然私を強く抱きしめ、さらに激しく泣きだす有様。
く・苦しい・・・・!!
「おい!いい加減にしろ!トビーッ!エリスが苦しがっているだろ?!」
ガルシアの声でようやくトビーは我に返ったようで、ハッとなると私の身体を離し、頭を下げてきた。
「ご、ごめんよ、エリスッ!つ、つい夢中になって君を強く締めあげてしまって・・!苦しかっただろう?」
トビーはオロオロしながら私の周りをチョロチョロと動きまわる。う~ん・・鬱陶しい男だ・・・。それに・・・私にはさっきから気になって仕方が無いことがあった。
チラリとトビーの頭上を見る。そこに確かに好感度を表すハートが浮いているにも関わらず・・・・何故かハートは真っ黒のサインペンで塗りつぶしたようなハートしか浮いていない。これでは好感度の数値を確認する事が出来ないじゃないの!
間違いないっ!絶対に・・・バグに違いない!ひょっとするとトビーはただいまバグってる真っ最中なのかもしれない!
「もう大丈夫ですから、落ち着いて下さい。それで・・・今朝は何をそんなに慌てているのですか?今すぐ荷物をまとめてここから逃げろってどういう意味なのでしょうか?」
するとトビーが今度は顔色を青ざめさせる。
全く・・・・器用に顔色を赤くしたり、青くしたりするなんて・・・まるで人間信号機みたいな男だ。この間は耳をピクピク動かしていたし・・トビーの才能?は計り知れない。
「あ、ああそうだったね。まず君の為に何があったのかきちんと伝えておかないとね・・・。実は明け方に僕の元に上層部から連絡が入ったんだよ。」
ようやくトビーは興奮が治まったのか、落ち着いた声で話し始めた。
しかし、この『上層部』一体何の事なのだろう・・・・?謎だ。
「実はこの学園には昔から古い時計台があってね・・・。もう何百年も前に出来た時計台と言われているらしいんだ。だけど・・・あまりにも老朽化が激しいので近々この時計台を新しく立て直す事に決めたらしい。しかし、ある学生達の噂では、昼間は静かな時計台が真夜中になると不気味な音が聞こえて来るという報告があがってきたんだよ。」
うん・・・?何だか話の流れが・・・妙な方向に行ってる気がする・・・。
「そこで昨夜現場作業員2名が時計台の内部調査をする為に真夜中、ランタンを片手に内部に入ったらしいんだ・・・。彼等の話では、辺りは蜘蛛の巣だらけと、ひどい埃とカビの匂いで、歩く度に床板はぎしぎしと不気味な音を立てて・・・静まり返った時計台内部に響き渡っていたらしい。その有様からもう何年も誰も足を踏み入れた様子が無いという事はすぐに分かったそうだよ・・。」
「は、はい・・・・。」
私はごくりと息を飲んでトビーの話を聞いていた。隣にはいつの間にかガルシア迄も椅子を持ってきており、2人で隣あわせに座り、トビーの話を聞く。
そ、それにしても・・・トビーは気が付いているのだろうか?自分の語り口調がいつの間にか怪談話をしているかようになっているのを・・・!
その証拠に隣に座って話しを聞くガルシアの自分のエプロンの裾を握りしめた両手は小刻みに震えている。
「時計台の内部には螺旋階段があってね・・その螺旋階段を上って時計が設置されている天辺に登れるらしい・・・。彼等は真っ暗な中、意を決して登ろうとしたその時、外で激しい雷鳴が轟いた!!」
「キャアアアアッ!!
突然のトビーの大きな声に思わず悲鳴を上げてしまった。
「ウワアアアッ?!」
ガルシアも私の悲鳴に驚いたのか叫び声をあげる!
それなのにトビーは私達が恐怖の色を顔に浮かべているのに見向きもせずに、話を続ける。
「そして・・・・雷鳴と共に突然時計台の窓がひとりでに開き、窓から無数の蝙蝠が飛び込んできたっ!!」
「イヤアアアッ!!」
ヒイイイッ!もう嫌だ。私は昔から怖い話が大嫌いなのだ。なのに・・・何故トビーはわざと人を怖がらせるような口調で話すのだっ?!
半分涙目になってトビーを睨み付けてやる。
「そして・・・蝙蝠はやがて・・群れを成す様に集まり・・・一つの固まりを成した・・・。そして・・・・その中から・・・突然鋭い爪を生やした両手が飛び出してきたッ!!」
「キャアアアアアッ!!イヤアアアアアンッ!!」
私は耳を押さえて、激しく身体をくねらせながら絶叫した。
「「・・・・。」」
それを・・・何故か顔を赤らめて見つめるトビーに・・・な、何故?!何故ガルシア迄もが私の事を頬を染めて見つめているのだっ?!ひょ、ひょっとしたら・・・まだ媚薬の香りが・・・?!
「コ、コホン・・・。す、すみません。大声で叫んでしまって・・・。」
「い、いや・・・気にしなくて・・・いいよ・・・。」
トビーが顔を赤らめながら言う。
「あ・ああ。そうだ、俺だって思わず叫びたくなるくらいだったからな。」
ガルシアは視線を逸らせながら続きを促した。
「そ、それでその後はどうなったんだ?」
「ああ、そしてそれを見た作業員は驚いて逃げ帰ったそうだよ・・・。」
そしてトビーは次に私を見ると、再び目をウルッとさせた。
あ・・・なんか、嫌な予感がする・・・。
「そ、そしてその上層部の奴らが・・・・エリスゥッ!!き、君を、内部調査員に任命して・・・今夜、調査に向かわせろって言うんだよっ?!しかも・・・必要があれば退治して来いって・・・!ウワアアアアンッ!ぼ、僕の大切なエリスをそんな危険な場所に送り込まなければならないなんて・・・!」
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